マンション価格暴落待ちは本当に得策か?
マンション価格が高騰を続ける中、「暴落を待ってから買ったほうがいいのでは?」と考える方は少なくありません。しかし、価格が下がるのを待つことは本当に合理的な判断なのでしょうか。
この記事では、マンション価格の推移と現状、暴落の可能性とリスク、購入タイミングの判断基準を、経済産業省や不動産経済研究所の公式情報を元に解説します。
初めてマンション購入を検討する方でも、自分の状況に合った判断ができるようになります。
この記事のポイント
- マンション価格の正確な予測はプロでも不可能であり、暴落を待つことで機会損失が発生するリスクがある
- 2025年問題や東京五輪後の暴落予測も外れ、価格は上昇を続けている
- 暴落には開発業者の資金ショート・大量の差し押さえなど複数の条件が同時発生する必要があり、現状では可能性は低い
- 暴落を待つリスク(価格上昇・金利上昇・機会損失)と今買うリスク(価格下落・資産価値減少)を比較し、個人のライフステージを優先することが重要
- 都心5区と郊外・地方で二極化が進んでおり、エリアごとに市場動向が異なる
(1) 「暴落待ち」の実態と心理
「暴落待ち」とは、マンション価格が大幅に下落するのを待って購入しようとする購入戦略です。
2024年10月、首都圏の新築マンション平均価格が1戸あたり9,000万円を超え、前年比約1.4倍に高騰しました。このような価格高騰を目の当たりにすると、「こんなに高い時期に買いたくない」「もう少し待てば下がるはず」と考えるのは自然な心理です。
しかし、暴落を待つことには以下のリスクがあります。
- 価格がさらに上昇する可能性:待っている間に価格が下がらず、むしろ上昇して購入機会を逃す
- 金利上昇による総返済額の増加:金利が上昇すると、価格が下がっても総返済額が増える
- 賃料負担の継続:賃貸住宅に住み続けることで、賃料負担が積み重なる
- ライフステージの変化を逃す:結婚・出産・子育てなど、住宅が必要なタイミングを逃す
暴落を待つべきか、今買うべきかは、個人の状況によって答えが異なります。
(2) 過去の暴落予測と実際の価格推移
マンション価格の暴落は、これまで何度も予測されてきましたが、実際には外れ続けています。
過去の暴落予測の例:
| 予測時期 | 暴落予測の理由 | 実際の価格推移 |
|---|---|---|
| 2020年 | 東京五輪後の需要減少 | 価格は下落せず上昇を続けた |
| 2020-2021年 | コロナ禍による経済停滞 | 価格は下落せず上昇を続けた |
| 2025年 | 2025年問題(団塊世代の後期高齢化) | 価格は下落せず上昇を続けた |
(出典: 東急リバブル「マンション購入は暴落待ちしたほうがよい?」)
これらの予測が外れた理由は、以下の要因が複合的に影響しています。
- 材料費高騰・円安・人手不足による建築コスト上昇
- 富裕層・海外投資家の旺盛な需要
- 新築マンション供給戸数の減少(2024年は1973年以降で最少)
暴落を正確に予測することはプロでも不可能であり、待つことで機会損失が発生するリスクがあります。
マンション価格の推移と現状(2024-2025年)
マンション価格は2013年頃から継続的に上昇しており、2024-2025年も高騰が続いています。
(1) 2024年の価格高騰:9,000万円超えの首都圏新築マンション
2024年10月、首都圏の新築マンション平均価格が1戸あたり9,000万円を超えました。前年比約1.4倍の高騰です。
2024年の首都圏新築マンション供給戸数は前年比14.4%減少し、1973年以降で最少戸数を記録しました。供給戸数の減少が、価格上昇に拍車をかけています。
2025年3月の首都圏新築マンション販売戸数は前年同月比9.8%減の2,210戸、初月契約率は76.2%でした。
(出典: 不動産経済研究所「2025年マンション市場予測」)
(2) 価格上昇の要因:材料費高騰・円安・人手不足
経済産業省の2024年12月レポートによると、マンション価格高騰の主な要因は以下の通りです。
- 材料費高騰:木材・鉄鋼・セメント等の建築資材価格が上昇
- 円安:輸入資材のコストが増加
- 人手不足:建設業界の人手不足により人件費が上昇
これらの要因により、新築マンションの建築コストが上昇し、販売価格に転嫁されています。
(3) 2025年の市場予測:供給戸数と価格動向
不動産経済研究所によると、2025年の首都圏マンション供給戸数は2024年比13%増の26,000戸、平均価格は2024年を上回る見込みです。
SUUMOジャーナルの2025年2月レポートによると、2025年も新築・中古ともに高騰が続く見込みで、金利上昇よりも社会保険料負担増に注意が必要とされています。
供給戸数は増加する見込みですが、建築コストの上昇が続いているため、価格の大幅な下落は期待しにくい状況です。
(4) エリア別の二極化:都心5区 vs 郊外・地方
2024年の東京23区の中古マンション価格は、エリアによって大きく異なります。
マンションリサーチの2024年レポートによると、以下の傾向が見られます。
| エリア | 価格動向 | 特徴 |
|---|---|---|
| 中央5区(千代田・中央・港・渋谷・新宿) | 上昇 | 富裕層・海外投資家の需要、在庫回転率が高い |
| 目黒区・品川区 | 下落の兆候 | 売り手の弱気な姿勢が顕在化 |
| 郊外・地方 | 二極化 | 人気エリアは上昇、不人気エリアは下落 |
(出典: マンションリサーチ「東京都23区2024年は中古マンション価格下落が濃厚?」)
都心部は富裕層・海外投資家の需要が強く上昇を続ける一方、郊外・地方では人口減少の影響で二極化が進行しています。
マンション価格暴落の可能性とシナリオ
マンション価格が暴落する条件と、実際の可能性を検証します。
(1) 暴落の条件:開発業者の資金ショート・大量の差し押さえ
大規模な価格暴落が発生するには、以下の条件が同時に満たされる必要があります。
- 開発業者の資金ショート・投げ売り:不動産開発業者が資金繰りに困り、完成物件を大量に安値で売却
- 大量の差し押さえ:住宅ローンの返済が滞り、大量の物件が差し押さえられて競売にかけられる
- 金融危機:銀行の貸し渋りにより、不動産取引が停滞
- 需要の急減:購入者が極端に減少し、売り手が価格を下げざるを得ない状況
過去の例では、1990年代のバブル崩壊や2008年のリーマンショック時にこれらの条件が同時発生し、価格が大幅に下落しました。
しかし、現在の日本では金融機関の健全性が保たれており、大規模な暴落の可能性は低いと考えられます。
(2) 2025年問題の検証:予想と実際の乖離
2025年問題とは、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる時期を指し、不動産市場では空き家増加・価格下落が懸念されていました。
しかし、実際には価格は下落せず上昇を続けました。
2025年問題が価格下落につながらなかった理由:
- 都心部では富裕層・海外投資家の需要が強く、高齢者の住み替え需要も堅調
- 相続した不動産を売却するケースは増えたが、需要が供給を上回った
- 地方・郊外では空き家が増加したものの、都心部への影響は限定的
(出典: お家のいろは「不動産の2025年問題とは?大暴落はするの?」)
(3) 金利上昇の影響:マイナス金利解除と段階的利上げ
2024年3月、日本銀行はマイナス金利政策を解除しました。さらに2025年1月には段階的利上げを実施し、金利は0.5%を上限とする水準に上昇しました。
金利上昇がマンション価格に与える影響は、以下の2つの側面があります。
価格下落を促す要因:
- 住宅ローンの総返済額が増加し、購入者の購買力が低下
- 投資目的の購入が減少(利回りの悪化)
価格を支える要因:
- 金利上昇ペースが緩やかであり、劇的な需要減少には至っていない
- 変動金利の住宅ローンは2025年現在も低水準を維持
現時点では、金利上昇が価格の大幅な下落につながる兆候は見られません。
(4) 社会保険料負担増の影響(2025年)
2025年は社会保険料の負担が増加する年でもあります。SUUMOジャーナルによると、金利上昇よりも社会保険料負担増のほうが、住宅購入の可処分所得に与える影響が大きい可能性があるとされています。
社会保険料負担増により、購入者の手取り収入が減少すると、住宅ローンの借入可能額が減少し、価格に下押し圧力がかかる可能性があります。
ただし、この影響も劇的な価格暴落につながるほどではないと考えられます。
暴落を待つリスクと機会損失
暴落を待つことには、以下のリスクがあります。
(1) 価格がさらに上昇する可能性
過去の暴落予測(東京五輪後、コロナ禍、2025年問題)はすべて外れ、価格は上昇を続けました。
暴落を待っている間に価格がさらに上昇すると、購入機会を完全に逃してしまいます。特に都心5区では、富裕層・海外投資家の需要が強く、今後も上昇が続く可能性があります。
(2) 金利上昇による総返済額の増加
仮にマンション価格が下落したとしても、金利が上昇すれば総返済額は増加します。
シミュレーション例(3,000万円の借入、35年返済):
| 価格 | 金利 | 総返済額 |
|---|---|---|
| 3,000万円 | 0.5% | 約3,270万円 |
| 2,700万円(10%下落) | 1.5% | 約3,480万円 |
価格が10%下落しても、金利が1%上昇すると総返済額はむしろ増加します。
(3) 賃料負担の継続と機会損失
暴落を待つ間、賃貸住宅に住み続けると賃料負担が積み重なります。
例(家賃月10万円、5年間待った場合):
- 5年間の賃料総額:600万円
この600万円は、住宅購入の頭金や諸費用に充てることができた資金です。暴落が起きず価格が上昇した場合、賃料負担と価格上昇の両方で損失が拡大します。
(4) ライフステージの変化を逃すリスク
結婚・出産・子育てなど、住宅が必要なタイミングは人生の中で限られています。
暴落を待つことでライフステージの変化を逃すと、以下の問題が発生します。
- 子育て環境の整備が遅れる:学区・公園・保育園などの環境が整わない
- 通勤・通学の負担が続く:賃貸住宅の立地が最適でない場合、時間的・精神的な負担が続く
- 住宅購入の意欲が低下する:年齢を重ねるほど、住宅ローンの借入期間が短くなり、月々の返済負担が増える
住まいサーフィンによると、マンション購入は「思い立ったとき」がベストタイミングという考え方もあり、個人のライフステージを優先することが重要とされています。
購入タイミングの判断基準と注意点
暴落を待つべきか、今買うべきかは、個人の状況によって答えが異なります。以下の判断基準を参考にしてください。
(1) 個人のライフステージを優先する考え方
マンション購入のタイミングは、市場動向よりも個人のライフステージを優先すべきという考え方があります。
購入を検討すべきタイミング:
- 結婚・出産を控えている、または子育て中
- 子どもの学区を確定させたい
- 通勤・通学の負担を減らしたい
- 賃貸住宅の更新時期が近い
住まいサーフィンによると、「思い立ったとき」がベストタイミングであり、市場動向を気にしすぎると、かえって購入機会を逃す可能性があるとされています。
専門家(ファイナンシャルプランナー、宅建士等)に相談し、自分の状況に合った判断をすることが重要です。
(2) エリア選定:都心 vs 郊外・地方の特性
エリアによって市場動向が大きく異なるため、自分のライフスタイルと資金計画に合ったエリアを選ぶことが重要です。
| エリア | 特性 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 都心5区 | 富裕層・海外投資家の需要で価格上昇、在庫回転率が高い | 資産価値重視、利便性重視 |
| 郊外・地方 | 人口減少で二極化、価格下落の可能性もある | 広さ・環境重視、価格重視 |
都心部は価格が高いものの、資産価値が下がりにくい傾向があります。郊外・地方は価格が比較的安いものの、人口減少により将来的に資産価値が下落するリスクがあります。
(3) 新築 vs 中古の選択と築年数の考慮
新築と中古では、価格・資産価値・維持費が異なります。
| 項目 | 新築 | 中古 |
|---|---|---|
| 価格 | 高い | 比較的安い |
| 資産価値 | 当初は高いが、築年数とともに下落 | 築年数により既に下落済み |
| 維持費 | 当初は少ない | 修繕費が発生する可能性 |
中古マンション購入では、築年数と相場のバランスを見極めることが重要です。築20年以内の物件は、資産価値の下落が緩やかな傾向があります。
(4) 資金計画と住宅ローンシミュレーション
購入タイミングを判断する際は、資金計画と住宅ローンシミュレーションを必ず実施してください。
確認すべきポイント:
- 頭金の用意:物件価格の20%程度が目安
- 諸費用:物件価格の5-10%(仲介手数料、登記費用、火災保険等)
- 月々の返済額:手取り収入の25%以内が目安
- 金利タイプ:変動金利 vs 固定金利のメリット・デメリット
- 総返済額:金利上昇リスクを考慮したシミュレーション
複数の金融機関から見積もりを取り、金利・手数料・返済条件を比較しましょう。
専門家(ファイナンシャルプランナー、宅建士等)に相談し、無理のない資金計画を立てることが重要です。
まとめ:状況別の購入判断ガイド
マンション価格の正確な予測はプロでも不可能であり、暴落を待つことで機会損失が発生するリスクがあります。過去の暴落予測(東京五輪後、コロナ禍、2025年問題)はすべて外れ、価格は上昇を続けました。
暴落を待つリスク(価格上昇・金利上昇・賃料負担・ライフステージの変化を逃す)と今買うリスク(価格下落・資産価値減少)を比較し、個人のライフステージを優先することが重要です。
都心5区は富裕層・海外投資家の需要で価格上昇が続く一方、郊外・地方では人口減少により二極化が進行しています。自分のライフスタイルと資金計画に合ったエリアを選びましょう。
専門家(ファイナンシャルプランナー、宅建士等)に相談し、無理のない資金計画を立てて、自分の状況に合った判断をしてください。
