戸建て賃貸経営(戸建てアパート)とは
土地活用や不動産投資を検討する際、「戸建てアパートとは何か」「アパート経営との違いは何か」「どちらが収益性が高いのか」と悩む方は多いのではないでしょうか。
「戸建てアパート」とは、戸建て賃貸経営のことで、一軒家を賃貸に出して家賃収入を得る不動産投資手法です。アパート・マンション経営より少額(数百万円〜)で始められ、長期入居が期待できる点が特徴です。この記事では、戸建て賃貸経営のメリット・デメリット・収益性・成功のポイントを、不動産投資の専門家の知見をもとに解説します。
戸建て賃貸経営を検討している方が、メリット・デメリット・初期費用・リスク管理の方法を具体的に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 戸建て賃貸経営は一軒家を賃貸に出す不動産投資で、少額(数百万円〜)から始められる
- 入居者の65%が5年以上住み続け、長期入居が期待できる
- 狭小地(15〜20坪以下)でも建築可能で、駅から遠い立地でもファミリー層に需要あり
- 1戸空室で収入ゼロになるリスクがあり、複数戸所有で分散することを推奨
- 表面利回りは新築5〜8%、中古8〜15%が目安(アパートより高い傾向)
戸建て賃貸経営のメリット
(1) 少額(数百万円〜)から始められる
戸建て賃貸経営は、アパート・マンション経営と比べて少額で始められます。アパート一棟を建築する場合、数千万円〜億単位の初期投資が必要ですが、戸建て1戸であれば新築でも数百万円〜2,000万円程度、中古なら数百万円から購入可能です。
初めて不動産投資に取り組む方や、少額で始めたい方に適しています。
(2) 長期入居が期待できる(5年以上65%)
戸建て賃貸の入居者は、ファミリー層が中心で、5年以上住み続ける人が65%と長期入居が期待できます。長期入居により、空室期間が短縮され、安定した家賃収入を得られます。
アパート・マンションは単身者が多く、転勤・転職で退去するケースが多いのに対し、戸建て賃貸は子育て世帯が多く、学校区を変えたくないため長期入居する傾向があります。
(3) 狭小地・駅から遠い立地でも需要あり
戸建て賃貸は、狭小地(15〜20坪以下)でも建築可能で、駅から遠い立地でも車所有のファミリー層に需要があります。アパート・マンションは駅近が有利ですが、戸建て賃貸は駐車場が確保できれば郊外でも入居者を確保できます。
土地の活用方法が限られている場合でも、戸建て賃貸であれば収益化できる可能性があります。
(4) 借主への売却という出口戦略
戸建て賃貸には、入居者に物件を売却するという出口戦略があります。長期入居している入居者は、物件を購入する可能性が高く、売却がスムーズに進むケースがあります。
アパート・マンションにはない、戸建て賃貸ならではの出口戦略です。
(5) 住宅用地の特例で固定資産税軽減
住宅が建っている土地は、住宅用地の特例により、固定資産税が最大1/6、都市計画税が最大1/3に軽減されます。戸建て賃貸を建築することで、更地よりも税負担を大幅に抑えることができます。
相続税対策としても有効です。
戸建て賃貸経営のデメリット・リスク
(1) 1戸空室で収入ゼロになるリスク
戸建て賃貸の最大のリスクは、1戸しか所有していない場合、空室発生で収入がゼロになる点です。アパート・マンションは複数戸あるため、1戸空室でも他の戸から家賃収入が得られますが、戸建て賃貸は1戸空室で収入が途絶えます。
複数戸所有でリスクを分散することが重要です。
(2) 1戸あたりの修繕費用が高い
戸建て賃貸は、アパート・マンションに比べて1戸あたりの修繕費用が高くなります。外壁塗装、屋根修繕、給湯器交換などの費用を全て所有者が負担する必要があります。
アパート・マンションは複数戸で修繕費用を分担できますが、戸建て賃貸は1戸あたりの負担が大きくなります。
(3) 繁忙期を逃すと入居が決まりにくい
ファミリー層が動く繁忙期(3月)を逃すと、入居が決まりにくくなります。子育て世帯は、学校の新学期に合わせて引っ越しを行うため、繁忙期以外は入居募集が難しくなります。
繁忙期に入居募集を集中させる戦略が必要です。
(4) 需要が限定的(ファミリー層中心)
戸建て賃貸の主な入居者層はファミリーで、単身者・カップル向けの需要は限定的です。ファミリー層が少ない地域では、入居者を確保しにくくなります。
地域の人口構成を事前に確認し、ファミリー層が多いエリアを選定することが重要です。
(5) 収益性はアパートより低い傾向
戸建て賃貸は、アパート・マンション経営と比べて収益性が低い傾向があります。1戸あたりの家賃収入が限定的で、複数戸から収入を得るアパート・マンションの方が総収入は大きくなります。
収益性を重視する場合は、アパート・マンション経営を検討することをおすすめします。
| 項目 | 戸建て賃貸 | アパート・マンション |
|---|---|---|
| 初期投資 | 数百万円〜2,000万円 | 数千万円〜億単位 |
| 入居者層 | ファミリー中心 | 単身者・カップル中心 |
| 長期入居率 | 高い(5年以上65%) | 低い(転勤・転職で退去) |
| 空室リスク | 1戸空室で収入ゼロ | 1戸空室でも他の戸から収入 |
| 収益性 | 低い傾向 | 高い傾向 |
| 修繕費 | 1戸あたり高い | 複数戸で分担可 |
収益性と初期費用の目安
(1) 表面利回り(新築5〜8%、中古8〜15%)
戸建て賃貸の表面利回りは、新築で5〜8%、中古で8〜15%が目安です。アパート・マンションの新築3〜5%、中古5〜8%と比較すると、戸建て賃貸の方が高い傾向にあります。
表面利回り = 年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 × 100
ただし、表面利回りは経費を考慮しないため、実質利回りで判断することが重要です。
(2) 実質利回りと経費の内訳
実質利回りは、年間家賃収入から経費を引いた額を物件購入価格と諸費用で割って算出します。
実質利回り = (年間家賃収入 - 経費) ÷ (物件購入価格 + 諸費用) × 100
主な経費は以下の通りです。
- 固定資産税・都市計画税: 年10万円〜30万円
- 修繕費: 年10万円〜50万円(外壁塗装、屋根修繕等)
- 管理費: 家賃の5%〜10%(管理会社に委託する場合)
- 火災保険・地震保険: 年2万円〜5万円
- 空室損失: 年間家賃収入の5%〜10%を見込む
(3) 建築費・購入費の目安
戸建て賃貸の建築費は、新築で1,000万円〜2,000万円が目安です。土地を所有している場合、建築費のみで始められます。
中古物件を購入する場合、数百万円〜1,500万円程度で購入可能です。リフォーム費用を含めても、新築より安く始められます。
(4) 住宅ローンと不動産投資ローン
戸建て賃貸の資金調達には、住宅ローンまたは不動産投資ローンを利用できます。
- 住宅ローン: 自己居住用として購入し、後に賃貸に出す方法。金利が低い(年0.5%〜1.5%程度)
- 不動産投資ローン: 最初から賃貸用として購入。金利が高い(年2%〜4%程度)が、賃貸収入を審査に含められる
自己居住用として購入し、後に賃貸に出す場合は、金融機関に事前に確認することをおすすめします。
(5) 収支シミュレーション例
物件価格: 1,500万円(中古) 年間家賃収入: 120万円(月10万円 × 12ヶ月) 表面利回り: 8%
経費:
- 固定資産税: 15万円
- 修繕費: 20万円
- 管理費: 12万円(家賃の10%)
- 保険料: 3万円
- 空室損失: 12万円(10%)
経費合計: 62万円
年間実質収入: 120万円 - 62万円 = 58万円 実質利回り: 58万円 ÷ 1,500万円 × 100 = 約3.9%
戸建て賃貸経営を成功させるためのポイント
(1) 複数戸所有で空室リスクを分散
1戸だけだと空室時に収入ゼロになるため、複数戸所有でリスクを分散することをおすすめします。3戸所有していれば、1戸空室でも他の2戸から収入が得られます。
(2) 入居者選定と長期入居の促進
入居者選定では、安定収入のあるファミリー層を優先し、長期入居を促進します。入居後も定期的にコミュニケーションを取り、退去を防ぐことが重要です。
(3) 3月の繁忙期を意識した入居募集
ファミリー層が動く繁忙期(3月)に入居募集を集中させます。前年の12月〜1月に内見を開始し、3月入居を目指します。
(4) 省エネ基準への対応(2025年義務化)
2025年4月から新築住宅に省エネ基準適合が義務化されます。断熱等級4が最低ラインとなり、省エネ・断熱性能が高い物件が求められます。
既存物件も、リフォーム時に断熱性能を向上させることで、入居者の満足度を高められます。
(5) 管理会社の選び方
管理会社を選ぶ際は、以下のポイントを確認してください。
- 入居者募集力: 繁忙期に迅速に入居者を確保できるか
- 管理費用: 家賃の5%〜10%が相場
- 対応力: トラブル時の対応スピード・クオリティ
- 実績: 戸建て賃貸の管理実績があるか
まとめ:戸建て賃貸経営を始める前に検討すべきこと
戸建て賃貸経営は、一軒家を賃貸に出す不動産投資で、少額(数百万円〜)から始められ、長期入居が期待できる点が魅力です。ただし、1戸空室で収入ゼロになるリスクがあり、複数戸所有でリスクを分散することが重要です。
戸建て賃貸経営を始める前に、以下のポイントを検討してください。
- 初期投資と収益性: 表面利回りだけでなく、実質利回りで判断
- 空室リスク: 1戸だけでなく複数戸所有を検討
- 入居者層: ファミリー層が多いエリアを選定
- 繁忙期対策: 3月の入居募集を意識
- 省エネ基準: 2025年義務化に対応
- 管理会社: 入居者募集力・管理費用・対応力を比較
少額で始めたいなら戸建て賃貸、収益性を重視するならアパート経営が向いています。ご自身の資金力・投資目的・リスク許容度に応じて選択してください。
信頼できる不動産業者や税理士に相談しながら、無理のない資金計画を立て、戸建て賃貸経営を成功させましょう。
