住宅ローン借入可能額が重要な理由と本記事の目的
住宅購入を検討する際、「自分はいくらまで住宅ローンを借りられるのか」と悩む方は少なくありません。借入可能額を正確に把握することで、無理のない返済計画を立てられます。
この記事では、住宅ローン借入可能額の計算方法、年収別のシミュレーション、金融機関の審査基準を、住宅金融支援機構や各銀行の公式情報を元に解説します。
初めて住宅ローンを検討する方でも、自分に適した借入額を判断できるようになります。
この記事のポイント
- 借入可能額の目安は年収の5~7倍程度、無理のない借入は年収の5~6倍以内
- 返済負担率は審査では25~35%以内だが、理想は手取り収入の20~25%
- 審査金利は一般的に3.0~3.4%で、実際の金利より高めに設定される
- 固定資産税・修繕費・管理費など、返済以外の住宅費用も考慮が必要
- 各金融機関の無料シミュレーターを活用して具体的な借入可能額を試算する
住宅ローン借入可能額の基本知識
(1) 借入可能額と適正借入額の違い
借入可能額は金融機関の審査により借り入れできる住宅ローンの上限額です。一方、適正借入額は審査基準とは別に、無理なく返済できる借入額を指します。
みずほ銀行によると、借入限度額いっぱいまで借りると、返済が家計を圧迫し生活が厳しくなる可能性があります。
借入可能額と適正借入額は異なるため、両者を区別して判断することが重要です。
(2) 年収倍率の目安(5~7倍)
年収倍率は住宅ローン借入額が年収の何倍かを示す指標です。一般的な目安は年収の5~7倍程度です。
住宅金融支援機構の2022年度フラット35利用者調査によると、年収倍率は土地付注文住宅で7.7倍、マンションで7.2倍と上昇傾向にあります。
ただし、無理のない借入額の目安は年収の5~6倍以内が推奨されます。
(3) 審査金利の仕組み(3.0~3.4%)
審査金利は借入限度額を計算する際に金融機関が用いる金利です。モゲチェックによると、審査金利は一般的に3.0~3.4%で設定されます。
実際の住宅ローン金利より高めに設定することで、金利上昇時のリスクを考慮しています。審査金利が高いほど、借入可能額は低くなります。
(4) 民間銀行とフラット35の借入限度額の違い
民間金融機関の借入限度額は1億円、フラット35は8,000万円です。
民間銀行は変動金利が多く、フラット35は長期固定金利のため、金利変動リスクが異なります。金利タイプにより借入可能額も変わるため、自分に合った金融機関を選びましょう。
年収別の借入可能額シミュレーション
(1) 年収300万円・400万円・500万円の借入可能額
住信SBIネット銀行の試算によると、年収別の借入可能額の目安は以下の通りです:
| 年収 | 借入可能額(返済負担率30%) | 借入可能額(返済負担率35%) |
|---|---|---|
| 300万円 | 約1,500~2,100万円 | 約1,750~2,450万円 |
| 400万円 | 約2,000~2,800万円 | 約2,333~3,266万円 |
| 500万円 | 約2,500~3,500万円 | 約2,916~4,082万円 |
返済期間35年、金利1.5%で試算した場合の目安です。実際の借入可能額は金融機関により異なります。
(2) 年収600万円・700万円・800万円の借入可能額
| 年収 | 借入可能額(返済負担率30%) | 借入可能額(返済負担率35%) |
|---|---|---|
| 600万円 | 約3,000~4,200万円 | 約3,500~4,900万円 |
| 700万円 | 約3,500~4,900万円 | 約4,083~5,716万円 |
| 800万円 | 約4,000~5,600万円 | 約4,666~6,532万円 |
年収が高いほど借入可能額は増えますが、返済負担率が高すぎると生活が厳しくなる可能性があります。
(3) 各金融機関の無料シミュレーターの活用方法
各金融機関が提供する無料シミュレーターを活用すれば、年収・金利・返済期間から具体的な借入可能額を試算できます。
主要な金融機関のシミュレーター:
複数のシミュレーターで試算し、比較することを推奨します。
(4) 他の借入がある場合の計算方法
自動車ローンなど他の借入がある場合は、その返済額も含めて返済負担率を計算する必要があります。
例えば、年収500万円で自動車ローンの年間返済額が50万円の場合:
- 返済負担率30%の年間返済可能額:150万円
- 自動車ローン分を差し引いた住宅ローン分:100万円
- 住宅ローンの借入可能額:約2,000万円(減少)
他の借入がある場合は、住宅ローンの借入可能額が減少します。
金融機関の審査基準と返済負担率
(1) 返済負担率の計算方法(年間返済額÷年収×100)
SUUMOによると、返済負担率(返済比率)は以下の式で計算されます:
返済負担率 = 年間返済額 ÷ 年収 × 100
例えば、年収500万円で年間返済額150万円の場合:
返済負担率 = 150万円 ÷ 500万円 × 100 = 30%
(2) 審査基準の返済負担率(25~35%以内)
金融機関の審査基準は一般的に返済負担率25~35%以内です。この基準を超えると、審査に通らない可能性があります。
ただし、この基準はあくまで審査のためのものであり、実際に無理なく返済できる額とは異なります。
(3) フラット35の審査基準(年収400万円未満30%、400万円以上35%)
フラット35の審査基準は以下の通りです:
- 年収400万円未満:返済負担率30%以下
- 年収400万円以上:返済負担率35%以下
フラット35は長期固定金利のため、金利変動リスクを避けたい方に適しています。
(4) 民間銀行の審査基準の違い
民間銀行の審査基準は金融機関により異なります。一般的には返済負担率30~35%以内ですが、独自の基準を設けている銀行もあります。
複数の金融機関に相談し、自分に合った審査基準の銀行を選ぶことが重要です。
無理のない返済計画と注意点
(1) 理想的な返済負担率(手取り収入の20~25%)
住信SBIネット銀行によると、返済負担率25%以下が快適な返済の目安です。
理想的な返済負担率は手取り収入の20~25%以下です。税金・社会保険料を差し引いた後の実際の収入額で計算することが重要です。
返済負担率が30%を超えると、返済不能に陥るリスクが高まります。
(2) 固定資産税・修繕費・管理費も考慮する
住宅ローン返済以外にも、以下の費用が発生します:
- 固定資産税:年間10~20万円程度
- 修繕費:戸建ては年間20~30万円、マンションは修繕積立金として月1~3万円
- 管理費(マンション):月1~2万円
これらの費用も含めて返済計画を立てることが重要です。
(3) 教育費・介護費など将来の支出を見込む
住宅ローンの返済期間は20~30年と長期にわたります。将来の支出も見込む必要があります:
- 教育費:子ども1人あたり1,000~2,000万円
- 介護費:親の介護が必要になる可能性
- 車の買い替え:10年ごとに200~300万円
将来のライフイベントを考慮し、余裕を持った返済計画を立てましょう。
(4) 借入限度額いっぱいまで借りるリスク
借入限度額いっぱいまで借りると、以下のリスクがあります:
- 月々の返済額が高く、生活が厳しくなる
- 急な支出(病気、失業等)に対応できない
- 教育費や老後資金を貯蓄できない
無理のない借入額の目安は年収の5~6倍以内です。借入可能額が年収の7倍でも、実際には6倍以内に抑えることを推奨します。
まとめ:適正な借入額の判断基準
住宅ローンの借入可能額は年収の5~7倍程度が目安ですが、無理のない借入は年収の5~6倍以内が推奨されます。返済負担率は審査では25~35%以内ですが、理想は手取り収入の20~25%です。
審査金利は一般的に3.0~3.4%で設定されるため、実際の金利より高めに計算されます。固定資産税・修繕費・管理費など、返済以外の住宅費用も考慮が必要です。
各金融機関の無料シミュレーターを活用し、具体的な借入可能額を試算しましょう。複数の金融機関に相談し、ファイナンシャルプランナー等の専門家にも相談することを推奨します。
