固定資産税が下がらないという疑問
不動産を所有していると、毎年必ず支払う固定資産税。家が古くなったり、土地の評価額が下がったりしても、税額が下がらない、あるいは上がることがあります。このような疑問を感じている不動産所有者は少なくありません。
この記事では、固定資産税が下がらない理由、下がるケースと条件、減額する方法を、総務省や高崎市などの公式情報を元に解説します。
40〜60代の不動産所有者で、固定資産税の計算根拠を理解し、適正な税額かどうかを確認したいと考えている方に、実践的な情報を提供します。
この記事のポイント
- 固定資産税の評価額は3年に1度の「評価替え」で見直され、評価替え以外の年度は原則据え置き
- 家屋の評価額には最低残価率(20%)が設定されており、どれだけ古くなっても再建築費の2割以下には下がらない
- 土地の場合は「負担調整措置」により、評価額が下がっても課税標準額が徐々に調整されるため税額が下がりにくい
- 住宅用地の特例を適用すると固定資産税を最大1/6に軽減できる
- 評価額に不服がある場合は審査申出ができるが、期限(納税通知書到着後3ヶ月以内)がある
(1) 家が古くなっても税額が変わらない理由
「家が古くなったのに固定資産税が下がらない」という疑問は、多くの不動産所有者が抱えています。実は、家屋の固定資産税評価額には**最低残価率(20%)**が設定されており、どれだけ古くなっても再建築費の2割以下には下がりません。
また、近年の建築資材費の高騰により、評価替えで評価額が下がらない、または上がる場合もあります。これらの理由により、家が古くなっても税額が変わらないことがあります。
(2) 土地の評価額が下がったのに税額が上がるケース
土地の場合、「評価額が下がったのに税額が上がる」という現象が起こることがあります。これは「負担調整措置」により、評価額が下がっても課税標準額が徐々に調整されるためです。
柏市の公式解説によると、本来の評価額より低い税額で課税されていた土地は、段階的に課税標準額が引き上げられ、税額が上がることがあります。
固定資産税の仕組みと計算方法
固定資産税が下がらない理由を理解するために、まず固定資産税の基本的な仕組みを確認しましょう。
(1) 固定資産税とは(毎年1月1日時点の所有者に課される税金)
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地・家屋を所有する人に課される地方税です。市区町村が課税・徴収を行い、標準税率は1.4%です。
総務省によると、固定資産税は地方税の中でも市区町村の主要な財源であり、道路・学校・福祉などの公共サービスに充てられます。
(2) 固定資産税評価額と課税標準額の違い
固定資産税の計算には、「固定資産税評価額」と「課税標準額」という2つの概念があります。
- 固定資産税評価額: 固定資産税の計算基準となる不動産の評価額。土地は公示価格の7割程度が目安
- 課税標準額: 実際に税率を掛ける金額。評価額とは異なり、特例措置等が適用される
例えば、住宅用地の特例が適用されると、課税標準額は評価額の1/6(または1/3)に軽減されます。
(3) 計算式(課税標準額×税率1.4%)
固定資産税の計算式は以下のようになります。
固定資産税額 = 課税標準額 × 税率1.4%
例: 課税標準額1,000万円の土地の場合
- 固定資産税額 = 1,000万円 × 1.4% = 14万円
例: 住宅用地の特例適用後(200㎡以下)
- 評価額: 1,800万円
- 課税標準額: 1,800万円 × 1/6 = 300万円
- 固定資産税額: 300万円 × 1.4% = 4.2万円
住宅用地の特例により、固定資産税額が約1/6に軽減されます。
(4) 3年に1度の評価替え(2024年度実施、次回2027年度)
固定資産税の評価額は、3年に1度の評価替えで見直されます。直近は2024年度(令和6年度)に実施され、次回は2027年度(令和9年度)に実施される予定です。
評価替え以外の年度は、原則として評価額が据え置かれます。ただし、地価が大幅に下落した場合など、特別な事情がある場合は評価額を修正することがあります。
固定資産税が下がらない理由
固定資産税が下がらない主な理由を、家屋と土地に分けて解説します。
(1) 家屋の場合:最低残価率20%の影響
高崎市の公式解説によると、家屋の固定資産税評価額には**最低残価率(20%)**が設定されています。
これは、どれだけ古くなっても再建築費の2割以下には評価額が下がらないという仕組みです。そのため、築30年以上の古い家屋でも、評価額が一定水準で固定され、税額が下がらないことがあります。
例: 再建築費2,000万円の家屋の場合
- 最低残価率20%: 2,000万円 × 20% = 400万円
- 築年数が経過しても、評価額は400万円を下回らない
(2) 家屋の場合:建築資材費の高騰による再建築価格の上昇
近年の建築資材費の高騰により、家屋の再建築価格が上昇しています。このため、2024年度の評価替えでは、築年数が経過しても評価額が下がらない、または上がる場合があります。
松本市の公式解説によると、物価高・資材費高騰の影響で、家屋の税額が上がる可能性があるとされています。
(3) 土地の場合:負担調整措置による段階的な課税標準額引き上げ
土地の場合、「負担調整措置」により、評価額が下がっても税額が下がらない、または上がることがあります。
負担調整措置とは、評価額が急激に上がっても税負担が急増しないよう、課税標準額を段階的に調整する措置です。総務省の公式解説によると、この措置は令和6年4月1日〜令和9年3月31日まで3年間延長されています。
仕組み:
- 本来の評価額より低い税額で課税されていた土地は、段階的に課税標準額が引き上げられる
- 評価額が下がっても、課税標準額がまだ本来の水準に達していない場合、税額が上がることがある
(4) 評価替え以外の年度は原則据え置き
評価替えは3年に1度しか行われないため、評価替え以外の年度は原則として評価額が据え置かれます。そのため、家が古くなったり、土地の価値が下がったりしても、評価替えの年度までは税額が変わらないことがあります。
固定資産税が下がるケースと条件
固定資産税が下がるケースもあります。主なケースを確認しましょう。
(1) 家屋の場合:経年減価による評価額の減少(最低残価率20%まで)
家屋の評価額は、築年数の経過により経年減価が適用され、徐々に下がります。ただし、最低残価率(20%)までしか下がりません。
経年減価率の例(木造住宅の場合):
- 築5年: 約80%
- 築10年: 約60%
- 築20年: 約30%
- 築30年以上: 約20%(最低残価率)
築30年を超えると、評価額は再建築費の約20%で固定され、それ以上は下がりません。
(2) 土地の場合:評価額が下落した場合
土地の評価額は、地価の動向により変動します。地価が下落した場合、評価替えで評価額が下がることがあります。
ただし、負担調整措置により、評価額が下がっても課税標準額が徐々に調整されるため、税額がすぐに下がるとは限りません。
(3) 新築住宅の軽減措置終了後(3年・5年後に税額が上がる)
新築住宅には、一定期間、固定資産税が軽減される措置があります。
| 住宅タイプ | 軽減期間 | 軽減内容 |
|---|---|---|
| 一般住宅 | 3年間 | 固定資産税を1/2に軽減 |
| マンション等(3階建以上の耐火・準耐火建築物) | 5年間 | 固定資産税を1/2に軽減 |
| 長期優良住宅 | 5年間(マンションは7年間) | 固定資産税を1/2に軽減 |
この軽減措置が終了すると、税額が約2倍に上がります。「税額が上がった」と感じる原因の一つです。
固定資産税を減額する方法と対処法
固定資産税を減額する方法と、評価額に不服がある場合の対処法を解説します。
(1) 住宅用地の特例(200㎡以下で1/6に軽減)
住宅用の土地に対しては、住宅用地の特例が適用され、固定資産税が大幅に軽減されます。
| 面積 | 軽減率 |
|---|---|
| 200㎡以下(小規模住宅用地) | 固定資産税を1/6に軽減 |
| 200㎡超(一般住宅用地) | 固定資産税を1/3に軽減 |
HOME'Sによると、この特例は自動的に適用される場合が多いですが、自分で申告が必要な場合もあります。詳細は市区町村の固定資産税担当課に確認してください。
(2) 新築住宅の軽減措置(一般住宅3年、長期優良住宅5年)
新築住宅の場合、一定期間、固定資産税が1/2に軽減されます。この措置は2026年3月31日まで2年間延長されています。
適用条件:
- 床面積が50㎡以上280㎡以下(一戸建て以外の賃貸住宅は40㎡以上)
- 2026年3月31日までに新築された住宅
(3) 評価額に不服がある場合の審査申出(期限:納税通知書到着後3ヶ月以内)
固定資産税の評価額に不服がある場合は、審査の申出ができます。
手続き:
- 評価替え年度の納税通知書到着後3ヶ月以内に申出
- 市区町村の「固定資産評価審査委員会」に審査請求書を提出
- 委員会が評価額の妥当性を審査
注意点:
- 期限(納税通知書到着後3ヶ月以内)を過ぎると申出できない
- 審査の申出ができるのは評価替え年度のみ(直近は2024年度、次回は2027年度)
(4) 軽減措置の申告(自分で申告しないと適用されない場合あり)
固定資産税の軽減措置には、自分で申告しないと適用されないものがあります。
申告が必要な主な軽減措置:
- 住宅用地の特例(家屋を取り壊した場合など)
- 新築住宅の軽減措置(一部の自治体)
- 耐震改修・バリアフリー改修の軽減措置
詳細は市区町村の固定資産税担当課に確認してください。
まとめ:固定資産税の適正な税額確認と相談先
固定資産税が下がらない理由は、最低残価率、建築資材費の高騰、負担調整措置など、複数の要因が関係しています。適正な税額を確認し、疑問がある場合は専門家に相談することが重要です。
(1) 評価替えの年度を確認する(次回2027年度)
評価替えは3年に1度行われます。直近は2024年度(令和6年度)に実施され、次回は2027年度(令和9年度)に実施される予定です。
評価替えの年度に評価額が変更されることが多いため、納税通知書を確認し、評価額に不服がある場合は審査の申出を検討してください。
(2) 軽減措置の適用状況を確認する
住宅用地の特例や新築住宅の軽減措置など、固定資産税の軽減措置が正しく適用されているか確認しましょう。納税通知書に記載されている課税標準額と評価額を比較し、軽減措置が適用されているか確認できます。
(3) 疑問がある場合の相談先(市区町村の固定資産税担当課)
固定資産税の評価額や税額に疑問がある場合は、以下に相談してください。
- 市区町村の固定資産税担当課: 評価額の根拠、軽減措置の適用状況を確認できる
- 固定資産評価審査委員会: 評価額に不服がある場合の審査申出窓口
(4) 税理士への相談推奨
固定資産税の計算は複雑であり、特例措置や負担調整措置の適用状況を正確に把握するには専門知識が必要です。疑問がある場合は、税理士に相談することを推奨します。
税理士は、以下のサポートを提供できます。
- 固定資産税の計算根拠の確認
- 軽減措置の適用可否の判断
- 評価額に不服がある場合の審査申出のサポート
総務省の固定資産税公式ページや国土交通省の税制改正概要も併せてご確認ください。
信頼できる専門家に相談しながら、適正な税額を確認しましょう。
