収益不動産投資とは?安定収入を目指す基礎知識
「収益不動産」という言葉を耳にしたことがあっても、具体的にどのような投資なのか、どうやって始めればよいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、収益不動産投資の仕組み、物件の種類、利回りの計算方法、リスク管理の手法を体系的に解説します。ニッセイ基礎研究所やJLL等の公式統計を元に、2024-2025年の最新市場動向も含めてご紹介します。
初めて不動産投資を検討する方でも、収益不動産の全体像を把握し、次のアクションに進めるようになります。
この記事のポイント
- 収益不動産は賃貸収入を目的とする不動産で、居住系・オフィス・商業施設の3種類がある
- 利回りには表面利回り・実質利回り・FCR・CCR等があり、管理費・税金を考慮した実質利回りで評価することが重要
- 空室・家賃下落・金利上昇・災害等のリスクがあるため、需要の高いエリアを選び、保険でリスクに備える
- 2024年の市場規模は315.1兆円(+8.9%)で、投資額は9年ぶりに5兆円を突破した
- 2025年は円安と海外投資家の流入で堅調な推移が予想される
なぜ収益不動産投資が注目されるのか
安定収入と資産形成のメリット
収益不動産投資は、賃貸収入という「安定したキャッシュフロー」を得られる点が最大の魅力です。給与所得や事業所得に加えて、毎月の家賃収入が得られれば、老後資金の準備や資産形成に役立ちます。
また、不動産は実物資産であるため、インフレ対策としても有効です。物価が上昇すると不動産価格や賃料も上昇しやすく、資産価値の目減りを防ぐ効果が期待できます。
2024年の市場規模315.1兆円の成長
ニッセイ基礎研究所の調査によると、2024年のわが国の収益不動産市場規模は約315.1兆円(前回比+25.7兆円、+8.9%増)に達しました。全ての用途(オフィス、賃貸住宅、商業、物流、ホテル)で拡大しており、市場全体が活況を呈しています。
特にホテル投資が好調で、2024年は2008年の調査開始以来初めて1兆円を突破しました。このように、収益不動産市場は成長を続けており、投資機会として注目されています。
収益不動産の基礎知識(定義・種類)
収益不動産とは何か
収益不動産とは、賃貸収入を目的として所有・運用する不動産のことです。具体的には、アパート、マンション、オフィスビル、商業施設、物流施設、ホテル等が該当します。
所有者は入居者(個人や企業)から毎月の家賃を受け取り、その収入からローン返済、管理費、税金等を差し引いた金額が利益となります。
居住系不動産(アパート・マンション・戸建て・シェアハウス)
居住系不動産は、個人が住居として賃借する物件です。主に以下の種類があります。
- ワンルームマンション: 1室単位で所有・賃貸するマンション(区分所有)。初期投資が少なく、初心者でも始めやすい
- 一棟アパート・マンション: 建物全体を所有・賃貸。収益性が高いが初期投資も大きい
- 戸建て: 一軒家を賃貸。ファミリー向けで長期入居が期待できる
- シェアハウス: 複数の入居者が共同生活する物件。空室リスクが分散される
居住系不動産は需要が安定しており、初めての収益不動産投資に向いています。
オフィスビルと商業施設
オフィスビルは企業が事業用に賃借するビルで、都心部や駅近が好立地とされます。賃料単価が高く、収益性が高い一方で、景気変動の影響を受けやすい特徴があります。
商業施設は店舗や商業ビル等で、小売業や飲食業が賃借します。立地が収益に直結するため、人通りの多いエリアが重要です。
オフィスビルや商業施設は初期投資が大きいため、不動産投資に慣れてから検討することが推奨されます。
利回りの種類と計算方法
表面利回りと実質利回りの違い
収益不動産投資では、利回りを正しく理解することが重要です。主に以下の2種類があります。
表面利回り(グロス利回り):
表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
管理費・税金を含まない簡易的な利回りです。広告でよく使われますが、実際の収益を反映していません。
実質利回り(ネット利回り):
実質利回り = (年間家賃収入 - 管理費・税金等) ÷ 物件価格 × 100
管理費、固定資産税、修繕費等を考慮した利回りで、実際の収益に近い数値です。物件を評価する際は、必ず実質利回りで判断しましょう。
想定利回りと現行利回り
- 想定利回り: 満室を想定した利回り。広告でよく使われるが、空室を考慮していない
- 現行利回り: 実際の入居率を反映した利回り。空室がある場合、想定利回りより低くなる
物件購入時は、現行利回りを確認し、空室リスクを考慮することが重要です。
FCR(自己資金利回り)とCCR(返済後利回り)
より高度な指標として、以下の利回りもあります。
- FCR(自己資金利回り): 年間キャッシュフロー ÷ 自己資金 × 100
- CCR(返済後利回り): (年間家賃収入 - 年間返済額 - 管理費等) ÷ 自己資金 × 100
これらの指標を試算することで、キャッシュフローがマイナスになるリスクを事前に把握できます。
エリア別の利回り相場
不動産投資会社MUSASHIの調査によると、利回りはエリアによって異なります。一般的な相場は以下の通りです。
| エリア | 表面利回りの相場 |
|---|---|
| 都心部(東京23区等) | 3-5% |
| 地方都市 | 6-10% |
| 郊外・地方 | 10%以上 |
都心部は利回りが低い一方で、空室リスクが少なく安定した収入が期待できます。地方は利回りが高い一方で、空室リスクや家賃下落リスクが高まる傾向があります。
収益不動産投資のリスクと対策
空室リスクと家賃下落リスク
空室リスクは、入居者が見つからず家賃収入が得られないリスクです。空室が続くとローン返済が困難になる可能性があります。
対策:
- 駅近や都心部など需要の高いエリアを選ぶ
- 物件管理を信頼できる管理会社に委託する
- 適切なメンテナンスで物件の魅力を維持する
家賃下落リスクは、周辺相場の下落や物件の老朽化により家賃が下がるリスクです。
対策:
- 立地条件の良い物件を選ぶ(駅近、学校や商業施設が近い等)
- 定期的なリフォームで物件価値を維持する
金利上昇リスクと増税リスク
金利上昇リスクは、変動金利でローンを組んだ場合、金利上昇により返済額が増加するリスクです。
対策:
- 固定金利を選ぶ(金利上昇のリスクを回避)
- 自己資金の割合を増やす(金利上昇の影響を低減)
増税リスクは、固定資産税や不動産取得税の増税により収益が悪化するリスクです。税制は変動するため、最新情報を常に確認しましょう。
災害リスクとその対策
地震、火災、水害等により物件が損傷すると、修繕費用が高額になるリスクがあります。
対策:
- 地震保険や火災保険に加入する
- ハザードマップで災害リスクを確認する
- 新耐震基準(1981年6月以降)の物件を選ぶ
リスク回避のための7つの実践ポイント
- 実質利回りを自分で計算して物件を評価する
- FCRやCCRを試算してキャッシュフローを確認する
- 自己資金の割合を増やすことで金利上昇リスクを低減する
- 需要の高いエリア(駅近、都心部等)を選ぶ
- 地震保険・火災保険に加入する
- 信頼できる管理会社に物件管理を委託する
- 不動産業者、税理士、ファイナンシャルプランナー等の専門家に相談する
物件選びのポイントと市場動向(2024-2025年)
需要の高いエリアの選び方(駅近・都心部)
物件選びで最も重要なのは「立地」です。以下のポイントを確認しましょう。
- 駅からの距離: 徒歩10分以内が理想
- 周辺環境: 学校、商業施設、病院が近い
- 人口動態: 人口が増加しているエリア
- 治安: 犯罪発生率が低いエリア
需要の高いエリアを選ぶことで、空室リスクを大幅に低減できます。
2024年の投資額5.4875兆円(9年ぶり5兆円突破)
JLLの調査によると、2024年の収益不動産投資額は5.4875兆円(前年比+63%)で、9年ぶりに5兆円を突破しました。ホテル投資が特に好調で、2008年の調査開始以来初めて1兆円を突破しています。
市場全体が活況を呈しており、投資機会として魅力的な環境が続いています。
2025年の展望(円安と海外投資家の流入)
2025年は円安とトランプ政権の影響で、海外投資家の流入が活発化する見通しです。2025年前半の投資額は3.1932兆円(前年比+22%)で、東京は世界の都市別投資額で第1位を獲得しました。
市場動向や税制は変動するため、執筆時点(2024-2025年)の情報である点にご留意いただき、最新情報は公式サイト等でご確認ください。
まとめ:収益不動産投資を始めるために
収益不動産投資は、賃貸収入による安定したキャッシュフローと資産形成を実現できる投資手法です。物件の種類は居住系・オフィス・商業施設の3種類があり、初心者には居住系不動産が向いています。
利回りは表面利回りだけでなく、管理費・税金を考慮した実質利回りで評価することが重要です。また、空室・家賃下落・金利上昇・災害等のリスクがあるため、需要の高いエリアを選び、保険でリスクに備えましょう。
2024年の市場規模は315.1兆円で成長を続けており、2025年も堅調な推移が予想されます。
信頼できる不動産業者、税理士、ファイナンシャルプランナー等の専門家に相談しながら、無理のない資金計画を立てることをお勧めします。
