なぜフラット35を検討すべきか|長期固定金利の意味
住宅ローンを検討する際、「変動金利と固定金利、どちらを選ぶべきか」と悩む方は少なくありません。特に、将来の金利変動リスクを心配される方にとって、フラット35は有力な選択肢となります。
この記事では、フラット35の仕組み、金利の最新動向、利用条件、メリット・デメリットを、住宅金融支援機構の公式情報を元に解説します。
住宅ローン選びで失敗しないために必要な情報を、実務担当者の視点で詳しく見ていきましょう。
この記事のポイント
- フラット35は最長35年の全期間固定金利で、将来の金利上昇リスクを回避できる
- 2025年12月時点の金利は約2%で、変動金利(約0.6%)より高いが、返済計画が立てやすい
- 年収400万円未満は総返済負担率30%以下、400万円以上は35%以下が審査基準
- 団信加入が任意のため、持病がある方でも利用できる点が民間ローンと大きく異なる
- 子育て世帯・性能住宅の組み合わせで最大年1.0%の金利引下げが可能(2024年2月制度改正)
フラット35とは何か|仕組みと特徴
(1) 住宅金融支援機構と民間金融機関の提携ローン
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関(銀行、信用金庫等)が提携して提供する住宅ローンです。
民間金融機関が融資を実行し、住宅金融支援機構がローン債権を買い取ることで、長期固定金利を実現しています。
(2) 最長35年の全期間固定金利
フラット35の最大の特徴は、借入時に返済終了まで金利・返済額が確定する点です。
固定金利のメリット:
- 将来の金利上昇リスクを回避
- 返済計画が立てやすい
- 家計管理がしやすい
一方、市場金利が下がっても恩恵を受けられない点はデメリットです。
(3) 団信加入が任意(民間ローンとの違い)
**団信(団体信用生命保険)**は、借入者が死亡・高度障害時に住宅ローン残高が保険金で完済される保険です。
民間住宅ローンでは団信加入が必須ですが、フラット35は任意加入です。
団信任意のメリット:
- 持病がある方でも利用できる
- 団信保険料を節約できる(既に生命保険に加入している場合)
注意点:
- 団信未加入の場合、万一の際に遺族に返済負担が残る
- 別途生命保険での対策を検討する必要がある
フラット35の金利|最新動向と金利引下げ制度
(1) 2025年12月時点の最新金利
住宅金融支援機構の公式サイトによると、2025年12月資金受取分のフラット35金利は約2%前後です。
一方、変動金利は約0.6%であり、金利差は約1.4%と大きな開きがあります(2025年7月時点)。
金利の推移:
- 2024年は10年国債利回りが1.08%に達し、11年ぶりに1%超
- フラット35金利も上昇傾向が続いている
金利は毎月変動するため、最新情報は住宅金融支援機構の公式サイトでご確認ください。
(2) 融資率による金利の違い(90%超で金利上昇)
融資率とは、物件価格に対する借入額の割合です。
| 融資率 | 金利 |
|---|---|
| 90%以下(頭金10%以上) | 低金利 |
| 90%超(頭金10%未満) | 約0.2-0.3%上昇 |
頭金を多めに用意することで、金利を抑えられます。
(3) フラット35S・子育てプラスの金利引下げ
2024年2月の制度改正により、金利引下げ幅が最大年1.0%に拡大しました。
金利引下げ制度:
| 制度 | 対象 | 引下げ幅 | 期間 |
|---|---|---|---|
| フラット35S | 省エネ性・耐震性等に優れた住宅 | 年0.25% | 当初5-10年 |
| 子育てプラス | 子育て世帯・若年夫婦世帯 | 年0.5-1.0%(子ども人数による) | 当初5-10年 |
(出典: 住宅金融支援機構)
組み合わせることで、最大年1.0%の金利引下げが可能です。
フラット35の利用条件と審査基準
(1) 申込条件(年齢・収入要件)
年齢:
- 申込時に満70歳未満
- 親子リレー返済を利用する場合は、後継者が満70歳未満であればOK
収入:
- 安定した収入があること
- 雇用形態(正社員・契約社員・自営業等)は問わない
(2) 総返済負担率の基準(30%/35%)
総返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合です。住宅ローンだけでなく、自動車ローン・カードローン等も含まれます。
| 年収 | 総返済負担率 |
|---|---|
| 400万円未満 | 30%以下 |
| 400万円以上 | 35%以下 |
(出典: 住宅金融支援機構)
計算例(年収400万円の場合):
- 総返済負担率35%以下 → 年間返済額140万円以下
- 月額返済額は約11.7万円以下
他の借入がある場合、その返済額も含めて計算する必要があります。
(3) 技術基準と適合証明書の取得
フラット35を利用する物件は、住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合する必要があります。
技術基準の主な項目:
- 耐震性(一定の耐震等級を満たす)
- 省エネ性(断熱等性能等級等)
- バリアフリー性
適合証明書:
- 物件検査を受け、技術基準に適合していることを証明する書類
- 検査費用は5-10万円程度
新築住宅の場合、多くの物件が基準を満たしていますが、中古住宅の場合は事前確認が重要です。
フラット35のメリット・デメリット|変動金利との比較
(1) メリット:返済計画の安定性と金利上昇リスク回避
フラット35の主なメリット:
- 返済計画が立てやすい: 全期間固定金利で、将来の返済額が確定
- 金利上昇リスクを回避: 市場金利が上昇しても影響を受けない
- 団信加入が任意: 持病がある方でも利用可能
- 審査基準が明確: 総返済負担率の基準が明示されており、事前に審査通過の目安が分かる
特に、長期的に安定した返済計画を重視する方、将来の金利上昇リスクを心配される方に適しています。
(2) デメリット:金利の高さと市場金利下落時の機会損失
フラット35の主なデメリット:
- 金利が高い: 変動金利(約0.6%)に比べて約1.4%高い(2025年7月時点)
- 市場金利下落の恩恵を受けられない: 固定金利のため、市場金利が下がっても金利は変わらない
- 融資率90%超で金利上昇: 頭金が少ないと金利が上がる
- 技術基準・適合証明書のコスト: 物件検査費用(5-10万円)がかかる
(3) 変動金利との金利差(約2% vs 約0.6%)
2025年7月時点で、フラット35の金利は約2%、変動金利は約0.6%です。
3,000万円を35年返済した場合の比較:
| 金利タイプ | 金利 | 月額返済額(概算) | 総返済額(概算) |
|---|---|---|---|
| フラット35 | 2.0% | 約9.9万円 | 約4,200万円 |
| 変動金利 | 0.6% | 約7.9万円 | 約3,300万円 |
金利差が大きいため、短期的な金利負担を抑えたい場合は変動金利が有利です。
一方、将来の金利上昇リスクを考慮すると、フラット35の安定性が魅力となります。
まとめ:ライフプランに合った住宅ローンの選び方
フラット35は、最長35年の全期間固定金利で、将来の金利上昇リスクを回避できる住宅ローンです。2025年12月時点の金利は約2%で、変動金利より高いものの、返済計画の安定性が魅力です。
子育て世帯や性能住宅を購入する場合、最大年1.0%の金利引下げを受けられる制度もあります。
一方、変動金利は金利が低く、短期的な金利負担を抑えられます。ただし、将来の金利上昇リスクを負う点に注意が必要です。
住宅ローン選びのポイント:
- 返済計画の安定性を重視するならフラット35
- 金利負担を抑えたいなら変動金利
- ライフプラン・収入の安定性・リスク許容度に応じて選択
詳細は住宅金融支援機構の公式サイトでご確認いただき、ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーに相談しながら、ご自身に合った住宅ローンを選びましょう。
