住宅ローン返済額早見表が必要な理由
住宅購入を検討する際、「月々の返済額がいくらになるのか」を正確に把握することは重要です。
この記事では、借入額・金利・返済期間別の返済額早見表、返済額の計算方法、適正な借入額と返済比率の考え方を解説します。
住宅金融支援機構の公式データや、国土交通省の住宅ローン控除制度を元に、実践的な返済計画の立て方を提示します。
(1) 購入予算の検討に不可欠な月々の返済額の把握
住宅購入時に「いくらまで借りられるか」ではなく、「月々いくら返済できるか」を基準に予算を決めることが重要です。
早見表を使えば、借入額・金利・返済期間の組み合わせごとの月々の返済額を瞬時に確認でき、無理のない予算設定が可能になります。
(2) 早見表で複数のパターンを瞬時に比較できる
早見表は、金利タイプ(変動金利・固定金利)や返済期間(20年・30年・35年)を変えた場合の返済額を一覧で比較できます。
金利上昇リスクを考慮し、複数のパターンでシミュレーションすることが、安全な返済計画につながります。
(3) 100万円あたりの返済額から簡単に概算計算が可能
早見表の多くは「100万円あたりの返済額」を基準に設計されています。
例えば、借入額3,000万円の場合、100万円あたりの返済額を30倍すれば、電卓で簡単に概算を計算できます。
借入額・金利・返済期間別の返済額早見表
代表的な借入額・金利・返済期間の組み合わせごとの月々の返済額を表にまとめました。
(1) 借入額2,000万円~5,000万円の返済額パターン
返済期間35年、元利均等返済の場合
| 借入額 | 金利0.5% | 金利1.0% | 金利1.5% | 金利2.0% |
|---|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 51,917円 | 56,457円 | 61,237円 | 66,253円 |
| 3,000万円 | 77,875円 | 84,685円 | 91,855円 | 99,379円 |
| 4,000万円 | 103,834円 | 112,914円 | 122,473円 | 132,505円 |
| 5,000万円 | 129,792円 | 141,142円 | 153,092円 | 165,631円 |
返済期間30年、元利均等返済の場合
| 借入額 | 金利0.5% | 金利1.0% | 金利1.5% | 金利2.0% |
|---|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 59,619円 | 64,337円 | 69,264円 | 74,396円 |
| 3,000万円 | 89,429円 | 96,506円 | 103,896円 | 111,594円 |
| 4,000万円 | 119,238円 | 128,674円 | 138,529円 | 148,792円 |
| 5,000万円 | 149,048円 | 160,843円 | 173,161円 | 185,990円 |
返済期間20年、元利均等返済の場合
| 借入額 | 金利0.5% | 金利1.0% | 金利1.5% | 金利2.0% |
|---|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 87,689円 | 92,013円 | 96,509円 | 101,176円 |
| 3,000万円 | 131,533円 | 138,019円 | 144,764円 | 151,764円 |
| 4,000万円 | 175,378円 | 184,026円 | 193,018円 | 202,352円 |
| 5,000万円 | 219,222円 | 230,032円 | 241,273円 | 252,940円 |
注意: 上記は概算値です。実際の返済額は金融機関により異なるため、正確な試算は金融機関で確認してください。
(2) 金利0.5%~2.0%別の返済額比較
2024年10月時点で、変動金利は0.4%台、10年固定金利は1.6%~2.1%台となっています。
金利が0.5%上昇すると、借入額3,000万円・返済期間35年の場合、月々の返済額は約7,000円増加します。
(参考: 価格.com 住宅ローン金利比較)
(3) 返済期間20年~35年別の返済額比較
返済期間を長くすると月々の返済額は減りますが、総返済額(利息負担)が増えます。
借入額3,000万円、金利1.0%の場合の比較
| 返済期間 | 月々の返済額 | 総返済額 | 利息総額 |
|---|---|---|---|
| 20年 | 138,019円 | 約3,312万円 | 約312万円 |
| 30年 | 96,506円 | 約3,474万円 | 約474万円 |
| 35年 | 84,685円 | 約3,557万円 | 約557万円 |
返済期間を15年延ばすと、月々の返済額は約5.3万円減りますが、利息総額は約245万円増加します。
住宅ローン返済額の計算方法(Excel・PMT関数活用)
早見表がない場合や、個別の条件で計算したい場合の方法を解説します。
(1) ExcelのPMT関数を使った計算手順
ExcelのPMT関数を使えば、正確な返済額を自動計算できます。
計算式:
=PMT(利率, 期間, 現在価値)
具体例(借入額3,000万円、金利1.0%、返済期間35年):
=PMT(1.0%/12, 35*12, -30000000)
- 利率: 年利1.0% ÷ 12ヶ月 = 0.083%(月利)
- 期間: 35年 × 12ヶ月 = 420ヶ月
- 現在価値: -30,000,000円(マイナスで入力)
結果: 約84,685円
(参考: SUUMOカウンター)
(2) 元利均等返済と元金均等返済の違い
住宅ローンの返済方式には、元利均等返済と元金均等返済の2種類があります。
| 項目 | 元利均等返済 | 元金均等返済 |
|---|---|---|
| 特徴 | 毎月の返済額(元金+利息)が一定 | 毎月の元金返済額が一定 |
| メリット | 返済計画が立てやすい | 総返済額が少ない |
| デメリット | 総返済額が多い | 当初の返済額が高い |
| 一般性 | 最も一般的 | 取扱金融機関が少ない |
元利均等返済は、毎月の返済額が一定なため、返済計画が立てやすく、最も一般的に使用されます。
(3) 借入可能額の逆算方法
「月々〇万円まで返済できる」という金額から、借入可能額を逆算することも可能です。
計算式:
借入可能額 = 月々返済額 ÷ (早見表の100万円あたり返済額) × 100万円
例: 月々10万円まで返済可能、金利1.0%、返済期間35年の場合
100万円あたりの返済額: 約2,823円
借入可能額 = 100,000円 ÷ 2,823円 × 100万円 ≒ 3,543万円
適正な借入額と返済比率の考え方
借入可能額と、無理なく返済できる額は異なります。
(1) 年収の5~7倍が借入額の目安
一般的に、住宅ローンの適正借入額は年収の5~7倍とされています。
| 年収 | 借入額の目安(5倍) | 借入額の目安(7倍) |
|---|---|---|
| 400万円 | 2,000万円 | 2,800万円 |
| 500万円 | 2,500万円 | 3,500万円 |
| 600万円 | 3,000万円 | 4,200万円 |
| 700万円 | 3,500万円 | 4,900万円 |
ただし、これはあくまで目安です。実際には返済比率で判断することが重要です。
(2) 返済比率は年収の25%~30%が安全圏
返済比率とは、年収に対する年間返済額の割合です。一般的に25%~30%が無理なく返済できる目安とされます。
例: 年収500万円の場合
- 返済比率25%: 年間返済額125万円 → 月々約10.4万円
- 返済比率30%: 年間返済額150万円 → 月々約12.5万円
(参考: 中央労働金庫)
(3) 物件種別による平均返済額(注文住宅14.5万円、分譲マンション12.3万円等)
参考として、物件種別ごとの平均返済額を示します。
| 物件種別 | 平均返済額 |
|---|---|
| 注文住宅 | 14.5万円 |
| 分譲戸建て | 13.1万円 |
| 分譲マンション | 12.3万円 |
| 中古戸建て | 10.8万円 |
| 中古マンション | 9.7万円 |
これはあくまで平均値であり、個別の状況に応じた返済計画が必要です。
金利タイプの選び方と最新動向(2024年利上げ対応)
住宅ローンの金利タイプは、返済額に大きく影響します。
(1) 変動金利と固定金利の特徴と比較(2024年10月時点:変動0.4%台、10年固定1.6-2.1%台)
| 金利タイプ | 金利水準(2024年10月) | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 変動金利 | 0.4%台(都市銀行) | 金利が低い | 金利上昇リスクがある |
| 固定金利(10年) | 1.6%~2.1%台 | 金利上昇リスクを回避 | 金利が高い |
| フラット35 | 約1.5%~2.0% | 最長35年固定で安心 | 変動金利より高い |
変動金利は、市場金利の変動に応じて金利が見直される方式です。2024年10月時点で都市銀行の変動金利は0.4%台となっています。
固定金利は、借入時の金利が返済期間中変わらない方式です。10年固定で1.6%~2.1%台(2024年10月時点)となっています。
(参考: 価格.com)
(2) 2024年3月・10月の日銀利上げの影響
2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除し、2024年10月に追加利上げを実施しました。この結果、住宅ローン金利が約0.15%上昇しています。
今後も金利上昇のリスクがあるため、変動金利を選ぶ場合は金利上昇時のシミュレーションを行うことが重要です。
(3) 金利上昇リスクを考慮したシミュレーションの重要性
変動金利を選ぶ場合、金利が1.0%上昇した場合の返済額もシミュレーションしておきましょう。
例: 借入額3,000万円、返済期間35年、変動金利0.5%の場合
- 金利0.5%: 月々77,875円
- 金利1.5%(1.0%上昇時): 月々91,855円
金利が1.0%上昇すると、月々約14,000円、年間約17万円の負担増となります。
この負担に耐えられるかを事前に確認することが、安全な返済計画につながります。
まとめ:住宅ローン返済額早見表を活用した無理のない返済計画
住宅ローン返済額早見表を活用することで、借入額・金利・返済期間の組み合わせごとの月々の返済額を瞬時に把握できます。ExcelのPMT関数を使えば、個別の条件で正確な計算も可能です。
適正な借入額は年収の5~7倍が目安ですが、返済比率(年収の25%~30%)を基準に判断することが重要です。2024年10月の日銀利上げにより金利が約0.15%上昇しており、今後も金利上昇リスクを考慮したシミュレーションが必要です。
早見表やシミュレーションはあくまで概算です。実際の返済計画は、ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーなどの専門家に相談し、無理のない計画を立てましょう。
