住宅ローン本審査の重要性と「ほぼ通る」の意味
住宅ローンの事前審査に通過すると、「本審査もほぼ通る」と言われることがあります。確かに事前審査通過後の本審査通過率は約95%ですが、100%ではありません。
この記事では、事前審査と本審査の違い、本審査で落ちる確率と理由、事前審査通過後の注意点を住信SBIネット銀行や住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。
事前審査に通過した方が、本審査で落ちないための準備と対策を理解できるようになります。
この記事のポイント
- 事前審査通過後の本審査通過率は約95%だが、100%ではない(落ちる確率は約5%)
- 本審査で落ちる理由の約半数は書類不備や申告内容の相違
- 事前審査通過後は新規借入・転職・クレジットカード作成を避ける
- 物件の担保価値が購入価格より低い場合、希望額を借りられない可能性がある
- 本審査で落ちた場合は原因を明確化してから次の金融機関に申し込む
(1) 事前審査通過後の本審査通過率は約95%(落ちる確率は約5%)
東急リバブルの調査によると、事前審査通過後に本審査で落ちる確率は約5%です。別のカーディフ生命の調査では、事前審査に落ちる確率が14.3%、本審査に落ちる確率が6.9%とされています。
事前審査通過は良い兆候ですが、本審査で落ちる可能性もあるため、慎重な行動が必要です。
(2) 「ほぼ通る」が100%ではない理由
事前審査は見込みを確認する簡易的な審査ですが、本審査では担保物件の評価、提出書類の詳細確認、団体信用生命保険(団信)の審査など、より厳格な審査が行われます。
事前審査通過後でも、以下の理由で本審査で落ちる可能性があります。
- 書類不備や申告内容の相違
- 審査期間中の状況変化(新規借入、転職、健康状態変化等)
- 物件の担保価値が購入価格より低い
- 団信審査で健康状態が否決される
これらのリスクを理解し、事前審査通過後も慎重に行動することが重要です。
事前審査と本審査の違い:審査項目・審査期間・確認内容
事前審査と本審査では、審査の目的、項目、期間が異なります。本審査では担保物件の評価も含まれるため、より詳細な審査が行われます。
(1) 事前審査は見込み確認、本審査は正式審査
事前審査は、借入見込みを確認する簡易的な審査です。年収、勤務情報、信用情報などを元に、おおよその借入可能額を判断します。
本審査は、正式な住宅ローン審査です。返済能力、担保物件の価値、団信への加入可否を詳細に審査し、融資の可否と金額を決定します。
住信SBIネット銀行によると、本審査では以下の項目が重視されます。
- 完済時年齢(多くの金融機関で80歳未満が条件)
- 勤務情報(勤続年数、雇用形態)
- 返済負担率(年間返済額÷税込年収×100、一般的に30〜35%以内)
- 担保物件の評価額
- 団信への加入可否
(2) 本審査では担保物件評価も含まれる
本審査では、購入する物件の資産価値を評価します。物件の担保価値が購入価格より低い場合、希望額を借りられない可能性があります。
担保評価は物件の築年数、立地、構造、市場価格などを総合的に判断します。特に中古物件や築年数が古い物件は、担保価値が購入価格を下回るケースがあります。
(3) 審査期間(事前審査3〜4日、本審査1〜2週間)
SBI新生銀行によると、事前審査は3〜4営業日、本審査は1〜2週間程度が一般的です。
審査期間は金融機関や提出書類の状況により異なります。書類不備があると追加提出が求められ、審査期間が延びる可能性があります。
本審査で落ちる確率と主な否決理由
本審査で落ちる確率は約5%ですが、落ちる理由の約半数は書類不備や申告内容の相違です。事前に対策を講じることで、本審査通過率を高めることができます。
(1) 書類不備・申告内容の相違(否決理由の約半数)
東急リバブルの調査によると、本審査で落ちる理由の約半数は申告内容の相違や書類不備です。
主な書類不備・申告内容の相違には以下があります。
- 提出書類の有効期限切れ(所得証明書、住民票等)
- 提出漏れ(必要書類の未提出)
- 申告内容と提出書類の不一致(年収、勤務先、借入状況等)
事前審査時の申告内容を控えておき、本審査での提出書類と一致させることが重要です。
(2) 審査期間中の状況変化(新規借入・転職・健康状態変化等)
事前審査通過後に新規借入、転職、健康状態変化があると、本審査で否決される可能性があります。
カーディフ生命は、本審査期間中のNG行為として以下を挙げています。
- 新規借入: カードローン、自動車ローン等で信用情報が悪化
- クレジットカード作成: 利用可能枠が負債と見なされる
- 転職: 勤続年数がリセットされ返済能力の評価が下がる
本審査期間中(1〜2週間)は、申告内容と状況を一致させることが重要です。
(3) 物件の担保価値が低い場合
物件の担保価値が購入価格より低い場合、希望額を借りられない可能性があります。
例えば、購入価格3,000万円の物件の担保評価が2,500万円だった場合、金融機関は2,500万円までしか融資しないことがあります。この場合、残りの500万円は自己資金で補う必要があります。
中古物件や築年数が古い物件を購入する場合は、担保評価を事前に確認することが推奨されます。
(4) 団体信用生命保険の審査で否決
多くの金融機関では、団体信用生命保険(団信)への加入が住宅ローン契約の必須条件です。健康状態が悪い場合、団信審査で否決され、住宅ローンが組めない可能性があります。
住宅金融支援機構のフラット35は団信加入が任意のため、健康状態に不安がある場合の選択肢となります。
事前審査通過後から本審査までの注意点(やってはいけないこと)
事前審査通過後は、本審査に影響を与える行動を避ける必要があります。特に新規借入、転職、申告内容の不一致に注意してください。
(1) 新たな借入やクレジットカード作成を避ける
事前審査通過後に新たな借入やクレジットカードを作成すると、信用情報が変わり、本審査で否決される可能性があります。
クレジットカードの利用可能枠は、利用していなくても負債と見なされることがあります。本審査期間中は新たなクレジットカード作成を避けてください。
(2) 転職を避ける(勤務情報の変更)
転職すると勤続年数がリセットされ、返済能力の評価が下がります。事前審査通過後は、本審査が完了するまで転職を避けることが推奨されます。
やむを得ず転職する場合は、速やかに金融機関に報告し、再審査を依頼してください。
(3) 申告内容と提出書類の不一致を防ぐ
事前審査時の申告内容を控えておき、本審査での提出書類と一致させることが重要です。
例えば、事前審査で申告した年収と、本審査で提出する所得証明書の年収が異なると、虚偽申告と見なされる可能性があります。
(4) 提出書類の有効期限切れに注意
所得証明書、住民票等の書類には有効期限があります。本審査時に有効期限が切れていると、再発行が必要になり、審査期間が延びる可能性があります。
提出書類の有効期限を確認し、余裕を持って準備することが推奨されます。
本審査に通るためのポイントと落ちた場合の対処法
本審査に通るためには、返済負担率を抑え、信用情報を確認し、書類を正確に準備することが重要です。万が一落ちた場合は、原因を明確化してから次の金融機関に申し込んでください。
(1) 返済負担率を30〜35%以内に抑える
返済負担率は、年間返済額を税込年収で割った割合です。一般的に30〜35%以内が審査通過の基準とされています。
はじめての住宅ローンによると、返済負担率の計算式は以下の通りです。
返済負担率 = 年間返済額 ÷ 税込年収 × 100
例えば、年収500万円、年間返済額150万円の場合、返済負担率は30%です。
返済負担率を抑えるためには、借入額を減らすか、返済期間を延ばすことが有効です。
(2) 信用情報に不安がある場合は事前に開示請求
過去にクレジットカードの延滞やローンの滞納がある場合、信用情報に記録が残り、本審査で否決される可能性があります。
信用情報に不安がある場合は、本審査前に信用情報機関(CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センター)に開示請求して確認することが推奨されます。
(3) 本審査で落ちた場合の対処法(原因明確化、別の金融機関への申込、ローン特約の活用)
本審査で落ちた場合、まず原因を明確化することが重要です。金融機関に落ちた理由を確認し、改善してから次の金融機関に申し込んでください。
**融資利用の特約(ローン特約)**を契約に含めていれば、住宅ローン審査に落ちた場合、売買契約を無条件で解除できます。違約金を支払わずに済むため、契約時に必ずローン特約を入れておくことが推奨されます。
別の金融機関に申し込む際は、以下の点を検討してください。
- 審査基準が異なる金融機関に申し込む
- 借入額を減らして再申込
- フラット35など団信加入が任意の商品を検討
ファイナンシャルプランナーや不動産会社に相談し、適切な対処法を見つけることも有効です。
まとめ:住宅ローン本審査を確実に通過するための次のステップ
住宅ローンの事前審査通過後、本審査通過率は約95%ですが、100%ではありません。書類不備や申告内容の相違、審査期間中の新規借入・転職、物件の担保価値、団信審査で落ちるケースがあります。
事前審査通過後は、新規借入・転職を避け、申告内容と提出書類を一致させ、書類の有効期限を確認することが重要です。
本審査で落ちた場合は、原因を明確化してから次の金融機関に申し込み、ローン特約を活用して違約金を回避してください。金融機関やファイナンシャルプランナーに相談しながら、確実に住宅ローンを組める準備を進めましょう。
