住宅ローンの収入合算とは?ペアローンとの違いと基本的な仕組み
住宅ローンを検討する際、「単独では希望額が借りられない」「妻の収入を合算して審査を受けたい」と考える方は少なくありません。
この記事では、住宅ローンの収入合算の仕組み、審査基準、連帯保証型と連帯債務型の違い、メリット・デメリット、税制優遇を、公的情報と金融機関のデータを元に解説します。
収入合算を検討している方でも、審査内容・リスク・注意点を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 収入合算とは、配偶者等の収入を合算して住宅ローン審査を受ける方式(契約1本)
- 収入合算者(妻)の条件は20歳以上65歳以下、年収100万円以上が目安
- 連帯保証型と連帯債務型があり、税制優遇を重視するなら連帯債務型が有利
- 借入可能額が増える反面、返済負担も増加し、収入減少・離婚時のリスクがある
- ファイナンシャルプランナーや税理士など専門家への相談を推奨
(1) 収入合算の定義(配偶者等の収入を合算して審査)
収入合算とは、住宅ローン申込者本人の収入に、配偶者や親子など親族の収入を合算して住宅ローン審査を受ける方式です。
収入合算により、単独では審査が通らない金額でも、借入可能額を増やすことができます。ただし、収入合算者も審査対象となり、年収・勤務先・信用情報等が審査されます。
(2) ペアローンとの違い(契約1本vs2本、諸費用の違い)
収入合算とペアローンの主な違いは、契約の本数です。
| 項目 | 収入合算 | ペアローン |
|---|---|---|
| 契約本数 | 1本 | 2本 |
| 主債務者 | 1人(+連帯保証人/連帯債務者) | 2人(各自が債務者) |
| 諸費用 | 1回のみ | 2倍(事務手数料、保証料等) |
| 団信 | 主債務者のみ(連帯保証型の場合) | 両方が加入可能 |
| 住宅ローン控除 | 主債務者のみ(連帯保証型の場合) | 両方が利用可能 |
ペアローンは契約が2本となるため、事務手数料、保証料、登録免許税、司法書士報酬、印紙税等が二重に発生し、諸費用が高くなります。
(3) 収入合算が適している人(借入可能額を上げたい、諸費用を抑えたい)
収入合算が適しているのは、以下のような方です。
- 単独では希望額が借りられない
- 諸費用を抑えたい(契約1本で済ませたい)
- 主債務者の収入を補完する形で借入額を増やしたい
ただし、収入合算にはリスクも伴うため、将来のライフイベント(出産、転職等)による収入減少を考慮する必要があります。
収入合算時の審査基準:妻の年収・勤務先・信用情報はどう審査されるか
収入合算を利用する場合、収入合算者(妻)も審査対象となります。
(1) 収入合算者(妻)の条件(20歳以上65歳以下、年収100万円以上)
収入合算者の一般的な条件は以下の通りです。
- 年齢: 申込時20歳以上65歳以下
- 年収: 前年度税込年収100万円以上(正社員・契約社員・派遣社員)
- 自営業: 2年平均100万円以上の所得
- 続柄: 申込人の配偶者・父母・義父母・子・子の配偶者のいずれか
これらの条件は金融機関により異なる場合があるため、各金融機関の公式情報を確認してください。
(2) 審査項目(年収、勤務先・勤続年数、家族構成、完済時年齢、担保価値、頭金、既存の借金)
収入合算時の審査項目は、以下の通りです。
主債務者・収入合算者の両方:
- 年収
- 勤務先・勤続年数
- 家族構成
- 現在の年齢と完済時年齢
- 信用情報(クレジットカードの利用状況、ローンの返済状況等)
- 既存の借金金額
物件・資金計画:
- 住宅の担保価値
- 頭金の割合
これらの項目を総合的に審査し、金融機関が融資の可否と金額を判断します。
(3) 配偶者の信用情報も審査対象(借金がある場合の影響)
収入合算を利用すると、配偶者の信用情報も審査対象となります。配偶者に借金がある場合、借入総額や返済状況によっては審査に影響する可能性があります。
対策:
- 事前に信用情報機関(CIC、JICC等)で自分の信用情報を確認する
- 既存の借金がある場合、完済または残高を減らす
- クレジットカードの延滞がある場合、解消してから申し込む
配偶者の借金が審査に与える影響は、金額や返済状況により異なるため、心配な場合は金融機関や専門家に相談することを推奨します。
(4) 雇用形態の影響(正社員・契約社員・派遣社員・自営業)
雇用形態により、審査の基準が異なる場合があります。
- 正社員: 最も審査が通りやすい傾向
- 契約社員・派遣社員: 年収100万円以上が条件(金融機関により異なる)
- 自営業: 2年平均100万円以上の所得が条件(確定申告書の提出が必要)
産休・育休中の場合、収入が一時的に減少するため、審査に影響する可能性があります。金融機関により扱いが異なるため、事前に確認してください。
連帯保証型と連帯債務型の違い:それぞれのメリット・デメリット
収入合算には、連帯保証型と連帯債務型の2種類があります。
(1) 連帯保証型(主債務者+連帯保証人、団信・住宅ローン控除は主債務者のみ)
連帯保証型は、主債務者と連帯保証人として契約する方式です。
特徴:
- 連帯保証人は返済義務を負うが、団体信用生命保険(団信)に加入できない
- 連帯保証人は住宅ローン控除を利用できない
- 連帯保証人に万が一があっても、主債務者は返済を続ける必要がある
(2) 連帯債務型(主債務者+連帯債務者、両方が返済責任を持ち、住宅ローン控除を双方が利用可能)
連帯債務型は、主債務者と連帯債務者として共同名義で契約する方式です。
特徴:
- 両方が返済責任を持つ
- 住宅ローン控除を双方が利用可能(税制メリットが大きい)
- 一般的に連帯債務者は団信に加入できない(金融機関により異なる)
(3) どちらを選ぶべきか(税制優遇を重視するなら連帯債務型)
税制優遇を重視するなら、連帯債務型が有利です。両方が住宅ローン控除を利用できるため、税負担を軽減できます。
ただし、連帯債務者に万が一があっても返済は続くため、リスクも理解する必要があります。金融機関や専門家に相談し、自分に合った方式を選ぶことを推奨します。
収入合算のメリットとデメリット:借入可能額・諸費用・リスク
収入合算にはメリットとデメリットがあります。
(1) メリット①:借入可能額が増える(単独審査より高額な物件が購入可能)
収入合算の最大のメリットは、借入可能額が増えることです。単独では審査が通らない金額でも、配偶者の収入を合算することで借入可能額を増やすことができます。
例えば、夫の年収が500万円、妻の年収が300万円の場合、合算すると800万円として審査されるため、より高額な物件を購入できる可能性があります。
(2) メリット②:諸費用が抑えられる(契約1本で事務手数料・保証料等が1回のみ)
収入合算は契約が1本のため、ペアローンと比べて諸費用を抑えられます。
(3) ペアローンとの諸費用比較(事務手数料、保証料、登録免許税、司法書士報酬、印紙税等)
| 費用項目 | 収入合算 | ペアローン |
|---|---|---|
| 事務手数料 | 1回 | 2回(2倍) |
| 保証料 | 1回 | 2回(2倍) |
| 登録免許税 | 1回 | 2回(2倍) |
| 司法書士報酬 | 1回 | 2回(2倍) |
| 印紙税 | 1回 | 2回(2倍) |
ペアローンは諸費用が高くなるため、コストを抑えたい場合は収入合算が有利です。
(4) デメリット①:借入金額が大きくなり返済が苦しくなるリスク
収入を合算することで借入可能額が上がりますが、返済負担も増加します。
将来のライフイベント(出産、育児、転職等)により収入が減少する可能性を考慮し、無理のない返済計画を立てることが重要です。
(5) デメリット②:連帯保証型は団信に加入できない(連帯保証人に万が一があっても主債務者は返済継続)
連帯保証型では、連帯保証人は団体信用生命保険(団信)に加入できません。連帯保証人に万が一があっても、主債務者は返済を続ける必要があります。
このリスクを軽減するため、連帯保証人が別途生命保険に加入することを検討してください。
(6) デメリット③:連帯債務者に万が一があっても返済は続く(一般的に連帯債務者は団信に加入できない)
連帯債務型でも、一般的に連帯債務者は団信に加入できないため、連帯債務者に万が一があっても返済は続きます。
一部の金融機関では、連帯債務者も団信に加入できる商品を提供している場合があるため、金融機関に確認してください。
(7) デメリット④:産休・育休・転職による収入減少リスク
産休・育休中は収入が減少し、転職により年収が下がる可能性もあります。
収入合算を利用する場合、これらのリスクを考慮し、主債務者の収入だけでも返済可能な範囲で借入額を設定することを推奨します。
(8) デメリット⑤:離婚時のリスク(連帯保証人・連帯債務者の変更は困難)
離婚した場合、連帯保証人・連帯債務者の変更は金融機関の承認が必要で、簡単には変更できません。離婚後も返済義務が残るため、慎重に検討してください。
離婚時のリスクを考慮し、事前に契約内容や返済計画を夫婦で十分に話し合うことが重要です。
税制優遇:住宅ローン控除の適用と連帯債務型の活用
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用する際の重要な税制優遇制度です。
(1) 住宅ローン控除の仕組み(最大13年間、年末のローン残高の0.7%を所得税から控除)
住宅ローン控除は、住宅ローンを借入れて住宅の新築等をすると、最大13年間、年末のローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です(2024年時点)。
控除額の目安:
- 年末のローン残高が4,000万円の場合、控除額は4,000万円 × 0.7% = 28万円
- 所得税から控除しきれない場合、住民税からも一部控除可能
(2) 連帯保証型:主債務者のみ控除対象
連帯保証型では、主債務者のみが住宅ローン控除を利用できます。連帯保証人は控除を受けられません。
(3) 連帯債務型:両方が控除を利用可能(税制メリットが大きい)
連帯債務型では、両方が住宅ローン控除を利用できます。夫婦で住宅ローン控除を利用することで、税制メリットが大きくなります。
例:
- 夫の年末ローン残高:2,000万円 → 控除額 14万円
- 妻の年末ローン残高:2,000万円 → 控除額 14万円
- 合計控除額:28万円
(4) ペアローンとの比較(両方が控除可能だが諸費用が高い)
ペアローンも両方が住宅ローン控除を利用できますが、諸費用が2倍になります。
税制メリットと諸費用を総合的に比較し、自分に合った方式を選ぶことを推奨します。税理士やファイナンシャルプランナーに相談することで、最適な選択ができます。
まとめ:収入合算を検討する際は専門家に相談を
住宅ローンの収入合算は、配偶者等の収入を合算して審査を受ける方式です。借入可能額が増える反面、返済負担も増加し、収入減少・離婚時のリスクがあります。
収入合算者(妻)の条件は20歳以上65歳以下、年収100万円以上が目安で、年収・勤務先・信用情報等が審査されます。連帯保証型と連帯債務型があり、税制優遇を重視するなら連帯債務型が有利ですが、リスクも理解する必要があります。
信頼できるファイナンシャルプランナー、税理士、宅地建物取引士に相談しながら、将来のライフイベント(出産、転職、離婚等)を考慮し、無理のない返済計画を立てることを推奨します。
