不動産とは?定義・種類・動産との違いを解説

公開日: 2025/10/27

不動産とは

不動産という言葉は日常的に使われますが、「法律上の正確な定義は何か」「土地と建物の関係はどうなっているのか」と疑問に感じる方は少なくありません。

この記事では、不動産の法的定義、種類、動産との違い、不動産の特性を、民法の条文と法務省の公式情報を元に解説します。

初めて不動産に関わる方でも、不動産の基礎知識を正確に理解できるようになります。

この記事のポイント

  • 民法第86条で不動産は「土地及びその定着物」と定義される
  • 定着物とは土地に固定されて移動できないもの(建物、立木等)
  • 不動産は土地と建物に分類され、建物は土地から独立した別個の不動産
  • 動産は不動産以外のすべての物(家具、車等)で、登記制度はない
  • 不動産には個別性・永続性・固定性の3つの特性がある

不動産の定義(民法第86条)

不動産の法的定義は、民法第86条で明確に定められています。

民法第86条第1項:

土地及びその定着物は、不動産とする。

民法第86条の解説によると、「定着物」とは、継続的に土地に固着し、固着して使用されることが取引上の性質とみられるものです。

定着物とは何か

定着物の代表例は建物です。建物は土地に固定されており、移動できないため定着物に該当します。

その他の定着物の例:

  • 立木(庭木等)
  • 石垣・塀
  • 橋・堤防

一方、家具や車は移動できるため定着物には該当せず、動産として扱われます。

不動産の種類(土地・建物)

不動産は、土地と建物の2種類に大きく分類されます。

土地

土地は不動産の基本です。宅地、農地、山林等、用途により分類されます。

不動産鑑定士協会の説明によると、日本では土地は独立した不動産として扱われ、登記制度により権利関係が公示されています。

建物

建物は土地の定着物ですが、日本では土地から独立した別個の不動産として扱われます。これは、土地と建物を別々に登記し、別々に取引できることを意味します。

建物の例:

  • 居住用(戸建て、マンション等)
  • 事業用(オフィスビル、店舗等)
  • 工業用(工場、倉庫等)

立木法により登記された立木も、独立した不動産として扱われます。

マンションの不動産としての扱い

マンション(分譲マンション)は、「土地の共有持分+建物の専有部分」の両方を含む不動産です。

共有持分の解説によると、マンションを購入すると以下の2つの権利を取得します。

権利 内容
専有部分の所有権 自分の部屋(居室、キッチン等)
土地の共有持分 敷地全体を全戸で共有

敷地全体を全戸で共有し、各戸の持分割合は専有面積に応じて決まります。1983年以降のマンションでは、敷地権(専有部分と一体化して登記された敷地利用権)として登記され、土地と建物を一括で取引できます。

不動産と動産の違い

不動産以外のすべての物は動産です(民法第86条第2項)。

LIFULL HOME'Sの解説によると、不動産と動産の主な違いは以下の通りです。

項目 不動産 動産
定義 土地・建物 不動産以外のすべて
登記制度 あり(不動産登記) なし
固定資産税 対象 対象外
対抗要件 登記 引渡し
土地、建物 家具、車、現金

登記制度の違い

不動産には登記制度があり、権利関係を法務局に登記することで第三者に対抗できます(対抗要件)。動産には登記制度がなく、引渡しが対抗要件です。

車は動産ですが、自動車登録制度(別制度)により登録されます。固定資産税の対象外で、移動できるため不動産には該当しません。

不動産の特性

民法の条文解説によると、不動産には以下の3つの特性があります。

個別性(同じものが二つとない)

同じ場所に二つの土地は存在せず、すべての不動産が唯一無二です。立地・形状・周辺環境が異なるため、価格形成が個別に行われます。

永続性

土地は滅失しません(建物は老朽化しますが土地は残ります)。この永続性により、土地は長期的な資産価値を持ちます。

固定性

不動産は移動できません。この固定性により、立地が価格に大きく影響します。駅近・学区・災害リスク等の立地条件が重要です。

これらの特性が、不動産取引の特徴(個別性の高さ、専門知識の必要性)に影響しています。

不動産取引と専門家

不動産取引は高額で専門知識が必要なため、宅地建物取引士等の専門家に相談することをおすすめします。

法務省の不動産登記制度では、2024年4月から相続登記義務化等の改正が行われており、最新の制度を理解することが重要です。

不動産を取得・売却する際は、登記手続きを司法書士に、税務処理を税理士に依頼することで、確実に手続きを完了できます。

まとめ

不動産は民法第86条で「土地及びその定着物」と定義され、土地と建物の2種類に分類されます。建物は土地から独立した別個の不動産として扱われ、別々に登記・取引できます。

マンションは「土地の共有持分+建物の専有部分」の両方を含む不動産で、1983年以降は敷地権として一体登記されています。動産は不動産以外のすべての物で、登記制度はありません。

不動産には個別性・永続性・固定性の3つの特性があり、これが価格形成や取引の特徴に影響しています。不動産取引は専門知識が必要なため、宅地建物取引士や司法書士等の専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

よくある質問

Q1マンションを買うと土地も所有できますか?

A1できます。マンションは「建物の専有部分+土地の共有持分」の両方を含む不動産です。敷地全体を全戸で共有し、各戸の持分割合は専有面積に応じて決まります。1983年以降のマンションでは、敷地権として専有部分と一体化して登記され、土地と建物を一括で取引できます。

Q2立木は不動産ですか?動産ですか?

A2原則は土地の定着物として不動産です。ただし立木法により登記されたものは独立した不動産として扱われます。庭木等は土地に付属し、土地と一体で取引されるのが一般的です。立木を単独で売買する場合は、立木法による登記が必要になることがあります。

Q3車は不動産ですか?

A3車は動産です。移動できるため不動産には該当しません。固定資産税の対象外で、登記制度もありません(自動車登録制度は別制度)。動産として引渡しが対抗要件となり、不動産のような登記による対抗要件はありません。

Q4不動産登記をしないとどうなりますか?

A4登記しないと第三者に対抗できません。例えば、土地を購入したが登記しない間に売主が第三者に二重譲渡し、第三者が先に登記した場合、第三者の所有権が優先されます。2024年4月からは相続登記も義務化され、3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になります。不動産取引では必ず登記を完了させることが重要です。