住宅ローンの支払い開始時期が重要な理由
住宅ローンの借入を予定している方にとって、「支払いはいつから始まるのか」は重要な疑問です。引き渡し・入居前後の資金計画が不明確だと、賃貸との二重払いやつなぎ融資の必要性について不安を抱えることになります。
この記事では、住宅ローンの支払い開始時期に関する疑問を包括的に解消します。物件タイプ別(新築マンション・中古住宅・注文住宅)のタイムラインや、つなぎ融資の仕組み、資金計画のポイントを解説します。
支払い開始時期を正確に把握し、無理のない資金計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- 住宅ローンの返済は融資実行日(引渡日)の翌月または翌々月から開始、約定返済日との前後関係で決まる
- 注文住宅の場合、土地購入・着工金・中間金の支払いにつなぎ融資が必要になることがある(金利年2〜4%)
- 初回返済額は融資実行日から初回返済日までの利息が加算され、通常より高くなる場合がある
- 賃貸との二重払い期間は一般的に1〜2ヶ月程度、資金計画に含めておくことが重要
- 頭金・諸費用は契約から引渡しの間に支払い、現金準備が必要な場合もある
住宅ローンの支払い開始時期が重要な理由
引き渡し前後の資金繰りへの影響
住宅ローンの支払い開始時期は、引き渡し前後の資金繰りに大きく影響します。
引き渡し前に頭金や諸費用の支払いが必要になり、引き渡し後は住宅ローンの返済が始まります。これらの時期を正確に把握していないと、資金不足に陥るリスクがあります。
賃貸との二重払い期間の発生
現在賃貸住宅に住んでいる場合、引き渡しから入居までの期間や賃貸契約の解約タイミングにより、賃貸家賃と住宅ローンの二重払い期間が発生する可能性があります。
一般的には1〜2ヶ月程度の二重払い期間が発生するため、資金計画に含めておくことが重要です。
住宅ローンの返済開始時期の基本
融資実行日と返済開始日の関係
融資実行日とは、住宅ローンの融資金が実際に振り込まれる日で、通常は物件の引渡日と同日です。
返済開始日は、融資実行日の翌月または翌々月の約定返済日から始まります。約定返済日とは、毎月の返済日として金融機関との契約で定められた日(例:毎月27日)です。
約定返済日による違い(翌月または翌々月)
返済開始日は、融資実行日と約定返済日の前後関係により決まります。
例1:約定返済日が毎月27日の場合
- 融資実行日が5月10日 → 初回返済日は6月27日(翌月)
- 融資実行日が5月28日 → 初回返済日は7月27日(翌々月)
融資実行日が約定返済日より前であれば翌月、後であれば翌々月から返済が始まります。
金融機関による返済開始ルールの違い
返済開始日のルールは金融機関ごとに異なる場合があります。
一部の金融機関では、融資実行日に関わらず翌月から返済開始とするルールを採用している場合もあります。契約前に金融機関に確認することを推奨します。
初回返済額が通常より高くなる理由
初回返済額は、融資実行日から初回返済日までの利息が加算されるため、通常より高くなる場合があります。
例えば、融資実行日が月初で、初回返済日が翌月末の場合、約2ヶ月分の利息が加算されます。初回返済額がいくらになるかは、事前に金融機関に確認しておくことが重要です。
物件タイプ別の支払いタイムライン
新築マンションの場合(引渡し当日に融資実行)
新築マンションの場合、引渡し当日に融資が実行され、売主に代金が支払われます。
タイムライン:
- 契約時: 手付金を支払い(物件価格の5-10%が目安)
- 中間金: 着工後に中間金を支払う場合がある(物件により異なる)
- 引渡し当日: 融資実行、残代金・諸費用を支払い
- 翌月または翌々月: 住宅ローンの返済開始
新築マンションは引渡し前の支払いが比較的少なく、資金計画がシンプルです。
中古住宅の場合(引渡し当日に融資実行)
中古住宅の場合も、引渡し当日に融資が実行されます。
タイムライン:
- 契約時: 手付金を支払い(物件価格の5-10%が目安)
- 引渡し当日: 融資実行、残代金・諸費用を支払い
- 翌月または翌々月: 住宅ローンの返済開始
中古住宅は新築マンションと同様、引渡し前の支払いが少ないため、資金計画が立てやすいです。
注文住宅の場合(土地購入・着工金・中間金の支払い)
注文住宅の場合、土地購入・着工金・中間金の支払いが必要になり、つなぎ融資を利用するケースがあります。
タイムライン:
- 土地購入時: 土地代金を支払い(つなぎ融資①)
- 着工時: 着工金を支払い(つなぎ融資②)
- 工事中間: 中間金を支払い(つなぎ融資③)
- 引渡し当日: 住宅ローンが実行され、つなぎ融資を一括返済
- 翌月または翌々月: 住宅ローンの返済開始
注文住宅は引渡し前の支払いが多く、つなぎ融資の利用が必要になる場合があります。
つなぎ融資の仕組みと二重払いリスク
つなぎ融資とは何か
つなぎ融資とは、住宅ローンが実行されるまでの間、一時的に利用する短期融資です。
注文住宅の土地購入・着工金・中間金の支払いなど、住宅完成前の支払いに利用されます。住宅ローンが実行された時点で、つなぎ融資を一括返済します。
つなぎ融資が必要になるケース
つなぎ融資が必要になる主なケースは以下の通りです。
- 注文住宅の土地購入: 住宅ローンは建物完成後に実行されるため、土地購入時につなぎ融資を利用
- 着工金・中間金の支払い: 建築会社への着工金・中間金の支払いにつなぎ融資を利用
新築マンションや中古住宅の購入では、通常つなぎ融資は不要です。
つなぎ融資の金利と諸費用(年2〜4%)
つなぎ融資の金利は年2〜4%程度で、住宅ローンより高めです。
また、つなぎ融資にも諸費用(手数料、印紙税など)が別途かかります。金融機関により金利・諸費用が異なるため、複数社を比較検討することを推奨します。
工事遅延時のリスクと対策
住宅工事の遅れでつなぎ融資の期間が延びると、追加の利息が発生する場合があります。
対策として、建築会社との契約時に工期の余裕を持たせることや、遅延時の対応について事前に確認しておくことが重要です。
資金計画と返済開始前の準備
頭金と諸費用の支払い時期
頭金と諸費用の支払い時期は以下の通りです。
| 項目 | 支払い時期 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 手付金 | 契約時 | 物件価格の5-10% |
| 頭金 | 引渡し当日 | 物件価格の10-20%(頭金なしも可) |
| 諸費用 | 契約時〜引渡し当日 | 物件価格の5-10% |
頭金は契約から引渡しの間に支払い、最も遅いタイミングは融資実行日(引渡日)です。諸費用は現金準備が必要な場合もあるため、事前に確認してください。
賃貸との二重払い期間の試算
賃貸との二重払い期間を試算する際は、以下を考慮してください。
- 引き渡しから入居までの期間: リフォームやクリーニングで1〜2週間程度かかる場合がある
- 賃貸契約の解約予告期間: 通常1〜2ヶ月前の予告が必要
- 住宅ローンの返済開始時期: 引渡日の翌月または翌々月
試算例:
- 引渡日: 5月31日
- 賃貸家賃: 10万円/月
- 住宅ローン返済額: 12万円/月
- 賃貸解約予告: 1ヶ月前
二重払い期間:
- 5月分賃貸家賃: 10万円(全額)
- 6月分賃貸家賃: 10万円(全額、解約予告のため)
- 7月分住宅ローン返済: 12万円(初回返済)
この場合、5月〜7月の3ヶ月間で合計32万円の支払いが発生します。資金計画に含めておくことが重要です。
元金据え置き型ローンの活用
元金据え置き型ローンを利用すれば、一定期間は利息のみの支払いとすることができます。
引き渡し直後の資金負担を軽減できるメリットがありますが、総返済額は増加します。利用を検討する場合は、ファイナンシャルプランナーなど専門家への相談を推奨します。
金利動向と2025年の最新情報
2025年12月時点の住宅ローン金利は以下の通りです(執筆時点の情報であり、最新情報は各金融機関で確認してください)。
| 金利タイプ | 金利水準 | 備考 |
|---|---|---|
| 変動金利 | 0.6〜0.7%台 | 日銀の利上げ(2025年1月に0.5%へ)で今後上昇の可能性 |
| 固定金利(10年固定) | 1.9〜2.3%台 | - |
| フラット35 | 1.97% | 実行時金利が適用される |
金利は変動するため、申込時と融資実行時で金利が異なる場合があります。フラット35は融資実行時の金利が適用されるため、申込時の金利が保証されるわけではありません。
まとめ:支払い開始時期を踏まえた準備のポイント
住宅ローンの返済は融資実行日(引渡日)の翌月または翌々月から開始します。約定返済日との前後関係により決まるため、金融機関に事前確認することを推奨します。
注文住宅の場合、土地購入・着工金・中間金の支払いにつなぎ融資が必要になることがあります。つなぎ融資の金利は年2〜4%と住宅ローンより高く、諸費用も別途かかるため、複数社を比較検討してください。
初回返済額は融資実行日から初回返済日までの利息が加算され、通常より高くなる場合があります。賃貸との二重払い期間は一般的に1〜2ヶ月程度で、資金計画に含めておくことが重要です。頭金・諸費用は契約から引渡しの間に支払い、現金準備が必要な場合もあるため、事前に確認してください。
住宅ローンは長期の借入であり、返済計画は専門家(ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー等)への相談を推奨します。金利動向や返済シミュレーションを踏まえ、無理のない資金計画を立てることをお勧めします。
