個人間で不動産売買はできるのか:法的な可否と実務上の課題
「知人と不動産売買をしたいが、仲介業者を通さず個人間で取引できるのか」と悩んでいる方は少なくありません。
この記事では、個人間での不動産売買の法的な可否、メリット・デメリット、手続きの流れ、必要書類、トラブル事例と回避法を、不動産ポータルサイト(ホームズ、イエステーション等)や国土交通省の不動産取引価格情報、国税庁の税制情報を元に解説します。
個人間売買を検討している方が、リスクを理解した上で適切に判断できるようになります。
この記事のポイント
- 個人間売買は法的に可能だが、専門的な知識が必要で高リスク
- 仲介手数料(物件価格の3%+6万円+消費税)は不要だが、司法書士費用(数万〜5万円)は必要
- 住宅ローンの審査が非常に厳しく、重要事項説明書がないと審査に通りにくい
- 契約不適合責任、代金未払い、境界トラブル等のリスクがある
- 専門家(司法書士、行政書士、宅建士、税理士)への相談が必須
(1) 個人間売買は法的に可能だが専門的な知識が必要
不動産の個人間売買は、法的には可能です。宅地建物取引業法は、不動産会社(宅地建物取引業者)の業務を規制する法律であり、個人間の取引を禁止するものではありません。
ただし、個人間売買では以下の専門的な知識が必要です。
- 売買契約書の作成: 必須記載事項(売買代金、支払い方法、引き渡し時期、契約不適合責任等)を漏れなく記載
- 適正価格の設定: 国土交通省の土地総合情報システムや不動産情報サイトで相場を調べる
- 所有権移転登記: 司法書士に依頼するのが一般的
- 税金の計算: 不動産取得税、登録免許税、贈与税のリスク
(出典: 不動産売買は個人間でできる?メリット・デメリットや流れを解説 - ホームズのよくわかる!不動産売却)
(2) 親族間・隣人同士・借地権者と地主間など比較的親しい間柄での取引が多い
個人間売買は、親族間・隣人同士・借地権者と地主間など、比較的親しい間柄での取引が多いのが特徴です。
個人間売買が多いケース
- 親族間: 相続対策、生前贈与代わりの売買
- 隣人同士: 隣接する土地の売買、境界整理
- 借地権者と地主: 借地権の底地買い取り
ただし、親しい関係だからこそ、金銭トラブルが人間関係の悪化につながるリスクがあります。契約書の作成と専門家への相談は必須です。
個人間売買のメリット・デメリット:仲介手数料節約 vs トラブルリスク
(1) メリット(仲介手数料不要、消費税不要、自分のペースで進められる)
個人間売買のメリットは以下の通りです。
| メリット | 詳細 |
|---|---|
| 仲介手数料不要 | 物件価格の3%+6万円+消費税(上限)が節約できる |
| 消費税不要 | 個人間取引は消費税の課税対象外(事業者間取引は課税) |
| 自分のペースで進められる | 売主・買主間で直接スケジュールを調整できる |
仲介手数料の節約額(例)
| 物件価格 | 仲介手数料(上限) |
|---|---|
| 2,000万円 | 72.6万円 |
| 3,000万円 | 105.6万円 |
| 5,000万円 | 171.6万円 |
(出典: 不動産売買は個人間で可能?メリット・デメリット、流れなどを詳しく!)
(2) デメリット(書類作成困難、住宅ローン審査厳しい、時間と手間がかかる、トラブル発展しやすい)
個人間売買のデメリットは以下の通りです。
| デメリット | 詳細 |
|---|---|
| 書類作成困難 | 売買契約書、重要事項説明書の作成には専門知識が必要 |
| 住宅ローン審査厳しい | 重要事項説明書がないと審査に通りにくい |
| 時間と手間がかかる | すべての手続きを自分で行う必要がある |
| トラブル発展しやすい | 契約不適合責任、代金未払い、境界トラブル等のリスク |
仲介手数料を節約できても、トラブル解消に仲介手数料以上の費用がかかる可能性があることを理解しておく必要があります。
(出典: 不動産売買は個人間で可能?メリット・デメリット、流れなどを詳しく!)
必要な手続きと書類:価格調査・契約書作成・所有権移転登記
(1) 手続きの流れ(価格調査→買主探し→契約書作成→売買契約→代金決済→所有権移転登記)
個人間売買の手続きの流れは以下の通りです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 価格調査 | 国土交通省の土地総合情報システムや不動産情報サイトで相場を調べる |
| 2. 買主探し | 親族・知人・隣人など |
| 3. 契約書作成 | 売買契約書を自分で作成、または専門家(司法書士、行政書士)に依頼 |
| 4. 売買契約 | 契約書に署名・捺印、手付金の授受 |
| 5. 代金決済 | 残代金の支払い |
| 6. 所有権移転登記 | 司法書士に依頼(数万〜5万円程度) |
(出典: 不動産の個人売買での必要書類は?流れや費用、注意点も解説|イエステーション おうちねっと)
(2) 必要書類(登記簿謄本、固定資産税評価額証明書、土地区画図、本人確認書類)
売主側の必要書類
- 登記簿謄本(法務局で取得)
- 固定資産税評価額証明書(市区町村役場で取得)
- 土地区画図・測量図(境界を明確にする)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)
- 印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
買主側の必要書類
- 本人確認書類
- 印鑑証明書
- 住民票(3ヶ月以内のもの)
(出典: 不動産の個人売買での必要書類は?流れや費用、注意点も解説|イエステーション おうちねっと)
(3) 所有権移転登記は司法書士に依頼(数万〜5万円程度)
所有権移転登記は、不動産の所有権を買主に移転する手続きです。司法書士に依頼するのが一般的で、費用は数万〜5万円程度です。
自分で登記することも可能ですが、書類の不備や手続きミスがあると登記が受理されず、トラブルの原因となります。司法書士への依頼を推奨します。
契約書作成と税金:必須記載事項・贈与税・不動産取得税・登録免許税
(1) 契約書の必須記載事項(売買代金、支払い方法、引き渡し時期、契約不適合責任等)
売買契約書には、以下の項目を必ず記載する必要があります。
- 売買代金: 物件の価格
- 支払い方法: 手付金・残代金の金額と支払い時期
- 引き渡し時期: 物件の引き渡し日
- 契約不適合責任: 引き渡し後に雨漏り・シロアリ被害等が発覚した場合の売主の責任範囲
- 特約事項: 売主・買主間の合意事項
契約書の作成は、専門家(司法書士、行政書士)への相談を推奨します。必要な条項の記載漏れがあると、トラブルの原因となります。
(2) 贈与税のリスク(相場より極端に安いと贈与とみなされ買主に贈与税が課される)
相場より極端に安い価格で売買すると、差額が「贈与」とみなされ、買主に贈与税が課される可能性があります。
贈与税の計算例
- 相場価格:3,000万円
- 実際の売買価格:1,000万円
- 差額:2,000万円 → 買主に贈与税が課される
贈与税の計算方法や基準については、国税庁「贈与税」を参照するか、税理士への相談を推奨します。
(3) 不動産取得税・登録免許税の計算
不動産取得時には、以下の税金が課されます。
| 税金 | 税率・計算方法 |
|---|---|
| 不動産取得税 | 固定資産税評価額 × 3%(住宅の場合、軽減措置あり) |
| 登録免許税 | 固定資産税評価額 × 2%(所有権移転登記) |
軽減措置の要件や詳細は、国税庁の公式サイトを確認するか、税理士への相談を推奨します。
トラブル事例と回避法:契約不適合責任・代金未払い・境界トラブル・住宅ローン審査
(1) 契約不適合責任(引き渡し後に雨漏り・シロアリ被害等が発覚すると売主が責任を負う)
契約不適合責任とは、引き渡した不動産が契約の内容に適合しない場合、売主が負う責任です。
トラブル例
- 引き渡し後に雨漏りが発覚 → 売主が修繕費用を負担
- シロアリ被害が見つかった → 売主が駆除費用を負担
回避法
- 契約書に「契約不適合責任の期間・範囲」を明記
- 引き渡し前にホームインスペクション(住宅診断)を実施
(出典: 不動産の個人売買に潜む落とし穴とは?必要な手続きとトラブル事例|ナカジツの「住まいのお役立ち情報」)
(2) 代金未払いのリスク(買主が約束通りに代金を払わないトラブル)
買主が約束通りに代金を払わないトラブルが発生する可能性があります。
回避法
- 契約書に「代金支払いの期限・方法」を明記
- 手付金(物件価格の10%程度)を受け取る
- 残代金の支払いは、所有権移転登記と同時に行う
(3) 境界・面積のトラブル(隣地との境界が曖昧だと契約面積と実際の面積が異なる)
隣地との境界が曖昧だと、契約面積と実際の面積が異なる問題が発生します。
回避法
- 土地区画図・測量図を用意
- 境界標の設置(隣地所有者の立会いのもと)
- 測量士による測量(費用は30万〜50万円程度)
(4) 住宅ローン審査が厳しい(重要事項説明書がないと審査に通りにくい)
個人間売買では、住宅ローンの審査が非常に厳しくなります。
- 重要事項説明書: 宅地建物取引士のみが作成可能で、個人間売買では通常作成されない
- 金融機関の対応: 個人間売買を融資対象外とする金融機関もある
回避法
- 事前に金融機関へ確認(個人間売買でも融資可能か)
- 宅建士がいる不動産会社に重要事項説明書の作成を依頼(有料)
まとめ:個人間売買のチェックリストと専門家への相談
個人間での不動産売買は法的には可能ですが、専門的な知識が必要で、トラブルリスクが高いことを理解しておく必要があります。
個人間売買のチェックリスト
- ✅ 適正価格の設定(国土交通省の土地総合情報システムで相場を確認)
- ✅ 売買契約書の作成(必須記載事項を漏れなく記載)
- ✅ 契約不適合責任の範囲を明記
- ✅ 贈与税のリスクを確認(国税庁「贈与税」)
- ✅ 境界・面積の確認(土地区画図・測量図を用意)
- ✅ 住宅ローン審査の事前確認(金融機関に相談)
- ✅ 所有権移転登記の依頼(司法書士に依頼)
仲介手数料を節約できるメリットはありますが、トラブル解消に仲介手数料以上の費用がかかる可能性があります。
専門家(司法書士、行政書士、宅建士、税理士)への相談を必ず行い、リスクを最小限に抑えましょう。
