年収600万円で住宅ローンはいくら借りられる?
年収600万円で住宅購入を検討する際、「いくら借りられるのか」「無理なく返済できる額はいくらか」という疑問が生じます。
この記事では、年収600万円の借入可能額、返済負担率の計算方法、無理のない返済計画の立て方を、国土交通省や住宅金融支援機構の公式情報をもとに解説します。
実際の失敗事例も紹介しながら、後悔しない住宅ローン選びのポイントを理解できるようになります。
この記事のポイント
- 年収600万円の借入可能額は約5,679万円が上限だが、適正額は年収の5~7倍(3,000万~4,200万円)
- 無理のない返済額は手取り月収の25%以内。年収600万円なら月9.5万円程度が目安
- 返済負担率は税込み年収で計算するが、実際の生活費は手取り収入から考える必要がある
- 物件価格以外に固定資産税・修繕費・管理費等の維持費がかかる
- 金利タイプや家族構成により適正額は変わるため、専門家(FP等)への相談が重要
(1) 借入可能額の上限(約5,679万円)
年収600万円の場合、金融機関が貸し出せる上限額(借入可能額)は約5,679万円が目安です。これは返済負担率35%、金利1.5%、返済期間35年で計算した場合の金額です。
ただし、この金額は「借りられる上限」であり、「無理なく返済できる額」ではありません。
(2) 適正借入額の目安(年収の5~7倍、3,000万~4,200万円)
無理なく返済できる適正借入額は、年収の5~7倍が目安です。年収600万円の場合、3,000万~4,200万円が適正範囲となります。
| 年収倍率 | 借入額 | 月々の返済額(金利1.5%、35年) |
|---|---|---|
| 5倍 | 3,000万円 | 約9.2万円 |
| 6倍 | 3,600万円 | 約11.0万円 |
| 7倍 | 4,200万円 | 約12.9万円 |
(3) 借入可能額と適正額が異なる理由
借入可能額は金融機関が「貸せる上限」を示すものであり、個々の生活費や将来の収入変動を考慮していません。上限まで借りると、以下のリスクがあります。
- 生活費や教育費を圧迫する
- 病気や失業で収入が減った際に返済が困難になる
- 固定資産税・修繕費等の維持費を支払う余裕がなくなる
返済負担率の計算方法と審査基準
返済負担率は、住宅ローン審査で重視される指標です。計算方法と審査基準を理解しておきましょう。
(1) 返済負担率の計算式(年間返済額÷年収×100)
返済負担率は以下の計算式で求めます。
返済負担率(%)= 年間返済額 ÷ 年収 × 100
年間返済額には、住宅ローンだけでなく、自動車ローン、カードローン等の他のローンも含まれます。
例:年収600万円、月々の住宅ローン返済額10万円の場合
年間返済額 = 10万円 × 12ヶ月 = 120万円
返済負担率 = 120万円 ÷ 600万円 × 100 = 20%
(2) 審査基準(25~35%以下)と理想(20~25%)
金融機関の審査基準は、返済負担率25~35%以下が一般的です。ただし、無理なく返済できる理想の返済負担率は20~25%です。
| 返済負担率 | 評価 |
|---|---|
| 20%以下 | 余裕がある |
| 20~25% | 理想的な範囲 |
| 25~35% | 審査通過ラインだが生活が苦しくなる可能性 |
| 35%超 | 審査通過が難しい |
(3) 税込み年収と手取り年収の違いに注意
返済負担率の計算では税込み年収を使用しますが、実際の生活費は手取り収入から支払います。
年収600万円の場合の目安
- 税込み年収:600万円
- 手取り年収:約456万円(税金・社会保険料を差し引いた額)
- 手取り月収:約38万円
税込み年収で返済負担率25%(年間返済額150万円)は、手取り年収では約33%に相当します。税込みベースで判断すると生活が苦しくなる可能性があるため、手取り収入を基準に考えましょう。
年収600万円の返済シミュレーション
具体的な返済シミュレーションで、月々の返済額と総返済額を確認しましょう。
(1) 月々の返済額の目安(手取り月収38万円の25%で月9.5万円)
手取り月収の25%以内が無理のない返済額の目安です。年収600万円(手取り月収約38万円)なら、月9.5万円程度が適切です。
(2) 借入額別の返済シミュレーション(3,000万円・3,500万円・4,000万円)
借入額別の月々の返済額と総返済額を比較します(金利1.5%、返済期間35年の場合)。
| 借入額 | 月々の返済額 | 総返済額 | 返済負担率(税込み) |
|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 約9.2万円 | 約3,857万円 | 18.4% |
| 3,500万円 | 約10.7万円 | 約4,500万円 | 21.4% |
| 4,000万円 | 約12.3万円 | 約5,143万円 | 24.6% |
3,000万円なら手取り月収の24%(約9.2万円)で、余裕を持った返済が可能です。4,000万円になると手取り月収の32%(約12.3万円)になり、生活費を圧迫する可能性があります。
(3) 金利タイプ別の返済額比較(変動金利・固定金利)
金利タイプによって月々の返済額と総返済額が異なります。
借入額3,500万円、返済期間35年の場合
| 金利タイプ | 金利 | 月々の返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|---|
| 変動金利 | 0.5% | 約9.1万円 | 約3,808万円 |
| 固定金利(フラット35) | 1.8% | 約11.3万円 | 約4,737万円 |
国土交通省の調査によると、2023年度の変動金利型の割合は84.3%まで増加しています。ただし、変動金利は将来の金利上昇リスクがあるため、固定金利との比較検討が必要です。
無理のない返済額の見極め方
無理のない返済額を見極めるために、以下の3つのポイントを確認しましょう。
(1) 頭金の準備(物件価格の10~20%)
頭金は物件価格の10~20%を準備することが推奨されます。
例:物件価格4,000万円の場合
- 頭金10%:400万円 → 借入額3,600万円
- 頭金20%:800万円 → 借入額3,200万円
頭金を多く入れることで、借入額が減り、月々の返済額や総返済額を抑えられます。ただし、頭金に全額を使うと、家具・家電費用を追加ローンで調達することになり、総返済額が増えるため注意が必要です。
(2) 維持費の考慮(固定資産税・修繕費・管理費)
物件購入後は、以下の維持費が継続的にかかります。
| 維持費 | 目安額(年間) |
|---|---|
| 固定資産税 | 10~20万円 |
| 修繕費(戸建て) | 10~20万円 |
| マンション管理費・修繕積立金 | 15~30万円 |
これらの維持費を月額に換算すると、約2~4万円です。住宅ローン返済額に加えて、これらの費用も考慮しましょう。
(3) 家族構成別の返済計画(子供の有無・共働き・片働き)
家族構成により、無理のない返済額は変わります。
年収600万円の場合の目安
| 家族構成 | 借入額の目安 | 月々の返済額 |
|---|---|---|
| 独身 | 4,000万円 | 約12.3万円 |
| 夫婦2人(共働き) | 3,500万円 | 約10.7万円 |
| 夫婦+子供1人(片働き) | 2,500万円 | 約7.7万円 |
子供がいる場合、教育費がかかるため、借入額を抑える必要があります。返済比率が手取り年収の19%(借入額2,500万円)なら、子供1人でパートナーが働いていない状況でも余裕を持てます。
住宅ローンでよくある失敗と回避策
実際の失敗事例から学び、同じ失敗を避けましょう。
(1) 借りすぎて生活が苦しくなる失敗
事例:営業担当の勧めで年収の6~7倍(3,600万~4,200万円)を借りて後悔するケースが多いです。
回避策:借入可能額ではなく、手取り月収の25%以内で返済できる額を基準にしましょう。
(2) 頭金に全額使い家具・家電費用を追加ローンで調達する失敗
事例:頭金に全額を使ったため、引っ越し費用、家具・家電費用を追加ローンで調達し、総返済額が増えてしまう。
回避策:頭金とは別に、引っ越し費用・家具家電費用として100~200万円を手元に残しておきましょう。
(3) 固定資産税・修繕費等の維持費を見落とす失敗
事例:住宅ローン返済額だけを考えて、固定資産税・修繕費・マンション管理費等の維持費を見落とし、生活費が圧迫される。
回避策:維持費(月2~4万円)を含めた総コストで返済計画を立てましょう。
(4) 失敗を避けるための3つのポイント
- 借入可能額ではなく適正額を基準にする
- 維持費を含めた総コストで計画する
- 専門家(ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー)に相談する
まとめ:年収600万円の住宅ローン選びのポイント
年収600万円で住宅ローンを借りる際は、借入可能額ではなく適正額を基準にすることが重要です。
(1) 借入可能額ではなく適正額を基準にする
- 借入可能額:約5,679万円(上限)
- 適正借入額:3,000万~4,200万円(年収の5~7倍)
- 無理のない返済額:手取り月収の25%以内(月9.5万円程度)
借入可能額上限まで借りると、生活が苦しくなります。手取り収入を基準に、余裕を持った返済計画を立てましょう。
(2) 専門家(FP、住宅ローンアドバイザー)への相談の重要性
金利タイプの選択、返済期間の設定、家族構成による調整など、個別の状況により最適な選択肢は異なります。
ファイナンシャルプランナー(FP)や住宅ローンアドバイザーに相談し、自分に合った返済計画を立てることを推奨します。詳細は住宅金融支援機構や各金融機関の公式サイトで最新情報を確認してください。
