なぜ住宅ローン審査に通らないのか?基本を理解しよう
住宅購入を検討する際、住宅ローン審査は避けて通れない重要なステップです。年収や勤続年数に問題がないと思っていても、審査に落ちてしまうケースは少なくありません。
この記事では、住宅ローン審査に通らない意外な理由、審査基準の全体像、属性別の対策、再申請戦略を解説します。
住宅ローン審査に不安を感じている方が、審査通過率を上げる具体的な対策を理解できるようになります。
この記事のポイント
- 初回申込者の14.3%が事前審査で不承認、6.9%が本審査で不承認(調査データ)
- 審査は100以上の項目を総合的に評価(完済時年齢98.5%、健康状態96.6%、年収94.0%、勤続年数93.6%の金融機関が重視)
- 意外な落ちる理由:スーパーホワイト、携帯電話の分割払い延滞、クレジットカード未使用枠、審査中の転職、団信加入不可
- 年収の7倍までは審査通過可能、8倍が危険ライン、返済負担率は30-35%以内
- 審査落ち後の対策:信用情報の確認(CIC、JICC、KSC)、不要カードの解約、複数金融機関への申請
(1) 事前審査の14.3%、本審査の6.9%が不承認(調査データ)
住宅ローン審査は誰もが通るわけではありません。
審査の不承認率:
- 事前審査(仮審査):初回申込者の14.3%が全部または一部の金融機関で不承認
- 本審査(正式審査):6.9%が不承認
約7人に1人が事前審査で、約14人に1人が本審査で不承認となっているため、審査基準を正しく理解し、対策を立てることが重要です。
(2) 審査は100以上の項目を総合的に評価
住宅ローン審査は年収だけでなく、100以上の項目を総合的に評価します。
審査項目の例:
- 本人属性:年収、勤続年数、雇用形態、年齢
- 信用情報:過去のローン・クレジットカード利用履歴、延滞の有無
- 健康状態:団体信用生命保険(団信)への加入可否
- 物件情報:担保評価、所在地、築年数
- その他:借入額、返済負担率、他の借入状況
住宅ローン審査の基準と全体像
(1) 審査の重要項目(完済時年齢98.5%、健康状態96.6%、年収94.0%、勤続年数93.6%)
SBI新生銀行の調査によると、金融機関が審査で重視する項目は以下の通りです。
審査で重視される項目(金融機関の割合):
| 項目 | 重視する金融機関の割合 |
|---|---|
| 完済時年齢 | 98.5% |
| 健康状態 | 96.6% |
| 年収 | 94.0% |
| 勤続年数 | 93.6% |
| 雇用形態 | 88.7% |
| 返済負担率 | 87.5% |
| 信用情報 | 85.0%以上 |
完済時年齢は平均80歳が上限で、80歳を超える場合は審査が通りにくくなります。
(2) 返済負担率の基準(30-35%以内、無理なく返済できる目安は20-25%)
返済負担率(返済比率)は、年収に占める年間返済額の割合です。
返済負担率の目安:
| 年収 | 金融機関の審査基準 | 無理なく返済できる目安 |
|---|---|---|
| 400万円未満 | 30%以下 | 20%以下 |
| 400万円以上 | 35%以下 | 20-25% |
計算例(年収500万円の場合):
- 審査基準(35%):年間175万円(月約14.6万円)まで
- 無理なく返済できる目安(25%):年間125万円(月約10.4万円)
返済負担率が35%を超えると審査が通りにくくなります。
(3) 借入額の目安(年収の5-7倍、8倍が危険ライン)
ダイヤモンド不動産研究所によると、住宅ローンの借入額は年収倍率で判断されます。
年収倍率の目安:
| 年収倍率 | 審査通過の可能性 | 備考 |
|---|---|---|
| 5倍以下 | 高い | 安全圏 |
| 5-7倍 | 通常通過可能 | 一般的な範囲 |
| 7-8倍 | 通らない可能性あり | 審査上限 |
| 8倍以上 | 危険ライン | 審査がほぼ通らない |
例(年収500万円の場合):
- 5倍:2,500万円(安全圏)
- 7倍:3,500万円(審査上限)
- 8倍:4,000万円(危険ライン)
意外と知られていない審査に落ちる理由11選
(1) スーパーホワイト(信用履歴なし)が不利になる
「スーパーホワイト」とは、クレジットカードやローンを一切利用せず、信用履歴がない状態です。
スーパーホワイトが不利な理由:
- 金融機関から「過去に金融事故を起こして記録が消えた」と疑われる可能性
- 信用情報機関の事故記録は5-10年で消えるため、30-40代でスーパーホワイトだと不審に見られる
リクルートの専門家解説によると、クレジットカードを1枚作成し、毎月少額でも利用して信用履歴を作ることが推奨されます。
(2) 携帯電話の分割払い延滞(信用契約のため審査に影響)
携帯電話の機種代金の分割払いは信用契約のため、支払い遅延があると信用情報に記録されます。
携帯電話延滞の影響:
- 信用情報機関(CIC、JICC)に延滞記録が登録される
- 61日以上の延滞は「異動情報(事故情報)」として5年間記録が残る
- 住宅ローン審査で不利になる
携帯電話料金の支払い遅延は軽視されがちですが、住宅ローン審査では重大な影響があります。
(3) クレジットカード・カードローンの未使用枠が借入可能額に影響
使っていないクレジットカードやカードローンの「未使用枠」も、借入可能額としてカウントされます。
未使用枠の影響:
- クレジットカードのキャッシング枠100万円 → 実際に借りていなくても「借入可能額100万円」として審査
- カードローンの限度額50万円 → 同様にカウント
不要なクレジットカード・カードローンは、住宅ローン審査前に解約することが推奨されます。
(4) 審査中の転職(事前審査通過後でも本審査で落ちる)
事前審査(仮審査)通過後でも、本審査までに転職すると、年収・雇用条件が変わるため本審査で落ちる可能性があります。
審査中の転職の影響:
- 勤続年数がリセットされる(多くの金融機関は勤続1年以上を要件とする)
- 年収が変わる(転職先での年収が不明確)
- 雇用形態が変わる(正社員→契約社員等)
住宅ローン審査中の転職は避け、転職は審査完了後に行ってください。
(5) 団信に健康上の理由で加入できない(民間ローンは原則不可)
団体信用生命保険(団信)に健康上の理由で加入できないと、民間銀行の住宅ローンは原則利用できません。
団信加入に影響する病気の例:
- 心疾患(狭心症、心筋梗塞等)
- 脳血管疾患(脳梗塞、脳出血等)
- 精神疾患(うつ病、統合失調症等)
- がん(告知後3-5年以内)
- 高血圧・糖尿病(重度の場合)
PayPay銀行の解説によると、持病がある場合は「ワイド団信」(金利0.2-0.3%高)や、団信任意の「フラット35」という選択肢があります。
(6) 物件の担保評価不足(希望融資額に届かない)
購入希望物件の担保評価額が低いと、希望する融資額に届かない場合があります。
担保評価不足の原因:
- 築年数が古い(特に木造30年超、マンション40年超)
- 再建築不可物件(接道義務を満たさない等)
- 市場価値が低い立地(過疎地域等)
物件購入前に、金融機関や不動産会社に担保評価額の目安を確認することが推奨されます。
属性別の審査対策と通過のポイント
(1) 正社員の対策(勤続年数・信用情報の確認)
正社員は最も審査が通りやすい属性ですが、以下の点を確認してください。
確認事項:
- 勤続年数:1年以上が目安(3年以上が望ましい)
- 信用情報:延滞がないか、CIC・JICC・KSCで開示請求
- 年収:源泉徴収票で正確な年収を把握
- 返済負担率:他の借入を含めて30-35%以内
(2) 個人事業主・フリーランスの対策(確定申告3期分、事業の安定性証明)
個人事業主・フリーランスは審査が厳しめですが、対策次第で通過可能です。
対策:
- 確定申告書3期分を提出(直近3年の平均年収で審査)
- 事業の安定性を証明(継続的な取引先、契約書等)
- 頭金を多めに用意(2-3割)
- 審査が柔軟なフラット35を検討
(3) 契約社員・派遣社員の対策(フラット35の活用)
契約社員・派遣社員は正社員より審査が厳しいですが、フラット35は比較的審査が通りやすいです。
対策:
- 勤続年数を延ばす(2年以上が望ましい)
- 契約更新実績を示す
- フラット35を優先的に検討(雇用形態を重視しない)
(4) 持病がある場合の対策(ワイド団信、フラット35)
持病がある場合は、通常の団信に加入できなくても選択肢があります。
対策:
- ワイド団信を検討(引受基準緩和型、金利0.2-0.3%高)
- フラット35を検討(団信任意、加入しなくても利用可能)
- 生命保険でローン残債をカバーする方法も検討
審査に落ちた後の再申請戦略
(1) 信用情報機関(CIC、JICC、KSC)で開示請求して確認
審査に落ちた原因を特定するため、信用情報機関で自分の信用情報を開示請求してください。
3つの信用情報機関:
| 機関 | 主な加盟業種 | 開示方法 | 手数料 |
|---|---|---|---|
| CIC | クレジットカード会社 | インターネット、郵送、窓口 | 500-1,000円 |
| JICC | 消費者金融 | スマホアプリ、郵送、窓口 | 500-1,000円 |
| KSC(全国銀行個人信用情報センター) | 銀行 | 郵送のみ | 1,000円 |
延滞記録や事故情報がないか確認し、問題があれば解消してから再申請してください。
(2) 不要なクレジットカード・カードローンの解約
クレジットカード・カードローンの未使用枠が審査に悪影響を及ぼしている可能性があります。
対策:
- 使っていないクレジットカードを解約
- カードローンの限度額を減額または解約
- キャッシング枠を0円に設定
(3) 返済負担率を下げる(借入額の見直し、頭金の増額)
返済負担率が35%を超えている場合、以下の方法で引き下げます。
対策:
- 借入額を減らす(物件価格を下げる、頭金を増やす)
- 他の借入を完済する(自動車ローン、教育ローン等)
- 返済期間を延ばす(月々の返済額を減らす)
(4) 複数の金融機関に事前審査を申し込む
審査基準は金融機関により異なるため、複数の金融機関に事前審査を申し込むことが推奨されます。
対策:
- 3-5つの金融機関に並行して事前審査を申し込む
- メガバンク、地方銀行、信用金庫、フラット35等、多様な選択肢を検討
- 不動産会社や住宅ローンアドバイザーに相談
(5) 住宅ローンアドバイザー・FPへの相談
審査に落ちた原因がわからない場合、専門家に相談することが有効です。
専門家の種類:
- 住宅ローンアドバイザー(金融機関、不動産会社)
- ファイナンシャルプランナー(FP)
- 住宅金融支援機構(フラット35の相談窓口)
専門家は審査基準を熟知しており、具体的な対策をアドバイスしてくれます。
まとめ:複数の金融機関に相談し、専門家のサポートを活用しよう
住宅ローン審査に通らない理由は、年収や勤続年数だけでなく、スーパーホワイト、携帯電話の分割払い延滞、クレジットカード未使用枠、審査中の転職、団信加入不可など、意外なところにあることが多いです。
審査は100以上の項目を総合的に評価し、完済時年齢98.5%、健康状態96.6%、年収94.0%、勤続年数93.6%の金融機関が重視しています。年収の7倍までは審査通過可能ですが、8倍が危険ライン、返済負担率は30-35%以内に抑えることが重要です。
審査に落ちた場合は、信用情報機関(CIC、JICC、KSC)で開示請求して原因を特定し、不要なクレジットカードの解約、返済負担率の引き下げ、複数の金融機関への申請を行ってください。
審査基準は金融機関により異なるため、複数の金融機関に相談し、住宅ローンアドバイザーやファイナンシャルプランナーのサポートを活用することが成功の鍵です。
