マンション売却で不動産会社選びが重要な理由
マンション売却を検討する際、「どの不動産会社に依頼すればいいのか」と悩む方は少なくありません。不動産会社選びは売却価格や期間に数百万円・数ヶ月の差を生む最も重要な要素です。
この記事では、大手・中堅・地域密着型の不動産会社の特徴、選定の5つのポイント、査定の見方、媒介契約の選び方、失敗事例から学ぶ対策を解説します。複数の不動産ポータルサイトや不動産会社の公式情報を元に、初めての方でも後悔しない選択ができるようになります。
この記事のポイント
- 不動産会社選びは売却価格に数百万円、期間に数ヶ月の差を生む最重要要素
- 大手は広告力・ネットワーク力が強く、地域密着型は地元相場に詳しく柔軟な対応が可能
- 複数社(3〜6社)から査定を取り、査定価格の根拠が明確な会社を選ぶ
- 査定価格が高いだけで選ぶと売れ残るリスクがあり、実績・担当者の提案力も重要
- よくある失敗は「1社のみの査定」「売却期間の見積もり不足」「譲渡所得税を考慮しない」
1. マンション売却で不動産会社選びが重要な理由
(1) 売却価格に数百万円の差が出る理由
不動産会社によって査定価格は数百万円異なることがあります。これは各社の査定基準、得意エリア、販売力、担当者の経験によるものです。1社のみの査定では適正価格がわからず、数十万〜数百万円の損失につながる可能性があります。
複数社から査定を取り比較することで、適正価格の範囲を把握できます。
(2) 売却期間が変わる要因
マンション売却期間は、不動産会社の広告力・営業力・提案力によって大きく変わります。標準的な売却期間は約3ヶ月ですが、準備期間・契約後の引き渡しを含めると約6ヶ月が目安です。
売却期間を短く見積もると、焦って安値で売却してしまう失敗が多く報告されています。繁忙期(2〜3月)は新生活需要で中古マンション市場が活発になり、売却しやすい傾向があります。
(3) 不動産会社選びが失敗の最大要因
マンション売却の失敗事例で最も多いのが「不動産会社選びのミス」です。具体的には以下のような失敗が報告されています。
- 高い査定価格だけで会社を選び、売れ残った
- マンション売却未経験の不動産会社を選び、対応が不適切だった
- 1社のみの査定で適正価格がわからず損失した
複数社を比較し、実績・担当者の提案力・販売方法を総合的に判断することが重要です。
2. 不動産会社の種類と特徴(大手・中堅・地域密着型)
(1) 大手不動産会社の強みと弱み
強み:
- 広告力・ネットワーク力が強く、全国規模で買い手を探せる
- ホームステージング、高品質写真、広告展開等の充実したサービス
- ブランド力・信頼性が高い
- 自社顧客データベースから潜在的な買い手を見つけやすい
弱み:
- 地元の細かい相場感に疎い場合がある
- 担当者の異動が多く、継続的な対応が難しい場合がある
- 仲介手数料の値引き交渉が難しい場合がある
(2) 地域密着型不動産会社の強みと弱み
強み:
- 地元の相場に詳しく、エリア特性を活かした提案ができる
- 柔軟な対応が可能で、細かい要望に応えやすい
- 地元の買い手ネットワークを持つ
- 仲介手数料の値引き交渉がしやすい場合がある
弱み:
- 広告力・ネットワーク力が大手に劣る場合がある
- 営業エリアが限定的で、広域からの買い手を探しにくい
(3) 仲介と買取の違い
不動産会社のサービスには「仲介」と「買取」の2種類があります。
| 項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却期間 | 約3ヶ月 | 即時(数日〜数週間) |
| 売却価格 | 市場価格 | 市場価格の7〜8割 |
| 仲介手数料 | 売買価格の3%+6万円+消費税が上限 | なし |
| 向いているケース | 高く売りたい、時間に余裕がある | 早く売りたい、築古・事故物件 |
高く売りたい場合は仲介、早く売りたい・築古や特殊物件の場合は買取が向いています。
3. 不動産会社を選ぶ5つのポイント
(1) 複数社(3〜6社)から査定を取る
不動産会社選びの第一歩は、複数社から査定を取ることです。3〜6社から査定を取り、査定価格の範囲を把握しましょう。
1社のみの査定では適正価格がわからず、数十万〜数百万円の損失につながる可能性があります。複数社を比較することで、極端に高い・低い査定を除外できます。
(2) 査定価格の根拠が明確か確認する
査定価格が高いだけで不動産会社を選ぶのは危険です。査定価格の根拠が明確な会社を選びましょう。
確認すべきポイント:
- 周辺の取引事例を示しているか
- 築年数・立地・設備を考慮した査定か
- 市場動向(2024年は新築価格高騰で中古需要上昇等)を反映しているか
査定価格の根拠が曖昧な会社は、高値で契約を取り、後で値下げを提案する「高値づかみ」のリスクがあります。
(3) マンション売却の実績を確認する
不動産会社によって得意分野が異なります。マンション売却の実績が豊富な会社を選びましょう。
確認すべきポイント:
- マンション売却の年間取引件数
- 同じエリア・築年数の売却実績
- 営業年数・販売実績
マンション売却に特化した会社は、地域相場・市場動向に精通しており、適切な価格設定・販売戦略を提案できます。
(4) 担当者の対応と提案内容を比較する
担当者の能力は売却価格・期間に大きく影響します。以下のポイントで担当者を評価しましょう。
確認すべきポイント:
- 査定時の説明が丁寧で、質問に的確に答えるか
- 販売戦略の提案が具体的か(広告展開、内覧対応、価格戦略等)
- 売却スケジュールの説明が明確か
- レスポンスが早いか
担当者との相性も重要です。売却期間中は頻繁にやり取りするため、信頼できる担当者を選びましょう。
(5) 広告・販売方法を確認する
不動産会社の広告・販売方法は売却期間に大きく影響します。
確認すべきポイント:
- 自社サイト・ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)への掲載
- 紙媒体(チラシ、情報誌)の活用
- ホームステージング、高品質写真の提供
- オープンハウス・内覧会の開催
複数のチャネルで広告展開する会社は、買い手に情報が届きやすく、売却期間を短縮できます。
4. 査定価格の見方と媒介契約の選び方
(1) 査定価格が高いだけで選ぶリスク
査定価格が高い不動産会社を選ぶと、以下のリスクがあります。
- 高値で売り出すと買い手が見つからず、売れ残る
- 徐々に値下げすると、買い手に「売れ残り物件」と見なされる
- 売却期間が長引き、焦って安値で売却してしまう
査定価格は「必ずしもその価格で売れる」ことを保証するものではありません。査定価格の根拠が明確で、実績のある会社を選ぶことが重要です。
(2) 適正価格の見極め方
適正価格を見極めるには、以下の方法があります。
複数社の査定を比較:
- 3〜6社の査定を取り、極端に高い・低い査定を除外
- 査定価格の範囲を確認し、中央値付近を適正価格の目安とする
築年数別の相場を参考:
- 築5年未満: 購入価格に近い価格で売却可能
- 築6〜10年: 内装・設備の劣化が少なく、高値で売却しやすい
- 築11〜20年: 需要が高く、売却の理想的なタイミング
- 築20年以降: 価格下落が緩やかになるが、需要は減少
築年数による価格変動を理解し、適正価格の範囲を把握しましょう。
(3) 媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)
不動産会社に売却を依頼する際は、媒介契約を結びます。媒介契約には3種類あります。
| 契約種類 | 依頼可能社数 | 自己発見取引 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 1社のみ | 不可 | 積極的な販売活動、2週間に1回以上の報告義務 |
| 専任媒介 | 1社のみ | 可 | 積極的な販売活動、2週間に1回以上の報告義務 |
| 一般媒介 | 複数社 | 可 | 複数社に依頼し競争させる、報告義務なし |
選び方のポイント:
- 人気エリア・築浅物件: 一般媒介で複数社に依頼し競争させる
- 築古・特殊物件: 専任媒介で1社に集中依頼し積極的な販売活動を期待
(4) 契約期間と途中解約の注意点
媒介契約の期間は法律上3ヶ月が上限で、通常は3ヶ月で契約します。3ヶ月で売れない場合は、契約更新または他社に切り替えることができます。
途中解約の注意点:
- 専属専任・専任媒介: 契約期間中の解約が原則不可(違約金の可能性)
- 一般媒介: 自由に解約可能
契約前に解約条件を確認し、柔軟に対応できる契約形態を選びましょう。
5. よくある失敗事例と対策
(1) 売却期間に余裕がなく安値で売却
失敗事例: 転勤・住み替えで売却期間に余裕がなく、焦って市場価格より安値で売却してしまった。
対策:
- 売却スケジュールに余裕を持つ(準備から契約完了まで約6ヶ月が目安)
- 繁忙期(2〜3月)を狙って売却活動を開始する
- 期限が迫っている場合は買取も検討する
(2) 1社のみの査定で適正価格がわからず損失
失敗事例: 1社のみの査定で売却を決め、後で他社の査定が数百万円高かったことを知った。
対策:
- 複数社(3〜6社)から査定を取り、適正価格の範囲を把握する
- 一括査定サイトを活用し、効率的に複数社の査定を取る
(3) 高い査定価格だけで選び売れ残った
失敗事例: 査定価格が最も高い不動産会社を選んだが、買い手が見つからず売れ残った。徐々に値下げして、最終的に最初の査定価格より安く売却した。
対策:
- 査定価格の根拠が明確な会社を選ぶ
- 周辺の取引事例を確認し、適正価格の範囲を把握する
- 査定価格が極端に高い会社は除外する
(4) 譲渡所得税を考慮せず売却時期を逸した
失敗事例: 譲渡所得税の発生を知らず、想定外の税負担が発生した。所有期間5年超で税率が半減することを知らず、売却時期を逸した。
対策:
- 譲渡所得税の基本を理解する(所有期間5年超で税率が半減)
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下): 税率39.63%
- 長期譲渡所得(所有期間5年超): 税率20.315%
- 売却時期を計画し、税負担を最小限に抑える
- 税理士等の専門家に相談する
6. まとめ:状況別の不動産会社選び
(1) 高く売りたい場合の選び方
高く売りたい場合は、以下のポイントを重視しましょう。
- 仲介方式を選ぶ(買取は市場価格の7〜8割)
- 大手不動産会社で広告力・ネットワーク力を活用
- 複数社から査定を取り、適正価格の範囲を把握
- 築10〜20年のマンションは需要が高く、高値で売却しやすい
(2) 早く売りたい場合の選び方
早く売りたい場合は、以下のポイントを重視しましょう。
- 買取方式を検討(即時売却可能、価格は市場価格の7〜8割)
- 地域密着型不動産会社で地元の買い手ネットワークを活用
- **繁忙期(2〜3月)**を狙って売却活動を開始
(3) 築年数別の売却戦略
築年数によって売却戦略が異なります。
| 築年数 | 売却戦略 |
|---|---|
| 築5年未満 | 希少価値が高く、高値で売却可能。大手不動産会社で全国規模で買い手を探す |
| 築6〜10年 | 内装・設備の劣化が少なく、需要が高い。仲介方式で高値を狙う |
| 築11〜20年 | 売却の理想的なタイミング。複数社から査定を取り、適正価格で売却 |
| 築20年以降 | 価格下落が緩やかだが需要は減少。地域密着型で地元の買い手を探す、買取も検討 |
マンション売却は不動産会社選びが成否を分けます。複数社を比較し、査定価格の根拠・実績・担当者の提案力を総合的に判断しましょう。
売却期間に余裕を持ち、譲渡所得税を考慮した売却時期の計画も重要です。信頼できる不動産会社や税理士に相談しながら、後悔しない売却を実現しましょう。
