不動産取引価格情報検索とは?実取引データで相場を知るメリット
不動産の売買を検討する際、「この物件の価格は適正なのか」「相場はどれくらいか」と気になる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、国土交通省が提供する「不動産取引価格情報検索」(土地総合情報システム)の使い方、地価公示との違い、相場の読み取り方を詳しく解説します。
実際の売買価格(成約価格)を無料で検索できる公的サービスを活用することで、不動産の相場を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 国土交通省の「不動産取引価格情報検索」は実際の売買価格を無料で検索できる公的サービス
- アンケート回答ベースで約3割の取引を掲載(すべての取引が掲載されているわけではない)
- 地価公示は「公的な評価額」、取引価格情報は「実際の市場価格」という性格の違いがある
- 複数の類似物件データを比較し、中央値・平均値で相場を把握することが重要
- 取引価格情報はあくまで参考値であり、正確な査定には不動産会社への依頼を併用すべき
地価公示と取引価格情報の違い
不動産の価格情報には、「地価公示」と「取引価格情報」という2つの公的データがあります。それぞれの性格を理解しておくことが、相場把握に役立ちます。
地価公示(評価額の基準)
地価公示は、国土交通省が毎年3月に公表する標準地の評価額です(1月1日時点)。不動産鑑定士が評価した「公的な土地の評価額」であり、以下の用途で利用されます。
- 公共事業の用地取得価格の算定基準
- 固定資産税評価の参考値
- 金融機関の担保評価の指標
地価公示はあくまで「評価額」であり、実際の売買価格とは異なります。
取引価格情報(実際の売買価格)
取引価格情報は、実際の不動産売買契約に基づくアンケート回答データです。売主・買主に対して国土交通省がアンケートを実施し、回答があった取引の価格を公表しています。
特徴:
- 実際の市場価格が分かる(売主と買主が合意した成約価格)
- アンケート回答率は約3割(すべての取引が掲載されているわけではない)
- 四半期ごと(3ヶ月ごと)に更新される
- 個人情報保護のため、詳細な住所・建物名は非公開
地価公示は「公的な評価額の基準」、取引価格情報は「実際の市場価格」という性格の違いを理解しておくことが重要です。
不動産取引価格情報検索の使い方(ステップ解説)
ステップ1: 土地総合情報システムにアクセス
国土交通省の不動産情報ライブラリにアクセスします。トップページに「不動産取引価格情報検索」のメニューがあります。
ステップ2: 検索条件の設定(地域・時期・不動産種別)
検索条件を設定します。
設定項目:
- 都道府県: 調べたい地域の都道府県を選択
- 市区町村: 都道府県内の市区町村を選択
- 時期: 取引時期(四半期ごと)を選択。最新データは約3-6ヶ月遅れで公表される
- 不動産種別: 土地、土地と建物(中古マンション等)、中古マンション等、農地、林地から選択
例えば、「東京都千代田区の中古マンション、2024年第2四半期(4-6月)の取引」を調べる場合、以下のように設定します。
- 都道府県: 東京都
- 市区町村: 千代田区
- 時期: 2024年第2四半期
- 不動産種別: 中古マンション等
ステップ3: 検索結果の見方(取引価格・面積・築年数等)
検索結果には以下の情報が表示されます。
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 取引価格 | 実際の売買価格(万円) | 
| 所在地 | 市区町村・地区名(詳細な住所は非公開) | 
| 面積 | 土地面積・建物面積(㎡) | 
| 最寄駅 | 最寄駅名と距離(分) | 
| 築年数 | 建築年・築年数 | 
| 建物の構造 | 木造・鉄骨造・RC造等 | 
| 間取り | 1LDK、3LDK等 | 
個人情報保護のため、詳細な住所や建物名は公開されていません。
検索結果から相場を読み取る方法
類似物件の取引価格を比較
相場を把握するには、複数の類似物件データを比較することが重要です。
比較のポイント:
- 面積・築年数が近い物件を抽出
- 最寄駅からの距離が似ている物件を選ぶ
- 同じ時期(四半期)のデータを使用
1件のデータだけでは判断が難しいため、最低でも5-10件のデータを比較することを推奨します。
平米単価・坪単価の計算方法
取引価格を面積で割ることで、平米単価・坪単価を算出できます。
計算式:
- 平米単価 = 取引価格 ÷ 面積(㎡)
- 坪単価 = 平米単価 × 3.3058
例えば、取引価格が5000万円、面積が70㎡の場合、平米単価は以下の通りです。
平米単価 = 5000万円 ÷ 70㎡ = 約71.4万円/㎡
複数の物件の平米単価を算出し、中央値や平均値を取ることで、相場の目安が分かります。
取引時期・築年数の影響
取引価格は、取引時期や築年数により変動します。
取引時期の影響:
不動産市場は時期により変動します。最新データほど現在の相場に近いため、できるだけ直近のデータを参照することを推奨します。
築年数の影響:
築年数が古いほど、一般的に価格は低くなります。築10年と築30年では大きな価格差があるため、築年数が近い物件同士を比較することが重要です。
取引価格情報の注意点と活用の限界
アンケート回答ベースで全取引は掲載されていない
取引価格情報は、売主・買主へのアンケートに基づいています。アンケート回答率は約3割のため、すべての取引が掲載されているわけではありません。
掲載されていない取引もあることを理解した上で、参考値として活用してください。
個人情報保護のため詳細な住所は非公開
個人情報保護のため、詳細な住所や建物名は公開されていません。「〇〇区△△」といった地区名までしか分かりません。
特定の建物の取引価格を調べることはできないため、あくまで「地域全体の相場」を把握する目的で利用してください。
不動産会社の査定サービスとの併用推奨
取引価格情報はあくまで参考値であり、個別の物件評価には限界があります。正確な査定を得るには、不動産会社の査定サービスを併用することを推奨します。
不動産会社の査定では、以下のような個別要素も考慮されます。
- 建物の状態(リフォーム履歴、設備の新しさ等)
- 眺望・日当たり
- 周辺環境(学校、商業施設等の利便性)
公的データと専門家の査定を併用することで、より正確な相場把握が可能になります。
まとめ:公的データを活用して適正価格を判断
国土交通省の不動産取引価格情報検索は、実際の市場価格を知る第一歩として有用です。無料で利用でき、実際の売買価格(成約価格)を検索できます。
ただし、アンケート回答ベースで約3割の取引しか掲載されておらず、個別の物件評価には限界があります。正確な査定を得るには、不動産会社への相談が必要です。
公的データ(取引価格情報・地価公示)と専門家の査定を併用し、総合的に判断することで、適正価格での不動産取引が可能になります。
