ノンバンクの住宅ローンとは
住宅ローンを検討する際、「銀行の審査に通るか不安」「自営業だから審査が厳しそう」と悩む方は少なくありません。銀行の住宅ローン審査に通らなかった場合、ノンバンクの住宅ローンが選択肢になりますが、「金利が高い」「デメリットがあるのでは」と不安に感じる方もいます。
この記事では、ノンバンクの住宅ローンの仕組み、銀行との違い、メリット・デメリット、向いている人を、具体的なデータとともに解説します。ノンバンクの特徴を理解し、自分の状況に合った住宅ローンを選ぶための参考にしてください。
この記事のポイント
- ノンバンクは銀行法ではなく貸金業法の適用を受け、預金業務は行わず融資業務のみを行う
- 審査が柔軟で自営業者・個人事業主でも通りやすいが、金利は銀行より0.8-1.3%程度高い
- 主にフラット35(全期間固定金利1.5-2.0%程度)を取り扱い、変動金利の選択肢は少ない
- 審査スピードが速く、数日で融資完了のケースもある
- 金利差1%で借入額3,000万円・35年の場合、総返済額が約840万円変わる
(1) ノンバンクの定義と法的位置づけ
ノンバンクとは、銀行法ではなく貸金業法の適用を受け、預金業務は行わず融資業務のみを行う金融機関です。消費者金融会社、クレジットカード会社、信販会社等が該当します。
みずほ銀行によると、ノンバンクと銀行の大きな違いは、適用される法律と預金業務の有無です。
ノンバンクと銀行の法的位置づけ:
| 項目 | 銀行 | ノンバンク |
|---|---|---|
| 適用法律 | 銀行法 | 貸金業法 |
| 預金業務 | あり | なし |
| 融資業務 | あり | あり |
| 監督官庁 | 金融庁 | 金融庁 |
ノンバンクは預金業務を行わないため、融資の資金は銀行からの借入や社債発行等で調達します。そのため、資金調達コストが高く、住宅ローン金利も銀行より高めに設定される傾向にあります。
(2) ノンバンクが取り扱う主な商品:フラット35
ノンバンクが主に取り扱う住宅ローン商品は、フラット35です。フラット35は、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利型の住宅ローンで、最長35年間金利が固定されます。
セゾンファンデックスによると、ノンバンクの住宅ローンは主にフラット35を取り扱っており、変動金利や短期固定金利等の商品は少ないとされています。
フラット35の特徴:
- 全期間固定金利(金利上昇リスクがない)
- 団体信用生命保険(団信)への加入が任意
- 保証料・保証人不要
- 融資手数料は金融機関により異なる(借入額の1-2%程度)
ノンバンクと銀行の住宅ローンの違い
(1) 法律と預金業務の有無(銀行法と貸金業法の違い)
銀行は銀行法の適用を受け、預金業務と融資業務の両方を行います。ノンバンクは貸金業法の適用を受け、融資業務のみを行います。
この違いにより、以下のような特徴が生まれます。
銀行:
- 預金で集めた資金を融資に回すため、資金調達コストが低い
- 住宅ローン金利が低い(変動金利0.6-0.7%程度)
- 審査基準が厳格(保証会社を通した審査)
ノンバンク:
- 銀行からの借入や社債発行で資金を調達するため、資金調達コストが高い
- 住宅ローン金利が高い(フラット35で1.5-2.0%程度)
- 審査基準が柔軟(自社審査)
(2) 審査基準の違い:柔軟性と保証会社の有無
銀行の住宅ローンは、保証会社を通した審査が行われます。保証会社は、住宅ローン利用者が返済できなくなった場合に代位弁済を行う会社です。銀行はリスクを保証会社に移転するため、審査基準が厳格になります。
マイナビニュースによると、ノンバンクは保証会社を通さず自社で審査を行うため、柔軟性の高い審査が可能とされています。
審査基準の違い:
| 項目 | 銀行 | ノンバンク |
|---|---|---|
| 保証会社 | あり | なし(自社審査) |
| 審査の柔軟性 | 厳格 | 柔軟 |
| 自営業者 | 審査が厳しい | 審査が通りやすい |
| 勤続年数 | 3年以上が目安 | 柔軟に対応 |
| 転職歴 | 不利になる場合も | 柔軟に対応 |
ノンバンクは貸し倒れリスクを自社で負うため、金利を高めに設定することでリスクに備えています。
(3) 金利の違い:銀行0.6-0.7%、ノンバンク1.5-2.0%
2025年時点の住宅ローン金利を比較すると、銀行とノンバンクには大きな差があります。
金利の比較:
| 金融機関 | 金利タイプ | 金利相場 |
|---|---|---|
| メガバンク | 変動金利 | 0.6-0.7% |
| メガバンク | 固定10年 | 1.9-2.3% |
| ノンバンク | フラット35 | 1.5-2.0% |
ノンバンクのフラット35は、銀行の変動金利より0.8-1.3%程度高くなっています。ただし、フラット35は全期間固定金利のため、金利上昇リスクを避けたい人には適しています。
(4) 融資スピードの違い:数日〜数週間
セゾンファンデックスによると、ノンバンクは審査スピードが速く、早いところでは申込みから融資まで数日で完了するケースもあるとされています。
融資スピードの比較:
| 金融機関 | 審査期間 | 融資までの期間 |
|---|---|---|
| メガバンク | 1-2週間 | 2-4週間 |
| ノンバンク | 数日〜1週間 | 1-2週間 |
ノンバンクは保証会社を通さず自社で審査を行うため、審査期間が短くなります。早期に融資を受けたい人にとっては大きなメリットです。
ノンバンク住宅ローンのメリット
(1) 審査の柔軟性:自営業者・個人事業主でも通りやすい
ノンバンクの住宅ローンは、銀行と比較して審査が柔軟です。マイベストによると、自営業者、個人事業主、非正規雇用者でも審査に通りやすい傾向にあるとされています。
審査が通りやすいケース:
- 自営業者・個人事業主(収入の安定性が証明しにくい)
- 非正規雇用者(契約社員、派遣社員等)
- 勤続年数が短い人(転職したばかり等)
- 年齢が高い人(銀行は年齢制限が厳しい場合がある)
- 再建築不可物件を購入する人
銀行の審査に落ちた場合でも、ノンバンクなら通過できる可能性があります。
(2) 審査スピードが速い:数日で融資完了のケースも
ノンバンクは審査スピードが速く、早期に融資を受けられるのが大きなメリットです。
審査スピードが速い理由:
- 保証会社を通さず自社で審査
- 審査基準がシンプル
- オンライン審査に対応している場合も
急いで住宅を購入したい人、競売物件の購入等、スピードが重視される場合に適しています。
(3) 口座開設不要:既存の銀行口座を引き落としに指定可能
セゾンファンデックスによると、ノンバンクは預貯金の取扱業務を行っていないため、口座開設不要で既存の銀行口座を引き落とし口座に指定できるとされています。
メリット:
- 既存の銀行口座をそのまま使える
- 口座開設の手間がかからない
- 複数の金融機関で口座を管理する必要がない
(4) 再建築不可物件でも対応可能
銀行では融資が難しい再建築不可物件でも、ノンバンクなら住宅ローンを組める可能性があります。
再建築不可物件とは:
- 都市計画法や建築基準法により、建て替えができない物件
- 接道義務を満たさない物件(道路に2m以上接していない)
再建築不可物件は資産価値が低く、銀行では融資が難しいですが、ノンバンクは柔軟に対応する場合があります。
ノンバンク住宅ローンのデメリット
(1) 金利が高い:銀行より0.8-1.3%程度高い
ノンバンクの住宅ローンの最大のデメリットは、金利が高いことです。銀行の変動金利0.6-0.7%に対し、ノンバンクのフラット35は1.5-2.0%程度と、0.8-1.3%程度高くなっています。
金利が高い理由:
- 資金調達コストが高い(銀行からの借入や社債発行)
- 貸し倒れリスクを自社で負うため、リスク分を金利に上乗せ
- 保証会社を通さないため、リスクヘッジとして金利を高めに設定
(2) 商品の選択肢が少ない:主にフラット35のみ
ノンバンクの住宅ローンは、主にフラット35を取り扱っており、変動金利や短期固定金利等の商品は少ないです。
商品の選択肢の違い:
| 金融機関 | 変動金利 | 固定10年 | 全期間固定 |
|---|---|---|---|
| 銀行 | ◎ | ◎ | △ |
| ノンバンク | △ | △ | ◎(フラット35) |
変動金利を希望する人にとっては、選択肢が少ないというデメリットがあります。
(3) 返済総額が大きくなる:金利差による長期的な影響
金利が高いため、長期的な返済総額が銀行より大きくなります。借入額3,000万円、返済期間35年の場合、金利差1%で総返済額が約840万円変わります。
返済総額のシミュレーション(借入額3,000万円、返済期間35年):
| 金利タイプ | 金利 | 月々返済額 | 総返済額 | 銀行変動金利との差額 |
|---|---|---|---|---|
| 銀行変動金利 | 0.6% | 約78,000円 | 約3,276万円 | - |
| ノンバンクフラット35 | 1.5% | 約92,000円 | 約3,864万円 | +約588万円 |
| ノンバンクフラット35 | 2.0% | 約100,000円 | 約4,200万円 | +約924万円 |
金利差による返済総額の違いを事前にシミュレーションし、無理のない返済計画を立てることが重要です。
(4) 借り換えの難しさ:銀行への借り換えが難しい場合も
ノンバンクの住宅ローンを利用した後、銀行の住宅ローンへ借り換えることが難しい場合があります。
借り換えが難しい理由:
- ノンバンクで審査が通った理由(自営業、属性の問題等)が改善されていない
- 銀行は借り換えでも新規と同様の審査を行う
- 物件の資産価値が低い場合(再建築不可物件等)
借り換えを前提に考えている場合は、将来的な見通しを慎重に検討してください。
ノンバンク住宅ローンが向いている人
(1) 自営業者・個人事業主・非正規雇用者
マイナビニュースによると、自営業者・個人事業主・非正規雇用者は、ノンバンクの住宅ローンに向いているとされています。
向いている理由:
- 収入の安定性を証明しにくい自営業者でも審査が通りやすい
- 個人事業主の確定申告書を柔軟に評価
- 非正規雇用者でも勤続年数に関わらず審査対象
(2) 銀行の審査に不安がある人(勤続年数不足、転職歴等)
銀行の審査に不安がある人にも、ノンバンクの住宅ローンが適しています。
審査に不安がある例:
- 勤続年数が3年未満(銀行は3年以上が目安)
- 最近転職した(転職歴が多い)
- 年齢が高い(銀行は年齢制限が厳しい場合がある)
- 過去に延滞歴がある(信用情報に傷がある)
(3) 早期に融資を受けたい人
審査スピードが速いため、早期に融資を受けたい人に適しています。
早期融資が必要なケース:
- 競売物件の購入(入札期限が迫っている)
- 好条件の物件が見つかった(他の購入希望者に先を越されたくない)
- 住み替えで早期に資金が必要
(4) 全期間固定金利を希望する人
フラット35は全期間固定金利のため、金利上昇リスクを避けたい人に適しています。
向いている人:
- 金利上昇リスクを避けたい
- 返済計画を確定したい
- 長期間(20年以上)の返済を予定している
まとめ:ノンバンク住宅ローンを検討する際の注意点
ノンバンクの住宅ローンは、審査が柔軟で自営業者・個人事業主でも通りやすいという大きなメリットがあります。審査スピードが速く、数日で融資完了のケースもあるため、早期に融資を受けたい人にも適しています。
一方で、金利は銀行より0.8-1.3%程度高く、借入額3,000万円・35年の場合、金利差1%で総返済額が約840万円変わります。主にフラット35を取り扱っており、変動金利の選択肢は少ないため、自分のニーズに合った商品があるか事前に確認することが重要です。
(1) 金利差による返済総額をシミュレーションする
ノンバンクの住宅ローンを利用する場合、金利差による返済総額をシミュレーションすることが重要です。
シミュレーションで確認すべき項目:
- 月々の返済額
- 総返済額
- 銀行の変動金利との差額
- 金利上昇時の返済額(変動金利の場合)
多くの金融機関が無料のシミュレーションツールを提供しているため、活用してください。
(2) 複数のノンバンク・銀行を比較する
住宅ローンを選ぶ際は、複数のノンバンク・銀行を比較することが重要です。
比較すべき項目:
- 金利(固定金利、変動金利)
- 融資手数料(借入額の1-2%程度)
- 審査基準(勤続年数、年齢制限等)
- 融資スピード(審査期間、融資までの期間)
- 団体信用生命保険の有無(フラット35は任意)
(3) 専門家への相談のすすめ
住宅ローンの選択は、個人の返済能力・リスク許容度により適切な判断が異なります。詳細はファイナンシャルプランナー(FP)、住宅ローンアドバイザー、宅地建物取引士等の専門家にご相談ください。返済シミュレーション、ライフプランの作成、最適な金利タイプの選択については、専門家に相談することを推奨します。
