不動産テックとは?従来の課題を解決する新しい潮流
不動産業界では、従来から情報の非対称性や非効率な手続きが課題とされてきました。「不動産テック」は、テクノロジーを活用してこれらの課題を解決し、不動産取引・管理・投資を効率化・透明化するサービスの総称です。
この記事では、不動産テックの12カテゴリ、主要サービス、市場動向を、不動産テック協会と国土交通省の公式情報を元に解説します。
不動産業界関係者や利用を検討している方でも、不動産テックの全体像を把握できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産テックは12カテゴリ(仲介・管理・査定・ローン等)に分類される
- オンライン完結で時間短縮、価格相場の可視化で情報格差解消、コスト削減が主なメリット
- 2022年度市場規模9,402億円、2030年度予測2兆3,780億円と急成長中
- IT重説・電子契約が2017年から段階的に解禁され、コロナ禍で普及加速
不動産テックの12カテゴリー|主要サービスを体系的に整理
不動産テック協会のカオスマップ第10版(2024年8月公開)では、499サービスが12カテゴリに分類されています。
仲介(物件検索ポータル、マッチングサービス)
物件検索ポータルサイトやAIによる物件マッチングサービスが含まれます。複数の不動産会社の物件情報を一元的に検索でき、希望条件に合った物件を効率的に見つけられます。
査定(AI査定、価格推定)
AIを活用した不動産価格の自動査定サービスです。過去の取引データや周辺相場を分析し、数分で査定価格を提示します。複数社の査定を比較できるサービスも増えています。
ローン(オンライン審査、金利比較)
住宅ローンのオンライン審査や金利比較サービスです。複数の金融機関の金利・条件を一括比較でき、審査もオンラインで完結します。
管理(スマートロック、IoT管理)
スマートロックやIoTセンサーを活用した不動産管理サービスです。遠隔での鍵の開閉、設備の異常検知、入退室管理等が可能になります。
クラウドファンディング(小口不動産投資)
不動産投資をクラウドファンディング形式で小口化し、1万円程度から投資できるサービスです。従来は数百万円以上の資金が必要だった不動産投資のハードルを大幅に下げました。
電子契約・IT重説(オンライン契約)
国土交通省によると、IT重説(オンライン重要事項説明)は2017年賃貸で解禁、2021年売買で解禁、2022年完全電子化されました。遠隔地でも契約が可能になり、コロナ禍で普及が加速しました。
不動産テックが注目される背景
不動産テックが注目される背景には、従来の不動産業界の課題があります。
従来の不動産業界の課題(非効率、情報格差)
SBクリエイティブの解説によると、従来の不動産業界には以下の課題がありました。
- 情報の非対称性: 不動産会社が持つ情報と消費者が持つ情報に大きな格差があり、適正価格や物件の詳細情報が分かりにくい
- 非効率な手続き: 対面での契約が必須で、遠隔地からの取引が困難
- 高い仲介手数料: 仲介手数料が物件価格の3%+6万円+消費税と高額
- 人口減少: 空き家の増加により、不動産管理・活用の効率化が急務
データ基盤整備(不動産情報ライブラリ)
国土交通省は2024年4月、不動産取引価格・周辺施設・防災・都市計画情報を統合したWebGISシステム「不動産情報ライブラリ」の運用を開始しました。これにより、公的データ基盤が整備され、不動産テックサービスの精度向上が期待されています。
不動産テック活用のメリット
不動産テックを活用することで、以下のメリットが得られます。
効率化(オンライン完結、時間短縮)
IT重説・電子契約により、物件の内見から契約までオンラインで完結できるようになりました。遠隔地からも利用可能で、時間短縮につながります。
透明化(価格相場の可視化、情報格差の解消)
AI査定や価格推定サービスにより、不動産の適正価格が可視化されました。複数社の査定を比較でき、情報格差が解消されつつあります。
コスト削減(仲介手数料削減、管理費削減)
仲介手数料が無料または低額のサービスが登場し、コスト削減が可能になりました。IoT管理により、管理費の削減も期待できます。
不動産テックの市場動向
矢野経済研究所の調査によると、2022年度の不動産テック市場規模は9,402億円、2030年度予測は2兆3,780億円と、約2.5倍の成長が見込まれています。
市場規模の推移(2022年9,402億円→2030年2.4兆円予測)
| 年度 | 市場規模 | 
|---|---|
| 2022年度 | 9,402億円 | 
| 2025年度予測 | 1兆4,000億円 | 
| 2030年度予測 | 2兆3,780億円 | 
(出典: 矢野経済研究所)
コロナ禍での普及加速(IT重説・電子契約)
コロナ禍で対面接触を避ける需要が高まり、IT重説・電子契約の利用が急増しました。2022年の完全電子化により、不動産業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)が一気に進みました。
不動産テック導入時の注意点
Jones Lang LaSalleによると、不動産テック導入時には以下の点に注意が必要です。
法規制の確認(宅建業法、個人情報保護法)
不動産テックサービスは、宅地建物取引業法や個人情報保護法に準拠している必要があります。利用前に運営会社の実績・口コミを確認し、複数社を比較検討することが重要です。
情報セキュリティ(個人情報管理)
不動産取引では個人情報(氏名・住所・収入等)を扱うため、情報セキュリティ対策が重要です。SSL暗号化、二段階認証等のセキュリティ対策を確認してください。
まとめ
不動産テックは、テクノロジーを活用して不動産取引・管理・投資を効率化・透明化するサービスです。12カテゴリ(仲介・管理・査定・ローン等)に分類され、2030年度には市場規模2兆円超が予測されています。
オンライン完結で時間短縮、価格相場の可視化で情報格差解消、コスト削減が主なメリットです。
不動産テックと従来の不動産業者を組み合わせて利用することで、より効率的で透明性の高い不動産取引が実現できます。
よくある質問
不動産テックは信頼できる?
法規制(宅地建物取引業法、個人情報保護法等)に準拠したサービスは信頼性が高いです。利用前に運営会社の実績・口コミを確認し、複数社を比較検討することが重要です。不動産テック協会のカオスマップで499サービスが紹介されているため、複数のサービスを比較しながら選定してください。
従来の不動産業者は不要になる?
完全代替ではなく補完関係です。複雑な権利関係の調整や交渉等、人間の専門知識が必要な場面は依然として多いです。不動産テックと従来業者を組み合わせた利用が現実的です。例えば、物件検索は不動産テックで行い、契約交渉は従来業者に依頼する等、使い分けることで効率化できます。
不動産テック導入で何が変わる?
①オンライン完結で時間短縮、②価格相場の可視化で情報格差解消、③仲介手数料・管理費削減、④遠隔地からも利用可能になります。購入・売却・投資のハードルが下がり、より多くの人が不動産市場にアクセスできるようになります。
IT重説とは?
テレビ会議等のITを活用したオンライン重要事項説明です。国土交通省によると、2017年賃貸で解禁、2021年売買で解禁、2022年完全電子化されました。遠隔地でも契約可能になり、コロナ禍で普及が加速しました。
