住宅ローン控除とは:制度の仕組みと目的
住宅購入を検討する際、「住宅ローン控除はいくら受けられるのか」「2025年はどう変わったのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、住宅ローン控除の基本的な仕組み、2025年の最新制度内容、控除額の計算方法、申請手順、制度の歴史と改正の流れを、国土交通省や国税庁の公式情報を元に解説します。
初めて住宅を購入する方でも、住宅ローン控除を最大限活用できるようになります。
この記事のポイント
- 住宅ローン控除は年末ローン残高の0.7%を所得税から控除する制度
- 2025年度は2024年と同様の措置を継続、子育て世帯・若者夫婦世帯への優遇も継続
- 控除期間は新築13年、中古10年、借入限度額は省エネ基準により異なる
- 初年度は確定申告が必須、2年目以降は会社員なら年末調整のみで完結
- 2024年以降は省エネ基準適合が必須化(建築確認が2024年1月以降の新築住宅)
住宅ローン控除の基本:年末ローン残高の0.7%を所得税から控除
住宅ローン控除(住宅ローン減税)は、住宅ローンを利用して住宅を取得・新築・増改築した場合、毎年の年末ローン残高の0.7%を所得税から控除する制度です。
計算式:
控除額 = 年末ローン残高 × 0.7%
例えば、年末ローン残高が3,000万円の場合、年間21万円(3,000万円 × 0.7%)の控除を受けられます。
制度の目的:住宅取得の負担軽減と経済活性化
国土交通省によると、住宅ローン控除の目的は以下の通りです。
- 住宅取得時の負担を軽減し、持ち家取得を支援
- 住宅投資を促進し、経済を活性化
- 環境配慮型住宅への誘導(省エネ基準適合を要件化)
控除対象となる税金:所得税(控除しきれない場合は住民税)
住宅ローン控除は、まず所得税から控除されます。所得税から控除しきれない場合は、翌年度の住民税から控除されます(住民税からの控除は課税所得の5%、最大9.75万円が上限)。
誰が受けられるのか:住宅ローンを利用して住宅を取得・新築・増改築した人
以下の要件を満たす方が対象です。
- 住宅ローンを利用して住宅を取得・新築・増改築
- 取得から6ヶ月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日まで居住
- 床面積50㎡以上(2025年12月31日までの入居は40㎡以上への緩和措置あり)
- 年間所得3,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)
2025年の住宅ローン控除:最新の制度内容と改正ポイント
2025年度の制度延長:2024年と同様の措置を継続
国土交通省によると、2025年度税制改正で、2024年と同様の措置を継続することが決定されました。
子育て世帯・若者夫婦世帯への優遇措置の継続
2025年入居でも、子育て世帯・若者夫婦世帯は借入限度額の優遇措置が継続されます。
定義:
- 子育て世帯: 年齢19歳未満の扶養親族を有する世帯
- 若者夫婦世帯: 年齢40歳未満で配偶者を有する世帯、または年齢40歳以上で40歳未満の配偶者を有する世帯
借入限度額:認定住宅5,000万円、ZEH水準省エネ住宅4,500万円、省エネ基準適合住宅4,000万円
2025年入居の借入限度額は以下の通りです。
| 住宅の種類 | 一般世帯 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 |
|---|---|---|
| 認定住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| その他の住宅 | 0円(控除対象外) | 0円(控除対象外) |
(出典: 国土交通省)
床面積要件40㎡以上への緩和措置が2025年12月31日まで延長
通常は床面積50㎡以上が要件ですが、2025年12月31日までに入居する場合、40㎡以上への緩和措置が継続されます(ただし、年間所得1,000万円以下の場合に限る)。
省エネ基準適合の必須化(建築確認が2024年1月以降の新築住宅)
2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅は、省エネ基準適合が必須です。省エネ基準を満たさない新築住宅は原則として控除対象外となります。
控除期間と控除額の計算方法:新築・中古・省エネ基準の違い
控除期間:新築13年、中古10年
SBI新生銀行によると、控除期間は以下の通りです。
- 新築住宅・買取再販: 13年間
- 中古住宅: 10年間
控除額の計算式:年末ローン残高 × 0.7%
毎年の控除額は以下の式で計算されます。
控除額 = 年末ローン残高 × 0.7%(ただし、借入限度額が上限)
新築住宅の借入限度額と控除額(省エネ基準により異なる)
| 住宅の種類 | 借入限度額(子育て世帯) | 最大控除額(13年間合計) |
|---|---|---|
| 認定住宅 | 5,000万円 | 455万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 409.5万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 364万円 |
(計算式: 借入限度額 × 0.7% × 13年)
中古住宅の借入限度額(3,000万円または2,000万円)
中古住宅の借入限度額は、省エネ基準適合の有無により異なります。
| 住宅の種類 | 借入限度額 | 最大控除額(10年間合計) |
|---|---|---|
| 省エネ基準適合 | 3,000万円 | 210万円 |
| その他 | 2,000万円 | 140万円 |
(計算式: 借入限度額 × 0.7% × 10年)
控除額シミュレーション:具体的な計算例
例:ZEH水準省エネ住宅を新築、借入4,000万円、子育て世帯の場合
| 年 | 年末ローン残高 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1年目 | 4,000万円 | 28万円 |
| 2年目 | 3,900万円 | 27.3万円 |
| ... | ... | ... |
| 13年目 | 2,800万円 | 19.6万円 |
| 合計 | - | 約350万円 |
※実際の控除額は所得税額により上限があります
住宅ローン控除の申請方法:初年度の確定申告と2年目以降の年末調整
初年度の確定申告:必要書類と手順
国税庁によると、初年度は確定申告が必須です。
必要書類:
- 確定申告書
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅ローンの年末残高証明書
- 土地・建物の登記事項証明書
- 売買契約書または建築請負契約書のコピー
- 源泉徴収票(会社員の場合)
- マイナンバーカードまたは本人確認書類
- 省エネ基準適合証明書(該当する場合)
e-Taxの利用方法:24時間申告可能、早期還付
e-Taxを利用すれば、24時間いつでも確定申告が可能で、早期に還付金を受け取れます。
e-Taxのメリット:
- 24時間受付
- 郵送不要
- 還付金が早い(約2-3週間)
- 添付書類の省略可能(一部)
確定申告書等作成コーナーの活用:自動計算で簡単
国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用すれば、数値を入力するだけで控除額が自動計算されます。初めての方でも簡単に申告できます。
2年目以降の年末調整:会社員なら確定申告不要
freeeによると、2年目以降は会社員なら年末調整のみで完結します。
必要書類:住宅借入金等特別控除申告書と残高証明書
2年目以降の年末調整に必要な書類は以下の2点のみです。
- 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書(税務署から送付される)
- 住宅ローンの年末残高証明書(金融機関から送付される)
住宅ローン控除の歴史と制度改正の流れ
制度創設:1972年に開始
三井住友銀行によると、住宅ローン控除は1972年に創設されました。以来、50年以上にわたり住宅取得を支援してきました。
2024年の主な改正点:省エネ基準必須化、借入限度額の引き下げ
2024年の主な改正点は以下の通りです。
- 省エネ基準適合が必須化(建築確認が2024年1月以降の新築住宅)
- 一般住宅(省エネ基準不適合)は控除対象外
- 子育て世帯・若者夫婦世帯以外は借入限度額が引き下げ
2025年の改正:2024年の措置を継続、子育て世帯への支援維持
2025年度税制改正では、2024年の措置を継続し、子育て世帯・若者夫婦世帯への優遇措置も維持されました。
「改悪」と言われる理由:借入限度額の引き下げと省エネ基準必須化
2024年以降、①借入限度額が引き下げられた(一般住宅は対象外)、②省エネ基準適合が必須化されたため、「改悪」と言われることがあります。
ただし、子育て世帯・若者夫婦世帯への優遇措置は継続されており、環境配慮型住宅への誘導政策と評価できます。
今後の見通し:環境配慮型住宅への誘導政策
今後も環境配慮型住宅への誘導政策が継続される見込みです。省エネ基準を満たす住宅を選ぶことが、住宅ローン控除を最大限活用するポイントです。
まとめ:住宅ローン控除を最大限活用するためのポイント
住宅ローン控除は、年末ローン残高の0.7%を所得税から控除する制度です。2025年度は2024年と同様の措置を継続し、子育て世帯・若者夫婦世帯への優遇措置も維持されました。
控除期間は新築13年、中古10年、借入限度額は省エネ基準により異なります(認定住宅5,000万円、ZEH水準省エネ住宅4,500万円、省エネ基準適合住宅4,000万円)。
初年度は確定申告が必須ですが、e-Taxや確定申告書等作成コーナーを利用すれば自分で申告できます。2年目以降は会社員なら年末調整のみで完結します。
2024年以降は省エネ基準適合が必須化されたため、省エネ基準を満たす住宅を選ぶことが重要です。子育て世帯・若者夫婦世帯は優遇措置を活用し、税理士や税務署に相談しながら、最大限の控除を受けられるよう計画しましょう。
