不動産の無料査定とは:なぜ無料で受けられるのか
不動産の売却を検討する際、「不動産査定って無料で受けられるの?」「なぜ無料なの?」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか。
この記事では、不動産の無料査定サービスの仕組み、査定方法の違い(机上査定・訪問査定・AI査定)、一括査定サイトのメリット・デメリット、信頼できるサービスの選び方を、国土交通省の公式情報や業界データを元に解説します。
不動産売却を検討する際の判断材料として、実践的な情報を整理しました。
この記事のポイント
- 不動産査定は基本的に無料で受けられる(不動産会社にとって営業活動の一環、仲介手数料が収入源)
- 査定方法は机上査定、訪問査定、AI査定の3種類があり、それぞれ精度と所要時間が異なる
- 一括査定サイトは複数社に無料で査定依頼できるが、営業電話や匿名不可などのデメリットもある
- 査定額はあくまで「売却できそうな見込み価格」であり、実際の売却価格とは異なる点に注意
- 査定(無料)と鑑定(有料)は用途が異なり、地価公示や担保評価には不動産鑑定士による鑑定が必要
(1) 不動産査定の仕組み(営業活動の一環)
不動産会社による査定は、基本的に無料で受けられます。
不動産情報サイトのナカジツによると、不動産査定が無料の理由は、不動産会社にとって営業活動の一環だからです。
無料査定の仕組み:
- 不動産会社が無料で査定を実施
- 売主が売却を決定
- 不動産会社と媒介契約を締結
- 売買契約成立時に仲介手数料を受け取る
査定そのものは無料ですが、売買契約が成立した場合に仲介手数料(物件価格の3%+6万円+消費税が上限)が不動産会社の収入源となります。
(2) 仲介手数料が収入源となる理由
不動産会社は、査定を通じて売主と接点を持ち、売却を任せてもらう(媒介契約)ことを目指しています。
仲介手数料とは、不動産売買の成約時に不動産会社に支払う手数料です。法律で上限が定められており、物件価格の3%+6万円+消費税が上限となっています。
仲介手数料の例:
- 物件価格3,000万円の場合:(3,000万円 × 3% + 6万円) × 1.1 = 105.6万円
- 物件価格5,000万円の場合:(5,000万円 × 3% + 6万円) × 1.1 = 171.6万円
このため、不動産会社は査定を無料で提供し、売主との信頼関係を築くことで媒介契約を獲得することを目指しています。
(3) 宅建業法が定める査定の義務
国土交通省の宅地建物取引業法(宅建業法)第34条の2第2項により、不動産会社が価格の意見を述べる際は、その根拠を提示する義務があります。
査定書は「住宅地価格査定マニュアル」に基づいて作成されます。
不動産査定の方法(机上査定・訪問査定・AI査定)
(1) 机上査定(簡易査定):短時間で概算価格を把握
SUUMOによると、机上査定は物件を見ずにデータを基に査定する方法です。
机上査定の特徴:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所要時間 | 数時間〜1日程度 |
| 精度 | 概算価格 |
| 訪問 | 不要 |
| 適している人 | まず相場を知りたい人 |
机上査定は、物件の所在地、面積、築年数、周辺の取引事例等のデータを基に査定額を算出します。短時間で概算価格を知ることができるため、売却を検討し始めた段階で利用するのに適しています。
(2) 訪問査定(詳細査定):正確な査定価格を取得
訪問査定は、データに加えて物件を訪問し現物を見て査定する方法です。
訪問査定の特徴:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所要時間 | 数日〜1週間程度 |
| 精度 | 正確な査定価格 |
| 訪問 | 必要 |
| 適している人 | 実際に売却を検討している人 |
訪問査定では、物件の状態(リフォームの有無、日当たり、眺望、設備の状態等)を直接確認するため、より正確な査定価格が得られます。
(3) AI査定:匿名で即座に概算価格を知る
AI査定は、過去の成約事例をもとにAIが査定価格を算出する方法です。
AI査定の特徴:
- 匿名で利用可能
- 即座に概算価格を表示
- 営業電話の心配がない
LIFULL HOME'S等の一部サービスでは、匿名査定サービスを提供しており、個人情報を明かさずに概算価格を知ることができます。
(4) 査定額の算出方法(取引事例比較法・原価法・収益還元法)
SUUMOによると、査定額の算出方法には以下の3つがあります。
査定額の算出方法:
| 方法 | 概要 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 取引事例比較法 | 過去の類似物件の取引価格を参考に査定 | 住宅地・土地 |
| 原価法 | 建物を再調達するのに必要な費用から減価償却分を差し引いて査定 | 戸建て |
| 収益還元法 | 将来得られる収益を現在価値に換算して査定 | 投資用不動産 |
取引事例比較法が最も一般的で、多くの査定で使用されています。
一括査定サイトのメリット・デメリット
(1) メリット:複数社に無料で一括査定依頼
LIFULL HOME'Sによると、一括査定サイトのメリットは以下の通りです。
一括査定サイトのメリット:
- 一度の入力で複数の不動産会社に査定依頼できる
- 各社の査定価格を比較できる
- 適正価格の把握が可能
- 無料で利用できる
一括査定サイトとは、一度の入力で複数の不動産会社に査定依頼できるサービスです。LIFULL HOME'S、SUUMO等が代表的です。
(2) デメリット:営業電話、匿名不可、エリア制限
一方で、一括査定サイトにはデメリットもあります。
一括査定サイトのデメリット:
- 複数社から営業電話がかかってくる可能性がある
- 匿名では依頼できない(名前・電話番号の入力が必要)
- 物件の場所によっては査定できない可能性がある
特に、複数の不動産会社から営業電話がかかってくる点は、利用者にとって負担になる可能性があります。
(3) 匿名査定サービスの活用(LIFULL HOME'S等)
営業電話を避けたい場合は、匿名査定サービスを活用する方法があります。
匿名査定サービス:
- LIFULL HOME'S等が提供
- 個人情報を明かさずに概算価格を知ることができる
- 営業電話の心配がない
まずは匿名査定で概算価格を把握し、売却を検討する段階になってから詳細な査定を依頼する、という使い方も可能です。
(4) 2024年の一括査定サイト動向
LIFULL HOME'Sによると、2024年の一括査定サイトランキングで、LIFULL HOME'Sが訪問査定率部門で4年連続No.1を達成しました。
2024年の実績データ:
- 訪問査定率:34.2%
- 通電後訪問査定率:44.0%(前年比+3.8%)
- 対応件数:38,786件
訪問査定率とは、査定依頼のうち実際に訪問査定に至った割合です。高い訪問査定率は、査定依頼者の満足度の高さを示す指標とされています。
不動産査定を依頼する際の注意点
(1) 複数社に査定依頼して比較する重要性
HOME4Uによると、複数の不動産会社に査定依頼して比較することが重要です。
複数社比較の重要性:
- 各社の査定価格を比較できる
- 適正価格の把握が可能
- 高い査定額を提示して媒介契約を取ろうとする会社を見抜ける
一般的に、3〜5社程度に査定依頼することが推奨されています。
(2) 査定額≠売却価格であることを理解する
査定額は「売却できそうな見込み価格」であり、実際の売却価格とは異なります。
査定額と売却価格の関係:
- 査定額:不動産会社が算出した売却見込み価格
- 売却価格:実際に市場で買主と合意した価格
市場の需給バランス、買主との交渉、売却のタイミング等により、実際の売却価格は査定額より高くなることも低くなることもあります。
(3) 査定額の根拠を確認する
査定額を提示された際は、必ずその根拠を確認しましょう。
確認すべき根拠:
- 過去の類似物件の取引事例
- 物件の状態(リフォームの有無、設備の状態等)
- 周辺環境(駅からの距離、学区、商業施設等)
- 市場動向(需給バランス、価格推移等)
国土交通省の宅建業法第34条の2第2項により、不動産会社は価格の意見を述べる際に根拠を提示する義務があります。
(4) 物件種別に合った不動産会社を選ぶ
不動産会社にはそれぞれ得意分野があります。
物件種別に合った会社選び:
- マンション売却が得意な会社
- 戸建て売却が得意な会社
- 土地売却が得意な会社
- 投資用不動産が得意な会社
自分の物件種別に合った不動産会社を選ぶことで、より正確な査定価格や効果的な売却活動が期待できます。
査定と鑑定の違い(無料と有料の使い分け)
(1) 査定:市場価値を無料で見積もり
査定は、不動産会社が物件の売却可能価格を見積もる無料サービスです。
査定の特徴:
- 無料で受けられる
- 売却可能性を見積もる
- 売買契約成立時の仲介手数料が収入源
査定は、不動産を売却する際の価格決定や、市場価値を把握するために利用されます。
(2) 鑑定:不動産鑑定士による有料の公的評価
鑑定は、不動産鑑定士が法律に基づき物件の適正価格を評価する有料サービスです。
国土交通省によると、不動産鑑定士は国家資格であり、地価公示、不動産取引、担保評価等で活用されています。
鑑定の特徴:
- 有料(数十万円程度)
- 不動産鑑定士による公的評価
- 法的な証明力がある
不動産鑑定とは、不動産鑑定士が法律に基づき物件の適正価格を評価する有料サービスです。地価公示、担保評価等で活用されます。
(3) 用途に応じた使い分け
査定が適している場合:
- 不動産を売却する際の価格決定
- 市場価値を把握したい場合
鑑定が適している場合:
- 相続税・贈与税の算定
- 裁判・訴訟での証拠資料
- 金融機関への担保評価
一般的な売却の場合は査定で十分ですが、法的な証明力が必要な場合は鑑定を検討しましょう。
まとめ:信頼できる査定サービスの選び方
不動産査定は基本的に無料で受けられます。これは、不動産会社にとって営業活動の一環であり、売買契約成立時の仲介手数料が収入源となるためです。査定方法には机上査定、訪問査定、AI査定の3種類があり、精度と所要時間が異なります。
一括査定サイトは複数社に無料で査定依頼できる便利なサービスですが、営業電話や匿名不可などのデメリットもあります。匿名査定サービス(LIFULL HOME'S等)を活用すれば、営業電話を回避できます。
査定額はあくまで「売却できそうな見込み価格」であり、実際の売却価格とは異なる点に注意が必要です。複数社に査定依頼して比較し、査定額の根拠を確認し、物件種別に合った不動産会社を選ぶことで、信頼できる査定サービスを見つけることができます。詳細は宅地建物取引士への相談をおすすめします。
