住宅ローン審査に通らない人の悩みと現状
住宅ローン審査に申し込んだものの、通らなかったという経験をお持ちの方は少なくありません。「年収は十分あるはずなのに」「他のローンもないのに」と疑問を抱く方もいるでしょう。
この記事では、住宅ローン審査に通らない主な理由11選と、審査に通るための具体的な改善ポイントを、国土交通省の公式調査データや住宅金融支援機構の審査基準を元に解説します。
審査に落ちた方も、これから申し込む方も、自分の状況を客観的に把握し、適切な対策を立てることで、審査通過の可能性を高めることができます。
この記事のポイント
- 住宅ローン審査では完済時年齢(98.5%)、健康状態(96.6%)、年収(94.0%)、勤続年数(93.6%)が主要な審査項目
- 年収300万円以上、返済負担率30-35%以内が目安だが、金融機関により基準は異なる
- 信用情報の問題、健康状態、他のローンの多さなどが審査落ちの主な理由
- 頭金を増やす、他のローンを完済する、複数の金融機関で審査を受けるなどの対策が有効
- フラット35やワイド団信など、審査基準が柔軟な選択肢もある
住宅ローン審査の基準(金融機関が重視する項目)
住宅ローン審査では、金融機関がどのような項目を重視しているのかを知ることが重要です。国土交通省の「令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」(2024年3月)によると、全国1,223の金融機関を対象とした調査で、以下の項目が特に重視されていることが明らかになっています。
(1) 完済時年齢(98.5%の金融機関が重視)
住宅ローンを完済する時点の年齢です。多くの金融機関では80歳未満を条件としています。借入時の年齢が高いと、完済時年齢が基準を超えてしまう可能性があります。
(2) 健康状態(96.6%が重視)
団体信用生命保険(団信)への加入が必須条件のため、健康状態が審査に大きく影響します。団信とは、住宅ローン契約者が死亡または高度障害になった場合に、保険金で住宅ローン残債を完済する生命保険です。
(3) 年収(94.0%が重視)
一般的に年収300万円以上が住宅ローン借入の目安とされていますが、金融機関により基準は異なります。年収の6-7倍が借入額の目安と言われていますが、これも金融機関や個人の状況により変動します。
(4) 勤続年数(93.6%が重視)
安定した収入があることを示す指標として、勤続年数1年以上を目安とする金融機関が多いです。転職直後や独立直後は審査に不利になることがあります。
(5) その他の審査項目(担保評価、借入時年齢等)
担保評価(91.8%)、借入時年齢(90.0%)なども重要な審査項目です。物件の評価額が低い場合や、借入時の年齢が高い場合は審査に影響します。
住宅ローン審査に通らない主な理由11選
ここでは、住宅ローン審査に通らない主な理由を11個挙げて詳しく解説します。
(1) 年収が基準に満たない(目安300万円以上)
年収300万円未満の場合、多くの金融機関で審査が厳しくなります。ただし、年収が高くても他の理由で落ちることもあるため、年収だけでは判断できません。
(2) 返済負担率が高い(30-35%超)
返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合です。審査基準は通常30-35%ですが、無理なく返済できるのは20-25%程度と言われています。住宅金融支援機構のフラット35では、年収400万円未満で30%以下、年収400万円以上で35%以下が基準です。
(3) 信用情報に問題がある(延滞・債務整理等)
信用情報機関(CIC、JICC、KSC等)に金融事故(自己破産、債務整理、長期延滞等)の登録があると、審査通過は極めて困難です。クレジットカードやローンの延滞履歴も審査に影響します。
(4) 健康状態が団信加入の要件を満たさない
健康上の理由で通常の団信に加入できない場合、審査に通らないことがあります。ただし、ワイド団信(引受基準緩和型団信)という選択肢もあります(後述)。
(5) 勤続年数が短い(目安1年以上)
勤続年数が1年未満の場合、収入の安定性が不十分と判断されることがあります。転職直後は審査に不利です。
(6) 他のローン・借入が多い
カードローン、自動車ローン、教育ローン等の既存借入が多いと、返済負担率が高くなり審査に不利です。
(7) スーパーホワイト(クレジット履歴なし)
スーパーホワイトとは、クレジットカードやローンの利用履歴が全くない状態です。信用情報がないため、かえって審査に通りにくくなることがあります。
(8) 完済時年齢が高い(80歳超)
借入時の年齢が高く、完済時年齢が80歳を超える場合、審査に通らないことがあります。
(9) 物件の担保評価が低い
購入する物件の評価額が低い場合、担保価値が不十分と判断され審査に不利です。
(10) 転職・独立直後
事前審査通過後から本審査までの間に転職すると、審査に落ちる可能性が高いです。また、独立直後は収入の安定性が証明しにくいため審査が厳しくなります。
(11) 個人事業主・非正規雇用
個人事業主や非正規雇用(派遣社員、契約社員等)の場合、収入の安定性が懸念され審査が厳しくなることがあります。ただし、近年は非正規雇用者への審査が以前より柔軟になってきており、安定収入があれば通る可能性があります(2024-2025年)。
審査に通るための具体的な改善ポイント
住宅ローン審査に落ちた、または不安がある場合、以下の対策を検討してください。
(1) 頭金を増やして借入額を減らす
頭金を増やすことで借入額が減り、返済負担率が下がります。これにより審査に通りやすくなります。
(2) 他のローンを完済して返済負担率を改善
カードローンや自動車ローン等を完済することで、返済負担率を改善できます。特に金利の高いカードローンの完済は効果的です。
(3) 信用情報を事前に確認(CIC、JICC等)
信用情報機関(CIC、JICC、KSC)に開示請求を行い、自分の信用情報を確認してください。問題があれば解決してから申し込むことで、審査通過の可能性が高まります。
(4) 複数の金融機関で事前審査を受ける
審査基準は金融機関ごとに異なるため、複数の金融機関に事前審査を申し込んで比較することで、通りやすい金融機関を見つけられます。
(5) ペアローンや親子リレーローンで収入合算
ペアローン(配偶者と収入合算)や親子リレーローン(親子で収入合算)を活用することで、借入可能額を増やせます。
審査に通りやすい代替手段と選択肢
通常の住宅ローン審査が難しい場合、以下の代替手段を検討してください。
(1) フラット35(審査基準が明確・柔軟)
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する長期固定金利住宅ローンです。審査基準が明確で、民間ローンより柔軟な面があります。
フラット35の主な要件
- 申込時年齢が70歳未満
- 年収400万円未満で返済比率30%以下、年収400万円以上で35%以下
- 住宅金融支援機構が定めた技術基準を満たす住宅が対象
(2) ワイド団信(健康状態に不安がある場合)
ワイド団信は、健康上の理由で通常の団信に加入できない人向けの引受基準緩和型団信です。金利が0.2-0.3%程度上乗せされますが、健康状態に不安がある場合でも審査通過の可能性があります。
(3) ペアローン(配偶者と収入合算)
配偶者と収入を合算することで、借入可能額を増やせます。夫婦それぞれが債務者となり、2本のローンを組む形です。
(4) 親子リレーローン(親子で収入合算)
親子で収入を合算し、返済を引き継ぐ形のローンです。完済時年齢の問題を解決できる場合があります。
まとめ:住宅ローン審査で失敗しないためのチェックリスト
住宅ローン審査に通らない理由は、年収、健康状態、信用情報、返済負担率など多岐にわたります。国土交通省の調査によると、完済時年齢、健康状態、年収、勤続年数が主要な審査項目です。
審査に落ちた場合でも、頭金を増やす、他のローンを完済する、複数の金融機関で審査を受ける、フラット35など審査基準が異なる商品を検討するなどの対策があります。
信頼できるファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーに相談しながら、自分の状況に合った住宅ローンを見つけましょう。審査基準は金融機関により異なるため、諦めずに複数の選択肢を検討することが重要です。
