年収と住宅ローンの関係:借入可能額の基本を理解する
住宅購入を検討する際、「自分の年収でいくらまで借りられるのか」と疑問に思う方は多いでしょう。年収300万円、800万円など、具体的な金額での借入可能額の目安を知りたいと考える方も少なくありません。
この記事では、年収別の住宅ローン借入可能額の目安、返済負担率の計算方法、審査基準、世帯年収での考え方、無理のない返済計画の立て方を解説します。年収に応じた適正な借入額を理解し、安心して住宅購入を進められるようになります。
この記事のポイント
- 住宅ローンの借入額の目安は年収の6~7倍、無理のない借入額は年収の5~6倍以内
- 年収300万円の場合、借入可能額は1650万~2250万円、安心な目安は1500万円程度(月々5万円)
- 年収800万円の場合、借入可能額は4000万~5600万円、適正借入額は月々14万円程度(返済負担率21%)
- 返済負担率は25%以下が理想、最大でも30%以内に抑えることが重要
(1) 住宅ローン借入額の目安(年収の6~7倍)
住宅ローンの借入額は、一般的に年収の6~7倍が目安とされています。
年収倍率の考え方:
- 年収倍率: 年収に対する借入額の倍率
- 計算式: 借入額 ÷ 年収
- 一般的な目安: 6~7倍
- 無理のない目安: 5~6倍以内
例(年収500万円の場合):
| 年収倍率 | 借入額 |
|---|---|
| 5倍 | 2,500万円 |
| 6倍 | 3,000万円 |
| 7倍 | 3,500万円 |
年収倍率が高すぎると、月々の返済負担が重くなり、生活が苦しくなる可能性があります。
(2) 返済負担率の計算方法(年間返済額÷年収×100)
返済負担率は、年収に対する年間返済額の割合を示す指標で、住宅ローン審査で重視されます。
返済負担率の計算方法:
返済負担率(%)= 年間返済額 ÷ 年収 × 100
例(年収500万円、月々10万円返済の場合):
年間返済額 = 10万円 × 12ヶ月 = 120万円
返済負担率 = 120万円 ÷ 500万円 × 100 = 24%
理想の返済負担率:
- 理想: 25%以下
- 最大: 30%以内
- 金融機関の審査基準: 30~35%以内(金融機関により異なる)
返済負担率が30%を超えると、教育費や老後資金が不足するリスクが高まります。
(3) 審査で重視される項目(92%の金融機関が返済負担率を重視)
住宅ローン審査では、以下の項目が重視されます。
| 審査項目 | 重視する金融機関の割合 |
|---|---|
| 返済負担率 | 92% |
| 勤続年数 | 88% |
| 年収 | 85% |
| 物件の担保評価 | 82% |
| 健康状態(団信加入) | 78% |
(出典: 住宅金融支援機構「住宅ローンに関する調査」)
返済負担率は92%の金融機関が審査項目にしており、最も重視される指標です。
年収別の住宅ローン借入可能額の目安(300万・800万の具体例)
(1) 年収300万円の借入可能額(1650万~2250万円、安心な目安は1500万円)
年収300万円の場合、借入可能額と安心な目安は以下の通りです。
借入可能額:
- 年収の6~7倍: 1,800万~2,100万円
- 金融機関の上限(返済負担率30%): 約2,250万円
安心な目安:
- 年収の5倍: 1,500万円
- 月々の返済額: 約5万円(返済負担率25%以内)
返済シミュレーション(借入1,500万円、変動金利0.5%、35年):
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 借入額 | 1,500万円 |
| 月々の返済額 | 約3.9万円 |
| 年間返済額 | 約47万円 |
| 返済負担率 | 約16%(300万円に対して) |
あくまで目安で、実際の審査結果は個別に異なります。借入前にファイナンシャルプランナーや金融機関の担当者に相談することを強くお勧めします。
(2) 年収800万円の借入可能額(4000万~5600万円、適正額は月々14万円程度)
年収800万円の場合、借入可能額と適正額は以下の通りです。
借入可能額:
- 年収の6~7倍: 4,800万~5,600万円
- 金融機関の上限(返済負担率30%): 約6,000万円
適正借入額:
- 年収の5倍: 4,000万円
- 月々の返済額: 約14万円(返済負担率21%)
返済シミュレーション(借入4,000万円、変動金利0.5%、35年):
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 借入額 | 4,000万円 |
| 月々の返済額 | 約10.3万円 |
| 年間返済額 | 約124万円 |
| 返済負担率 | 約16%(800万円に対して) |
実際の利用者の平均返済負担率は21.8%です。ご家庭の状況に応じて調整してください。
(3) フラット35利用者の平均世帯年収(2023年度:661万円)
フラット35(住宅金融支援機構の全期間固定金利型住宅ローン)の利用者データから、平均的な世帯年収が分かります。
フラット35利用者の平均世帯年収(2023年度):
- 全体: 661万円
- 注文住宅: 701万円
- 建売住宅: 612万円
- マンション: 683万円
(出典: 住宅金融支援機構「フラット35利用者調査」)
これらのデータは、実際に住宅ローンを利用している世帯の年収水準の参考になります。
返済負担率と審査基準:無理のない返済計画とは
(1) 理想の返済負担率(25%以下、最大でも30%以内)
無理のない返済計画を立てるには、返済負担率を適切に保つことが重要です。
返済負担率の目安:
| 返済負担率 | 評価 | 生活への影響 |
|---|---|---|
| 20%以下 | 理想的 | ゆとりある生活 |
| 20~25% | 適正 | 無理のない生活 |
| 25~30% | やや厳しい | 節約が必要 |
| 30%超 | 危険 | 教育費・老後資金が不足するリスク |
25%以下が理想、最大でも30%以内に抑えることを推奨します。
(2) 手取り収入での計算の重要性(額面年収と手取り年収の違い)
返済負担率を計算する際は、手取り年収で計算することが重要です。
額面年収と手取り年収の違い:
- 額面年収: 税金・社会保険料控除前の年収
- 手取り年収: 税金・社会保険料控除後の実際の収入
- 手取り率: 一般的に額面の75~80%
例(額面年収500万円の場合):
手取り年収 = 500万円 × 80% = 400万円
返済負担率の計算(手取りベース):
月々の返済額10万円、手取り年収400万円の場合
年間返済額 = 10万円 × 12ヶ月 = 120万円
返済負担率 = 120万円 ÷ 400万円 × 100 = 30%
手取りベースで計算することで、実際の生活負担を正確に把握できます。
(3) 金融機関の審査金利と実際の借入金利の差
住宅ローン審査では、審査金利を使って返済能力を判定します。
審査金利とは:
- 金融機関が審査時に使用する金利(実際の借入金利より高め)
- 金利上昇リスクを考慮した安全マージン
- 一般的に3~4%程度
実際の借入金利との差:
| 項目 | 金利 |
|---|---|
| 実際の借入金利(変動金利) | 0.5~1.0% |
| 審査金利 | 3~4% |
審査金利が高いため、実際には借りられる金額が審査で承認される金額より少なくなる場合があります。
世帯年収での住宅ローン計算方法:共働き世帯のメリットと注意点
(1) 共働き世帯の平均年収(約831万円)
共働き世帯は、合算年収で住宅ローンを組むことができます。
共働き世帯の平均年収(2023年):
- 平均世帯年収: 約831万円
- 夫の平均年収: 約530万円
- 妻の平均年収: 約301万円
(出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)
合算年収で計算することで、借入可能額が増えます。
(2) ペアローンと連帯債務の違い
共働き世帯が住宅ローンを組む方法は、主に2つあります。
ペアローンと連帯債務の違い:
| 項目 | ペアローン | 連帯債務 |
|---|---|---|
| 契約数 | 2本(夫婦それぞれ) | 1本(2人で連帯) |
| 住宅ローン控除 | 2人とも受けられる | 2人とも受けられる |
| 団信加入 | 2人とも加入 | 主債務者のみ加入(金融機関による) |
| 諸費用 | 2本分かかる | 1本分 |
ペアローンのメリット:
- 2人とも住宅ローン控除を受けられる
- 2人とも団信に加入できる(どちらかが死亡・高度障害時に、その人のローン残高が完済される)
連帯債務のメリット:
- 諸費用が1本分で済む
- 契約手続きがシンプル
(3) どちらかが退職・減収した場合のリスク(片方の収入だけで返せる額が安全)
共働き世帯の住宅ローンには、注意点があります。
リスク:
- どちらかが退職・育児休業・転職で減収した場合、返済が困難になる可能性
- 離婚した場合、ローンの分担が問題になる
安全な目安:
- 片方の収入だけで返せる額を借入額の上限にする
- 例:夫の年収500万円、妻の年収300万円の場合、夫の年収500万円を基準に借入額を決める
この考え方により、万が一の場合でも返済を継続できます。
失敗しない借入額の考え方:返済シミュレーションと金利上昇リスク
(1) 2024年の金利動向(約17年ぶりに変動金利引き上げ)
2024年、約17年ぶりに大手銀行が住宅ローンの変動金利を引き上げました。
2024年の金利動向:
- 三菱UFJ銀行、三井住友銀行などが変動金利を引き上げ
- 日銀の金融政策正常化(マイナス金利解除)の影響
- 今後も金利上昇の可能性がある
金利上昇リスクを考慮した返済計画が必要です。
(2) 金利上昇時の返済額シミュレーション
金利が上昇した場合、返済額がどう変わるかをシミュレーションします。
例(借入3,000万円、35年返済):
| 金利 | 月々の返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|
| 0.5% | 約7.8万円 | 約3,270万円 |
| 1.0% | 約8.5万円 | 約3,560万円 |
| 2.0% | 約10.0万円 | 約4,170万円 |
| 3.0% | 約11.5万円 | 約4,850万円 |
金利が1%上昇すると、月々の返済額が約7,000円、総返済額が約290万円増加します。
対策:
- 固定金利型も検討する
- 繰上返済を活用する
- 返済負担率に余裕を持たせる(25%以下)
(3) 教育費・老後資金との両立
住宅ローン返済は、教育費や老後資金と両立させる必要があります。
家計の3大支出:
| 支出項目 | 目安額 |
|---|---|
| 住宅ローン | 借入額により異なる |
| 教育費 | 子ども1人あたり1,000万~2,000万円 |
| 老後資金 | 夫婦で3,000万円程度 |
無理のない借入額の考え方:
- 住宅ローンの返済負担率を25%以内に抑える
- 教育費の積立を並行して行う(月々2~3万円)
- 老後資金の積立も考慮する(月々2~3万円)
住宅ローンだけでなく、将来の支出も見据えた計画を立てることが重要です。
まとめ:年収に応じた適正な借入額で安心の住宅購入を
住宅ローンの借入額は、年収の6~7倍が目安ですが、無理のない借入額は年収の5~6倍以内です。年収300万円の場合、借入可能額は1650万~2250万円、安心な目安は1500万円程度(月々5万円)です。年収800万円の場合、借入可能額は4000万~5600万円、適正借入額は月々14万円程度(返済負担率21%)です。
返済負担率は25%以下が理想、最大でも30%以内に抑えることが重要です。手取り収入をベースに計算し、教育費・老後資金との両立も考慮してください。
共働き世帯は合算年収で計算できますが、どちらかが退職・減収した場合のリスクに備え、片方の収入だけで返せる額を上限にすることを推奨します。
2024年は約17年ぶりに変動金利が引き上げられ、金利上昇リスクを考慮した返済計画が必要です。借入前にファイナンシャルプランナーや金融機関の担当者に相談し、無理のない返済計画を立てましょう。
