土地改良事業団体連合会とは・役割と不動産との関係を解説

著者: Room Match編集部公開日: 2025/11/17

土地改良事業団体連合会とは|役割と不動産との関係

農地の売買や転用を検討する際、「土地改良事業団体連合会とは何か」「農地転用時に手続きが必要なのか」「除外決済金はいくらかかるのか」といった疑問を持つ方は少なくありません。

この記事では、土地改良事業団体連合会の役割、農地転用時の除外手続きと費用、各都道府県の連合会一覧を解説します。農林水産省の土地改良事業情報国税庁の通達等の公的データを元に、農地取引・転用時の注意点を提供します。

農地を所有または購入検討中の方でも、土地改良区の除外手続きや税務処理を理解し、スムーズに農地転用を進められるようになります。

この記事のポイント

  • 土地改良事業団体連合会は各都道府県に1団体ずつ存在し、農業基盤整備を支援する公的法人
  • 農地転用時は土地改良区からの除外が必要で、除外決済金(100-500円/㎡)を支払う
  • 除外決済金は税務上の譲渡費用として計上でき、確定申告時に活用できる
  • 2024年現在、土地改良施設の53%が標準耐用年数を超過し、老朽化が進行中
  • 農地転用には農業委員会の許可が必要で、通常6週間程度の期間がかかる

土地改良事業団体連合会の主な業務内容

土地改良事業団体連合会は、土地改良区や市町村等の協同組織で、農業基盤整備を支援する公的法人です。農林水産省によると、1957年に制度化され、各都道府県に1団体ずつ存在します。

(1) 技術支援・指導

土地改良事業団体連合会は、土地改良区や市町村が実施する土地改良事業に対して、技術支援・指導を行います。

技術支援の内容

  • 用排水路の設計・施工に関する技術指導
  • 農道整備の計画策定支援
  • 土地改良施設の維持管理に関する助言
  • 防災・減災対策の技術的支援

これらの支援により、効率的な農業基盤整備が実現されています。

(2) 情報提供・調査研究

土地改良事業に関する情報提供や調査研究も主要な業務です。

情報提供の例

  • 土地改良事業の法制度に関する情報提供
  • 補助金・助成金の申請支援
  • 先進事例の紹介
  • 農地転用時の手続きに関する相談対応

全国水土里ネット(全国土地改良事業団体連合会)では、全国の事例やノウハウを集約し、各都道府県の連合会と情報共有を行っています。

(3) 土地改良事業の実施支援

土地改良事業の実施には、受益地区の3分の2以上の同意が必要です。連合会は、同意取得の支援や事業計画の策定支援を行います。

実施支援の流れ

  1. 事業計画の策定支援
  2. 地権者への説明会開催支援
  3. 同意取得の手続き支援
  4. 国や都道府県知事への申請支援

これらの支援により、スムーズな事業実施が可能になります。

農地転用時の土地改良区除外手続きと費用

(1) 土地改良区からの除外が必要な理由

土地改良区内の農地を宅地等に転用する際は、土地改良区からの除外手続きが必要です。

除外が必要な理由

  • 土地改良施設の恩恵を受けなくなるため: 農業用水路やため池等の恩恵を受けなくなる土地は、除外決済金を支払って除外する必要がある
  • 農地転用許可の要件: 除外手続きを怠ると、農業委員会の農地転用許可が下りない
  • 公平性の確保: 土地改良施設の整備費用を負担した他の組合員との公平性を保つ

(2) 除外決済金の相場(100-500円/㎡)

国税庁の通達によると、除外決済金の相場は100-500円/㎡が一般的です。

除外決済金の計算例

土地面積 単価 除外決済金
300㎡ 100円/㎡ 3万円
300㎡ 300円/㎡ 9万円
300㎡ 500円/㎡ 15万円

除外決済金の金額は土地改良区ごとに異なるため、事前に管轄の土地改良区に確認してください。

(3) 意見書発行手数料と手続き期間

農地転用時には、土地改良区から意見書を発行してもらう必要があります。

意見書発行の手続き

  • 発行手数料: 数千円程度(土地改良区により異なる)
  • 発行期間: 通常2-4週間
  • 必要書類: 農地転用許可申請書、位置図、公図等

意見書は農業委員会への農地転用許可申請時に必要です。発行期間を考慮し、早めに手続きを進めることを推奨します。

(4) 除外決済金の税務処理(譲渡費用として計上可能)

国税庁の通達によると、除外決済金は税務上の譲渡費用として計上できます。

税務処理の方法

譲渡所得 = 譲渡収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)
譲渡費用に除外決済金を含めることで、譲渡所得税を軽減できる

確定申告時に除外決済金の領収書を添付し、譲渡費用として計上してください。詳細は税理士等の専門家に相談することを推奨します。

各都道府県の土地改良事業団体連合会一覧

(1) 主要都道府県の連合会(栃木・新潟・愛知・福岡等)

各都道府県に1団体ずつ土地改良事業団体連合会が存在します。

主要都道府県の連合会例

都道府県 連合会名 愛称(水土里ネット)
栃木県 栃木県土地改良事業団体連合会 水土里ネットとちぎ
新潟県 新潟県土地改良事業団体連合会 水土里ネットにいがた
愛知県 愛知県土地改良事業団体連合会 水土里ネットあいち
福岡県 福岡県土地改良事業団体連合会 水土里ネットふくおか
大分県 大分県土地改良事業団体連合会 水土里ネットおおいた
千葉県 千葉県土地改良事業団体連合会 水土里ネットちば
長野県 長野県土地改良事業団体連合会 水土里ネットながの
岩手県 岩手県土地改良事業団体連合会 水土里ネットいわて
宮崎県 宮崎県土地改良事業団体連合会 水土里ネットみやざき
兵庫県 兵庫県土地改良事業団体連合会 水土里ネットひょうご
鹿児島県 鹿児島県土地改良事業団体連合会 水土里ネットかごしま
石川県 石川県土地改良事業団体連合会 水土里ネットいしかわ

この他、全47都道府県に連合会が存在します。

(2) 問い合わせ先の確認方法

各都道府県の土地改良事業団体連合会の問い合わせ先は、以下の方法で確認できます。

確認方法

  1. 全国水土里ネットの公式サイトで都道府県組織一覧を確認
  2. 「水土里ネット + 都道府県名」で検索し、公式サイトにアクセス
  3. 各都道府県の農林水産部局に問い合わせ

農地転用や土地改良区の除外手続きに関する相談は、管轄の連合会または土地改良区に直接問い合わせてください。

(3) 水土里ネットの全国組織

水土里ネットは、土地改良事業団体連合会の愛称で、「水」「土」「里」を守り育てる活動を行っています。

水土里ネットの活動

  • 土地改良施設の維持管理
  • 防災・減災対策
  • 環境保全活動
  • 地域住民との連携(農業体験イベント等)

全国水土里ネットでは、全国の活動事例や技術情報を発信しています。

2024年の動向|土地改良法の見直しと施設老朽化

(1) 土地改良施設の53%が耐用年数超過

JAcomによると、2024年現在、土地改良施設の53%(12,413箇所)が標準耐用年数を超過しています。

施設老朽化の現状

施設種類 標準耐用年数 耐用年数超過率
用排水路 約40年 53%超過
農道 約20年 53%超過
ため池 約50年 53%超過

10年後には、土地改良施設の69%(16,248箇所)が耐用年数を超過する見込みです。これにより、維持管理費用が今後増加する可能性があります。

(2) 土地改良法の見直し方向性

2024年12月に土地改良法の見直しが進行中です。

見直しのポイント

  • 国や都道府県の発意で事業実施: 地権者の同意要件を緩和し、国や都道府県が主導して事業を実施できるようにする
  • 防災・減災対策の強化: 水害や土砂崩れ対策を迅速に実施できる仕組みを整備
  • スマート農業への対応: ICT・AI・ロボット等の先端技術を活用した農業基盤整備を推進
  • 水田の畑地化: 需要に応じた作物転換を促進するため、水田を畑地化する事業を支援

これらの見直しにより、効率的な農業基盤整備と災害対策が期待されています。

(3) 防災・減災・スマート農業への対応

土地改良法の見直しでは、防災・減災・スマート農業への対応が重点項目です。

具体的な対応策

  • 防災・減災: ため池や排水機場の耐震化、浸水対策
  • スマート農業: 自動給水システム、ドローン活用のための農道整備
  • 環境配慮: 生態系保全、地下水涵養機能の維持

これらの対応により、持続可能な農業と安全な地域社会の実現を目指しています。

まとめ|農地取引・転用時の注意点と相談先

土地改良事業団体連合会は各都道府県に1団体ずつ存在し、農業基盤整備を支援する公的法人です。農地転用時は土地改良区からの除外が必要で、除外決済金(100-500円/㎡)を支払います。除外決済金は税務上の譲渡費用として計上でき、確定申告時に活用できます。

除外手続きを怠ると農地転用許可が下りないため、事前に管轄の土地改良区に相談してください。農地転用には農業委員会の許可が必要で、通常6週間程度の期間がかかります。除外手続きと並行して進めることを推奨します。

2024年現在、土地改良施設の53%が標準耐用年数を超過し、老朽化が進行中です。土地改良法の見直しも進行中で、防災・減災・スマート農業への対応が進められています。農地取引・転用を検討する際は、全国水土里ネットや各都道府県の連合会に相談し、適切な手続きを進めてください。

よくある質問

Q1土地改良事業団体連合会とは何?

A1土地改良区や市町村等の協同組織で、農業基盤整備を支援する公的法人です。各都道府県に1団体ずつ存在し、技術支援・指導や情報提供を行っています。愛称は「水土里ネット」で、全国組織として全国水土里ネット(https://www.inakajin.or.jp/)があります。

Q2農地転用時に土地改良区の除外が必要なのはなぜ?

A2土地改良施設(農業用水路・ため池等)の恩恵を受けなくなるため、除外決済金を支払って除外する必要があります。除外手続きを怠ると農業委員会の農地転用許可が下りません。詳細は管轄の土地改良区に確認してください。

Q3除外決済金の相場はいくら?

A3100-500円/㎡が一般的で、300㎡で約3-15万円です。金額は土地改良区ごとに異なるため、事前に確認が必要です。除外決済金は税務上の譲渡費用として計上でき、確定申告時に活用できます。詳細は国税庁の通達(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/joto-sanrin/070622/01.htm)を確認してください。

Q4土地改良区と土地改良事業団体連合会の違いは?

A4土地改良区は個別の地区組織で、農地の所有者・耕作者で構成され、土地改良施設を管理・運営します。土地改良事業団体連合会は都道府県単位の協同組織で、土地改良区や市町村に対して技術支援・指導を行います。

Q5農地転用の手続きにはどれくらい期間がかかる?

A5農業委員会の許可が必要で、通常6週間程度の期間がかかります。土地改良区からの意見書発行には2-4週間かかるため、除外手続きと並行して進めることを推奨します。詳細は管轄の農業委員会に確認してください。

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Room Match編集部

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