固定資産税の課税開始時期を理解する
不動産を購入・新築した際、「固定資産税はいつから払うのか」「納税通知書はいつ来るのか」「税額はいくらか」と疑問を持つ方は少なくありません。
この記事では、固定資産税の課税開始時期、納税通知書の発送時期、納付スケジュール、税額の計算方法、新築住宅の軽減措置を、総務省等の公的資料を元に解説します。
初めて固定資産税を払う方でも、課税開始時期と納付スケジュールを正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 毎年1月1日時点の所有者が課税対象、新築は完成した年の翌年から課税開始
- 納税通知書は毎年4~5月に発送、年4回の分割納付(東京23区は6月・9月・1月・3月)が一般的
- 計算式は固定資産税評価額×1.4%、一戸建ての年間平均額は10万~15万円
- 新築住宅は3年間(マンション5年間)税額が1/2、住宅用地は200㎡以下で課税標準額1/6に軽減
固定資産税とは:基本的な仕組みと課税対象
固定資産税の定義と納税義務者
総務省によると、固定資産税は毎年1月1日時点で土地・建物などの固定資産を所有している人に課される地方税です。
納税義務者は、1月1日時点での登記簿上の所有者(または固定資産課税台帳に記載されている者)です。
課税対象となる固定資産(土地・建物)
固定資産税の課税対象は、土地(宅地、田、畑、山林等)、建物(住宅、店舗、工場等)、償却資産(機械、備品等)です。
住宅の場合、土地と建物の両方に固定資産税が課されます。
標準税率1.4%の仕組み
固定資産税の標準税率は1.4%です。計算式は「固定資産税 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 1.4%」となります。
自治体により税率が異なる場合がありますが、多くの自治体で標準税率1.4%が適用されています。
固定資産税はいつから課税されるのか
毎年1月1日時点の所有者が課税対象
固定資産税は、毎年1月1日時点で固定資産を所有している人が課税対象となります。1月2日以降に購入した場合は翌年から課税、1月2日以降に売却しても当年分は全額負担となります。
この原則は非常に重要で、不動産売買時の固定資産税負担を理解する上で必須です。
新築物件の課税開始時期(完成した年の翌年から)
新築物件の場合、建物が完成した年の翌年から課税が開始されます。例えば、2025年に建物が完成した場合、2026年から固定資産税が課されます。
完成した年は固定資産税が課されないため、新築購入時の資金計画では翌年からの税負担を考慮する必要があります。
中古物件購入時の課税タイミング
中古物件を購入した場合、購入年の1月1日時点の所有者が当年分の固定資産税を負担します。
例えば、2025年6月に購入した場合、2025年分の固定資産税は前所有者が負担し、2026年から新所有者が負担します。実務では、売買契約時に日割り計算で清算されることが一般的です。
1月2日以降の売買における注意点
1月2日以降に売却した場合、売主が当年分の固定資産税を全額負担します。逆に、1月2日以降に購入した場合、買主は当年分の固定資産税を負担せず、翌年から負担します。
売買契約時に、固定資産税の清算方法を明確にしておくことが重要です。
納税通知書はいつ来る?納付スケジュールと支払い方法
納税通知書の発送時期(4~5月)と到着タイミング
三菱UFJ銀行によると、納税通知書は毎年4~5月に市町村から発送され、発送後1~10日程度で到着します。
自治体により発送時期が異なるため、5月中旬までに届かない場合は市町村に問い合わせることを推奨します。
年4回の分割納付スケジュール(自治体別の納期限)
年4回の分割納付が一般的です。例えば、東京23区は6月・9月・1月・3月、大阪市は4月・7月・12月・2月、名古屋市は4月・7月・12月・2月です。
| 自治体 | 納期限 |
|---|---|
| 東京23区 | 6月・9月・1月・3月 |
| 大阪市 | 4月・7月・12月・2月 |
| 名古屋市 | 4月・7月・12月・2月 |
(出典: オリックス銀行)
自治体により納期限が異なるため、納税通知書で確認してください。
一括払いと分割払いの選択
一括払いも選択可能で、通常は第1期の納期限内に全額を納付します。一括払いによる割引はありませんが、支払い忘れを防ぐメリットがあります。
多様な納付方法(口座振替、スマホ決済、クレジットカード等)
納付方法は、口座振替、コンビニ納付、スマートフォン決済アプリ(PayPay、LINE Pay等)、クレジットカード、ペイジー、金融機関窓口等があります。
口座振替を利用すると、納付期限に自動的に引き落とされるため、支払い忘れを防ぐことができます。
納付期限を過ぎた場合の延滞金(年2.4~8.7%)
納付期限を過ぎると、延滞金として1ヵ月以内は年2.4%、1ヵ月経過後は年8.7%が加算されます(2025年時点)。長期滞納は財産差押さえにつながるリスクがあるため、納付期限を守ることが重要です。
固定資産税の計算方法と税額の目安
計算式:固定資産税評価額×1.4%
固定資産税の計算式は「固定資産税 = 固定資産税評価額(課税標準額)× 1.4%」です。
課税標準額は、固定資産税評価額に軽減措置を適用した後の額です。
固定資産税評価額の決まり方(土地は時価の約70%、建物は建築費の約60%)
固定資産税評価額は、自治体が固定資産の価値を評価した額で、土地は時価の約70%、建物は建築費の約60%が目安です。
評価額は固定資産課税台帳に記載されており、納税通知書で確認できます。
3年に1度の評価額見直し
固定資産税評価額は3年に1度見直されます(評価替え)。地価の変動により、評価額が増減する可能性があります。
次回の評価替えは2027年(令和9年)です。
一戸建ての年間平均額(10万~15万円)
HOME4Uによると、一戸建ての固定資産税の年間平均額はおおよそ10万円から15万円です。
4,000万円の物件で約15万~25万円が目安となります。
新築住宅の軽減措置と税額シミュレーション
新築住宅の軽減措置(一戸建て3年間、マンション5年間、税額1/2)
長谷工の住まいによると、新築住宅では一戸建て3年間、マンション5年間、固定資産税が2分の1に減額されます。
軽減措置の適用期限は2026年3月31日までです(2025年時点)。
住宅用地の特例(200㎡以下は課税標準額1/6)
小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡以下)は、課税標準額が固定資産税評価額の1/6に軽減されます。200㎡を超える部分は一般住宅用地として課税標準額が1/3に軽減されます。
この特例は新築・中古を問わず適用されます。
認定長期優良住宅の軽減期間延長(一戸建て5年間、マンション7年間)
認定長期優良住宅の場合、減額期間が一戸建て5年間、マンション7年間に延長されます。
認定長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用できる構造や設備を持つ住宅です。
4,000万円の新築一戸建てのシミュレーション(約15万~25万円)
前提条件:
- 建物評価額: 2,400万円(建築費4,000万円の約60%)
- 土地評価額: 2,100万円(時価3,000万円の約70%)
- 土地面積: 150㎡(小規模住宅用地の特例適用)
計算:
- 建物の固定資産税: 2,400万円 × 1.4% = 33.6万円 → 軽減後16.8万円(3年間)
- 土地の固定資産税: (2,100万円 × 1/6) × 1.4% = 4.9万円
- 合計: 約21.7万円(軽減措置適用時)
軽減期間終了後は、建物の固定資産税が33.6万円となり、合計約38.5万円となります。
軽減措置の適用期限(2026年3月31日まで)
2025年現在、新築住宅の軽減措置の適用期限は2026年3月31日までです。期限延長の可能性があるため、総務省の公式サイトで最新情報を確認してください。
まとめ:固定資産税の支払いで注意すべきポイント
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者が課税対象で、新築は完成した年の翌年から課税開始されます。納税通知書は毎年4~5月に発送され、年4回の分割納付(東京23区は6月・9月・1月・3月)が一般的です。
計算式は固定資産税評価額×1.4%で、一戸建ての年間平均額は10万~15万円です。新築住宅は3年間(マンション5年間)税額が1/2に軽減され、住宅用地は200㎡以下で課税標準額が1/6に軽減されます。
軽減期間終了後は税額が急増するため、資金計画に注意が必要です。納付期限を過ぎると延滞金(年2.4~8.7%)が加算されるため、口座振替を利用して支払い忘れを防ぐことを推奨します。税額の詳細は自治体や専門家(税理士等)に相談してください。
