一団の土地とは?どんな場面で問題になるか
複数の筆に分かれた土地を所有・相続する際、「一団の土地として扱われるのか」「税金の計算はどうなるのか」「届出は必要か」といった疑問を持つ方は少なくありません。
この記事では、一団の土地の定義、国土利用計画法での届出義務、相続税・固定資産税の評価への影響、分筆・合筆が税額に与える影響を、国土交通省や国税庁の公式情報を元に解説します。
土地取引や相続を検討している方が、一団の土地の扱いを正確に理解できるようになります。
この記事のポイント
- 一団の土地とは、登記上の筆数に関わらず一体として利用されている土地のまとまりを指す
- 国土利用計画法では、市街化区域2,000㎡以上の土地取引で届出が必要
- 複数の契約でも合計面積が基準以上なら全契約で届出が必要
- 相続税評価では、地目が異なっても一体利用なら一団として評価する場合がある
- 2018年に広大地評価は廃止され「地積規模の大きな宅地の評価」に改正された
(1) 土地取引の届出義務
国土利用計画法では、一定面積以上の土地取引に届出義務があります。個々の契約が基準未満でも、一団の土地として合計面積が基準以上になる場合は、全契約で届出が必要です。
届出を怠ると、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となるため、注意が必要です。
(2) 相続税・固定資産税の評価
相続税や固定資産税の評価では、土地の評価単位が問題になります。一団の土地として評価されるか、個別に評価されるかで、税額が変わる可能性があります。
相続税評価における一団の土地の判定は複雑なため、税理士や不動産鑑定士への相談を推奨します。
一団の土地の定義と判断基準
(1) 一団の土地の基本的な定義
一団の土地とは、登記上の筆数に関わらず、一体として利用されている(または利用可能な)土地のまとまりを指します。
例えば、以下のような場合が該当します。
- 複数の筆に分かれているが、駐車場として一体利用されている土地
- 隣接する複数の筆を一つの敷地として住宅が建っている土地
- 道路で分断されているが、同一所有者が一体利用している土地
(2) 物理的な連続性の判断(道路で分断されている場合)
道路で分断されている土地でも、一体利用が可能なら一団の土地と判断される場合があります。
京都府の解説によると、以下のような場合でも一団の土地として扱われることがあります。
- 道路を挟んで向かい合う土地を駐車場として一体利用
- 公図上は道路で分断されているが、実際には通行路として利用されている
ただし、判断は個別事情により異なるため、自治体や専門家に確認することが重要です。
(3) 一体利用の判断(利用状況が一体かどうか)
一体利用の判断では、以下の要素が考慮されます。
- 物理的連続性: 土地が隣接しているか
- 利用の一体性: 駐車場・宅地・畑等として一体利用されているか
- 所有者の同一性: 同一の所有者であるか(相続税評価の場合)
これらの要素を総合的に判断して、一団の土地かどうかが決まります。
国土利用計画法における一団の土地の届出制度
(1) 届出が必要な面積基準(市街化区域2,000㎡以上など)
国土交通省の土地取引規制制度によると、届出が必要な面積基準は以下の通りです。
| 区域 | 届出が必要な面積 |
|---|---|
| 市街化区域 | 2,000㎡以上 |
| 市街化調整区域 | 5,000㎡以上 |
| 都市計画区域外 | 10,000㎡以上 |
(出典: 国土交通省)
個々の契約が基準未満でも、一団の土地として合計面積が基準以上なら、全契約で届出が必要です。
(2) 一団の土地の面積計算方法
一団の土地の面積は、複数の筆の合計面積で計算されます。
例えば、以下のような場合です。
- A筆(1,000㎡)とB筆(1,200㎡)を同時に購入 → 合計2,200㎡で届出が必要(市街化区域の場合)
- 3ヶ月以内にC筆(800㎡)とD筆(1,300㎡)を別々に購入 → 合計2,100㎡で全契約に届出が必要
一団の土地に該当するかは、取引時期・場所・利用状況により判断されるため、不動産会社や自治体に確認してください。
(3) 届出を怠った場合の罰則(6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金)
国土利用計画法の届出を怠ると、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となります。
届出は契約締結日から2週間以内に行う必要があるため、土地取引の際は事前に届出の要否を確認しましょう。
相続税評価における一団の土地の扱い
(1) 1画地の宅地とは(評価単位の考え方)
国税庁の解説によると、相続税評価では「1画地の宅地」を評価単位とします。
1画地の宅地とは、利用の単位となっている1区画の宅地を指します。登記上の筆数に関わらず、一体利用されている土地は1画地として評価されます。
例えば、以下のような場合です。
- 3筆にまたがる住宅敷地 → 1画地として評価
- 駐車場として一体利用されている5筆 → 1画地として評価
(2) 地目が異なる土地を一団として評価する場合
国税庁の質疑応答事例によると、地目が異なる土地でも、一体利用されている場合は一団として評価することがあります。
例えば、宅地と畑が一体利用されている場合、主たる地目(宅地)として評価されます。
ただし、判断は個別事情により異なるため、税理士への相談を推奨します。
(3) 広大地評価の廃止と地積規模の大きな宅地の評価(2018年改正)
2018年の税制改正で、「広大地評価」は廃止され、「地積規模の大きな宅地の評価」が導入されました。
広大地評価(2017年以前):
- 周辺の標準的宅地より著しく広い土地に適用
- 要件が不明確で争いが多かった
地積規模の大きな宅地の評価(2018年以降):
- 三大都市圏は500㎡以上、それ以外は1,000㎡以上
- 要件が明確化され、判定がしやすくなった
2018年以前の情報を参照している場合は、最新の制度に基づいて評価してください。
分筆・合筆が税額や届出に与える影響
(1) 分筆による評価額への影響
分筆とは、1筆の土地を複数筆に分けることです。分筆により、以下の影響が考えられます。
- 相続税評価: 1画地の宅地が複数画地に分かれることで、評価単位が変わる可能性がある
- 固定資産税: 分筆後の各筆が別々に評価されることで、税額が変わる可能性がある
ただし、分筆しても一体利用が継続される場合は、1画地として評価されることもあります。
(2) 合筆による一団の土地の判定への影響
合筆とは、複数筆の土地を1筆にまとめることです。合筆により、以下の影響が考えられます。
- 国土利用計画法: 合筆後の面積が届出基準を超える場合、届出が必要になる
- 相続税評価: 合筆により1画地として評価されやすくなる
ただし、合筆の効果は個別事情により異なるため、専門家への相談を推奨します。
(3) 具体的な検討が必要なケース
以下のような場合は、分筆・合筆の影響を慎重に検討する必要があります。
- 相続税の節税を目的とした分筆・合筆
- 土地取引の届出を回避するための分筆
- 固定資産税の軽減を目的とした分筆
これらの判断は税務上のリスクを伴うため、必ず税理士や不動産鑑定士に相談してください。
まとめ:一団の土地の判定は専門家へ相談を
一団の土地とは、登記上の筆数に関わらず、一体として利用されている土地のまとまりを指します。国土利用計画法では市街化区域2,000㎡以上の土地取引で届出が必要で、複数の契約でも合計面積が基準以上なら全契約で届出が必要です。
相続税評価では、地目が異なっても一体利用なら一団として評価する場合があり、2018年に広大地評価は廃止され「地積規模の大きな宅地の評価」に改正されました。
一団の土地の判定は、法律(国土利用計画法)と税法(相続税法)で定義が異なる場合があり、個別事情により判断が分かれます。分筆・合筆が税額や届出に与える影響も複雑なため、土地取引や相続を検討する際は、必ず税理士・不動産鑑定士・宅地建物取引士に相談し、専門家の助言を受けながら進めることをおすすめします。
