マンション暴落待ちとは:背景と検討者の心理
マンション購入を検討する際、「今の高騰した価格で買うべきか、それとも価格が下落するのを待つべきか」と悩む方は少なくありません。
この記事では、マンション価格の現状と推移、価格下落の可能性、暴落を待つリスクとデメリット、購入タイミングの判断基準を詳しく解説します。
この記事のポイント
- 2024年の首都圏新築マンション平均価格は8,135万円と過去最高を更新し、2025年以降も上昇基調が続く見込み
- 過去30年で大きな不動産価格下落はバブル崩壊・リーマンショックなど3回のみで、頻繁に起こる現象ではない
- マンション暴落を待つリスク:暴落が起きない可能性、待つ間の家賃コスト、金利上昇による購入ハードル上昇
- 購入タイミングには客観的な買い時(市場価格・金利)と個人的な買い時(ライフステージ)の2つの観点があり、優先すべきは個人的な買い時
- 都心部と地方で価格の二極化が進行しており、エリアごとに市場動向を個別に判断する必要がある
マンション暴落待ちとは、マンション価格が下落するのを待ってから購入しようとする考え方です。特に近年、首都圏の新築マンション平均価格が8,000万円を超える高騰を見せる中、「今購入すると高値掴みになるのではないか」と不安を感じる方が増えています。
しかし、マンション価格がいつどう動くか予測することは、専門家でも極めて困難でほぼ不可能です。暴落を待ち続けても、暴落が起きない可能性が高く、その間に価格がさらに上昇するリスクもあります。
マンション価格の現状と推移(2025年時点)
(1) 首都圏新築マンション価格の推移(2021-2025年)
首都圏の新築マンション価格は、近年急激に上昇しています。
価格推移:
- 2021年上半期:6,414万円
- 2025年上期:8,958万円
- 約2,500万円の上昇(4年間で約40%の上昇)
この価格上昇の主な要因は、建築コスト高騰(インフレ・円安・人手不足)と訪日客向けホテル用地需要による地価上昇です。
(2) 2024年の首都圏新築マンション平均価格8,135万円
2024年の首都圏新築マンション発売戸数は1973年以降で過去最少の2万2,239戸、1戸あたり平均価格は8,135万円と過去最高を更新しました。
特に東京23区では、2025年1月時点で新築マンション平均価格が1億円を突破しており、高騰が続いています。
(3) 2025年の発売見込みと価格予測
2025年の全国発売見込みは6.2万戸で2024年比4.3%増、首都圏では2.6万戸(2024年比13.0%増)と予想されています。
新築マンションは理論上、2025年以降もっと高くなることが予想されており、都心部のマンション価格は基本的に上昇基調を維持し、下がりにくい市況が続くと予測されています。
(4) 都心部と地方の二極化
都心部と地方の間で価格の二極化が進行しています。
都心部(東京23区、大阪・名古屋中心部等):
- 富裕層や海外投資家の現金購入が多い
- 金利上昇による価格下落は限定的
- 利便性の高い駅周辺に建設するため供給戸数も限定的で価格下落は想定できない
地方(郊外・地方都市):
- 人口減少により需要が減少
- 価格下落の可能性がある
マンション価格が下落する要因と暴落の可能性
(1) 過去30年の価格下落事例(バブル崩壊・リーマンショック)
過去30年で大きな不動産価格下落が起こったのは、以下の3回のみです。
バブル崩壊(1990年代初頭):
- 不動産価格が大幅に下落し、過去30年で最大の価格下落事例
金融機関合併政策(1990年代後半〜2000年代初頭):
- 不良債権処理により不動産価格が下落
リーマンショック(2008年):
- 世界金融危機により日本の不動産価格も大きく下落
このように、大きな価格下落は頻繁に起こる現象ではなく、経済危機や金融政策の大きな転換点で起こっています。
(2) 価格下落の主要要因(金利上昇・景気悪化・人口減少・供給過剰)
マンション価格が下落する主な要因は以下の通りです。
金利上昇:
- 2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除し、住宅ローン金利上昇の兆しが見え始めた
- 金利が急激に上昇すると、住宅ローンの返済負担が増加し、購入のハードルが上がる可能性がある
景気悪化:
- 経済が大きく落ち込むと、購入意欲が減退し、価格が下落する可能性がある
人口減少:
- 日本全体で人口が減少しており、特に地方では需要が減少する可能性が高い
供給過剰:
- 2025年問題により市場に供給される中古マンションの数が増え、価格競争が激しくなる可能性がある
(3) 2025年以降の価格見通しと専門家の見解
専門家でも翌年のマンション価格の予測はできません。2025年のマンション価格は基本的に2024年以前と同様、上昇の見込みがあるとされていますが、以下のような見方もあります。
上昇継続派:
- 建築コスト高騰が続く限り、新築マンション価格は下がりにくい
- 都心部や利便性の高いエリアでは高値維持・上昇が見込まれる
下落懸念派:
- 金利上昇により購入意欲が減退し、価格が下落する可能性がある
- 郊外や地方では人口減少により下落の可能性がある
(4) 2025年問題と中古マンション市場への影響
2025年問題とは、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、市場に中古マンションが大量供給される可能性がある問題です。
中古マンションの供給が増えると、価格競争が激しくなり、一部のエリアでは価格が下落する可能性があります。ただし、都心部や利便性の高いエリアでは、需要が高いため影響は限定的と見られています。
マンション暴落を待つリスクとデメリット
(1) 暴落が起きない可能性(高値維持・上昇継続)
マンション暴落を待ち続けても、暴落が起きない可能性が高いです。
過去10年間、日本はマンションバブル期で新築・中古ともに価格が上昇しており、2025年以降も都心部のマンション価格は基本的に上昇基調を維持すると予測されています。
暴落が起きたとしても再び価格が上がる保証はなく、資産価値は不確実です。
(2) 待っている間の家賃コスト
値下がりを期待して待つ場合は、待っている間にかかる家賃などの住居費も考慮に入れる必要があります。
例:
- 家賃月10万円で2年間待つ場合:10万円 × 24ヶ月 = 240万円
- マンション価格が240万円下落しても、家賃コストで相殺される
このように、待つことで必ずしも得をするわけではありません。
(3) 金利上昇による購入ハードル上昇
2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除し、住宅ローン金利が上昇傾向にあります。
金利が急激に上昇した場合、住宅ローンの返済負担が増加し、購入のハードルが上がる可能性があります。たとえマンション価格が下落しても、金利上昇により総返済額が増えることもあります。
(4) ライフプラン遅延のリスク
不動産投資は長期のスパンで考える必要があり、短期的な市場変動に左右されないように計画を立てることが重要です。
暴落を待ち続けることで、以下のようなライフプラン遅延のリスクがあります。
- 結婚・出産のタイミングを逃す
- 子どもの教育環境が整わない
- 老後の住まいの確保が遅れる
購入タイミングの判断基準:客観的買い時と個人的買い時
(1) 客観的な買い時(市場価格・金利動向)
客観的な買い時とは、市場価格が安い、住宅ローン金利が低いなど、マーケット状況が買い手に有利な時期です。
判断基準:
- マンション価格が下落傾向にある
- 住宅ローン金利が低い
- 供給戸数が多く、選択肢が豊富
しかし、このような客観的な買い時を正確に予測することは、専門家でも困難です。
(2) 個人的な買い時(ライフステージの変化)
個人的な買い時とは、結婚・出産・転職などライフステージの変化に伴う購入タイミングです。
判断基準:
- 結婚して家族が増える
- 子どもが生まれて広い住まいが必要になる
- 転職して勤務地が変わる
- 親の介護が必要になる
(3) どちらを優先すべきか
買い時には客観的な買い時(市場価格・金利)と個人的な買い時(ライフステージ)の2つの観点があり、2つのタイミングが合うことが理想ですが、優先すべきは個人的な買い時です。
マンション価格の暴落を待つよりも、個人のライフステージの変化(結婚・出産・転職等)に合わせた購入タイミングを優先すべきです。
(4) 専門家への相談の重要性
購入タイミングの判断は、個別の状況(家計の余裕度、ライフステージ、エリア等)により異なります。
ファイナンシャルプランナーや不動産会社などの専門家に相談し、自分に合った購入タイミングを見極めることを推奨します。
まとめ:暴落待ちよりもライフプランを優先すべき理由
マンション価格の暴落を待つことは、暴落が起きない可能性が高く、待っている間に価格がさらに上昇したり、金利が上昇したりするリスクがあります。また、待つ間の家賃コストやライフプラン遅延のリスクも考慮すべきです。
過去30年で大きな不動産価格下落はバブル崩壊・リーマンショックなど3回のみで、頻繁に起こる現象ではありません。専門家でも翌年の価格予測はできず、暴落の時期を正確に予測することは不可能です。
購入タイミングには客観的な買い時(市場価格・金利)と個人的な買い時(ライフステージ)の2つの観点があり、優先すべきは個人的な買い時です。結婚・出産・転職などライフステージの変化に合わせて購入を検討し、ファイナンシャルプランナーや不動産会社などの専門家に相談しながら、自分に合った購入タイミングを見極めることを推奨します。
都心部と地方で価格の二極化が進行しているため、エリアごとに市場動向を個別に判断し、長期的な視点で不動産購入を計画しましょう。
