事業用不動産業者の選び方:種類・特徴と比較のポイント

著者: Room Match編集部公開日: 2025/12/7

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事業用不動産業者とは

事業用不動産(オフィス・店舗・倉庫・工場等)の購入や賃借を検討する際、「どのような業者に相談すべきか」「信頼できる業者の選び方は」と疑問に感じる方は少なくありません。事業用不動産は居住用と異なり、収益性・立地・法規制が重要な判断要素となります。

この記事では、事業用不動産業者の種類、選定基準、仲介手数料、購入時の注意点を、国土交通省の公式情報や業界データを元に解説します。

初めて事業用不動産を取得する法人経営者・個人事業主の方でも、適切な業者を選び、必要な情報を正確に把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 事業用不動産業者には総合不動産会社、専門業者、仲介業者、デベロッパーの4種類がある
  • 宅地建物取引業免許、実績、専門性、対応エリア、サービス内容を比較して選定
  • 賃貸契約の仲介手数料は上限1ヶ月分の賃料+消費税(宅地建物取引業法で規定)
  • 売買契約の仲介手数料は物件価格×3%+6万円+消費税が上限
  • 表面利回りではなく、維持管理費を考慮した実質利回りを重視すべき

(1) 事業用不動産と居住用不動産の違い

事業用不動産は、事業目的で取得・保有・運用される不動産を指します。居住用不動産との主な違いは以下の通りです:

項目 事業用不動産 居住用不動産
主な目的 収益性確保(賃料収入、事業活動) 居住・生活
重視する要素 立地、収益性、法規制(用途地域) 住環境、交通利便性、学区
税制 不動産取得税、固定資産税の税率が異なる場合あり 軽減措置が充実
契約条件 賃貸借契約の期間・更新条件が柔軟 借地借家法で借主保護が強い
リスク 空室リスク、家賃滞納リスク 住宅ローン返済リスク

(出典: 一般的な不動産取引の特徴)

事業用不動産は収益性が重視されるため、専門的な知識が必要です。

(2) 事業用不動産の種類(オフィス・店舗・工場・物流施設等)

事業用不動産には、以下の種類があります:

  • オフィスビル: 企業の事務所として利用
  • 店舗: 小売業・飲食業等の商業施設
  • 工場: 製造業の生産拠点
  • 物流施設: 倉庫・配送センター
  • 投資用賃貸マンション・アパート: 賃料収入を目的とした住宅

それぞれの物件種別により、立地条件、設備要件、法規制が異なります。

(3) 事業用不動産業者の役割

事業用不動産業者は、以下の役割を担います:

  • 物件の仲介: 売買・賃貸の仲介、契約書作成、重要事項説明
  • 市場調査: 収益性評価、賃料相場調査、競合物件分析
  • 資金計画支援: 収支計画書作成、融資相談
  • 管理・運営: テナント募集、賃料徴収、建物管理
  • アフターフォロー: 契約更新、トラブル対応

これらのサービス内容は業者により異なるため、事前に確認することが重要です。

事業用不動産業者の種類と特徴

(1) 総合不動産会社(大手・全国展開)

総合不動産会社は、全国展開する大手企業であり、幅広い物件種別・エリアに対応しています。

特徴:

  • 豊富な物件情報: 全国の物件を網羅
  • 信頼性: 上場企業・老舗企業が多く、安心感がある
  • サービスの充実: 仲介から管理、アフターフォローまで一貫対応

代表例: 三井不動産リアルティ、東急リバブル、野村不動産ソリューションズなど

向いているケース: 複数エリアで物件を検討する、総合的なサポートを希望する場合

(2) 専門業者(物件種別・エリア特化)

専門業者は、特定の物件種別(オフィス専門、店舗専門等)またはエリアに特化した業者です。

特徴:

  • 専門知識: 特定分野での深い知識・経験
  • 独自ネットワーク: 非公開物件の紹介が可能な場合がある
  • 柔軟な対応: 個別ニーズに応じたカスタマイズ提案

代表例: オフィス専門仲介業者、物流施設専門業者など

向いているケース: 特定の物件種別・エリアで詳細な情報が必要な場合

(3) 仲介業者(売買・賃貸仲介)

仲介業者は、売主と買主(または貸主と借主)を仲介し、契約成立までをサポートします。

特徴:

  • 仲介に特化: 売買・賃貸の仲介が主業務
  • 手数料収入: 仲介手数料が収入源(成功報酬型)
  • 中立的立場: 売主・買主双方の利益を調整

向いているケース: 物件の売買・賃貸のみを依頼する場合

(4) デベロッパー(開発・販売)

デベロッパーは、不動産の開発・建設・販売を行う業者です。

特徴:

  • 新築物件: 自社で開発した物件を販売
  • カスタマイズ: 建築前であれば設計変更が可能な場合がある
  • 一貫対応: 開発から販売、管理まで一貫対応

向いているケース: 新築物件を希望する、特定の設備・仕様が必要な場合

事業用不動産業者の選定ポイント

(1) 宅地建物取引業免許の確認

事業用不動産業者を選ぶ際は、まず宅地建物取引業免許を確認してください。

宅地建物取引業法により、不動産業を営むには国土交通大臣または都道府県知事の免許が必要です。

国土交通省のネガティブ情報検索システムでは、行政処分歴や免許番号を確認できます。

(2) 実績・専門性・対応エリア

以下の点を確認し、業者の実績・専門性を評価してください:

  • 取扱実績: 過去の成約件数、取扱物件の種類
  • 専門性: 希望する物件種別(オフィス・店舗等)の専門知識
  • 対応エリア: 希望するエリアに精通しているか

公式ウェブサイト、パンフレット、担当者へのヒアリングで確認できます。

(3) サービス内容(仲介・管理・アフターフォロー)

業者により提供するサービス内容が異なります。以下の点を確認してください:

サービス 内容 確認ポイント
仲介 物件紹介、契約書作成、重要事項説明 物件情報の豊富さ
管理 テナント募集、賃料徴収、建物管理 管理手数料、対応範囲
アフターフォロー 契約更新、トラブル対応 サポート体制、連絡方法

(出典: 一般的な不動産業者のサービス内容)

自社で管理を行うか、管理会社への委託が必要かも確認しましょう。

(4) 手数料体系と費用の透明性

仲介手数料、管理手数料、その他費用の体系を事前に確認してください。

費用の透明性が高い業者を選ぶことで、予期しない追加費用を避けることができます。

見積書を取得し、内訳を詳細に確認することが重要です。

(5) 複数業者の比較方法

複数業者を比較する際は、以下の手順を推奨します:

  1. 3社以上に問い合わせ: 大手・専門業者・地域密着型をバランスよく選ぶ
  2. 見積もり取得: 仲介手数料、管理手数料、その他費用を比較
  3. 担当者の対応を評価: 専門知識、レスポンスの速さ、親身さ
  4. 実績・口コミ確認: 公式サイト、口コミサイト、業界評判を調査
  5. 総合的に判断: 価格だけでなく、サービス内容・信頼性を総合評価

最終的には、価格とサービス内容のバランスで選定してください。

仲介手数料と購入時の費用

(1) 賃貸契約の仲介手数料(上限1ヶ月分の賃料+消費税)

国土交通省の宅地建物取引業法により、賃貸契約の仲介手数料は上限が定められています。

仲介手数料の上限:

  • 貸主と借主の双方から受け取る合計額: 1ヶ月分の賃料+消費税
  • 実務では: 借主が1ヶ月分、貸主が0.5ヶ月分を負担する場合が多い

計算例:

  • 賃料30万円/月の場合: 仲介手数料は30万円+消費税3万円 = 33万円(上限)

仲介手数料には10%の消費税が課税されます。

(2) 売買契約の仲介手数料(物件価格×3%+6万円+消費税)

売買契約の仲介手数料は、物件価格により以下の計算式で算出されます:

仲介手数料の計算式:

  • 物件価格400万円超の場合: 物件価格 × 3% + 6万円 + 消費税

計算例:

  • 物件価格5,000万円の場合: 5,000万円 × 3% + 6万円 = 156万円
  • 消費税10%を含めると: 171.6万円

(出典: 国土交通省

実務では個別交渉の余地がある場合もありますが、法定上限を超えることはできません。

(3) その他の諸費用(不動産取得税・登録免許税・固定資産税等)

事業用不動産購入時には、以下の諸費用が発生します:

項目 内容 目安額
不動産取得税 固定資産税評価額 × 税率(3-4%) 物件価格の2-3%
登録免許税 所有権移転登記時に課される国税 固定資産税評価額 × 2%
登記費用 司法書士への報酬 10-30万円
印紙税 契約書に貼付する収入印紙 1-6万円(物件価格により異なる)
固定資産税 年1回課される税金 固定資産税評価額 × 1.4%(標準税率)

(出典: 国税庁、一般的な相場)

総額で物件価格の5-10%程度の諸費用を見込んでおくことが推奨されます。

事業用不動産購入の注意点とリスク

(1) 空室リスクと家賃滞納リスク

事業用不動産には、以下のリスクがあります:

空室リスク:

  • テナントが退去すると、次のテナントが見つかるまで賃料収入がゼロになる
  • 立地・物件の魅力により空室期間は大きく異なる

家賃滞納リスク:

  • テナントが賃料を支払わない場合、安定的な収入を得られない
  • 保証会社の利用、審査の厳格化で対策可能

これらのリスクを考慮した収支計画を立てることが重要です。

(2) 維持管理費の把握(固定資産税・修繕費用・管理会社報酬)

事業用不動産の維持管理費には、以下が含まれます:

項目 年間目安額
固定資産税 固定資産税評価額 × 1.4%
修繕費用 物件価格の0.5-1%/年
管理会社報酬 賃料収入の3-5%
保険料(火災保険・地震保険) 5-15万円/年

(出典: 一般的な相場)

これらの費用を事前に把握し、収支計画に組み込むことが重要です。

(3) 表面利回りと実質利回りの違い

事業用不動産の収益性を評価する際は、実質利回りを重視してください。

表面利回り:

  • 計算式: 年間賃料収入 ÷ 物件価格 × 100
  • 特徴: 維持管理費を考慮しない、簡易的な指標

実質利回り:

  • 計算式: (年間賃料収入 − 維持管理費)÷ 物件価格 × 100
  • 特徴: 維持管理費を考慮した、実態に近い指標

計算例:

  • 物件価格5,000万円、年間賃料収入300万円、維持管理費100万円の場合
  • 表面利回り: 300万円 ÷ 5,000万円 × 100 = 6%
  • 実質利回り: (300万円 − 100万円)÷ 5,000万円 × 100 = 4%

実質利回りは表面利回りより低くなるため、現実的な収益性を把握できます。

(4) 専門家(宅建士・不動産鑑定士・税理士)への相談

事業用不動産は専門的な知識が必要なため、以下の専門家への相談を推奨します:

  • 宅地建物取引士: 契約内容、重要事項の確認
  • 不動産鑑定士: 物件の適正価格評価、収益性分析
  • 税理士: 税金対策、節税スキーム、確定申告

専門家のサポートを受けることで、リスクを最小化し、適切な投資判断が可能になります。

(5) 2024年の市場動向と将来展望

2024年の日本における商業用不動産投資額は約5.48兆円に達し、前年比63%増と大幅成長しました(2015年以来9年ぶりに5兆円超)。

物流需要は全国に拡大し、4大都市圏の新規需要の合計は2023年に100万坪を超える見込みです。

一方、ハイブリッドワークの普及により、オフィスビルの需要構造が変化しており、立地・設備の見直しが進んでいます。

また、2024年問題(建設業への働き方改革関連法適用)により、新規物件の供給スケジュールに遅延が生じる可能性があります。

最新の市場動向を踏まえ、将来の収益性を慎重に見極めることが重要です。

まとめ:事業用不動産業者を選ぶポイント

事業用不動産業者には、総合不動産会社、専門業者、仲介業者、デベロッパーの4種類があり、それぞれ特徴が異なります。宅地建物取引業免許の確認、実績・専門性・対応エリア、サービス内容(仲介・管理・アフターフォロー)、手数料体系と費用の透明性を比較し、複数業者から見積もりを取得することが重要です。

賃貸契約の仲介手数料は上限1ヶ月分の賃料+消費税、売買契約の仲介手数料は物件価格×3%+6万円+消費税が法定上限です。その他の諸費用(不動産取得税、登録免許税、固定資産税等)を含めた総予算を検討してください。

事業用不動産には空室リスク、家賃滞納リスク、維持管理費の負担があり、表面利回りではなく実質利回りを重視すべきです。専門家(宅建士、不動産鑑定士、税理士)への相談により、リスクを最小化し、適切な投資判断を行いましょう。

2024年の商業用不動産投資額は5.48兆円と大幅成長していますが、市場動向は変化しており、最新情報を踏まえた慎重な判断が必要です。

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よくある質問

Q1事業用不動産業者はどのように選べば良いですか?

A1宅地建物取引業免許の確認、実績・専門性(オフィス・店舗等の物件種別)、対応エリア、サービス内容(仲介・管理・アフターフォロー)、手数料体系を比較してください。複数業者(3社以上推奨)から見積もりを取得し、価格とサービス内容のバランスで選定することが重要です。国土交通省のネガティブ情報検索システムで行政処分歴を確認し、公式サイトや口コミで実績を調査しましょう。

Q2事業用不動産の仲介手数料はいくらですか?

A2賃貸契約の場合、宅地建物取引業法により上限が1ヶ月分の賃料+消費税と定められています(貸主と借主の双方から受け取る合計額の上限)。売買契約の場合、物件価格×3%+6万円+消費税が上限です。例えば、賃料30万円/月の場合は33万円(消費税込)、物件価格5,000万円の場合は171.6万円(消費税込)が目安です。実務では個別交渉の余地がある場合もあります。

Q3事業用不動産と居住用不動産の違いは何ですか?

A3事業用不動産は収益性・立地・法規制(用途地域・建築基準法)が重要です。居住用は住環境・交通利便性・学区が重視されます。税制では、事業用は不動産取得税・固定資産税の税率が異なる場合があり、居住用は軽減措置が充実しています。契約条件では、事業用は賃貸借契約の期間・更新条件が柔軟ですが、居住用は借地借家法で借主保護が強化されています。リスクとして、事業用は空室リスク・家賃滞納リスク、居住用は住宅ローン返済リスクがあります。

Q4表面利回りと実質利回りの違いは何ですか?どちらを重視すべきですか?

A4表面利回りは「年間賃料収入÷物件価格×100」で計算される簡易的な指標で、維持管理費を考慮しません。実質利回りは「(年間賃料収入−維持管理費)÷物件価格×100」で計算され、固定資産税・修繕費用・管理会社報酬等を差し引いた純収入を反映します。例えば、物件価格5,000万円、年間賃料収入300万円、維持管理費100万円の場合、表面利回りは6%ですが実質利回りは4%です。維持管理費を考慮した実質利回りを重視すべきです。

Q5事業用不動産購入時にかかる諸費用は何ですか?

A5仲介手数料(物件価格×3%+6万円+消費税)、不動産取得税(固定資産税評価額×3-4%)、登録免許税(固定資産税評価額×2%)、登記費用(10-30万円)、印紙税(1-6万円)、固定資産税(年1回、固定資産税評価額×1.4%が標準税率)等が含まれます。総額で物件価格の5-10%程度を見込んでおくことが推奨されます。例えば、5,000万円の物件の場合、諸費用は250-500万円程度です。

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Room Match編集部

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