住宅ローン10年固定金利の基本と本記事の目的
住宅ローンを検討する際、「変動金利と固定金利のどちらを選ぶべきか」と悩む方は少なくありません。その中で、10年固定金利は「固定期間中の安心感」と「変動金利より高めの金利」のバランスを取った選択肢として人気があります。
この記事では、10年固定金利の仕組みと特徴、メリット・デメリット、変動金利・全期間固定との比較、固定期間終了後の3つの選択肢と実践的な対策、借り換えのタイミングと判断基準を解説します。国土交通省の住宅ローン統計や住宅金融支援機構のフラット35金利情報等の公的情報も活用しながら、読者が自分で判断できるようサポートします。
初めて住宅ローンを検討する方でも、10年固定金利の特徴を理解し、自分に合った金利タイプを選べるようになります。
この記事のポイント
- 10年固定金利は固定期間中(10年間)は金利変動なし、11年目以降は変動or再固定を選択する
- メリットは返済計画の立てやすさ・金利上昇リスク回避、デメリットは11年目以降の不確定性・変動金利より高い金利
- 変動金利は0.3〜0.5%、10年固定は1.0〜1.5%、全期間固定は1.9%程度が相場(2025年11月時点)
- 固定期間終了後は変動金利・固定金利・借り換えの3つの選択肢があり、11年目以降の金利引き下げ幅縮小に注意
- 借り換え時には事務手数料・保証料等が数十万円かかるため、金利差とのバランスで判断する
(1) 10年固定金利とは何か(仕組みと特徴)
10年固定金利とは、借入から10年間は金利が固定され、11年目以降は変動金利または固定金利を再選択する住宅ローンの金利タイプです。
仕組みは以下の通りです。
- 当初10年間: 借入時に決定した金利で固定され、市場金利が変動しても返済額は変わらない
- 11年目以降: 固定期間終了の3〜6ヶ月前に金融機関から案内が届き、変動金利・固定金利(再度固定期間を選択)・他行への借り換えの3つから選択する
10年固定金利は固定期間選択型に分類され、一定期間(3年・5年・10年・15年等)金利を固定する方式です。変動金利と全期間固定金利の中間的な性質を持ちます。
(2) 固定期間選択型の中で10年固定が最も人気の理由
国土交通省の調査によると、2023年度の住宅ローン利用者の84.3%が変動金利を選択し、固定期間選択型は約20%です。固定期間選択型の中では、10年固定が47.3%で最も人気の高い固定期間です。
10年固定が人気の理由は以下の通りです。
- ライフプランとの適合: 10年間は子どもの教育費や家計の変化を見据えた返済計画が立てやすい
- 金利上昇リスクの回避: 当面の金利上昇リスクを回避しつつ、長期的には柔軟に対応できる
- 心理的安心感: 変動金利の不安定さを避けつつ、全期間固定より低い金利で借りられる
(3) 本記事で解説する内容
本記事では、以下の4つのポイントを中心に解説します。
- 10年固定金利のメリット・デメリット(返済計画の立てやすさ vs 11年目以降の不確定性)
- 変動金利・全期間固定との比較(金利水準・返済額の安定性・総返済額)
- 固定期間終了後の3つの選択肢と実践的な対策(変動・再固定・借り換え)
- 借り換えのタイミングと判断基準(諸費用と金利差の比較)
10年固定金利のメリットとデメリット
(1) メリット(返済計画の立てやすさ・金利上昇リスク回避)
10年固定金利のメリットは以下の3点です。
1. 返済計画の立てやすさ
当初10年間は返済額が確定しているため、家計管理がしやすく、教育費や老後資金の計画を立てやすくなります。子どもが小学校〜高校の時期に返済額が固定されることで、教育費の増加に対応しやすいというメリットがあります。
2. 金利上昇リスクの回避
市場金利が上昇しても、固定期間中は金利が変わらないため、返済額が増加するリスクを回避できます。日本銀行が2024年3月にマイナス金利政策を解除したことで、今後の金利上昇リスクが懸念される中、当面の10年間は安心して返済できます。
3. 心理的安心感
変動金利の場合、半年ごとに金利が見直されるため、「金利が上がったらどうしよう」という不安がありますが、10年固定であれば当面の10年間はその不安がありません。
(2) デメリット(11年目以降の不確定性・変動金利より高い金利)
10年固定金利のデメリットは以下の3点です。
1. 11年目以降の金利が不確定
固定期間終了後の金利は不確定であり、世の中の金利が上昇している場合、適用金利が大幅に上がる可能性があります。また、当初10年間の金利引き下げ幅(優遇幅)が大きく、11年目以降は引き下げ幅が縮小する傾向があるため、実際の金利負担が想定以上に増加するリスクがあります。
2. 変動金利より月々の返済額が高い
10年固定金利は変動金利より金利が高いため、月々の返済額が大きくなります。2025年11月時点の相場で、変動金利が0.3〜0.5%、10年固定が1.0〜1.5%程度であり、借入額3,000万円の場合、月々の返済額の差は数千円〜1万円程度になります。
3. 総返済額が変動金利より多くなる可能性
市場金利が低水準で推移した場合、変動金利の方が総返済額が少なくなる可能性があります。過去の実績では、変動金利を選択した方が総返済額が少なかったケースが多いとされています。
(3) 固定期間中の金利タイプ変更の制約
多くの金融機関では、固定期間中は金利タイプの変更(10年固定から変動金利への切り替え等)ができません。そのため、市場金利が下落しても、固定期間中はそのメリットを享受できない可能性があります。
変動金利・全期間固定との比較|それぞれの特徴と選び方
(1) 金利水準の違い(変動0.3~0.5%、10年固定1.0~1.5%、全期間固定1.9%)
2025年11月時点の金利相場は以下の通りです。
| 金利タイプ | 金利相場 | 特徴 |
|---|---|---|
| 変動金利 | 0.3〜0.5% | 半年ごとに金利が見直され、市場金利の変動に応じて返済額が変わる |
| 10年固定 | 1.0〜1.5% | 当初10年間は金利固定、11年目以降は再選択 |
| 全期間固定(フラット35) | 1.90%(21〜35年) | 借入から完済まで金利が固定される |
(出典: 住宅金融支援機構、各金融機関の公式サイト)
変動金利が最も低く、全期間固定が最も高く、10年固定はその中間に位置します。
(2) 返済額の安定性と総返済額の比較
以下のシミュレーションで、3つの金利タイプを比較します(借入額3,000万円、返済期間35年、元利均等返済の場合)。
| 金利タイプ | 当初金利 | 月々返済額(当初) | 総返済額(試算) |
|---|---|---|---|
| 変動金利 | 0.4% | 約7.8万円 | 約3,270万円(金利変動なしの場合) |
| 10年固定 | 1.2% | 約8.7万円 | 約3,650万円(11年目以降1.5%と仮定) |
| 全期間固定 | 1.9% | 約9.9万円 | 約4,160万円 |
※試算であり、実際の金利や条件により異なります。
返済額の安定性:
- 全期間固定が最も安定(完済まで返済額が変わらない)
- 10年固定は当初10年間のみ安定(11年目以降は不確定)
- 変動金利は半年ごとに見直され、最も不安定
総返済額:
- 変動金利が最も少ない(ただし金利上昇リスクあり)
- 10年固定は中間
- 全期間固定が最も多い(ただし金利上昇リスクなし)
(3) リスク許容度別の選び方
| リスク許容度 | 推奨金利タイプ | 理由 |
|---|---|---|
| 高い(金利変動を受け入れられる) | 変動金利 | 低金利で総返済額を抑えられる可能性が高い |
| 中程度(当面の安心を求めつつ柔軟性も欲しい) | 10年固定 | 10年間の安心感と、11年目以降の柔軟性のバランスが良い |
| 低い(完済まで安定を求める) | 全期間固定 | 金利上昇リスクを完全に回避できる |
自分のリスク許容度と家計状況に応じて選択しましょう。ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザー等の専門家への相談も検討してください。
固定期間終了後の3つの選択肢と実践的な対策
(1) 変動金利への切り替え
固定期間終了後、変動金利に切り替える選択肢です。
メリット:
- 市場金利が低水準であれば、金利を抑えられる
- 手続きが簡単(同じ金融機関内での変更)
デメリット:
- 金利上昇リスクを負う
- 11年目以降の金利引き下げ幅が縮小する場合、想定以上の金利になる可能性
向いている人:
- 残り返済期間が短く、金利上昇リスクが限定的な方
- 低金利を優先し、リスクを許容できる方
(2) 固定金利の再選択
固定期間終了後、再度固定金利を選択する選択肢です(3年・5年・10年・15年等)。
メリット:
- 再度固定期間中の安心感を得られる
- 手続きが簡単(同じ金融機関内での変更)
デメリット:
- 変動金利より金利が高い
- 11年目以降の金利引き下げ幅が縮小する場合、想定以上の金利になる可能性
向いている人:
- 引き続き金利上昇リスクを回避したい方
- 返済計画の安定性を重視する方
(3) 他行への借り換え
固定期間終了後、他の金融機関の住宅ローンに借り換える選択肢です。
メリット:
- より低い金利の金融機関に乗り換えられる
- 11年目以降の金利引き下げ幅縮小を回避できる
デメリット:
- 事務手数料・保証料・登記費用等が数十万円かかる
- 審査が必要で、時間がかかる
向いている人:
- 金利差が大きく、諸費用を上回るメリットがある方
- 借入残高が多く、残り返済期間が長い方
(4) 11年目以降の金利引き下げ幅縮小への注意点
多くの金融機関では、当初10年間の金利引き下げ幅(優遇幅)が大きく、11年目以降は引き下げ幅が縮小する傾向があります。
例えば、以下のようなケースがあります。
- 当初10年間: 店頭金利2.5% - 優遇幅1.3% = 適用金利1.2%
- 11年目以降: 店頭金利2.5% - 優遇幅0.8% = 適用金利1.7%
優遇幅が0.5%縮小することで、適用金利が0.5%上昇し、月々の返済額が増加します。契約前に11年目以降の金利引き下げ幅を確認し、シミュレーションすることを推奨します。
借り換えのタイミングと判断基準
(1) 借り換えのメリットとデメリット
メリット:
- 金利差により総返済額を削減できる
- 返済期間を短縮または延長できる
- 団体信用生命保険の条件を見直せる
デメリット:
- 諸費用(事務手数料、保証料、登記費用等)が数十万円かかる
- 審査に時間がかかる(1〜2ヶ月程度)
- 審査に落ちる可能性がある
(2) 諸費用と金利差の比較方法
借り換えのメリットは、金利差による削減額と諸費用のバランスで判断します。
諸費用の内訳(借入額3,000万円の場合の目安):
- 事務手数料: 約66万円(借入額の2.2%)
- 保証料: 約60万円(金融機関により異なる、または不要)
- 登記費用: 約10〜20万円
- 印紙税: 約2万円
- 合計: 約70〜150万円
金利差による削減額の試算:
- 借入残高3,000万円、残り返済期間25年、金利差0.5%の場合、総返済額の削減は約200万円
- 諸費用100万円を差し引いても、約100万円のメリット
判断基準:
- 金利差が0.3%以上、借入残高が1,000万円以上、残り返済期間が10年以上であれば、借り換えを検討する価値がある
(3) 借り換え検討のタイミング(固定期間終了3~6ヶ月前)
固定期間終了の3〜6ヶ月前に金融機関から案内が届きます。この時点で以下の3つを比較検討しましょう。
- 現在の金融機関で変動金利に切り替える
- 現在の金融機関で固定金利を再選択する
- 他行の住宅ローンに借り換える
複数の金融機関に相談し、金利・諸費用・団体信用生命保険の条件を比較することを推奨します。
まとめ:10年固定金利が向いている人・向いていない人
10年固定金利が向いている人:
- 当初10年間の返済計画を確実に立てたい方
- 金利上昇リスクを避けつつ、全期間固定より低い金利で借りたい方
- 子どもの教育費が増える時期に返済額を固定したい方
- 変動金利の不安定さを避けたい方
10年固定金利が向いていない人:
- 低金利を最優先し、金利変動リスクを許容できる方(変動金利が向いている)
- 完済まで返済額を固定したい方(全期間固定が向いている)
- 月々の返済額を最小限に抑えたい方(変動金利が向いている)
住宅ローンは人生の大きな意思決定に関わるため、自分のリスク許容度・家計状況・ライフプランに応じて慎重に選択しましょう。ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザー等の専門家への相談も検討してください。
国土交通省の住宅ローン統計や住宅金融支援機構のフラット35金利情報等の公的情報も活用し、複数の金融機関を比較検討しながら、自分に合った住宅ローンを選びましょう。
