土地を買うには何から始めればいいのか
土地を初めて購入する方にとって、「何から始めればいいのか」「どんな手順で進めるのか」は大きな不安です。土地購入は、注文住宅を建てたい、投資目的、事業用地として活用したいなど、目的によって選び方や確認すべきポイントが異なります。
この記事では、土地購入の全体フロー(予算設定→エリア選定→物件探し→現地調査→契約→登記)を7つのステップで解説します。各段階での確認ポイント(接道義務・用途地域・地盤・ハザードマップ)と、専門家(宅地建物取引士・土地家屋調査士・司法書士)の役割も明示します。
失敗しない土地購入のために、必要な知識と注意点をしっかり押さえましょう。
この記事のポイント
- 土地購入は7ステップで進める(予算設定→土地探し→買付証明書→ローン審査→売買契約→決済→引渡し)
- 土地代金の他に諸費用が5〜10%(2,000万円の土地なら100万〜200万円)必要
- 用途地域・建ぺい率・容積率を確認し、希望する建物が建てられるか確認することが必須
- 地盤調査・ハザードマップで災害リスクを確認、境界確定の有無も重要
- 専門家(宅建士・土地家屋調査士・司法書士)への相談が失敗を避けるカギ
土地購入の基礎知識とメリット
(1) 土地購入のメリット(注文住宅を自由に建てられる、資産形成等)
土地を購入することで、以下のようなメリットがあります。
注文住宅を自由に建てられる:
- 自分の希望する間取り・デザインの住宅を建てられる
- 建売住宅にはない、オリジナルの住まいを実現できる
資産形成になる:
- 土地は減価償却されず、資産として残る
- 将来的に売却したり、相続財産として次世代に引き継いだりできる
投資・事業用地として活用できる:
- 賃貸住宅を建てて家賃収入を得る
- 駐車場・店舗・事業用地として活用する
ただし、土地購入には大きな資金が必要で、購入後も固定資産税が毎年かかります。メリットとデメリットを理解した上で判断しましょう。
(2) 土地購入の目的(注文住宅建築・投資・事業用地等)
土地購入の目的は大きく3つに分類されます。
注文住宅建築:
- 自分の理想の住まいを建てたい
- 建売住宅では満足できない方
投資目的:
- 賃貸住宅を建てて家賃収入を得たい
- 土地の値上がり益を期待したい
事業用地:
- 店舗・事務所・工場等を建てたい
- 事業拡大のための土地を確保したい
目的によって、選ぶべき土地の立地・用途地域・規模が異なります。自分の目的を明確にしてから土地探しを始めましょう。
(3) 用途地域と建築制限の基礎知識
土地には「用途地域」という都市計画法で定められた制限があり、建築できる建物の種類が限定されています。
主な用途地域:
- 住居系(第一種低層住居専用地域、第二種住居地域等):住宅・小規模店舗が中心、工場は建築不可
- 商業系(近隣商業地域、商業地域):店舗・事務所・商業施設が可能
- 工業系(準工業地域、工業地域等):工場・倉庫が中心、住宅は制限される場合がある
建ぺい率・容積率:
- 建ぺい率:敷地面積に対する建築面積の割合の上限(30%〜80%)
- 容積率:敷地面積に対する延床面積の割合の上限(50%〜1300%)
用途地域により、希望する建物が建てられない場合があります。購入前に必ず市役所・区役所の都市計画課で確認しましょう。
土地購入の流れ(7ステップ詳細)
(1) ステップ1:予算設定と資金計画
土地購入の第一歩は、予算設定と資金計画です。
予算に含めるべき項目:
- 土地代金
- 諸費用(仲介手数料、登記費用、税金等):土地代金の5〜10%
- 地盤改良工事費用(必要に応じて):数十万〜数百万円
- 建物建築費用(注文住宅を建てる場合)
資金調達方法:
- 自己資金:頭金として総費用の10〜30%を準備することが推奨される
- 住宅ローン:金融機関から借り入れ(土地購入と建物建築を合わせて借りることも可能)
土地購入に予算を使いすぎて、建物の予算が不足しないよう、総合的な資金計画を立てましょう。
(2) ステップ2:エリア選定と土地探し(LIFULL HOME'S、SUUMO、アットホーム等)
予算が決まったら、希望するエリアで土地を探します。
土地探しの方法:
- ポータルサイト:LIFULL HOME'S、SUUMO、アットホーム等で検索
- 不動産会社:地域密着型の不動産会社に相談(ネットに出ていない物件情報もある)
- 自治体の空き家バンク:地方移住を検討している場合
エリア選定のポイント:
- 駅・学校・スーパー・病院などの生活施設へのアクセス
- 通勤・通学の利便性
- 周辺環境(静かさ、治安、近隣住民の様子)
複数の候補地を選び、次のステップで現地調査を行います。
(3) ステップ3:買付証明書の提出(撤回可能、ペナルティなし)
気に入った土地が見つかったら、「買付証明書」を不動産会社経由で売主に提出します。
買付証明書とは:
- 購入意思を表明する書類
- 金銭のやりとりはなく、撤回してもペナルティはない
- 購入希望価格、購入条件を記載
注意点:
- 買付証明書は法的拘束力がないため、売主が他の購入希望者を優先する可能性もある
- 本気で購入したい場合は、早めに提出することが重要
(4) ステップ4:ローン仮審査(3〜7営業日で結果)
買付証明書提出後、住宅ローンの仮審査を申し込みます。
仮審査の流れ:
- 買付証明書提出後1〜2週間以内に申込み
- 金融機関が年収・勤務先・信用情報を審査
- 3〜7営業日で結果が出る
仮審査で必要な書類:
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)
- 収入証明書(源泉徴収票、確定申告書等)
- 購入予定の土地の資料(物件概要書、公図等)
仮審査に通過すると、次のステップで売買契約を結びます。
(5) ステップ5:売買契約(重要事項説明、手付金支払い)
ローン仮審査に通過したら、売買契約を結びます。
売買契約の流れ:
- 重要事項説明:宅地建物取引士が土地の権利関係・法的制限・設備状況等を説明
- 契約書の確認:売買契約書の内容を確認(購入価格、支払い時期、引渡し日等)
- 手付金の支払い:土地代金の10%程度を手付金として支払う
重要事項説明で確認すべきポイント:
- 用途地域・建ぺい率・容積率
- 接道義務(幅4m以上の道路に2m以上接しているか)
- 地盤の状態、ハザードマップ上のリスク
- 境界確定の有無
- 埋蔵文化財包蔵地か否か
不明点があれば、その場で質問し、納得してから契約することが重要です。
(6) ステップ6:ローン本審査と決済準備
売買契約後、住宅ローンの本審査を申し込みます。
本審査の流れ:
- 売買契約書、重要事項説明書を金融機関に提出
- 金融機関が土地の担保価値を詳細に審査
- 1〜2週間で結果が出る
本審査で必要な書類:
- 売買契約書
- 重要事項説明書
- 収入証明書、本人確認書類
- 住民票、印鑑証明書
本審査に通過すると、決済日を設定します。
(7) ステップ7:決済・所有権移転登記・引渡し
決済日に、残代金を支払い、所有権移転登記を行います。
決済の流れ:
- 残代金の支払い:土地代金から手付金を引いた残額を支払う
- 所有権移転登記:司法書士が法務局で所有権移転登記を行う
- 引渡し:土地の鍵(境界標の位置等)を確認し、引渡し完了
決済日に必要なもの:
- 残代金(銀行振込または現金)
- 印鑑証明書、住民票
- 実印
- 司法書士への報酬(5万〜10万円程度)
決済が完了すると、土地はあなたの所有となります。
土地探しの方法と現地調査のポイント
(1) 土地探しの方法(ポータルサイト、不動産会社、自治体の空き家バンク等)
土地探しには、以下の方法があります。
ポータルサイト:
- LIFULL HOME'S、SUUMO、アットホーム等で検索
- エリア・価格・面積で絞り込み可能
- 最新の物件情報が日々更新されている
不動産会社:
- 地域密着型の不動産会社に相談
- ネットに出ていない未公開物件情報もある
- 地域の相場・環境に詳しい
自治体の空き家バンク:
- 地方移住を検討している場合
- 相場より安い物件が見つかることもある
複数の方法を組み合わせて、幅広く情報を集めましょう。
(2) 現地調査のポイント(日当たり・騒音・周辺環境、複数回訪問)
気になる土地が見つかったら、必ず現地を訪問して調査します。
現地調査のポイント:
- 日当たり:午前・午後・夕方と時間を変えて確認
- 騒音:平日・休日、昼・夜で騒音レベルを確認
- 周辺環境:近隣住民の様子、ゴミ置き場の状態、治安
- 道路幅員:幅4m以上の道路に2m以上接しているか(接道義務)
- 高低差:道路と敷地に高低差がある場合、擁壁工事や盛土が必要
複数回訪問する:
- 異なる時間帯(朝・昼・夕方・夜)で訪問
- 異なる天候(晴れ・雨)で訪問
現地を実際に見ることで、ネット情報だけでは分からない問題点が見つかることがあります。
(3) 用途地域・建ぺい率・容積率の確認
購入前に、用途地域・建ぺい率・容積率を確認し、希望する建物が建てられるか確認しましょう。
確認方法:
- 市役所・区役所の都市計画課で「都市計画図」を閲覧
- インターネットで自治体の都市計画情報を検索
- 宅地建物取引士や建築士に相談
建ぺい率・容積率の計算例:
- 敷地面積:100㎡
- 建ぺい率:60%
- 容積率:200%
→ 建築面積の上限:100㎡ × 60% = 60㎡ → 延床面積の上限:100㎡ × 200% = 200㎡
この土地には、建築面積60㎡、延床面積200㎡までの建物が建てられます。
(4) 接道義務と道路幅員の確認(幅4m以上の道路に2m以上接する)
建築基準法により、建物を建てる土地は「幅4m以上の道路に2m以上接していなければならない」と定められています(接道義務)。
確認方法:
- 現地で道路幅員を測定(メジャーで測る)
- 市役所・区役所の建築指導課で「道路台帳」を確認
- 宅地建物取引士に確認
接道義務を満たさない場合:
- 建物が建てられない(再建築不可)
- 価格は安いが、住宅ローンが組めない場合が多い
接道義務を満たさない土地は、購入を避けることを推奨します。
(5) 地盤調査とハザードマップの確認
地盤が弱い土地や、災害リスクの高い土地は、追加費用が発生したり、資産価値が低下したりする可能性があります。
地盤調査:
- スウェーデン式サウンディング試験(費用5万〜10万円)
- 地盤改良が必要かどうかを判定
- 地盤が弱い場合、地盤改良工事で数十万〜数百万円の追加費用が発生
ハザードマップの確認:
- 洪水ハザードマップ(浸水想定区域)
- 土砂災害ハザードマップ(土砂災害警戒区域)
- 地震による液状化予測図
これらは各自治体のホームページで公開されています。ハザードマップで「警戒区域」「浸水想定区域」に該当する土地は、以下のリスクがあります。
- 火災保険・水災保険の保険料が高くなる
- 住宅ローンの審査が厳しくなる可能性がある
- 大雨時の避難が必要になる場合がある
購入前に必ず確認し、リスクを理解した上で判断しましょう。
(6) 境界確定の有無の確認(未確定の場合は3ヶ月以上かかる)
土地の境界が確定しているか確認しましょう。
境界確定とは:
- 隣地との境界線を明確にし、境界標を設置すること
- 境界が確定していない土地は、トラブルの原因になる
境界未確定の場合:
- 境界確定に3ヶ月以上かかる
- 測量費用が10万〜50万円程度かかる
- 隣地所有者との立ち会いが必要
境界が未確定の土地は、売主に境界確定を依頼するか、購入を見送ることを検討しましょう。
土地購入にかかる費用内訳
(1) 土地代金以外の諸費用(5〜10%が目安)
土地購入には、土地代金以外に諸費用が5〜10%必要です。
諸費用の内訳:
- 仲介手数料
- 登記費用(登録免許税 + 司法書士報酬)
- 不動産取得税
- 地盤改良工事費用(必要に応じて)
- その他(印紙税、火災保険等)
例:2,000万円の土地を購入する場合、諸費用は100万〜200万円が目安です。
(2) 仲介手数料(土地価格の3%+6万円+消費税が上限)
不動産会社に支払う仲介手数料は、以下の計算式で算出されます。
仲介手数料の上限:
- 土地価格の3% + 6万円 + 消費税
計算例(土地価格2,000万円の場合):
- 2,000万円 × 3% + 6万円 = 66万円
- 消費税10%を加算:66万円 × 1.1 = 72.6万円
仲介手数料は、売買契約時に半額、決済時に残額を支払うのが一般的です。
(3) 登記費用(登録免許税2%+司法書士報酬5万〜10万円程度)
所有権移転登記にかかる費用は、以下の2つです。
登録免許税:
- 土地の固定資産税評価額 × 2%
- 例:固定資産税評価額1,500万円の土地の場合、30万円
司法書士報酬:
- 5万〜10万円程度(地域・司法書士により異なる)
登記費用は、決済日に司法書士に支払います。
(4) 不動産取得税(固定資産税評価額の3%)
土地購入時に課される税金です。
不動産取得税:
- 土地の固定資産税評価額 × 3%
- 例:固定資産税評価額1,500万円の土地の場合、45万円
軽減措置:
- 住宅用地の場合、一定の要件を満たすと軽減措置が適用される
- 詳細は自治体の税務課に確認
不動産取得税は、購入後6ヶ月〜1年後に納税通知書が届きます。
(5) 地盤改良工事費用(数十万〜数百万円、地盤により異なる)
地盤が弱い土地の場合、地盤改良工事が必要になります。
地盤改良工事の種類と費用:
| 工事の種類 | 内容 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 表層改良 | 地表から2m程度をセメントで固める | 50万〜100万円 |
| 柱状改良 | セメントの柱を地中に打ち込む | 80万〜150万円 |
| 鋼管杭 | 鋼管を地中に打ち込む | 100万〜200万円 |
工事費用は地盤の状態により大きく変動します。購入前に地盤調査を依頼し、見積もりを取ることを推奨します。
(6) 諸費用の資金計画への組み込み
諸費用は、資金計画に必ず組み込みましょう。
資金計画の例(土地価格2,000万円の場合):
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 土地代金 | 2,000万円 |
| 仲介手数料 | 72.6万円 |
| 登記費用 | 35万円 |
| 不動産取得税 | 45万円 |
| 地盤改良工事 | 100万円 |
| その他 | 10万円 |
| 合計 | 2,262.6万円 |
土地代金だけでなく、諸費用を含めた総額を準備する必要があります。
まとめ:土地購入を成功させるためのポイント
土地購入は、予算設定→エリア選定→物件探し→現地調査→契約→登記という7つのステップで進みます。土地代金の他に諸費用が5〜10%必要で、2,000万円の土地なら100万〜200万円が目安です。
以下のチェックリストを活用して、失敗しない土地購入を実現しましょう。
土地購入成功のチェックリスト:
- 予算設定と資金計画(諸費用を含める)
- 用途地域・建ぺい率・容積率を確認(市役所・区役所の都市計画課)
- 接道義務を確認(幅4m以上の道路に2m以上接する)
- 現地を複数回訪問(異なる時間帯・天候で日当たり・騒音確認)
- 地盤調査とハザードマップで災害リスクを確認
- 境界確定の有無を確認(未確定の場合は3ヶ月以上かかる)
- 専門家(宅建士・土地家屋調査士・司法書士)に相談
- 複数の業者から提案を受け、比較検討する
土地購入は大きな投資です。専門家に相談しながら、無理のない資金計画を立て、後悔のない土地選びを実現してください。
