土地なしから注文住宅を建てる全体像と完成までの期間
土地を所有していない状態から注文住宅を建てる場合、「どこから手を付ければ良いか」「完成までにどのくらいかかるのか」「土地と建物の予算配分はどうすれば良いか」と疑問を持つ方は多いです。
この記事では、土地なしから注文住宅を建てる流れ、土地探しのポイント、予算配分、住宅ローンの仕組みを、実務的な観点から詳しく解説します。
注文住宅の計画を立てる判断材料として、信頼できる情報を提供します。
この記事のポイント
- 土地なしから注文住宅を建てる流れは「予算決定→施工会社選び→土地探し→土地購入→設計→建築」の6ステップ
- 完成までの期間は9ヶ月〜1年半が目安、土地探しに時間がかかる場合は1年半〜2年
- 理想的な予算配分は建築費:土地代=6:4〜7:3、建築費を先に計算し残りを土地代に充てる
- 住宅ローンは「2本立て」「つなぎ融資」「分割融資」の3パターンがあり、金融機関により異なる
(1) 土地なしの注文住宅とは:建売住宅との違い
注文住宅とは、施主が設計・仕様を自由に決められる住宅です。建売住宅とは異なり、土地購入と建築が別々のプロセスになります。
土地なしの場合、土地探しから始める必要があり、建売住宅よりも時間と手間がかかりますが、理想の住まいを実現できる自由度が高いです。
(2) 完成までの期間:9ヶ月〜1年半が目安
土地なしから注文住宅を建てる場合、完成までの期間は9ヶ月〜1年半が目安です。土地探しに時間がかかる場合は、1年半〜2年かかることもあります。
内訳は以下の通りです。
- 土地探し: 3〜6ヶ月(希望の土地が見つかるまで)
- 設計: 3〜6ヶ月(プラン作成・建築確認申請)
- 建築: 4〜6ヶ月(着工〜完成)
(3) 計画開始時期:入居希望の1年半〜2年前から
入居希望日が決まっている場合、余裕を持って1年半〜2年前から計画を開始することを推奨します。
土地探しが順調に進まない場合や、設計に時間がかかる場合も考慮し、早めに動き出すことが重要です。
(4) 並行して進めるべき作業:土地探しと施工会社選び
土地探しと施工会社選びは、並行して進めるのが理想的です。施工会社を先に決めることで、予算配分が明確になり、土地が建築に適しているか確認できます。
また、施工会社は土地探しのサポートもしてくれることが多いです。
土地なしから注文住宅を建てる6つのステップ
(1) STEP1:予算決定と資金計画
最初に、注文住宅の総予算を決めます。自己資金と住宅ローンの借入可能額を把握し、土地代と建築費の総額を設定してください。
ファイナンシャルプランナーに相談すると、適切な借入額や返済計画を立てられます。
(2) STEP2:施工会社選び(ハウスメーカー・工務店)
予算が決まったら、施工会社を選びます。ハウスメーカーと工務店の違いを理解し、複数社を比較検討してください。
施工会社を先に決めることで、建築費の目安が分かり、土地に充てられる予算が明確になります。
(3) STEP3:土地探し(並行して進める)
施工会社選びと並行して、土地探しを進めます。土地探しの方法は、以下の3つがあります。
- ハウスメーカー: 建築に適した土地を紹介してくれる
- 不動産会社: 幅広い選択肢から探せる
- インターネット: 自分で情報収集できる
(4) STEP4:土地購入と売買契約
希望の土地が見つかったら、売買契約を結びます。契約前に、用途地域・建ぺい率・容積率を確認し、希望する建物が建築可能か必ず確認してください。
土地購入には住宅ローンの「土地先行融資」または「つなぎ融資」を利用します。
(5) STEP5:建物の設計と建築請負契約
土地購入後、施工会社と建物の設計を進めます。間取り、仕様、設備を決定し、建築請負契約を締結してください。
設計期間は3〜6ヶ月程度かかります。
(6) STEP6:着工から完成・引渡しまで
建築確認申請が完了したら、着工します。建築期間は4〜6ヶ月程度です。
完成後、施主検査を行い、問題がなければ引渡しとなります。
土地探しの方法と注意点:失敗しないためのポイント
(1) 土地探しの3つの方法:ハウスメーカー、不動産会社、インターネット
土地探しには、以下の3つの方法があります。
| 方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| ハウスメーカー | 建築に適した土地を紹介、設計と同時進行 | 選択肢が限られる |
| 不動産会社 | 幅広い選択肢、地域の情報に詳しい | 建築適性の確認は自分で必要 |
| インターネット | 自分で情報収集、時間を選ばず探せる | 情報が古い場合がある |
(2) 100点満点の土地は存在しない:優先条件を明確に
100点満点の土地は存在しません。立地、価格、広さ、形状等の条件をすべて満たす土地を探すのは困難です。
優先条件(通勤時間、学校区、商業施設等)を明確にし、70〜80点の土地で妥協することも重要です。
(3) 良い土地は早く売れる:決断を先延ばしにしない
条件の良い土地は、早く売れてしまいます。比較検討中に他の人に買われてしまうケースが多いです。
気になる土地があれば、施工会社に間取りを作成してもらい、建築可能か確認した上で、早めに決断することを推奨します。
(4) 建築条件付き土地の注意点:自由度が制限される
建築条件付き土地とは、指定された施工会社で一定期間内に建築することを条件に販売される土地です。自由な設計が制限されるため、注意が必要です。
建築条件付き土地を購入する場合、指定施工会社の実績や評判を事前に確認してください。
(5) 用途地域・建ぺい率・容積率の確認
用途地域、建ぺい率、容積率は、建築できる建物の種類・規模を決定します。購入前に必ず確認し、希望する建物が建築可能か確認してください。
自治体の都市計画課や不動産会社で確認できます。
(6) 土地の形状・高低差による建築費への影響
土地の形状(不整形地)や高低差は、建築費に影響します。造成費用が数百万円かかる場合もあります。
購入前に、施工会社や建築士に相談し、追加費用の有無を確認してください。
予算配分と費用相場:土地代と建築費のバランス
(1) 2022年の平均総額:4,694万円(建築費3,195万円+土地代1,500万円)
2022年のフラット35利用者調査によると、土地なし注文住宅の平均総額は4,694万円です。内訳は建築費3,195万円、土地代1,500万円です。
ただし、これは全国平均であり、地域により大きく異なります。
(2) 地域別費用:南関東・近畿は5,000万円超、地方は3,000万円台
地域別の費用相場は以下の通りです(2022年データ)。
| 地域 | 平均総額 |
|---|---|
| 南関東(東京・神奈川等) | 5,000万円超 |
| 近畿(大阪・京都等) | 5,000万円超 |
| 地方(東北・九州等) | 3,000万円台 |
土地代の地域差が大きく、都市部は高額になります。
(3) 理想的な予算配分:建築費:土地代=6:4〜7:3
理想的な予算配分は、建築費:土地代=6:4〜7:3です。土地に予算をかけすぎると、理想の建物が建てられなくなります。
建築費を先に計算し、残りを土地代に充てる考え方が重要です。
(4) 建築費を先に計算し、残りを土地代に充てる考え方
注文住宅では、希望する建物の建築費を先に見積もり、総予算から建築費を引いた残りを土地代に充てる考え方が推奨されます。
この方法により、理想の建物を諦めずに土地を探せます。
住宅ローンの仕組み:2本立て・つなぎ融資・分割融資
(1) 2本立て融資:土地購入と建物建築で別々のローン
2本立て融資とは、土地購入と建物建築で別々の住宅ローンを組む方法です。土地購入時と建物完成時に2回融資が実行されます。
それぞれの融資に審査が必要で、手続きが煩雑になる場合があります。
(2) つなぎ融資:建物完成前に土地購入費用を一時的に借りる
つなぎ融資とは、建物完成前に土地購入費用を一時的に借りる融資です。建物完成後、本融資(住宅ローン)に切り替えます。
つなぎ融資の金利は通常の住宅ローンより高めに設定されていることが多いです。
(3) 分割融資:1つのローンを複数回に分けて実行
分割融資とは、1つの住宅ローンを複数回に分けて実行する方法です(土地購入時と建物完成時等)。
金融機関により対応が異なるため、事前に確認してください。
(4) 金融機関により異なる仕組み:事前確認が必須
住宅ローンの仕組みは金融機関により異なります。土地購入前に、複数の金融機関に相談し、自分に適した融資方法を選択してください。
住宅金融支援機構のフラット35も選択肢の一つです。
まとめ:土地なしから注文住宅を成功させるための総合チェックリスト
土地なしから注文住宅を建てる流れは、「予算決定→施工会社選び→土地探し→土地購入→設計→建築」の6ステップです。完成までの期間は9ヶ月〜1年半が目安で、入居希望の1年半〜2年前から計画を開始することを推奨します。
理想的な予算配分は建築費:土地代=6:4〜7:3です。建築費を先に計算し、残りを土地代に充てる考え方が重要です。住宅ローンは「2本立て」「つなぎ融資」「分割融資」の3パターンがあり、金融機関により異なるため、事前に確認してください。
ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士、建築士等の専門家に相談しながら、納得のいく注文住宅を実現しましょう。
