不動産クラウドファンディングとは
少額(1万円〜)から不動産投資に参加できる仕組みが不動産クラウドファンディングです。不動産特定共同事業法に基づき、事業者は国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要です。
この記事では、不動産クラウドファンディングの仕組み、メリット、リスク、事業者選びのチェックポイントを、国土交通省・金融庁の公式情報を元に解説します。
リスクを理解した上で投資判断できるよう、元本割れ・流動性・事業者倒産等のリスクもバランスよく説明します。
この記事のポイント
- 不動産クラウドファンディングは少額(1万円〜)から不動産投資に参加できる仕組み
- 2017年法改正で電子取引業務が認められ、2025年時点で100社以上のサービスが存在
- メリットは少額投資可能、分散投資しやすい、手間がかからない
- リスクは元本割れ、流動性の低さ、事業者倒産、情報の非対称性
- 優先劣後構造は一定の保護だが完全な元本保証ではない
仕組み|匿名組合型と任意組合型
不動産クラウドファンディングには、匿名組合型と任意組合型の2つのタイプがあります。それぞれの特徴を表で比較しました。
| 項目 | 匿名組合型 | 任意組合型 | 
|---|---|---|
| 投資家の立場 | 匿名組合員(出資のみ) | 任意組合員(不動産の共有持分を取得) | 
| 収益 | 配当のみ | 配当 + 売却益 | 
| リスク | 元本変動あり | 元本変動あり + 登記費用・管理責任 | 
| 優先劣後構造 | あり(投資家保護) | なし | 
| 税務処理 | 比較的簡単 | 複雑(不動産所得として申告) | 
| 初心者向け | ◎ | △ | 
(出典: 国土交通省)
匿名組合型
匿名組合型は、投資家が匿名組合員として出資し、配当のみを受け取る仕組みです。不動産の所有権は事業者にあり、投資家は経営に関与しません。
優先劣後構造を採用することで、損失が発生した場合、事業者(劣後出資者)が先に負担し、投資家(優先出資者)の元本を一定程度保護します。ただし、一般的に劣後出資比率は20-30%程度とされており、この比率を超える損失は投資家が負担します。
任意組合型
任意組合型は、投資家が任意組合員として出資し、不動産の共有持分を取得する仕組みです。売却益も得られますが、登記費用や管理責任が発生し、税務処理も複雑になります。
初心者には匿名組合型を推奨します。
メリット|少額・分散・手間なし
不動産クラウドファンディングには以下のメリットがあります。
少額投資可能(1万円〜)
現物不動産投資には数百万円〜数千万円の資金が必要ですが、不動産クラウドファンディングは1万円〜投資できます。初心者でもハードルが低く、気軽に始められます。
分散投資しやすい
複数の物件に分散して投資することで、リスクを軽減できます。例えば、10万円の資金で10件の物件に1万円ずつ投資することも可能です。
手間がかからない
運用は事業者が行うため、投資家は管理・修繕の手間がかかりません。現物不動産投資のように、入居者の募集、家賃の回収、修繕対応等の実務作業は不要です。
リスク|元本割れ・流動性・事業者倒産
不動産クラウドファンディングには以下のリスクがあります。
元本割れリスク
不動産の価値が下落したり、空室が増加したりすると、配当が減少し、元本割れする可能性があります。優先劣後構造は一定の保護を提供しますが、劣後出資比率を超える損失は投資家が負担するため、完全な元本保証ではありません。
流動性の低さ
運用期間中は原則として換金できません。一部事業者は途中解約を認める場合もありますが、手数料が高額になる場合が多いため、余裕資金で投資することを推奨します。
事業者倒産リスク
国土交通大臣の許可を取得した事業者でも、倒産の可能性はゼロではありません。事業者が倒産した場合、投資資金の全部または一部を失う可能性があります。
情報の非対称性
現物不動産投資ほど詳細な情報(物件の内部状況、近隣環境等)が得られない場合があります。事業者が提供する情報(物件詳細、収支計画、リスク説明)を十分に確認した上で投資判断することが重要です。
事業者選びのチェックポイント
不動産クラウドファンディング事業者を選ぶ際は、以下のポイントを確認してください。
国土交通大臣の許可の有無
金融庁によると、2024年6月時点で256社が不動産特定共同事業の許可を取得しています。許可事業者かどうかを確認しましょう。
運用実績
過去の配当実績、元本割れ件数を確認します。運用実績が豊富で、元本割れが少ない事業者を選ぶことで、リスクを軽減できる可能性があります。
優先劣後比率
優先劣後構造を採用している場合、劣後出資比率(事業者が先に損失を負担する割合)を確認します。一般的に20-30%程度とされていますが、比率が高いほど投資家保護が強くなります。
情報開示の充実度
物件詳細(所在地、築年数、賃料等)、収支計画(想定利回り、運用期間等)、リスク説明が十分に開示されているかを確認します。情報開示が充実している事業者を選ぶことで、投資判断の精度が高まります。
マスターリース契約の有無
マスターリース契約(事業者が物件を一括借り上げし、空室の有無に関わらず一定の賃料を保証する契約)があると、空室リスクが軽減されます。
市場の拡大状況(2025年時点)
国土交通省によると、2017年の不動産特定共同事業法改正により電子取引業務が認められ、クラウドファンディングが法的に可能になりました。
金融庁によると、2024年6月時点で256社が不動産特定共同事業の許可を取得しています。民間サービスとしては100社以上が存在し、市場は拡大しています。投資家の選択肢が増える一方、事業者選びの重要性も高まっています。
まとめ|リスクを理解した上で投資判断を
不動産クラウドファンディングは少額・分散投資が可能で、手間がかからないメリットがあります。しかし、元本割れ・流動性の低さ・事業者倒産等のリスクもあります。
「元本保証」ではないことを理解し、事業者の運用実績・優先劣後比率・情報開示を確認した上で投資判断することが重要です。
余裕資金で投資し、複数の物件に分散することでリスクを軽減しながら、不動産投資に参加しましょう。
この記事は投資助言ではありません。個別具体的な投資判断は、専門家(ファイナンシャルプランナー、投資アドバイザー等)に相談することをおすすめします。
