所有者不明土地とは?発生原因と解決方法・最新法改正の影響

公開日: 2025/10/27

所有者不明土地が社会問題化している背景

「所有者不明土地」という言葉をニュースで耳にする機会が増えました。全国で約410万ヘクタール(九州の面積を超える)に達し、公共事業の遅れや土地の荒廃など、深刻な問題を引き起こしています。

この記事では、所有者不明土地の定義・発生原因、2023年~2024年の法改正(相続登記義務化等)、所有者不明化を防ぐ対策を、国土交通省法務省の公式情報を元に解説します。

土地所有者または相続予定者が、所有者不明土地の問題を理解し、自分の土地が該当しないよう対策を講じられるようになります。

この記事のポイント

  • 所有者不明土地は全国で約410万ha(九州超)に達し、相続登記未実施・住所変更未登記が主な原因
  • 2024年4月施行の相続登記義務化(3年以内、違反は10万円以下過料)で解消を目指す
  • 2024年4月以前の相続も2027年3月末までに登記が必要
  • 所有者不明化を防ぐには、相続発生時の速やかな登記・遺言書作成・生前贈与が有効

所有者不明土地とは

所有者不明土地の定義と実態、発生原因を理解しましょう。

定義と実態

所有者不明土地とは、登記簿上の所有者が死亡・所在不明で連絡が取れない土地を指します。

国土交通省の調査によると、2016年時点で全国約410万ヘクタール(九州の面積を超える)に達し、地籍調査では24%の土地が所有者不明という結果が出ています。

所有者不明土地が増えることで、以下のような問題が発生します。

  • 公共事業(道路・ダム建設等)が遅れる
  • 土地が荒廃し、周辺環境に悪影響
  • 固定資産税の徴収が困難
  • 土地取引が停滞

発生原因

所有者不明土地が発生する主な原因は、以下の3つです。

1. 相続登記の未実施

相続が発生した際、登記をせずに放置することで、登記簿上の所有者と実際の所有者が一致しなくなります。数世代にわたって放置されると、相続人が数十人に増え、連絡が取れなくなるケースも少なくありません。

2. 住所変更の未登記

所有者が転居しても住所変更登記をせず、登記簿上の住所が古いままになると、連絡が取れなくなります。

3. 相続人の増加

相続登記を数世代放置すると、相続人が数十人に増え、全員の同意を得るのが困難になります。一部の相続人が海外在住・行方不明の場合、連絡が取れず登記が進まないこともあります。

2024年4月~の法改正

所有者不明土地の解消を目指し、2023年~2024年にかけて大規模な法改正が行われました。特に重要な2つの改正を解説します。

相続登記義務化(2024年4月施行)

2024年4月1日から、相続登記が義務化されました(法務省)。

内容:

  • 相続を知った日から3年以内に登記
  • 違反した場合は10万円以下の過料

重要なポイント:

  • 2024年4月以前の相続にも適用される
  • 過去の相続を放置している場合、2027年3月末までに登記が必要

これまで相続登記は任意でしたが、義務化によって放置すると罰則が科されるようになりました。

住所変更登記義務化(2026年4月施行予定)

2026年4月から、住所変更登記も義務化される予定です(法務省)。

内容:

  • 住所変更から2年以内に登記
  • 違反した場合は5万円以下の過料

新制度「スマート変更登記」:

住所変更登記の負担を軽減するため、オンラインで無料・簡単に手続きできる「スマート変更登記」が導入される予定です。

法改正 施行時期 期限 罰則
相続登記義務化 2024年4月 相続を知った日から3年以内 10万円以下過料
住所変更登記義務化 2026年4月 住所変更から2年以内 5万円以下過料

(出典: 法務省法務省

2023年4月~の法改正

2023年4月には、相続土地国庫帰属制度と共有制度の見直しが施行されました。

相続土地国庫帰属制度(2023年4月施行)

相続した土地を国に引き渡せる制度です(法務省)。ただし、要件が厳しく、簡単に国に返せるわけではありません。

要件:

以下のいずれかに該当する土地は対象外です。

  • 建物がある土地
  • 担保権(抵当権等)が設定されている土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が明確でない土地

費用:

  • 審査手数料: 1.4万円/筆(非返還)
  • 負担金: 別途必要(10年分の管理費相当額)

要件が厳しく、費用もかかるため、相続した土地を簡単に国に返せるわけではないことに注意が必要です。

共有制度の見直し(2023年4月施行)

共有者の一部が所在不明の場合、他の共有者が持分を取得できるようになりました(政府広報オンライン)。

これにより、所在不明共有者がいる場合でも、土地の管理・処分が円滑に進められるようになります。

所有者不明化を防ぐ対策

自分の土地が所有者不明化しないよう、以下の対策を講じることが重要です。

1. 相続発生時の速やかな相続登記

相続が発生したら、速やかに相続登記を行いましょう。2024年4月以降は3年以内の登記が義務化されており、違反すると10万円以下の過料が科されます。

放置すると相続人が数十人に増え、全員の同意を得るのが困難になるため、早めの対応が不可欠です。

2. 遺言書作成

遺言書を作成することで、相続トラブルを防ぎ、相続登記をスムーズに進められます。特に、複数の相続人がいる場合や、特定の相続人に土地を引き継がせたい場合は、遺言書の作成が推奨されます。

3. 生前贈与

生前に土地を贈与することで、相続登記の手続きを省略できます。ただし、贈与税・不動産取得税・登録免許税が相続よりも高額になるケースが多いため、税理士に相談して慎重に判断することが重要です。

4. 住所変更時の登記

転居した際は、住所変更登記を忘れずに行いましょう。2026年4月以降は2年以内の登記が義務化され、違反すると5万円以下の過料が科される予定です。

5. 定期的な登記簿確認

登記簿を定期的に確認し、所有者情報が最新かどうかチェックしましょう。法務局で登記簿謄本を取得するか、オンライン(登記情報提供サービス)で確認できます。

6. 司法書士への早期相談

相続登記や住所変更登記の手続きは専門性が高いため、司法書士に相談することを推奨します。放置すると相続人が数十人に増え、解決が困難になるため、早めの相談が重要です。

(出典: 国土交通省

既に所有者不明となった土地の対処法

既に所有者不明となった土地がある場合、以下の方法で解決を図ることができます。

財産管理人制度の活用

家庭裁判所に申し立てることで、財産管理人を選任してもらえます(政府広報オンライン)。

主な制度:

  • 不在者財産管理人: 所有者が行方不明の場合
  • 相続財産管理人: 相続人全員が相続放棄した場合

財産管理人が選任されると、土地の管理・処分を代行してもらえます。ただし、専門性が高く、弁護士・司法書士への相談が必須です。

専門家への相談

所有者不明土地の解決は専門性が高く、司法書士・弁護士への早期相談が不可欠です。放置すると相続人が数十人に増え、解決が困難になるため、早めの対応が重要です。

まとめ

所有者不明土地は全国で約410万ヘクタールに達し、相続登記未実施・住所変更未登記が主な原因です。2024年4月施行の相続登記義務化(3年以内、違反は10万円以下過料)により解消を目指しており、2024年4月以前の相続も2027年3月末までに登記が必要です。

所有者不明化を防ぐには、相続発生時の速やかな相続登記、遺言書作成、生前贈与、住所変更時の登記、定期的な登記簿確認が有効です。

既に所有者不明となった土地がある場合は、財産管理人制度を活用し、司法書士・弁護士に相談することを推奨します。放置すると相続人が数十人に増え、解決が困難になるため、早めの対応が不可欠です。

よくある質問

Q1自分の土地が所有者不明化しないためには?

A1相続発生時は速やかに登記(2024年4月以降は3年以内義務、違反は10万円以下過料)、住所変更時も登記(2026年4月以降は2年以内義務、違反は5万円以下過料)を行いましょう。遺言書作成・生前贈与も有効です。定期的に登記簿を確認し、司法書士に相談することで、所有者不明化を防げます。

Q22024年4月以前の相続も登記が必要?

A2必要です。2024年4月以前の相続にも相続登記義務化が適用され、2027年3月末までに登記しないと10万円以下の過料が科されます。過去の相続を放置している場合は、早急に司法書士に相談し、相続人を確定して登記を進める必要があります。相続人が数十人に増えている場合は、解決が困難になるため、できるだけ早く対応しましょう。

Q3相続土地国庫帰属制度の要件は?

A3建物・担保権・土壌汚染・境界未確定等がある土地は対象外です。審査手数料1.4万円/筆(非返還)、負担金(10年分の管理費相当額)が別途必要です。要件が厳しく、相続した土地を簡単に国に返せるわけではありません。相続土地国庫帰属制度を利用する前に、売却や寄付などの選択肢も検討し、司法書士・弁護士に相談することが重要です。

Q4所有者不明土地は誰でも使える?

A4使えません。所有権は存在し、勝手に使用・処分はできません。2018年の特別措置法で一定の手続きを経れば利用可能になりましたが、家庭裁判所への申立・財産管理人の選任など、複雑な手続きが必要です。所有者不明土地を利用したい場合は、弁護士・司法書士に相談し、適切な手続きを踏む必要があります。