定期借地権マンションとは?メリット・デメリットと購入時の注意点
定期借地権マンションの購入を検討する際、「所有権マンションとどう違うのか」「価格が安いが不安」と感じる方は少なくありません。
この記事では、定期借地権マンションの仕組み、所有権マンションとの違い、メリット・デメリット、購入時の注意点を、法務省の借地借家法等の公式情報を元に解説します。
定期借地権マンションが自分に合った選択肢かどうかを判断できるようになります。
この記事のポイント
- 定期借地権マンションは、土地を借地し建物を区分所有する形態で、期間満了後は建物を取り壊して土地を返還する
- 価格が所有権マンションの2-3割安く、立地が良い場合が多いのがメリット
- 期間満了後の建物撤去義務、資産価値の減少、住宅ローン審査の厳しさ、地代の支払いがデメリット
- 購入判断の基準は、期間満了までに住み切れる(高齢者向け)、立地を重視、資産として残す必要がない場合
- 解体費用積立金や地代の変動リスクも考慮する必要がある
定期借地権マンションとは?所有権マンションとの違い
定期借地権マンションとは、土地を借地し、建物を区分所有する形態のマンションです。期間満了後は建物を取り壊して土地を返還する契約になっています。
定期借地権の法的定義(借地借家法)
定期借地権は、借地借家法で定められた制度です。以下の特徴があります。
- 存続期間50年以上: 契約時に期間を定める
- 法定更新なし: 期間満了後は自動更新されず、契約終了
- 建物買取請求権なし: 地主に建物を買い取ってもらう権利がない
最も一般的なのは「一般定期借地権」です。存続期間50年以上で、期間満了後は建物を解体して更地にして返還します。
所有権マンションとの違い
所有権マンションと定期借地権マンションの主な違いは以下の通りです。
| 項目 | 所有権マンション | 定期借地権マンション | 
|---|---|---|
| 土地 | 所有権(共有持分) | 借地権(借りるのみ) | 
| 建物 | 区分所有権 | 区分所有権 | 
| 期間 | 無期限 | 50年以上(期限あり) | 
| 価格 | 通常価格 | 2-3割安い | 
| 地代 | なし | 毎月支払い | 
| 固定資産税(土地) | あり | なし | 
| 期間満了後 | そのまま居住可能 | 建物を取り壊して返還 | 
定期借地権マンションでも、建物部分は区分所有権として所有できます。しかし、土地は借地権として借りるのみで、所有権はありません。
供給動向(2022年度データ)
三菱UFJ不動産販売の調査によると、2022年度の定期借地権マンション供給は10年前から約31%増加しています。特に東京・大阪・兵庫で供給が増えており、駅近等の好立地での開発が進んでいます。
定期借地権マンションのメリット
定期借地権マンションには、以下のようなメリットがあります。
価格が所有権マンションの2-3割安い
最大のメリットは、価格が所有権マンションの2-3割程度安いことです。
例えば、同じ立地で所有権マンションが5,000万円の場合、定期借地権マンションは3,500-4,000万円程度で購入できる可能性があります。
価格が安い理由は、土地を所有せず借地するため、土地代が不要だからです。初期費用を抑えられるため、購入のハードルが下がります。
立地が良い場合が多い
定期借地権マンションは、地主の土地を活用して建設されるため、駅近等の好立地に建てられる場合が多いです。
所有権マンションでは取得が難しい一等地に住める可能性があり、通勤・通学の利便性が高いのが魅力です。
固定資産税・都市計画税(土地部分)が抑えられる
所有権マンションでは、土地の共有持分に対して固定資産税・都市計画税がかかります。定期借地権マンションでは、土地を所有しないため、これらの税金は地主が負担します。
建物部分の固定資産税・都市計画税は発生しますが、土地部分は不要です。年間数万円程度の節税効果が期待できる場合があります。
定期借地権マンションのデメリット
一方で、以下のようなデメリットもあります。購入前に十分理解しておくことが重要です。
期間満了後の建物撤去義務
最大のデメリットは、期間満了後(通常50-70年後)に建物を取り壊して土地を返還する義務があることです。
期間満了後は、その場所に住み続けることはできません。高齢になってから転居を強いられる可能性があります。
解体費用積立金の負担
建物取り壊し費用は、居住者全員で積み立てる必要があります。マンションによっては、管理費・修繕積立金に加えて、毎月「解体費用積立金」が徴収されます。
解体費用は、マンションの規模により数千万円~数億円になります。毎月数千円~1万円程度の積立が必要になる場合があります。
資産価値の減少
残存期間が短くなるほど、資産価値は減少します。購入時は50年の残存期間があっても、30年後には20年しか残っていません。売却時には、残存期間を考慮して価格が大幅に下落します。
残存期間が10年を切ると、ほとんど買い手がつかなくなる可能性があります。将来的に売却を考えている場合は、この点を理解しておく必要があります。
住宅ローン審査が厳しい
定期借地権マンションは、住宅ローン審査が厳しくなる傾向があります。理由は以下の通りです。
- 借地権の残存期間を超える借入期間不可: 残存期間が40年の場合、35年ローンは組めても、40年を超える返済期間は設定できない
- 担保価値が低い: 土地を所有しないため、担保価値が低く、融資額が少なくなる可能性がある
金融機関によっては、定期借地権マンションへの融資を行わない場合もあります。事前に複数の金融機関に相談することをおすすめします。
地代の支払いと変動リスク
毎月地代を地主に支払う必要があります。地代は、管理費・修繕積立金に加えて発生するため、月々の負担が増えます。
また、土地の価格変動により地代が上昇する可能性があります。契約書に地代改定のルールが記載されているため、購入前に確認しましょう。
定期借地権マンションの購入判断基準
定期借地権マンションが自分に合っているかどうかは、以下の基準で判断しましょう。
期間満了までに住み切れる(高齢者向け)
期間満了までに住み切れる場合は、定期借地権マンションが合理的な選択肢となります。
例えば、60歳で残存期間50年のマンションを購入した場合、110歳まで住めます。多くの場合、期間満了前に他界するため、建物撤去の負担を負う可能性は低いです。
相続を前提としない高齢者にとっては、価格が安く立地が良い定期借地権マンションは魅力的です。
立地を重視、資産として残す必要がない
通勤・通学の利便性を重視し、駅近等の好立地に住みたい場合、定期借地権マンションは有力な選択肢です。
資産として子供に残す必要がない場合、期間満了後の建物撤去はデメリットになりません。「住むため」の住宅として割り切れる場合は、価格の安さが大きなメリットになります。
初期費用を抑えたい
住宅購入の初期費用を抑えたい場合、定期借地権マンションは魅力的です。所有権マンションよりも2-3割安く購入できるため、頭金や諸費用の負担が軽減されます。
ただし、地代・解体費用積立金が毎月発生するため、長期的なコストを計算することが重要です。
購入前に確認すべき事項
購入前に、以下の事項を必ず確認しましょう。
- 残存期間: 何年残っているか
- 地代の金額と改定ルール: 将来的に上昇する可能性はあるか
- 解体費用積立金の金額: 毎月いくら積み立てる必要があるか
- 住宅ローンの融資条件: 希望する金融機関で融資が受けられるか
- 管理組合の財政状況: 修繕積立金や解体費用積立金が適切に積み立てられているか
これらを総合的に判断し、長期的なコストを見積もった上で購入を決定しましょう。
まとめ:定期借地権マンションは誰に向いているか
定期借地権マンションは、土地を借地し建物を区分所有する形態で、期間満了後は建物を取り壊して土地を返還します。価格が所有権マンションの2-3割安く、立地が良い場合が多いのがメリットです。
一方、期間満了後の建物撤去義務、資産価値の減少、住宅ローン審査の厳しさ、地代の支払いがデメリットです。
定期借地権マンションが向いているのは、期間満了までに住み切れる高齢者、立地を重視し資産として残す必要がない方、初期費用を抑えたい方です。
購入前に、残存期間、地代、解体費用積立金、住宅ローンの融資条件を確認し、長期的なコストを見積もりましょう。不安がある場合は、不動産会社や金融機関、ファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
