不動産取引の諸費用は?買主・売主別の内訳と節約術

公開日: 2025/10/26

不動産取引の諸費用とは?買主・売主別の全体像

不動産の購入や売却を検討する際、「物件価格以外にどれくらいの費用が必要なのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、不動産取引の諸費用について、買主・売主それぞれの内訳、相場、節約方法を、国土交通省・国税庁の公式情報を元に解説します。

諸費用の全体像を把握することで、資金計画を立てやすくなり、想定外の出費を防ぐことができます。

この記事のポイント

  • 買主の諸費用は物件価格の5-10%、売主は3-7%が相場
  • 買主は登記費用・仲介手数料・住宅ローン関連費用、売主は仲介手数料・譲渡所得税が主な費目
  • 登録免許税の軽減措置(2027年3月31日まで)を活用すれば費用を抑えられる
  • 諸費用は住宅ローンに含められない場合が多く、現金で用意する必要がある

諸費用の相場と目安

不動産取引の諸費用は、物件の種別や取引形態によって異なります。

買主側:物件価格の5-10%

新築マンションを購入する場合、諸費用は物件価格の3-6%が相場です。中古住宅の場合は、仲介手数料が加わるため6-9%程度になります。

例えば、3000万円の新築マンションなら90-180万円、中古戸建てなら180-270万円が目安です。

売主側:物件価格の3-7%

売却時の諸費用は、仲介手数料・抵当権抹消費用・譲渡所得税等が含まれます。利益が出た場合は譲渡所得税が課されるため、全体として物件価格の3-7%が相場です。

物件種別による違い

HOME'Sの調査によると、物件種別ごとの諸費用の違いは以下の通りです。

物件種別 買主の諸費用 売主の諸費用
新築マンション 3-6% -
中古マンション 6-9% 3-7%
新築戸建て 3-6% -
中古戸建て 6-9% 3-7%
土地 6-10% 3-7%

(出典: HOME'S

中古物件の方が諸費用が高くなるのは、仲介手数料が発生するためです。

買主側の諸費用の内訳

買主が負担する諸費用は、主に登記費用、仲介手数料、税金、住宅ローン関連費用に分類されます。

登録免許税(軽減措置で0.3-2.0%)

登録免許税は、不動産の所有権移転登記や抵当権設定登記時に課される国税です。

所有権移転登記は、固定資産税評価額に対して本則2.0%の税率ですが、2025年時点で、住宅購入時の軽減措置により0.3%に引き下げられます(2027年3月31日まで)。

抵当権設定登記は、借入額に対して本則0.4%ですが、軽減措置により0.1%に引き下げられます。

国税庁の軽減措置に関するお知らせによると、軽減措置の適用要件は以下の通りです。

  • 自己居住用の住宅であること
  • 床面積50㎡以上
  • 築年数25年以内または新耐震基準適合

仲介手数料(物件価格×3%+6万円+消費税)

仲介手数料は、不動産会社に支払う報酬です。宅地建物取引業法で上限が定められており、売買価格が400万円超の場合は「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限となります。

例えば、3000万円の物件なら、仲介手数料は最大105.6万円(税込)です。

印紙税・火災保険料・住宅ローン関連費用

印紙税は、不動産売買契約書に貼付する収入印紙の費用です。契約書の記載金額に応じて税額が決まります(例:1000万円超5000万円以下は2万円)。

火災保険料は、建物を対象とした保険で、一般的な保険会社の試算によると、10年一括払いなら20-30万円程度が目安です。

住宅ローン関連費用は、一般的な金融機関では、事務手数料(借入額の2.2%程度)と保証料(借入額の2-3%程度)が主な内訳です。金融機関によっては、保証料が不要な代わりに金利が高めに設定される場合もあります。

固定資産税の精算金も買主負担です。売主が年間分を先払いしているため、引渡し日を基準に日割り計算で精算します。

売主側の諸費用の内訳

売主が負担する諸費用は、主に仲介手数料、抵当権抹消登記、譲渡所得税に分類されます。

仲介手数料(買主と同額)

仲介手数料は、買主と同じ計算式で、売主も「売買価格×3%+6万円+消費税」が上限です。3000万円の物件なら、最大105.6万円(税込)です。

抵当権抹消登記(不動産1個につき1000円)

住宅ローンを完済した場合、金融機関の抵当権を消す登記が必要です。登録免許税は不動産1個につき1000円ですが、司法書士報酬として1-3万円程度が別途かかります。

譲渡所得税(利益が出た場合)

不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課されます。

HOME4Uによると、所有期間によって税率が異なります。

所有期間 税率
5年以下(短期譲渡所得) 約39%(所得税30%+住民税9%)
5年超(長期譲渡所得) 約20%(所得税15%+住民税5%)

(出典: HOME4U

ただし、自己居住用の住宅を売却する場合、3000万円の特別控除が適用される可能性があります。

諸費用の透明性と法的義務

不動産取引において、諸費用の明示は法的義務です。

重要事項説明での費用明示

宅地建物取引業法35条により、不動産会社は重要事項説明で諸費用の内訳を明示する義務があります。

国土交通省の資料によると、重要事項説明書には以下の費用項目を記載する必要があります。

  • 登記費用
  • 仲介手数料
  • 固定資産税の精算金
  • その他必要な費用

「諸費用ゼロ」の誇大表現に注意

「諸費用ゼロ」「手数料無料」等の表現は、不当景品類及び不当表示防止法違反のリスクがあります。

実際には、他の費目(オプション費用等)で回収されている場合が多いため、契約前に見積書で費用項目・金額を確認し、不明点は質問すべきです。

諸費用を節約する方法

諸費用は工夫次第で抑えることができます。

登録免許税の軽減措置を活用(2027年3月31日まで)

住宅購入時の軽減措置(2027年3月31日まで延長)を活用すれば、登録免許税を大幅に減額できます。

例えば、固定資産税評価額2000万円の住宅なら、本則40万円(2.0%)のところ、軽減措置で6万円(0.3%)に抑えられます。

仲介手数料の値引き交渉

仲介手数料は上限規定のため、交渉次第で値引き可能です。特に新築物件や両手仲介(売主・買主双方から手数料を得る)の場合、交渉の余地があります。

住宅ローン保証料の外枠払い・事務手数料型の選択

住宅ローン保証料は、一括外枠払いで総額を抑えられますが、事務手数料型(借入額の2.2%)の方が金利が低い場合もあります。

各金融機関の条件を比較し、総返済額で判断することが重要です。

印紙税は電子契約で不要

売買契約書を電子契約で締結すれば、印紙税が不要になる場合があります。対応している不動産会社に確認しましょう。

まとめ:諸費用は物件価格の5-10%を事前に用意

不動産取引の諸費用は、買主で物件価格の5-10%、売主で3-7%が相場です。

登記費用、仲介手数料、税金など多岐にわたるため、契約前に見積書で確認し、軽減措置の適用可否を確認すべきです。

諸費用は住宅ローンに含められない場合が多いため、現金で用意する必要があります(諸費用ローンは金利が高い)。

信頼できる不動産会社や金融機関に相談しながら、無理のない資金計画を立てましょう。

よくある質問

Q1諸費用は住宅ローンに含められますか?

A1原則として含められません。一部金融機関では諸費用ローンとして別途借入可能ですが、金利が住宅ローンより高い(年2-3%程度)ため、現金で用意するのが理想です。諸費用ローンを検討する場合は、総返済額を試算した上で判断しましょう。

Q2諸費用の支払いタイミングはいつですか?

A2契約時(手付金、印紙税)、決済時(仲介手数料、登記費用、固定資産税精算金)、引渡し後(不動産取得税、火災保険料)に分かれます。タイミングに合わせて資金計画を立てることが重要です。各費目の支払時期は、不動産会社に確認しましょう。

Q3「仲介手数料無料」の物件は本当にお得ですか?

A3売主から両手仲介で手数料を得ている場合や、他の費目(オプション費用等)で回収している場合が多いです。無料の理由を確認し、総額で比較すべきです。見積書で全費用を確認してから判断しましょう。

Q4諸費用の見積もりはいつもらえますか?

A4契約前の重要事項説明時に不動産会社が提示する義務があります。宅地建物取引業法35条により、費用の内訳を明示することが法的に義務付けられています。契約前に必ず見積書をもらい、不明点は質問すべきです。

Q5登録免許税の軽減措置の適用要件は?

A5自己居住用の住宅(床面積50㎡以上、築年数25年以内または新耐震基準適合)が対象です。2027年3月31日までの取得に適用されます。適用要件の詳細は、不動産会社または司法書士に確認してください。