土地利用の基礎知識|用途地域・地目・土地利用基本計画の3つの分類
土地を購入・活用する際、「どのような建物を建てられるのか」「規制はあるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、土地利用に関する基礎知識(用途地域・地目・土地利用図)と2024年の法改正を、国土交通省や国土地理院の公式情報を元に解説します。
土地購入前に確認すべき事項が明確になり、適切な活用計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- 土地利用には3つの分類(用途地域・地目・土地利用基本計画)があり、それぞれ異なる法律で規制されている
- 用途地域は全13種類(住居系8・商業系2・工業系3)で建物の高さ・種類・用途に制限がある
- 地目は全23種類で登記簿に記載されるが、実際の利用状況と異なる場合があり、地目変更には許可が必要
- 土地利用図は国土地理院のウェブサイトで無料閲覧・ダウンロード可能
- 2024年4月から相続登記が義務化され、土地相続後3年以内に登記しないと10万円以下の過料
(1) 土地利用とは:土地をどのように使うかを定めるルール・制度の総称
土地利用とは、土地をどのような目的で使うか(住宅・商業・農業・工業等)を定めるルール・制度の総称です。
国土交通省によると、日本では都市計画法・不動産登記法・国土利用計画法の3つの法律で土地利用を規制しています。
土地を購入する前に、これらの規制を確認しないと、希望する建物を建てられない・用途変更に多額の費用がかかる等のリスクがあります。
(2) 3つの主要分類:用途地域(都市計画法)、地目(不動産登記法)、土地利用基本計画(国土利用計画法)
土地利用は以下の3つで分類されます。
| 分類 | 根拠法律 | 目的 | 種類数 |
|---|---|---|---|
| 用途地域 | 都市計画法 | 建築規制(高さ・種類・用途) | 13種類 |
| 地目 | 不動産登記法 | 登記上の分類 | 23種類 |
| 土地利用基本計画 | 国土利用計画法 | 都道府県レベルの土地利用方針 | 5地域 |
(出典: 国土交通省)
これらは別々の制度ですが、土地購入時には全て確認する必要があります。
(3) 土地購入前の確認事項:用途地域・地目・ハザードマップで制限と災害リスクを確認
土地購入前に必ず確認すべき事項は以下の3つです。
- 用途地域: 建築可能な建物の種類・高さ・用途を確認(自治体の都市計画マップで閲覧可能)
- 地目: 登記上の土地の種類を確認(法務局の登記簿で閲覧可能)
- ハザードマップ: 水害・土砂災害等のリスクを確認(自治体のウェブサイトで閲覧可能)
特に地目が「農地」の場合、農地法による転用許可が必要であり、無許可で転用すると3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象となります(農地法64条)。
(4) 本記事で解説する内容(用途地域・地目・土地利用図・扇状地・2024年法改正)
本記事では、以下の5つを詳しく解説します。
- 用途地域とは:全13種類の特徴と建築規制・調べ方
- 地目とは:全23種類の分類と地目変更の手続き
- 土地利用図の見方:国土地理院のウェブサイトで無料閲覧・ダウンロード
- 扇状地の土地利用:扇頂・扇央・扇端の特徴と活用方法
- 2024年の法改正:相続登記義務化と土地活用の注意点
用途地域とは|全13種類の特徴と建築規制・調べ方
(1) 用途地域の定義:都市計画法で定められた13種類の地域区分、建物の高さ・種類・用途に制限
用途地域とは、都市計画法で定められた13種類の地域区分です。
建物の高さ・種類・用途に制限があり、住宅地に工場を建てられない・商業地に高層マンションを建てられる等、地域ごとに規制内容が異なります。
用途地域の規制を無視した建築は建築基準法違反となり、是正命令・罰金の対象となるため、土地購入前に必ず確認すべきです。
(2) 住居系8種類:第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、田園住居地域、準住居地域
住居系用途地域は8種類あり、それぞれ異なる規制があります。
| 用途地域 | 建築可能な建物 | 高さ制限 |
|---|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | 戸建て住宅、小規模店舗 | 10m または 12m |
| 第二種低層住居専用地域 | 戸建て住宅、小規模店舗(150㎡以下) | 10m または 12m |
| 第一種中高層住居専用地域 | 戸建て・マンション、中規模店舗 | 制限なし(容積率で規制) |
| 第二種中高層住居専用地域 | 戸建て・マンション、中規模店舗(1,500㎡以下) | 制限なし |
| 第一種住居地域 | 住宅、店舗、事務所(3,000㎡以下) | 制限なし |
| 第二種住居地域 | 住宅、店舗、事務所、一部娯楽施設 | 制限なし |
| 田園住居地域 | 戸建て住宅、農業用施設 | 10m または 12m |
| 準住居地域 | 住宅、店舗、自動車関連施設 | 制限なし |
(出典: 都市計画法)
住居系用途地域では、工場や大規模商業施設の建築が制限されます。
(3) 商業系2種類:近隣商業地域、商業地域
商業系用途地域は2種類あり、店舗・事務所の建築に適しています。
| 用途地域 | 建築可能な建物 | 高さ制限 |
|---|---|---|
| 近隣商業地域 | 店舗、事務所、住宅、娯楽施設 | 制限なし |
| 商業地域 | 店舗、事務所、住宅、娯楽施設、ホテル | 制限なし |
(出典: 都市計画法)
商業系用途地域では、工場や危険物を扱う施設の建築が制限されます。
(4) 工業系3種類:準工業地域、工業地域、工業専用地域
工業系用途地域は3種類あり、工場の建築に適しています。
| 用途地域 | 建築可能な建物 | 高さ制限 |
|---|---|---|
| 準工業地域 | 工場、店舗、事務所、住宅 | 制限なし |
| 工業地域 | 工場、店舗、事務所(住宅は制限あり) | 制限なし |
| 工業専用地域 | 工場のみ(住宅は建築不可) | 制限なし |
(出典: 都市計画法)
工業専用地域では住宅を建築できないため、土地購入前に必ず確認すべきです。
(5) 用途地域の調べ方:自治体の都市計画マップ、不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)で確認可能
用途地域は以下の方法で調べられます。
- 自治体の都市計画マップ: 各自治体のウェブサイトで閲覧可能(無料)
- 不動産ポータルサイト: SUUMO、HOME'S等の物件情報に記載されている場合がある
- 自治体の都市計画課: 電話・窓口で問い合わせ可能
土地購入前に必ず用途地域を確認し、希望する建物を建てられるかを確認してください。
地目とは|全23種類の分類と地目変更の手続き
(1) 地目の定義:不動産登記法で定められた土地の種類(全23種類)、登記簿に記載される
地目とは、不動産登記法で定められた土地の種類(全23種類)です。
登記簿に記載されており、法務局で登記事項証明書を取得することで確認できます。
三井住友トラスト不動産によると、地目は土地の現況と利用目的に応じて定められますが、登記上の地目と実際の利用状況が異なる場合があります。
(2) 主な地目:田・畑・宅地・学校用地・鉄道用地・墓地・公園・運河用地・水道用地・用悪水路・ため池・堤・井溝・保安林・公衆用道路・境内地・雑種地等
地目の全23種類は以下の通りです。
| 地目 | 定義 |
|---|---|
| 田 | 農耕地で用水を利用して耕作する土地 |
| 畑 | 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地 |
| 宅地 | 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地 |
| 学校用地 | 校舎、附属施設の敷地及び運動場 |
| 鉄道用地 | 鉄道の駅舎、附属施設及び路線の敷地 |
| 墓地 | 人の遺体又は遺骨を埋葬する土地 |
| 公園 | 公衆の遊楽のために供する土地 |
| 運河用地 | 運河法第12条第1項第1号又は第2号に掲げる土地 |
| 水道用地 | 専ら給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、ろ水場又は水道線路に要する土地 |
| 用悪水路 | 灌漑用又は悪水はいせつ用の水路 |
| ため池 | 耕地灌漑用の用水貯留池 |
| 堤 | 防水のために築造した堤防 |
| 井溝 | 田畝又は村落の間にある通水路 |
| 保安林 | 森林法に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地 |
| 公衆用道路 | 一般交通の用に供する道路 |
| 境内地 | 境内に属する土地であって、宗教法人法第3条第2号及び第3号に掲げる土地 |
| 雑種地 | 以上のいずれにも該当しない土地 |
(出典: 三井住友トラスト不動産)
(3) 地目変更の手続き:農地転用(農地法)、開発許可(都市計画法)、地目変更登記等が必要
地目を変更する際には、以下の手続きが必要です。
- 農地転用許可(農地法): 田・畑を宅地等に転用する場合、都道府県知事または農業委員会の許可が必要
- 開発許可(都市計画法): 一定規模以上の開発行為を行う場合、都道府県知事の許可が必要
- 地目変更登記: 地目を変更した場合、1ヶ月以内に法務局で地目変更登記を行う必要がある
(4) 農地転用の罰則:無許可転用は3年以下の懲役または300万円以下の罰金(農地法64条)
農地を無許可で転用すると、農地法64条により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象となります。
農地を購入して宅地に転用する場合は、必ず事前に農業委員会または都道府県知事の許可を得てください。
(5) 注意点:登記上の地目と実際の利用状況が異なる場合があり、自治体への事前確認が必須
登記上の地目と実際の利用状況が異なる場合があります(例:登記上は「畑」だが、実際は駐車場として使用)。
土地を購入する際には、登記簿だけでなく、現地を確認し、自治体の農業委員会や都市計画課に事前確認することを推奨します。
土地利用図の見方と入手方法|国土地理院のウェブサイトで無料閲覧・ダウンロード
(1) 土地利用図とは:国土地理院が作成する土地の利用状況を示す地図(5万分の1・20万分の1)
土地利用図とは、国土地理院が作成する土地の利用状況を示す地図です。
全国約9万km²の主要平野部を対象に、5万分の1・20万分の1の縮尺で提供されています。
土地利用図は、田・畑・森林・建物用地・交通施設用地・その他等の分類で色分けされており、土地の利用状況を一目で確認できます。
(2) 閲覧・ダウンロード方法:国土地理院のウェブサイト(https://www.gsi.go.jp/)で無料閲覧・GISデータのダウンロード可能
土地利用図は、国土地理院のウェブサイトで無料閲覧・ダウンロードできます。
国土交通省の国土数値情報では、GISデータ(Shapefile、GeoJSON等)も提供されており、専門的な分析に活用できます。
(3) 土地利用図の活用:国土利用計画・土地利用基本計画の基礎資料、土地購入時の周辺環境確認に利用
土地利用図は、以下の用途で活用されます。
- 国土利用計画・土地利用基本計画の基礎資料: 都道府県・市町村が土地利用計画を策定する際の基礎資料
- 土地購入時の周辺環境確認: 周辺に農地・森林・工業用地がどの程度あるかを確認
- 開発計画の立案: 開発可能性を評価する際の参考資料
(4) 土地利用基本計画:都道府県が5地域(都市・農業・森林・自然公園・自然保全)に区分する計画
国土交通省によると、土地利用基本計画は、都道府県が国土利用計画法に基づき作成する計画です。
土地を5地域(都市・農業・森林・自然公園・自然保全)に区分し、各地域の土地利用方針を定めます。
土地購入時には、土地利用基本計画も確認し、将来的な開発規制の可能性を把握することが重要です。
扇状地の土地利用|扇頂・扇央・扇端の特徴と活用方法
(1) 扇状地とは:河川が山地から平野に出る地点で土砂を堆積して形成される扇形の地形
扇状地とは、河川が山地から平野に出る地点で土砂を堆積して形成される扇形の地形です。
旅の情報〜地理の世界から〜によると、扇状地は扇頂・扇央・扇端の3部分に分かれ、それぞれ異なる特徴があります。
(2) 扇頂部の特徴:傾斜が急、水利が悪く農業に不向き、土石流リスクあり
扇頂部は、河川が山地から平野に出る地点で、以下の特徴があります。
- 傾斜が急: 建物の建築には基礎工事が必要
- 水利が悪い: 地下水位が深く、井戸を掘っても水が出にくい
- 土石流リスク: 大雨時に土石流が発生する可能性がある
扇頂部の土地を購入する場合は、ハザードマップで土石流リスクを確認し、保険加入を検討してください。
(3) 扇央部の特徴:傾斜が緩やか、水はけが良く果樹園(りんご・ぶどう・桃等)に適する
扇央部は、扇状地の中央部分で、以下の特徴があります。
- 傾斜が緩やか: 建物の建築や農業に適している
- 水はけが良い: 降雨後の排水が良く、根腐れしにくい
- 果樹園に適する: りんご・ぶどう・桃等の果樹栽培に最適
旅と地理によると、日本の主要な果樹産地(山梨県・長野県等)は扇央部に位置しています。
(4) 扇端部の特徴:湧水があり、水田・集落が形成される、地下水が豊富
扇端部は、扇状地の末端部分で、以下の特徴があります。
- 湧水がある: 扇頂部から浸透した地下水が湧き出す
- 水田・集落が形成される: 水が豊富なため、水田や集落が発達
- 地下水が豊富: 井戸を掘れば水が出やすい
扇端部の土地は水田や住宅地として適していますが、地下水位が高いため、建物の基礎工事に注意が必要です。
(5) 扇状地の災害リスク:土石流・洪水のリスクがあるため、購入前にハザードマップで確認すべき
扇状地は土石流・洪水のリスクがあります。
特に扇頂部・扇央部は急傾斜地崩壊危険区域に指定されている場合があり、土砂災害警戒区域・特別警戒区域に指定されると建築制限が課される場合があります。
土地を購入する前に、自治体のハザードマップで災害リスクを確認し、必要に応じて火災保険・地震保険に加入してください。
まとめ|2024年の法改正(相続登記義務化)と土地活用の注意点
(1) 2024年4月から相続登記義務化:土地相続後3年以内に登記必須、違反時は10万円以下の過料
東洋経済オンラインによると、2024年4月から相続登記が義務化されました。
土地を相続した場合、相続後3年以内に登記を行う必要があり、違反すると10万円以下の過料が科されます。
相続登記を怠ると、所有者不明土地となり、将来的に売却・活用が困難になる可能性があるため、早めに手続きを行ってください。
(2) 2026年4月から住所変更登記義務化:変更後2年以内に登記必須、違反時は5万円以下の過料
オープンハウスによると、2026年4月から住所変更登記が義務化されます。
住所を変更した場合、変更後2年以内に登記を行う必要があり、違反すると5万円以下の過料が科されます。
住所変更登記は手続きが簡単ですが、忘れやすいため、引っ越し後は早めに手続きを行ってください。
(3) 土地購入前の確認事項:用途地域(13種類)・地目(23種類)・ハザードマップを必ず確認
土地購入前には、以下の3つを必ず確認してください。
- 用途地域: 建築可能な建物の種類・高さ・用途を確認
- 地目: 登記上の土地の種類を確認(農地の場合は農地法の転用許可が必要)
- ハザードマップ: 水害・土砂災害等のリスクを確認
これらを確認せずに土地を購入すると、希望する建物を建てられない・多額の転用費用がかかる等のリスクがあります。
(4) 土地活用の注意点:農地転用は農地法の許可が必要、用途地域の規制を無視した建築は違法建築となる
土地活用時の注意点は以下の通りです。
- 農地転用は農地法の許可が必要: 無許可転用は3年以下の懲役または300万円以下の罰金の対象
- 用途地域の規制を無視した建築は違法建築: 是正命令・罰金の対象となる
これらの規制を守らないと、法的リスクを負うことになるため、必ず事前に自治体に確認してください。
(5) 専門家への相談:土地活用の具体的な計画は、宅建士・土地家屋調査士・建築士等への相談を推奨
土地活用の具体的な計画を立てる際には、以下の専門家への相談を推奨します。
- 宅地建物取引士: 土地の売買・賃貸借契約に関する相談
- 土地家屋調査士: 地目変更登記・境界確定測量に関する相談
- 建築士: 建築計画・建築確認申請に関する相談
専門家に相談することで、法的リスクを回避し、適切な土地活用計画を立てられます。
