なぜマンション価格の推移を知ることが重要なのか
マンションの売却や購入を検討する際、「今が売り時なのか」「価格は今後も上がり続けるのか」と悩む方は少なくありません。マンション価格の推移を理解することで、適切なタイミングで売却・購入の判断ができます。
この記事では、2013年から2025年までのマンション価格推移、エリア別・物件タイプ別のトレンド、価格変動の要因、今後の見通しを、経済産業省や三井住友トラスト不動産の公式情報を元に解説します。
専門家の分析を踏まえた実践的な情報で、売却・購入タイミングの考え方がわかるようになります。
この記事のポイント
- 2024年11月の不動産価格指数は、マンション207.2と住宅地116.8を大きく上回る
- 2024年の全国平均新築マンション価格は6,082万円と、2015年の4,618万円から約1.3倍に上昇
- 東京23区では2024年の平均価格が1億1,181万円と、2015年の約1.66倍に達している
- 2025年も新築・中古ともに高騰継続の見込み、建設コストの上昇傾向が続く限り価格下落は当面見込めない
- 今後約9割のマンションが値下がりする可能性があり、価格維持・上昇は上位10〜15%の物件に限定
- 金利上昇リスク(2025年1月に日銀が追加利上げ)により、住宅ローン金利のさらなる上昇の可能性
マンション価格推移の全体像:2013年から2025年までの動向
(1) 不動産価格指数で見るマンション価格の推移
経済産業省のデータによると、2024年11月の不動産価格指数(2010年を100とした指標)は以下の通りです。
| 物件タイプ | 不動産価格指数(2024年11月) | 推移 |
|---|---|---|
| マンション | 207.2 | 2010年の約2倍に上昇 |
| 住宅地 | 116.8 | 緩やかな上昇 |
| 戸建て | 118.5 | 緩やかな上昇 |
マンション価格は、住宅地や戸建てと比較して突出して高く、2010年の約2倍に上昇しています。この傾向は2013年以降継続しており、特に2020年以降の上昇が顕著です。
不動産価格指数:国土交通省が公表する、不動産価格の動向を示す統計指標。2010年を100として算出され、価格の変動を客観的に把握できます。
(2) 新築・中古マンションの価格動向
三井住友トラスト不動産によると、2024年の新築・中古マンション価格は以下のように推移しています。
- 新築マンション:全国平均6,082万円(2015年の4,618万円から約1.3倍)
- 中古マンション:新築より割安だが、首都圏では価格上昇傾向が継続
新築マンションの価格上昇は、建設コストの増大が主な要因です。中古マンションも、人気エリアや駅近物件では新築価格の上昇に連動して価格が上昇しています。
(3) 東京23区の価格推移:2015年から1.66倍に
東京23区のマンション価格は、2015年から2024年にかけて急激に上昇しました。
- 2015年: 約6,700万円
- 2024年: 約1億1,181万円(約1.66倍)
この上昇は、東京オリンピック需要、コロナ禍以降の住宅需要増大、不動産投資の活発化などが背景にあります。ただし、今後は地域・物件ごとに価格が二極化する可能性があります。
エリア別・物件タイプ別の価格トレンド
(1) 首都圏・関西圏・地方の価格差
マンション価格は、エリアにより大きく異なります。
| エリア | 平均価格(2024年) | 特徴 |
|---|---|---|
| 首都圏 | 約6,000万円 | 価格上昇が継続、供給戸数も増加 |
| 関西圏 | 約4,500万円 | 首都圏より割安、大阪市内は価格上昇 |
| 地方都市 | 約3,000万円 | 地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)は堅調 |
首都圏は価格上昇が最も顕著で、2025年も新築供給が2024年比13%増の26,000戸と見込まれています。地方都市では、人口減少の影響を受けるエリアもあるため、立地選定が重要です。
(2) 駅近・人気エリアと郊外の価格差
長谷工マンションプラスによると、マンション市場は立地により二極化しています。
- 駅徒歩10分圏内・人気エリア: 価格維持・上昇の可能性が高い(上位10〜15%)
- 郊外エリア: 人口減少とインフラ老朽化により価格下落圧力(約9割が値下がりの可能性)
資産価値:不動産が持つ市場での評価額。立地・築年数・管理状態により変動します。駅近・人気エリアの物件は、築年数が経過しても資産価値が維持されやすい傾向があります。
(3) 新築と中古の価格推移の違い
新築マンションは建設コストの上昇により価格が高止まりしていますが、中古マンションは物件により価格推移が大きく異なります。
| タイプ | 価格推移の特徴 |
|---|---|
| 新築 | 建設コストの上昇により価格が高止まり、2025年も上昇見込み |
| 中古(駅近・人気エリア) | 新築価格の上昇に連動して価格上昇、資産価値が維持されやすい |
| 中古(郊外) | 築年数による値下がり率が高く、価格下落の可能性 |
中古マンションを選ぶ際は、立地と将来性を重視し、資産価値が維持されやすいエリアを選ぶことが重要です。
マンション価格変動の要因分析
(1) 建設コストの上昇(建築資材価格の高騰)
グローベルスによると、建築資材価格は2015年を100として2023年4月に130ポイント前後まで上昇しました。
建設コストの上昇要因:
- 鉄鋼・木材などの原材料価格の高騰
- 人件費の上昇(建設業の人手不足)
- エネルギー価格の上昇
建設工事費デフレーター:建設工事の価格変動を示す指標。物価上昇により上昇傾向が続いており、新築マンション価格の下落は当面見込めません。
(2) 金融政策と金利の影響(マイナス金利解除、利上げ)
2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除し、2025年1月までに政策金利を0.5%に引き上げました。
マイナス金利政策:日銀が2016年から2024年3月まで実施した政策。民間銀行が日銀に預ける資金にマイナス金利を適用し、企業や個人への貸出を促進しました。
金利上昇の影響:
- 住宅ローン金利のさらなる上昇リスク
- 購入者の返済負担が増加
- 需要が減退すれば価格下落圧力がかかる可能性
SUUMOジャーナルによると、2025年1月に日銀が追加利上げを決定し、住宅ローン金利のさらなる引き上げの可能性があります。金利上昇局面では、住宅ローンの金利タイプ(固定/変動)を慎重に選択することが重要です。
(3) 不動産投資の活発化とコロナ禍以降の住宅需要増大
マンション価格上昇の背景には、以下の要因があります。
- 不動産投資の活発化:低金利環境を背景に、投資用マンションの購入が増加
- コロナ禍以降の住宅需要増大:リモートワークの普及により、広い住空間を求める需要が増加
- 都市部への人口集中:東京23区など都市部への人口流入が継続
これらの要因により、特に都市部のマンション価格は上昇傾向が続いています。
今後の価格見通しと市場の二極化
(1) 2025年以降の価格見通し:新築・中古ともに高騰継続
SUUMOジャーナルによると、2025年もマンション価格は新築・中古ともに高騰継続の見込みです。
- 首都圏の新築供給は2024年比13%増の26,000戸
- 建設コストの上昇傾向が続く限り、新築価格の下落は当面見込めない
- 中古価格も新築価格の上昇に連動して高止まり
ただし、今後2〜3年で大幅に価格が下落する可能性は低いものの、地域・物件ごとに価格が二極化すると予測されています。
(2) 市場の三極化:価格維持・上昇エリア、緩やかな下落エリア、無価値化エリア
SUUMOによると、マンション市場は今後、以下の3つに分かれる可能性があります。
| 分類 | 特徴 | 該当エリア |
|---|---|---|
| 価格維持・上昇エリア | 駅近、人気エリア、利便性が高い | 東京23区、駅徒歩10分圏内 |
| 緩やかな下落エリア | 郊外、人口減少エリア | 郊外、地方都市の一部 |
| 無価値化エリア | インフラ老朽化、過疎化 | 人口減少が著しいエリア |
この三極化により、立地選定の重要性がさらに高まります。
(3) 約9割のマンションが値下がりする可能性とその理由
長谷工マンションプラスによると、今後約9割のマンションが値下がりする可能性があります。
値下がりの理由:
- 築年数による資産価値の減少
- 郊外エリアの人口減少とインフラ老朽化
- 金利上昇による需要の減退
価格維持・上昇は、上位10〜15%の物件(駅近・人気エリア)に限られると予測されています。
(4) 価格が維持される物件の条件(立地・駅近・管理状態)
価格が維持される物件の条件は以下の通りです。
- 駅徒歩10分圏内:利便性が高く、資産価値が維持されやすい
- 人気エリア:東京23区、地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)など
- 管理状態が良好:定期的な修繕、管理組合の運営が適切
- 築年数が浅い:築20年以内の物件は資産価値が高い
これらの条件を満たす物件を選ぶことで、将来的な資産価値の維持が期待できます。
まとめ:売却・購入タイミングの考え方
マンション価格は、2013年から2025年にかけて継続的に上昇しており、2024年11月の不動産価格指数はマンション207.2と住宅地116.8を大きく上回ります。新築マンション価格は2024年の全国平均で6,082万円と、2015年の4,618万円から約1.3倍に上昇しました。
2025年も新築・中古ともに高騰継続の見込みですが、今後約9割のマンションが値下がりする可能性があり、価格維持・上昇は上位10〜15%の物件(駅近・人気エリア)に限定されると予測されています。
金利上昇リスク(2025年1月に日銀が追加利上げ)により、住宅ローン金利のさらなる上昇の可能性があるため、購入者は固定金利と変動金利を慎重に選択する必要があります。
売却・購入タイミングは個々の事情により異なるため、信頼できる専門家(宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー等)に相談しながら、立地と将来性を重視した物件選びを行いましょう。
