固定資産税とは|土地・建物を所有すると課される地方税
不動産を所有している方、または購入を検討している方は、「なぜ土地や家を持っているだけで税金がかかるのか」「固定資産税は何に使われるのか」と疑問に感じたことがあるでしょう。
この記事では、固定資産税の仕組み、納税義務の根拠、税金の使い道、計算方法、軽減措置、滞納時のリスクを、総務省や国土交通省の公式情報を元に詳しく解説します。固定資産税を正しく理解し、計画的に納税できるようになります。
この記事のポイント
- 固定資産税は毎年1月1日の所有者が納税義務を負う地方税
- 道路・学校・福祉など、住民が日常的に利用する公共サービスの費用に使われる
- 課税標準額×税率1.4%で計算され、住宅用地特例や新築住宅の減額措置で軽減される
- 滞納すると延滞金が年14.6%の高い利率で発生し、財産が差し押さえられる可能性がある
- 2026年3月31日まで新築住宅の減額措置が延長されている(2025年時点)
固定資産税の定義|毎年1月1日の所有者が納税義務を負う
固定資産税は、毎年1月1日に土地・建物・償却資産などの固定資産を所有している人が、その固定資産が所在する市区町村に支払う地方税です。
- 納税義務者: 毎年1月1日時点の所有者
- 納付先: 固定資産が所在する市区町村
- 納付時期: 年4回(4月・7月・12月・2月)に分けて納付(一括払いも可能)
年の途中で売買があっても、1月1日時点の所有者が1年分を納めます。売買時は契約書で負担割合を取り決めるのが一般的です。
課税対象|土地・家屋・償却資産の3種類
固定資産税の課税対象は、以下の3種類です。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 土地 | 宅地、田、畑、山林など |
| 家屋 | 住宅、店舗、工場など |
| 償却資産 | 事業用の機械、器具、備品など |
一般的な住宅所有者は、「土地」と「家屋」の2種類が課税対象になります。
固定資産税の歴史|1950年に地方税法で導入
固定資産税は、昭和25年(1950年)に地方税法で導入された税制度です。総務省によると、2023年度の固定資産税の税収は9兆8,073億円で、市町村税収の約41%を占めています。
なぜ固定資産税を払うのか|納税義務の根拠と税金の使い道
固定資産税を払う理由は、地方税法による納税義務と、行政サービスの費用負担という2つの側面があります。
地方税法による納税義務|資産価値と行政サービスの関係
地方税法第343条により、毎年1月1日に固定資産を所有している人は、固定資産税を納める義務があります。
なぜ土地や家を持っているだけで税金がかかるのでしょうか?
一宮市の公式見解によると、「市が提供する行政サービス(道路、上下水道、消防、教育等)により、土地や建物の資産価値が維持・向上しているため、その受益に応じて負担していただくもの」とされています。
- 行政サービス: 道路整備、上下水道、消防、学校、公園等
- 資産価値の維持・向上: これらのサービスにより、土地・建物の価値が保たれる
- 受益者負担の原則: サービスの受益に応じて、所有者が費用を負担する
固定資産税の使い道|道路・学校・福祉などの公共サービス
固定資産税として納税されたお金は、以下のような公共サービスの費用に使われています。
- 道路・橋の修繕: 生活道路の舗装、橋の維持管理
- 消防設備の整備: 消防車・救急車の購入、消防署の運営
- 学校教育: 小中学校の運営、教員の人件費、施設の維持管理
- 保育園・図書館: 公立保育園・図書館の運営
- ごみ処理施設: ごみ収集・処理施設の管理
- 福祉サービス: 高齢者福祉、障害者福祉、子育て支援
住民が日常的に利用するインフラやサービスを維持するための重要な財源です。
固定資産税の税収規模|市町村税収の約41%を占める
2023年度の固定資産税の税収は9兆8,073億円で、市町村税収の約41%を占めています。市町村にとって最も重要な財源の1つです。
固定資産税の計算方法|課税標準額×税率1.4%の仕組み
固定資産税は、以下の計算式で算出されます。
固定資産税 = 課税標準額 × 税率1.4%
課税標準額の算出|固定資産税評価額の確認方法
課税標準額は、固定資産税評価額に軽減措置を適用した金額です。
- 固定資産税評価額: 市町村が3年に1度評価する資産の価値
- 確認方法: 毎年4月頃に届く納税通知書に記載されている
- 評価の目安: 土地は時価の70%、建物は再建築価格の50-70%が目安
評価額は市町村の税務課窓口で閲覧することもできます。
標準税率1.4%|自治体により異なる場合がある
固定資産税の標準税率は1.4%ですが、自治体により異なる場合があります。
- 標準税率: 1.4%
- 実際の税率: 市町村が条例で定める(多くの自治体は1.4%を採用)
- 都市計画税: 都市計画区域内の土地・建物には、固定資産税とは別に都市計画税(最大0.3%)が課される場合がある
評価替え|3年に1度の見直しで2024年は評価替えの年
固定資産税評価額は、3年に1度見直されます(評価替え)。
- 評価替えの年: 2024年(次回は2027年)
- 目的: 固定資産の価格変動を評価額に反映し、課税の公平性を保つ
- 2024年の評価替え: 再建築費評点補正率が木造家屋は1.11、非木造家屋は1.07となった
固定資産税の軽減措置|住宅用地特例・新築住宅の減額を活用
固定資産税には、以下の軽減措置があります。
住宅用地特例|200㎡まで1/6、超過部分は1/3に軽減
住宅用地(住宅が建っている土地)には、課税標準額が大幅に軽減される特例があります。
| 面積 | 軽減率 |
|---|---|
| 200㎡まで(小規模住宅用地) | 課税標準額が1/6に軽減 |
| 200㎡を超える部分 | 課税標準額が1/3に軽減 |
例(300㎡の住宅用地の場合):
- 200㎡まで: 課税標準額が1/6に軽減
- 200㎡を超える100㎡: 課税標準額が1/3に軽減
この特例により、住宅用地の固定資産税は大幅に抑えられます。
新築住宅の減額措置|戸建て3年間・マンション5年間は1/2に
新築住宅には、固定資産税が減額される措置があります。
| 住宅の種類 | 減額期間 | 減額率 |
|---|---|---|
| 新築戸建て | 3年間 | 1/2に減額 |
| 新築マンション | 5年間 | 1/2に減額 |
- 適用条件: 床面積50㎡以上280㎡以下(賃貸住宅は40㎡以上)
- 適用期限: 2026年3月31日までに所有した新築住宅(2025年時点)
国土交通省によると、この措置は2年間延長されました。
認定長期優良住宅の特例|戸建て5年間・マンション7年間の減額
認定長期優良住宅(長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅)には、減額期間が延長される特例があります。
| 住宅の種類 | 減額期間 | 減額率 |
|---|---|---|
| 認定長期優良住宅(戸建て) | 5年間 | 1/2に減額 |
| 認定長期優良住宅(マンション) | 7年間 | 1/2に減額 |
認定長期優良住宅の認定を受けるには、自治体への申請が必要です。
軽減措置の申請方法|適用期限は2026年3月31日まで
軽減措置の多くは、市町村が自動的に適用しますが、一部は申請が必要です。
- 住宅用地特例: 自動適用(申請不要)
- 新築住宅の減額: 多くの自治体で自動適用(一部自治体は申請必要)
- 認定長期優良住宅の特例: 認定証の写しを提出(申請必要)
詳細は、固定資産が所在する市町村の税務課に確認してください。
固定資産税を滞納した場合のリスク|延滞金・差し押さえの流れ
固定資産税を滞納すると、以下のリスクがあります。
延滞金の発生|年14.6%(1ヶ月以内は7.3%)の高い利率
納期限までに固定資産税を納めなかった場合、延滞金が課されます。
- 延滞金の利率: 年14.6%(納期限から1ヶ月以内は7.3%)
- 計算期間: 納期限の翌日から納付日まで
- 高い利率: 一般的な消費者金融よりも高い利率
延滞金は納税額に上乗せされ、滞納が長引くほど負担が増えます。
督促状・催告書の送付|納期限から20日以内に督促状
固定資産税を滞納すると、以下の流れで督促状・催告書が送付されます。
- 納期限: 固定資産税の納期限が到来
- 督促状: 納期限から20日以内に督促状が送付される
- 催告書: 督促状を無視すると、催告書(より強い支払い要求)が送付される
財産の差し押さえ|督促状から10日経過で差し押さえ可能
督促状の送付から10日が経過すると、法律上は財産の差し押さえが可能になります。
- 差し押さえ対象: 預貯金、給与、土地、建物、自動車など
- 競売・公売: 差し押さえた財産は競売・公売にかけられ、滞納税に充当される
- 裁判所の許可不要: 市町村は公的機関のため、裁判所から許可を取る必要がなく、迅速に差し押さえが実行される
重要: 自己破産や債務整理をしても税金は免除されないため、必ず納める必要があります。
払えない場合の対処法|自治体に相談して分納を検討
固定資産税が払えない場合は、早めに市町村の税務課に相談しましょう。
- 分納: 一括で払えない場合、分割払い(分納)が認められる場合がある
- 猶予: 災害・病気・事業の休廃止等の事由がある場合、納税の猶予が認められる場合がある
- 相談の重要性: 無視すると差し押さえに進むため、早めの相談が重要
市町村は分納に応じてくれることが多いため、払えない場合は必ず相談してください。
まとめ|固定資産税を正しく理解して計画的に納税しよう
固定資産税は、毎年1月1日に土地・建物を所有している人が納める地方税で、道路・学校・福祉などの公共サービスの費用に使われています。課税標準額×税率1.4%で計算され、住宅用地特例や新築住宅の減額措置により、実際の税額は大幅に軽減されます。
滞納すると延滞金が年14.6%の高い利率で発生し、財産が差し押さえられる可能性があるため、計画的に納税することが重要です。払えない場合は、早めに市町村の税務課に相談し、分納を検討しましょう。
2026年3月31日まで新築住宅の減額措置が延長されているため、これから住宅を購入する方は、軽減措置を活用して税負担を抑えることができます。詳細は総務省や国土交通省の公式サイトでご確認ください。
