なぜ融資手数料の理解が重要なのか|諸費用の落とし穴
住宅ローンを検討する際、「借入額」や「金利」ばかりに気を取られ、融資手数料などの諸費用を見落としている方は少なくありません。
この記事では、住宅ローンの融資手数料の種類、相場、金融機関による違い、節約方法を解説します。三井住友銀行の公式解説やみずほ銀行の資料を元にまとめています。
初めて住宅ローンを組む方でも、総返済額を正確に把握し、無駄な費用を抑えられるようになります。
この記事のポイント
- 融資手数料には定額型(3〜5万円程度)と定率型(借入額の2.2%程度)の2種類がある
- 返済期間13〜14年以上なら定率型がお得になる傾向
- ネット銀行は保証料無料だが融資手数料が高め、都市銀行は手数料安いが保証料が必要
- 手数料が安くても金利が高ければ総返済額で損することがあるため、必ずシミュレーションで比較を
- 諸費用の目安は新築で物件価格の3〜5%、中古で6〜8%程度
(1) 諸費用の相場は新築で3〜5%、中古で6〜8%
住宅購入時の諸費用は、物件価格の数パーセントに及びます。
- 新築: 購入価格の3〜5%
- 中古: 購入価格の6〜8%
例えば、4,000万円の物件を購入する場合、諸費用は200万円程度になります。
(参考: 三井住友銀行「住宅ローンの諸費用ってどのくらいかかるの?」)
(2) 融資手数料は数十万円規模の出費
融資手数料は、定率型の場合、借入額の2.2%程度が一般的です。
借入額別の融資手数料の例(定率型2.2%の場合):
| 借入額 | 融資手数料 |
|---|---|
| 2,000万円 | 44万円 |
| 3,000万円 | 66万円 |
| 5,000万円 | 110万円 |
融資手数料は数十万円規模の出費になるため、金融機関選びの重要なポイントです。
融資手数料(事務手数料)とは|保証料との違い
(1) 融資手数料の定義と支払先
融資手数料(事務手数料)は、住宅ローン契約時に金融機関に支払う手続き費用です。
- 支払先: 金融機関
- 支払タイミング: 住宅ローン契約時(融資実行時)
- 返金: 繰上返済しても返金されない
融資手数料は、審査・契約手続き・事務処理にかかる費用として金融機関に支払います。
(2) 保証料との違い(繰上返済時の返金有無)
保証料は、保証会社に支払う費用です。住宅ローン返済不能時に、保証会社が金融機関に代わって返済(代位弁済)を行う保証への対価です。
| 項目 | 融資手数料 | 保証料 |
|---|---|---|
| 支払先 | 金融機関 | 保証会社 |
| 相場 | 定額型3〜5万円/定率型借入額の2.2% | 1,000万円あたり約20万円(35年) |
| 繰上返済時の返金 | なし | 一括前払いの場合は残期間分が返金される可能性あり |
融資手数料型は保証料不要のことが多く、保証料型は融資手数料が安め(3〜5万円)という違いがあります。
(参考: みずほ銀行「住宅ローンの融資事務手数料とは?」)
(3) その他の諸費用(印紙税・登録免許税・司法書士報酬)
融資手数料・保証料以外にも、以下の諸費用がかかります。
| 項目 | 内容 | 目安額 |
|---|---|---|
| 印紙税 | 住宅ローン契約書に貼付する収入印紙 | 1,000万〜5,000万円で2万円 |
| 登録免許税 | 抵当権設定登記にかかる税金 | 借入額の0.4%(軽減措置で0.1%) |
| 司法書士報酬 | 抵当権設定登記の代行費用 | 5〜10万円 |
電子契約対応の金融機関では、印紙税(2万円程度)が不要になるケースもあります。
定額型と定率型の比較|どちらを選ぶべきか
(1) 定額型の特徴(3〜5万円程度・別途保証料必要)
定額型は、借入額に関係なく一定額(3〜5万円程度)を支払う方式です。
- メリット: 手数料が安い(借入額が大きい場合に有利)
- デメリット: 別途保証料が必要なケースが多い(1,000万円あたり約20万円)
定額型は、都市銀行・地方銀行で多く採用されています。
(2) 定率型の特徴(借入額の2.2%程度・保証料不要)
定率型は、借入額に対して一定割合(通常2.2%)を支払う方式です。
- メリット: 保証料不要のことが多い、金利が低く設定されている
- デメリット: 借入額が大きいと手数料が高額になる
定率型は、ネット銀行で多く採用されています。
(3) 返済期間による損益分岐点(13〜14年が目安)
定率型は手数料が高いですが金利が低く設定されているため、返済期間が長いほどお得になります。
ダイヤモンド不動産研究所の試算によると、返済期間13〜14年以上なら定率型がお得になる傾向があります。
(4) 具体的なシミュレーション(3000万円35年の場合)
借入額3,000万円、返済期間35年の場合の総返済額を比較します。
定額型(保証料一括前払い)の例:
- 融資手数料: 3万円
- 保証料: 約60万円(3,000万円35年)
- 初期費用合計: 約63万円
定率型の例:
- 融資手数料: 66万円(3,000万円×2.2%)
- 保証料: 0円
- 初期費用合計: 66万円
初期費用では定額型が若干安いですが、定率型は金利が低いため、長期返済では定率型が有利になります。
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金融機関別の融資手数料相場|ネット銀行vs店舗型銀行
(1) ネット銀行の手数料体系(定率型が多い)
ネット銀行は、定率型(借入額の2.2%程度)を採用するケースが多いです。
- 保証料: 不要
- 金利: 低め
- 対面相談: なし
ネット銀行は店舗運営コストがないため、金利を低く設定できる代わりに、融資手数料を定率型にしています。
(2) 都市銀行・地方銀行の手数料体系(定額型+保証料)
都市銀行・地方銀行は、定額型(3〜5万円程度)を採用し、別途保証料が必要なケースが多いです。
- 融資手数料: 3〜5万円
- 保証料: 1,000万円あたり約20万円(35年)
- 対面相談: 可能
都市銀行・地方銀行は、対面相談が可能なため、初めて住宅ローンを組む方には安心感があります。
(3) 手数料が安い銀行の例
手数料が安い銀行として、以下が挙げられます。
- ソニー銀行: 定額4.4万円(一部商品)
- SBI新生銀行: 定額5.5万円(一部商品)
- 楽天銀行: 定額33万円(一部商品)
ただし、手数料が安くても金利が高ければ総返済額で損することがあるため、必ずシミュレーションで比較することを推奨します。
(参考: ダイヤモンド不動産研究所「住宅ローンの手数料を比較して安い銀行を見つけよう」)
融資手数料を節約する方法|諸費用を抑えるポイント
(1) 金利と手数料を総合的に比較する
手数料が安くても金利が高ければ、総返済額で損することがあります。
複数の金融機関でシミュレーションを行い、以下を比較することを推奨します。
- 初期費用(融資手数料+保証料+その他諸費用)
- 総返済額(借入額+利息)
- 月々の返済額
ファイナンシャルプランナーに相談しながら、総合的に判断することが重要です。
(2) 諸費用を住宅ローンに組み込む方法
多くの金融機関で、諸費用を住宅ローンに組み込むことが可能です。
- メリット: 初期費用の負担を軽減できる
- デメリット: 借入額が増えるため、毎月の返済額と総返済額も増加する
初期費用を抑えたい場合に検討しましょう。
(3) 電子契約で印紙税を節約する
電子契約対応の金融機関では、印紙税(2万円程度)が不要になります。
ネット銀行を中心に電子契約を導入する金融機関が増えているため、諸費用を抑えたい方は電子契約対応の銀行を検討することを推奨します。
(4) 複数の金融機関で見積もりを取る
融資手数料は金融機関によって異なるため、複数の金融機関で見積もりを取得することを推奨します。
- 都市銀行: 対面相談が可能、定額型+保証料
- ネット銀行: 金利が低い、定率型で保証料不要
- 地方銀行: 地域密着型、独自の優遇措置がある場合も
複数の選択肢を比較し、自分に合った金融機関を選びましょう。
まとめ:融資手数料選びのポイント|総返済額で比較する
住宅ローンの融資手数料には、定額型(3〜5万円程度)と定率型(借入額の2.2%程度)の2種類があります。返済期間13〜14年以上なら定率型がお得になる傾向があります。
ネット銀行は保証料無料だが融資手数料が高め、都市銀行は手数料安いが保証料が必要という違いがあります。
ただし、手数料が安くても金利が高ければ総返済額で損することがあるため、必ずシミュレーションで比較することが重要です。
複数の金融機関で見積もりを取得し、ファイナンシャルプランナーに相談しながら、総返済額を最小化する選択をしましょう。
