老後のマンション購入で後悔しないためのポイント

公開日: 2025/11/1

老後のマンション購入で後悔する人が知っておくべきこと

老後の住まいを考える際、「マンションを購入すべきか」と悩む方は少なくありません。マンションは管理が楽でセキュリティも充実していますが、「管理費が高騰した」「バリアフリーが不十分だった」と後悔する声も聞かれます。

この記事では、老後のマンション購入でよくある後悔事例と、後悔しないための選び方のポイントを、国土交通省の高齢者向け住宅施策や専門家の見解を元に解説します。

老後の住まいを検討中の方が、自分に合った判断をするための具体的な基準を理解できるようになります。

この記事のポイント

  • 管理費・修繕積立金は平均月額3万円超で、15年で約4,000-5,000円上昇する傾向
  • バリアフリー設計(段差なし、手すり、エレベーター)の確認が重要
  • 管理組合の健全性(修繕積立金の積立状況、滞納率)を購入前にチェック
  • 医療・買い物施設へのアクセスが徒歩圏内にあるかを確認
  • 低層階(1-3階)はエレベーター故障時・災害時に安心

老後のマンション購入でよくある後悔事例

老後にマンションを購入した方が、実際に後悔している事例を4つの観点で整理します。

管理費・修繕積立金が予想以上に高騰

平均的な費用:

マンションの管理費・修繕積立金は、平均月額30,481円(2025年時点)です。2010年から2025年にかけて約4,000-5,000円上昇しており、今後も上昇が予想されます。

(出典: LIFULL HOME'S 修繕積立金・管理費動向調査

修繕積立金の段階増額:

新築時の修繕積立金は低く設定され、将来的に段階的に増額される「段階増額方式」が一般的です。国土交通省は2024年2月に、修繕積立金の段階増額を1.8倍までに制限する案を提案しています。

(出典: 国土交通省 修繕積立金の値上げ上限案

後悔の声:

  • 「新築時は月2万円だったが、15年後に月4万円に増額された」
  • 「年金生活で管理費の負担が重く、生活が苦しい」

対策: 購入前に「長期修繕計画」を確認し、将来の修繕積立金の増額予定を把握することが重要です。築年数が経つほど修繕費用が増えるため、築浅物件の方が費用負担が少ない傾向にあります。

バリアフリー設計が不十分

よくある問題:

  • 玄関・浴室・トイレに段差がある
  • 手すりが設置されていない
  • エレベーターが故障した際、階段での移動が困難
  • 廊下幅が狭く車椅子が通れない

後悔の声:

  • 「膝が悪くなり、段差でつまずいて転倒した」
  • 「エレベーターが点検中で、階段を使えず外出できなかった」

対策: 購入前にバリアフリー設計を確認する必要があります。具体的なチェックポイントは後述します。

近隣住民とのコミュニティが形成されない

よくある問題:

  • 近隣住民との交流がなく、孤立感を感じる
  • 緊急時に助けを求められる人がいない
  • 管理組合の活動に参加する人が少なく、マンション全体の管理が機能不全に陥る

後悔の声:

  • 「隣の住人と顔を合わせたことがなく、孤独を感じる」
  • 「管理組合の理事になる人がおらず、修繕計画が進まない」

対策: コミュニティスペース(共用ラウンジ、集会室等)があるマンションを選ぶ、または購入前に管理組合の活動状況を確認することをおすすめします。

将来の売却・賃貸が困難

よくある問題:

  • 介護施設への入居が必要になり、マンションを売却したいが買い手がつかない
  • 築古物件で修繕積立金が高騰しており、購入希望者が現れない
  • 賃貸に出したいが、立地が悪く借り手が見つからない

後悔の声:

  • 「売却価格が購入時の半額以下になり、大きな損失を出した」
  • 「築30年超で修繕積立金が月5万円を超え、誰も買ってくれない」

対策: 将来の売却・賃貸を見据え、立地(駅近・買い物施設近接)と管理状況(修繕積立金の積立状況、大規模修繕の履歴)を確認することが重要です。築20年以内の物件を選ぶと、将来の売却・賃貸がしやすい傾向にあります。

老後にマンションを選ぶメリット

後悔事例だけでなく、マンション購入のメリットも理解しておくことが重要です。

戸建てより維持管理が楽

マンションは、共用部(廊下・エントランス・外壁等)の維持管理を管理組合が行うため、個人の負担が少なくなります。

  • 庭の手入れが不要
  • 外壁塗装・屋根修繕は管理組合が対応
  • 共用部の清掃は管理会社が実施

戸建ての場合、これらの維持管理を全て自分で行う必要があり、高齢になると負担が大きくなります。

セキュリティが充実

マンションは、オートロック・管理人常駐・防犯カメラ等のセキュリティが充実しています。

  • 不審者の侵入を防ぐ
  • 緊急時に管理人に連絡できる
  • 留守中の安心感が高い

一人暮らしの高齢者にとって、セキュリティは重要な安心材料です。

駅近の立地が多い

マンションは駅近・買い物施設近接の立地が多く、生活の利便性が高い傾向にあります。

  • 徒歩圏内にスーパー・薬局がある
  • 公共交通機関へのアクセスが良好
  • 医療機関が近い

高齢になると車の運転が困難になるため、徒歩圏内で生活が完結する立地は重要です。

老後に適したマンションの選び方

後悔しないために、以下の3つの観点でマンションを選ぶことをおすすめします。

バリアフリー設計のチェックポイント

バリアフリー設計の確認は、老後の安全な生活に直結します。以下のポイントをチェックしてください。

チェック項目 理想的な状態
段差 玄関・浴室・トイレ・廊下に段差がない
手すり 廊下・浴室・トイレに手すりが設置されている
廊下幅 80cm以上(車椅子が通れる幅)
エレベーター 各階に停止、かご内に椅子がある
ドア 引き戸(開き戸より力が不要)
スイッチ・コンセント 低い位置に設置(車椅子からでも届く)

(出典: 三井のリハウス 高齢者が住みやすいバリアフリー住宅とは

重要: 築古物件はバリアフリー設計が不十分な場合が多いため、築浅物件(築10年以内)を選ぶと安心です。

管理組合の健全性を確認

管理組合の健全性は、マンションの資産価値と住み心地に直結します。以下を確認してください。

1. 修繕積立金の積立状況

長期修繕計画と照らし合わせ、修繕積立金が十分に積み立てられているかを確認します。積立金が不足している場合、将来的に一時金(数十万円~数百万円)の徴収や、大規模修繕の先送りが発生するリスクがあります。

確認方法:

  • 重要事項調査報告書(管理会社が発行)
  • 管理組合の総会議事録

2. 築年数と修繕履歴

築20年以内の物件を目安にし、大規模修繕(外壁塗装・屋上防水等)の実施履歴を確認します。大規模修繕は12-15年ごとに実施されるのが一般的です。

3. 管理費滞納率

管理費の滞納率が高い(5%以上)場合、管理組合の運営に問題がある可能性があります。滞納が多いと、共用部の維持管理が行き届かず、マンション全体の資産価値が下がるリスクがあります。

医療・買い物施設へのアクセス

徒歩圏内(徒歩10分以内、距離800m以内)に以下の施設があるかを確認してください。

  • 医療機関: 内科・整形外科・歯科等のかかりつけ医
  • 薬局: 処方箋受付
  • スーパー: 日常の買い物
  • コンビニ: 緊急時の買い物
  • 公共交通機関: バス停・駅

高齢になると、徒歩での移動距離が短い方が負担が少なくなります。購入前に実際に歩いてみて、坂道の有無・歩道の整備状況を確認することをおすすめします。

低層階(1-3階)の選択

低層階はエレベーター故障時・災害時に階段での移動が可能であり、高齢者にとって安心です。高層階は眺望が良いですが、移動負担が大きくなります。

老後のマンション購入で注意すべき法規制とリスク

老後のマンション購入には、以下の法規制とリスクがあります。

区分所有法による管理費・修繕積立金の負担義務

区分所有法により、マンション所有者は管理費・修繕積立金を負担する義務があります。滞納すると、最終的に差し押さえのリスクがあります。

建築基準法のバリアフリー基準

建築基準法により、一定規模以上の共同住宅(床面積2,000㎡以上)はバリアフリー基準を満たす必要がありますが、小規模マンションは対象外です。購入前にバリアフリー設計を確認することが重要です。

(出典: 国土交通省 高齢者向け住宅等

宅建業法の重要事項説明義務

不動産会社は、宅建業法により重要事項説明を行う義務があります。管理費・修繕積立金の額、修繕履歴、管理組合の運営状況等を説明しますが、将来の費用負担を保証するものではありません。

購入後のリスク

  • 費用負担増: 修繕積立金の増額、一時金の徴収
  • 管理組合の機能不全: 理事のなり手不足、修繕計画の停滞
  • 売却困難: 築古・立地不良・管理不良による資産価値の低下

これらのリスクを避けるため、購入前にファイナンシャルプランナー(FP)や不動産専門家に相談することをおすすめします。

まとめ:老後のマンション購入で後悔しないために

老後のマンション購入で後悔しないためには、管理費・修繕積立金の高騰、バリアフリー設計の不十分さ、コミュニティ不足、売却困難等のリスクを理解することが重要です。

一方で、マンションには維持管理の楽さ、セキュリティの充実、駅近立地等のメリットもあります。自分の健康状態・資金状況・家族構成に応じて、購入すべきか賃貸にすべきかを判断する必要があります。

具体的な次のアクション:

  • 候補物件の現地を複数回訪問し、周辺環境を確認
  • 管理組合の総会議事録・長期修繕計画を取り寄せ
  • ファイナンシャルプランナー(FP)や不動産専門家に相談
  • バリアフリー設計のチェックリストを作成し、物件ごとに評価

老後の住まいは人生の大きな決断です。十分な情報収集と専門家への相談を通じて、後悔のない選択をしましょう。

よくある質問

Q1老後にマンションを購入するのと賃貸はどちらが良いですか?

A1購入は資産になりますが、管理費・修繕積立金の負担があり、平均月額3万円超で将来的に上昇する傾向があります。賃貸は初期費用が少なく住み替えが自由ですが、高齢者は契約を断られる可能性があります。健康状態・資金状況・家族構成により判断が異なるため、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談して、自分に合った選択をすることをおすすめします。

Q2管理費・修繕積立金はどのくらい上がりますか?

A2平均月額は3万円超で、2010年から2025年にかけて約4,000-5,000円上昇しています。国土交通省は2024年2月に、修繕積立金の段階増額を1.8倍までに制限する案を提案しています。築年数が経つほど修繕費用が増えるため、築浅物件の方が費用負担が少ない傾向にあります。購入前に長期修繕計画を確認し、将来の増額予定を把握することが重要です。

Q3築何年までのマンションを選ぶべきですか?

A3築20年以内が目安です。築古物件は修繕積立金が高騰しやすく、大規模修繕(外壁塗装・屋上防水等)の履歴確認が必須です。築浅物件はバリアフリー設計が進んでいる傾向にあり、将来の売却・賃貸もしやすいです。築30年超の物件は、修繕積立金が月5万円を超えることもあり、慎重な判断が必要です。

Q4低層階と高層階、どちらが老後に向いていますか?

A4低層階(1-3階)が安心です。エレベーター故障時・災害時に階段での移動が可能であり、高齢者にとって負担が少なくなります。高層階は眺望が良いですが、エレベーターに依存するため、故障時や点検中に外出できないリスクがあります。購入前にエレベーターの保守契約内容を確認し、故障時の対応を把握しておくことをおすすめします。