団信が住宅ローンに必須である理由
住宅ローンを検討する際、「団体信用生命保険(団信)は本当に必要なのか」「どの保障を選べばいいのか」と悩む方は多いのではないでしょうか。
この記事では、団信の基本的な仕組み、保障の種類(一般団信・がん保障・三大疾病特約)、加入条件と告知事項、選び方のポイントを解説します。住宅金融支援機構の公式情報を元に、家族構成や健康状態に応じた団信選びができるようになります。
この記事のポイント
- 団信は住宅ローン契約者が死亡・高度障害になった場合、残債が保険金で完済される保険
- 一般団信の保険料は通常住宅ローン金利に含まれ、別途負担は不要
- 三大疾病保障特約は金利0.2〜0.25%上乗せ、がん保障は0.1%上乗せが目安
- ワイド団信は持病がある方向けで金利0.2〜0.3%上乗せ
- フラット35は団信なしでも利用可能(金利-0.2%)
団体信用生命保険の仕組みと基礎知識
死亡・高度障害で残債がゼロになる仕組み
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローン契約者が返済期間中に死亡または高度障害状態になった場合、保険金でローン残高が完済される生命保険です。
万が一の際、遺族が住宅ローンの返済義務を引き継がなくて済むため、住宅という資産を家族に残すことができます。民間の住宅ローンでは団信への加入が融資条件となっているケースがほとんどです。
保険料の負担方法(金利に含まれるケース)
一般団信の保険料負担は、以下の2つのパターンがあります。
| 負担方法 | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 金利上乗せ型 | 住宅ローン金利に含まれ別途負担なし | 民間銀行ローン |
| 別途払い型 | 保険料を毎年別途支払い | フラット35(任意加入) |
民間銀行の住宅ローンでは、一般団信の保険料は金利に含まれているため、追加の費用負担はありません。一方、フラット35では団信は任意加入で、加入する場合は別途保険料が発生します。
団信の種類と保障内容の違い
一般団信の保障範囲
一般団信は、住宅ローン契約者が死亡または高度障害状態になった場合に保険金が支払われる、最も基本的な団信です。
高度障害状態とは、両眼の視力を完全に失った状態、言語またはそしゃく機能を完全に失った状態、中枢神経系や精神に著しい障害を残し終身常に介護を要する状態などを指します。
がん保障・三大疾病・八大疾病特約の比較
一般団信に上乗せできる特約保障があります。金融機関によって内容が異なりますが、一般的な保障内容と金利上乗せの目安は以下の通りです。
| 特約の種類 | 保障内容 | 金利上乗せ目安 |
|---|---|---|
| がん保障特約 | がんと診断確定で残債ゼロ | +0.1% |
| 三大疾病保障 | がん・急性心筋梗塞・脳卒中 | +0.2〜0.25% |
| 八大疾病保障 | 三大疾病+高血圧等5疾患 | +0.3%程度 |
三大疾病保障は、がん(悪性新生物)の診断確定、急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態が60日以上継続した場合などに残債がゼロになります。適用条件は金融機関によって異なるため、詳細を確認することが重要です。
ワイド団信(引受基準緩和型)の特徴
持病があり通常の団信に加入できない方向けに、ワイド団信(引受基準緩和型)を提供している金融機関があります。
- 高血圧・糖尿病・うつ病などの持病があっても加入できる可能性
- 金利0.2〜0.3%程度の上乗せが一般的
- ワイド団信でも審査があり、必ず加入できるとは限らない
2024年時点で多くの金融機関がワイド団信を提供しており、持病がある方の選択肢は拡大しています。
加入条件と告知事項のポイント
告知義務と申告すべき傷病歴
団信に加入する際は、健康状態や傷病歴を正確に申告する告知義務があります。一般的に申告が必要な内容は以下の通りです。
- 過去3年以内の傷病歴・手術歴
- 現在治療中の病気・服用中の薬
- 身体の障害の有無
- 過去3カ月以内の医師の診察・検査・投薬
告知内容によっては加入できない場合がありますが、その場合はワイド団信やフラット35(団信なし)の選択肢があります。
告知義務違反のリスク
告知義務違反(虚偽の申告)があった場合、以下のリスクがあります。
- 契約解除となり保険金が支払われない
- 万が一の際に遺族が住宅ローンの返済義務を引き継ぐ
- 悪質な場合は詐欺罪に問われる可能性
「持病を隠せば加入できる」と考えるのは非常に危険です。正確な告知を行い、加入できない場合はワイド団信やフラット35を検討しましょう。
団信の選び方:家族構成・健康状態別
民間ローンとフラット35の団信の違い
| 項目 | 民間ローン | フラット35 |
|---|---|---|
| 団信加入 | 強制加入 | 任意加入 |
| 団信なし | 不可 | 可能(金利-0.2%) |
| 保険料負担 | 金利に含まれる | 別途支払い |
フラット35は団信なしでも利用可能で、団信に加入しない場合は金利が0.2%引き下げられます。持病があり団信に加入できない方や、既存の生命保険で十分な保障がある方の選択肢となります。
特約付き団信の費用対効果
特約付き団信を選ぶ際は、以下のポイントを検討しましょう。
- 家族構成: 配偶者や子どもがいる場合、万が一の保障は手厚くしたい
- 健康リスク: がんの家族歴がある場合、がん保障の価値は高い
- 既存の保険: 既に医療保険・がん保険に加入している場合は重複に注意
- 金利上乗せの総額: 35年ローンで0.1%上乗せは総額で数十万円の差
例えば、3,000万円を35年・0.1%上乗せで借りた場合、総支払額は約53万円増加します。保障内容と費用のバランスを考慮して選択することが重要です。
まとめ:団信を選ぶ際のチェックリスト
団信は住宅ローン契約時のみ加入可能で、返済期間中の加入や変更はできません。慎重に検討しましょう。
団信選びのチェックリスト
- 保障内容の確認: 死亡・高度障害だけでなく、がん・三大疾病の保障が必要か
- 金利上乗せの総額: 特約付きの場合、35年間でいくら多く払うか
- 告知事項の確認: 持病がある場合、ワイド団信の検討
- 既存保険との重複: 医療保険・がん保険との保障重複に注意
- 家族構成の考慮: 配偶者の収入状況、子どもの年齢
団信は住宅ローン残債の返済にのみ充てられ、遺族の生活費には充当されません。遺族の生活保障は別途生命保険で備える必要があります。
保険や住宅ローンに関する判断は、ファイナンシャルプランナーや保険の専門家に相談することを推奨します。


