転職と住宅ローンの関係を理解する
転職を検討しているが、マイホーム購入も考えている場合、「転職後いつから住宅ローンを組めるのか」「転職が審査に与える影響はどの程度か」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、住宅ローン審査における勤続年数の基準、転職後いつから申し込めるか、転職前後の適切なタイミング、転職後でも審査に通る方法を解説します。ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーなどの専門家への相談も推奨します。
この記事のポイント
- 転職後の住宅ローンは、原則として勤続1年以上が目安(金融機関の約62%が基準とする)
- フラット35は勤続年数不問で、転職後1ヶ月の給与明細があれば申込可能
- 融資実行前に転職すると再審査や承認取り消しのリスクがあるため、融資実行後の転職が最も安全
- 転職後でも、頭金を増やす、収入合算・ペアローンを活用することで審査通過の可能性が上がる
- 専門家(ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー)への相談を推奨
住宅ローンと転職の関係
転職が住宅ローン審査に与える影響
住宅ローン審査では、収入の安定性が重視されます。転職直後は勤務先での勤続期間が短いため、「収入が安定しているか」を金融機関が判断しにくくなります。
そのため、転職直後の住宅ローン審査は、一般的に不利になる可能性があります。ただし、金融機関や転職の内容(同業界転職、年収アップ転職など)によっては、審査に通る場合もあります。
93.2%の金融機関が勤続年数を審査項目としている実態
国土交通省の調査(2024年)によると、93.2%の金融機関が勤続年数を審査項目としています。勤続年数は、年収や勤務先の規模と並んで、重要な審査基準の一つです。
このデータからも、転職が住宅ローン審査に大きな影響を与えることが分かります。
本記事の構成:審査基準・タイミング・対策を包括的に解説
本記事では、勤続年数の基準、転職前後のタイミング、転職後でも審査に通る方法を詳しく解説します。自分の状況に合わせて、最適な選択ができるようになります。
転職後いつから住宅ローンを組めるか
基本的な目安:勤続1年以上が安全
転職後、住宅ローンを申し込む際の基本的な目安は、勤続1年以上です。勤続1年以上あれば、多くの金融機関で審査対象となります。
ただし、これはあくまで目安であり、金融機関や個人の属性(年収、勤務先の規模、信用情報など)によって異なります。
金融機関別の勤続年数基準(1年以上62%、3年以上14%、2年以上4%)
金融機関の勤続年数基準は以下の通りです。
| 勤続年数基準 | 金融機関の割合 |
|---|---|
| 1年以上 | 約62% |
| 3年以上 | 約14% |
| 2年以上 | 約4% |
| その他・不問 | 約20% |
最も多いのは「勤続1年以上」ですが、一部の金融機関は「3年以上」「2年以上」を基準としています。また、フラット35や一部のネット銀行のように、勤続年数を問わない、または柔軟に対応する金融機関もあります。
フラット35の特例:勤続年数不問、転職後1ヶ月の給与明細でOK
フラット35は、住宅金融支援機構が提供する長期固定金利の住宅ローンで、勤続年数不問という大きな特徴があります。
フラット35のメリット:
- 勤続年数不問
- 転職後1ヶ月の給与明細があれば申込可能
- 転職後1回以上の給与受給があればOK
転職直後で他の金融機関の審査が厳しい場合、フラット35が有力な選択肢となります。
試用期間中の扱いと注意点
試用期間中の住宅ローン申し込みは、一般的に難しい場合が多いです。試用期間中は雇用が確定していないと見なされるため、金融機関は審査を厳しくする傾向があります。
試用期間を終え、本採用が確定してから申し込むことを推奨します。ただし、フラット35など一部の金融機関では、試用期間中でも申込可能な場合があります。
住宅ローン審査における勤続年数の影響
なぜ勤続年数が重視されるのか(収入の安定性評価)
勤続年数が重視される理由は、収入の安定性を評価するためです。
勤続年数が長いほど、以下の点が評価されます:
- 今後も同じ勤務先で働き続ける可能性が高い
- 収入が安定している
- 退職や転職のリスクが低い
住宅ローンは数十年にわたる長期返済となるため、金融機関は返済能力の持続性を重視します。
勤続年数以外の審査項目(年収、勤務先の規模、雇用形態等)
住宅ローン審査では、勤続年数以外にも以下の項目が評価されます。
| 審査項目 | 内容 |
|---|---|
| 年収 | 安定した収入があるか |
| 勤務先の規模・業績 | 大手企業や公務員は評価が高い |
| 雇用形態 | 正社員が最も評価が高く、契約社員・派遣社員は不利 |
| 信用情報 | クレジットカードやローンの返済履歴 |
| 返済負担率 | 年収に占める年間返済額の割合(通常30-35%以内が目安) |
| 頭金 | 頭金が多いほど借入額が減り、審査に有利 |
転職でも審査に通りやすいケース(同業界転職、年収アップ、大手企業への転職)
転職後でも、以下のケースでは審査に通りやすくなります。
- 同業界転職:同じ業界での転職は、専門性や経験が評価される
- 年収アップ転職:転職で年収が上がった場合、返済能力の向上と評価される
- 大手企業への転職:大手企業や上場企業への転職は、勤務先の安定性が評価される
これらのケースでは、勤続年数が短くても審査に通る可能性があります。
転職で審査が厳しくなるケース(年収ダウン、雇用形態の変更)
以下のケースでは、審査が厳しくなる可能性があります。
- 年収ダウン:転職で年収が下がった場合、借入可能額が減る、または審査に通らない可能性がある
- 雇用形態の変更:正社員から契約社員・派遣社員になった場合、審査が不利になる
- 異業種への転職:全く異なる業種への転職は、収入の安定性が疑問視される場合がある
転職前後の適切なタイミング
転職前に住宅ローンを組むメリット・デメリット
メリット:
- 現在の勤務先の勤続年数を活かせる
- 審査がスムーズに進む可能性が高い
- 融資実行後に転職すれば、転職の自由度が高まる
デメリット:
- 転職先の年収や条件を考慮せずに借入額を決めることになる
- 転職で年収が下がった場合、返済負担が重くなる可能性がある
融資実行後に転職する方法(最も安全な手順)
最も安全な方法は、現在の勤務先で住宅ローンの審査を受け、融資実行まで済ませてから転職することです。
手順:
- 現在の勤務先で住宅ローンの事前審査・本審査を受ける
- 本審査通過後、物件の売買契約を結ぶ
- 融資実行(物件引き渡し時)
- 融資実行後に転職する
この方法なら、転職が審査に影響することはありません。ただし、融資実行前に転職すると、再審査や承認取り消しのリスクがあるため、必ず融資実行を待ってください。
転職後に住宅ローンを組むメリット・デメリット
メリット:
- 転職先の年収や条件を踏まえて借入額を決められる
- 年収が上がった場合、借入可能額が増える
デメリット:
- 勤続年数が短いため、審査が厳しくなる
- 審査に通らない、または借入可能額が減る可能性がある
審査中・本審査後に転職したらどうなる?(再審査・承認取り消しのリスク)
審査中に転職した場合:
- 金融機関に必ず報告が必要
- 再審査が行われる
- 新しい勤務先の勤続年数が短いため、審査が不利になる
本審査後・融資実行前に転職した場合:
- 金融機関に必ず報告が必要
- 再審査が行われ、最悪の場合、承認が取り消される可能性がある
- 物件の売買契約に影響が出る可能性がある
融資実行前の転職は大きなリスクを伴うため、必ず融資実行まで待つことを強く推奨します。
転職後でも審査に通る方法
頭金を多く用意する(借入額を減らす)
頭金を多く用意することで、借入額が減り、審査に通りやすくなります。
頭金の目安:
- 一般的には物件価格の10-20%
- 頭金が多いほど、返済負担率が下がり、審査が有利になる
例えば、4,000万円の物件を購入する場合、頭金800万円(20%)を用意すれば、借入額は3,200万円となり、審査のハードルが下がります。
収入合算・ペアローンを活用する
配偶者の収入を活用することで、借入可能額が増え、審査に通りやすくなります。
| 方法 | 内容 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 収入合算 | 配偶者等の収入を合算して申し込む | 借入可能額が増える | 配偶者も連帯保証人になる |
| ペアローン | 夫婦それぞれが住宅ローンを組む | 借入可能額が増え、それぞれ住宅ローン控除を受けられる | 諸費用が2倍かかる、団体信用生命保険も2本必要 |
フラット35を選ぶ(勤続年数不問)
前述の通り、フラット35は勤続年数不問で、転職後1ヶ月の給与明細があれば申込可能です。
転職直後で他の金融機関の審査が厳しい場合、フラット35を優先的に検討してください。
ネット銀行の柔軟な条件を活用(勤続3ヶ月以上で可能な銀行も)
一部のネット銀行は、勤続3ヶ月以上で申込可能など、従来より柔軟な条件を設定しています。
転職後の待機期間を短縮したい場合は、ネット銀行の条件を確認してください。ただし、審査基準は金融機関によって異なるため、複数の金融機関に相談することを推奨します。
必要書類の準備(給与明細、源泉徴収票、雇用契約書等)
転職後の住宅ローン申し込みでは、以下の書類が必要になる場合があります。
| 書類 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 給与明細 | 直近3ヶ月分程度 | 転職直後は給与明細の提出期間が短い場合がある |
| 源泉徴収票 | 前年分 | 転職前の勤務先の源泉徴収票も提出する |
| 雇用契約書 | 現在の勤務先の雇用契約書 | 雇用形態や年収を証明 |
| 在籍証明書 | 現在の勤務先が発行 | 勤続年数を証明 |
金融機関によって必要書類が異なるため、事前に確認してください。
まとめ:転職と住宅ローンの最適な進め方
転職後の住宅ローンは、原則として勤続1年以上が目安です。金融機関の約62%が勤続1年以上を基準としており、勤続年数は審査で重視される項目です。
ただし、フラット35は勤続年数不問で、転職後1ヶ月の給与明細があれば申込可能です。また、同業界転職、年収アップ転職、大手企業への転職なら審査に通りやすくなります。
最も安全な方法は、現在の勤務先で審査を受け、融資実行まで済ませてから転職することです。融資実行前に転職すると、再審査や承認取り消しのリスクがあるため、必ず融資実行を待ってください。
転職後でも、頭金を多く用意する、収入合算・ペアローンを活用する、フラット35を選ぶことで、審査通過の可能性が上がります。
住宅ローンは高額かつ長期にわたる債務です。ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーなどの専門家に相談しながら、慎重に計画を進めてください。
