変動金利が「変わらない」と感じる理由:5年ルールの仕組み
みずほ銀行で住宅ローンを借り入れている方の中には、「変動金利なのに毎月の返済額が変わらない」と疑問に感じる方がいるかもしれません。これは、住宅ローン変動金利に適用される「5年ルール」と「125%ルール」という特別な仕組みがあるためです。
この記事では、みずほ銀行の住宅ローン変動金利が「変わらない」と感じる理由、金利見直しの仕組み、2024-2025年の金利動向、金利上昇リスクへの対策を解説します。みずほ銀行公式サイト、住宅金融支援機構、全国銀行協会等の公式情報を元にしています。
金利の仕組みを正しく理解し、今後の返済計画を適切に見直すことができるようになります。
この記事のポイント
- 変動金利は半年ごとに見直されるが、5年ルールにより返済額は5年間据え置かれる
- 金利上昇時も元金と利息の割合が変わるだけで、返済額自体は5年間変わらない
- 返済額変更時も125%ルールにより、従前の1.25倍(125%)までに制限される
- みずほ銀行は2025年1月の短期プライムレート引き上げに伴い、2026年1月返済分から基準金利を2.625%から2.875%に引き上げ
- 既存借入者は初回借入時の金利優遇幅が継続するため、基準金利が下がらない限り適用金利も下がらない
(1) 変動金利は半年ごとに見直されるが、返済額は5年間据え置き
住宅ローンの変動金利は、短期プライムレート(銀行が優良企業に短期で貸し出す際の最優遇金利)に連動しており、年2回(4月・10月)見直されます。しかし、5年ルールにより、金利が見直されても返済額は5年間据え置かれます。
これは、金利変動による返済額の急激な変化を防ぎ、借入者の家計負担を安定させるための仕組みです。
(2) 金利上昇時も元金と利息の割合が変わるだけ
金利が上昇しても、5年間は毎月の返済額は変わりません。ただし、返済額の内訳(元金と利息の割合)が変わります。
例えば、毎月10万円の返済のうち、元金7万円・利息3万円だった場合、金利が上昇すると元金5万円・利息5万円のように変化します。返済額は10万円のまま変わりませんが、元金の減り方が遅くなります。
(3) 返済額変更は5年ごと、最大125%までに制限
5年経過後に返済額が見直される際も、125%ルールにより、従前の返済額の1.25倍(125%)を超えないように調整されます。
例えば、従前の返済額が月10万円の場合、見直し後の返済額は最大12.5万円(125%)までに制限されます。これにより、急激な金利上昇時でも返済負担の急増を緩和します。
住宅ローン変動金利の基礎知識:5年ルールと125%ルール
(1) 変動金利の仕組み:短期プライムレート連動
住宅ローンの変動金利は、短期プライムレートに連動しています。短期プライムレートは日本銀行の政策金利や市場金利の影響を受け、年2回(4月・10月)見直されます。
短期プライムレートが上昇すると、住宅ローンの基準金利も上昇し、適用金利(基準金利 - 金利優遇幅)が高くなります。
(2) 5年ルール:返済額は5年間変わらない
5年ルールにより、金利が見直されても返済額は5年間据え置かれます。金利上昇時は元金と利息の割合が変わり、元金返済が遅れる可能性があります。
5年ルールは多くの金融機関で採用されていますが、一部の金融機関では採用されていない場合があるため、契約内容の確認が必要です。
(3) 125%ルール:返済額の上限は従前の1.25倍
返済額変更時も、125%ルールにより、従前の返済額の1.25倍(125%)を超えないように調整されます。ただし、125%ルールがあっても返済総額は増加するため、金利上昇リスクの認識が重要です。
(4) 未払利息のリスク:元金が減らない可能性
急激な金利上昇時には、利息部分が返済額を上回り、支払えなかった利息(未払利息)が積み上がる可能性があります。未払利息が発生すると、元金返済が進まず、返済期間が延びるリスクがあります。
未払利息は5年ルール・125%ルールの副作用であり、金利急騰時には注意が必要です。
みずほ銀行の金利動向:2024-2025年の金利引き上げと今後の見通し
(1) 2025年1月の短期プライムレート引き上げ
みずほ銀行は、2025年1月27日の短期プライムレート引き上げに伴い、住宅ローン変動金利の基準金利を引き上げました。これは、日本銀行の金融政策正常化(利上げ)の影響です。
(2) 基準金利2.625%→2.875%(2026年1月返済分から適用)
2026年1月返済分から、基準金利が2.625%から2.875%に引き上げられます。ただし、5年ルールにより、5年経過まで返済額は変わりません。金利上昇の影響は元金と利息の割合に反映されます。
(3) 2025年10月に変動金利0.25%引き上げ
みずほ銀行は2025年10月に変動金利を0.25%引き上げ、基準金利を2.875%に設定しました。これは日本経済新聞の報道によるものです。
(4) 最優遇金利0.775%の適用条件
2025年10月時点で、みずほ銀行の最優遇金利は0.775%です。最優遇金利の適用には、以下の条件を満たす必要があります(詳細はみずほ銀行公式サイトでご確認ください)。
- みずほダイレクトの契約
- 給与振込・年金受取等の取引条件
- その他の優遇条件
(5) 日銀の金融政策と住宅ローン金利の関係
日本銀行が政策金利を引き上げると、短期プライムレートが上昇し、住宅ローン変動金利も上昇します。2024年以降、日銀は金融政策の正常化を進めており、今後も金利上昇の可能性があります。
金利動向の予測は困難であり、執筆時点(2025年)の金利が将来も継続する保証はありません。
既存借入者の金利が下がらない理由:金利優遇幅の継続
(1) 初回借入時の金利優遇幅が継続する
みずほ銀行の住宅ローンでは、初回借入時に設定された金利優遇幅が返済期間中ずっと継続します。例えば、初回借入時に「基準金利 - 1.5%」の優遇幅が適用された場合、その優遇幅が完済まで継続します。
(2) 基準金利が下がらない限り適用金利も下がらない
適用金利は「基準金利 - 金利優遇幅」で計算されます。基準金利が下がらない限り、適用金利も下がりません。
近年、基準金利は長期間据え置かれていましたが、2024年以降は上昇傾向にあります。基準金利が上昇すると、適用金利も上昇します。
(3) 新規借入者の低い優遇幅を利用するには借り換えが必要
新規借入者向けの金利優遇幅(例:基準金利 - 2.0%)が、既存借入者の優遇幅(例:基準金利 - 1.5%)よりも大きい場合、新規借入者の方が適用金利が低くなります。
既存借入者が新規借入者と同等の優遇幅を利用したい場合は、借り換えを検討する必要があります。ただし、借り換えには手数料・諸費用が発生するため、総合的なシミュレーションが必要です。
金利上昇リスクへの対策:借り換え・固定金利切替の検討ポイント
(1) 借り換えのメリットとデメリット
メリット:
- 新規借入者向けの低い金利優遇幅を利用できる
- 他行のより有利な金利条件を選べる
- 返済総額を削減できる可能性
デメリット:
- 借り換え手数料(事務手数料、登記費用、印紙税等)が発生
- 審査が必要(年齢、収入、健康状態等)
- 手数料を含めた総合的なシミュレーションが必須
(2) 固定金利への切替タイミング
金利上昇リスクを避けたい場合は、変動金利から固定金利(全期間固定型、固定金利選択型)への切替を検討できます。
固定金利への切替タイミングは、以下の要素を考慮します。
- 変動金利と固定金利の金利差
- 今後の金利上昇予測
- 返済期間(残り返済期間が長いほど固定金利が有利)
- ライフプラン(収入の安定性、家計の余裕等)
(3) 手数料・諸費用を含めたシミュレーション
借り換えや固定金利切替を検討する際は、手数料・諸費用を含めた総返済額のシミュレーションが必要です。
| 項目 | 目安額 |
|---|---|
| 事務手数料 | 借入金額の2.2%(税込) |
| 保証料 | 借入金額の0-2%(金融機関により異なる) |
| 登記費用 | 10-20万円 |
| 印紙税 | 2-6万円 |
みずほ銀行や他行の公式サイトでシミュレーションツールが提供されているため、活用を推奨します。
(4) ファイナンシャルプランナーへの相談
金利動向の予測は専門家でも困難です。借り換えや固定金利切替を検討する際は、ファイナンシャルプランナー(FP)や住宅ローンアドバイザーへの相談を推奨します。
FPは家計全体を見た上で、最適な返済計画を提案してくれます。
まとめ:金利動向を見据えた返済計画の立て方
みずほ銀行の住宅ローン変動金利は、5年ルールにより返済額が5年間据え置かれるため、「変わらない」と感じることがあります。しかし、金利上昇時は元金と利息の割合が変わり、元金返済が遅れる可能性があります。
2024-2025年は日銀の利上げに伴い、短期プライムレートが上昇し、みずほ銀行も基準金利を引き上げています。既存借入者は初回借入時の金利優遇幅が継続するため、新規借入者の低い優遇幅を利用するには借り換えが必要です。
金利上昇リスクへの対策として、借り換えや固定金利切替を検討し、手数料・諸費用を含めたシミュレーションを行いましょう。ファイナンシャルプランナーへの相談も推奨します。
みずほ銀行公式サイトで最新の金利情報を確認し、自分に合った返済計画を立てましょう。
