不動産登記事項証明書とは?取得方法と見方を分かりやすく解説

公開日: 2025/10/26

登記事項証明書とは何か、なぜ必要か

不動産の売買・相続・融資の際、「登記事項証明書を取得してください」と言われることがあります。「登記簿謄本」という言葉の方が馴染みがあるかもしれませんが、2008年以降、全国の登記がコンピューター化され、現在は「登記事項証明書」と呼ばれています。

この記事では、登記事項証明書の種類、取得方法、証明書の見方を法務局の公式情報を元に解説します。不動産の権利関係を正しく理解し、安全な取引ができるようになります。

この記事のポイント

  • 登記事項証明書は不動産の所有者・権利関係を証明する公的書類
  • 全部事項証明書が最も一般的で、売買・相続で使用される
  • 取得方法は窓口・郵送・オンラインの3つ(オンラインが最も安く便利)
  • 証明書の見方は表題部・権利部甲区・権利部乙区の3つに分かれる
  • 登記情報提供サービスと異なり、法的証明力がある

登記事項証明書の種類と用途

登記事項証明書には、全部事項証明書、現在事項証明書、閉鎖事項証明書の3種類があります。法務局の公式サイトによると、それぞれ用途が異なります。

全部事項証明書(最も一般的)

全部事項証明書は、現在有効な登記内容と過去の抹消事項を含む最も一般的な証明書です。売買・相続・融資等で「登記事項証明書を取得してください」と言われた場合、通常はこの全部事項証明書を指します。

全部事項証明書には、現在の所有者だけでなく、過去に抹消された抵当権等の履歴も記載されるため、不動産の権利関係の変遷を確認できます。

現在事項証明書

現在事項証明書は、現在有効な登記事項のみ記載されます。過去の抹消された権利関係(元の抵当権等)は記載されません。

融資審査等で「現在の権利関係のみを確認したい」場合に使用されることがありますが、一般的には全部事項証明書の方が情報が豊富で使いやすいでしょう。

閉鎖事項証明書

閉鎖事項証明書は、建物滅失・土地合筆等で閉鎖された登記簿の証明書です。過去の履歴を調べる際に使用されます。例えば、建物を取り壊した後、過去の所有者を調べる必要がある場合等に取得します。

一般的な不動産取引では使用することは少ないですが、相続や境界確定等で過去の権利関係を調べる必要がある場合に役立ちます。

登記事項証明書の取得方法

登記事項証明書は、法務局窓口、郵送、オンラインの3つの方法で取得できます。法務局の公式サイトによると、それぞれ手数料・所要時間が異なります。

法務局窓口での取得(手数料600円)

全国の法務局で即日取得可能です。手数料は600円、所要時間は10-15分程度です。

必要なもの:

  • 地番・家屋番号(住所とは異なる場合が多い)
  • 手数料600円(収入印紙または現金)
  • 身分証は不要(不動産の登記情報は公開情報のため)

地番・家屋番号がわからない場合は、①固定資産税納税通知書で確認、②法務局でブルーマップ(住所と地番の対応図)を閲覧、③法務局の窓口で住所から地番を照会(電話照会も可)できます。

郵送請求での取得

申請書と収入印紙を郵送して取得する方法です。手数料は600円、所要時間は1週間程度です。

手順:

  1. 法務局の公式サイトから申請書をダウンロード
  2. 地番・家屋番号、請求者の住所・氏名を記載
  3. 収入印紙600円分を貼付
  4. 返信用封筒(切手貼付)を同封
  5. 不動産の所在地を管轄する法務局に郵送

郵送請求は時間がかかるため、急ぎの場合は窓口またはオンライン請求がおすすめです。

オンライン請求での取得(手数料480-520円、最も便利)

登記・供託オンライン申請システムを利用する方法です。手数料は郵送520円・窓口480円で、窓口・郵送より安く、最も便利です。利用時間は午後9時まで(土日祝は利用不可)です。

法務局の公式サイトによると、オンライン請求には「かんたん証明書請求」と「申請用総合ソフト」の2種類があります。初めての方は「かんたん証明書請求」が簡単です。

手順:

  1. 登記・供託オンライン申請システムにアクセス
  2. 「かんたん証明書請求」を選択
  3. 地番・家屋番号、請求者の住所・氏名を入力
  4. 手数料を電子納付(インターネットバンキング等)
  5. 郵送または窓口での受取りを選択

オンライン請求の場合、郵送で受け取る場合は手数料520円、窓口で受け取る場合は手数料480円です。窓口受取りの方が安く、即日受け取れるため、近くに法務局がある方におすすめです。

登記事項証明書の見方(表題部・権利部の記載内容)

登記事項証明書は、表題部・権利部甲区・権利部乙区の3つに分かれています。それぞれの記載内容を理解することで、不動産の権利関係を正しく確認できます。

表題部:土地・建物の基本情報

表題部には、土地・建物の基本情報が記載されています。

土地の表題部:

  • 所在(例:大阪府高槻市〇〇町)
  • 地番(例:123番4)
  • 地目(例:宅地、田、畑等)
  • 地積(例:100.00㎡)

建物の表題部:

  • 所在(例:大阪府高槻市〇〇町123番地4)
  • 家屋番号(例:123番4)
  • 種類(例:居宅、店舗、事務所等)
  • 構造(例:木造瓦葺2階建)
  • 床面積(例:1階50.00㎡、2階40.00㎡)

表題部は、不動産の物理的な情報を記載する部分で、土地家屋調査士が測量・調査を行います。

権利部甲区:所有権に関する事項

権利部甲区には、所有権に関する事項が記載されています。

記載内容:

  • 順位番号(登記された順番)
  • 登記の目的(例:所有権移転)
  • 受付年月日・受付番号
  • 原因(例:令和7年1月1日売買)
  • 所有者の住所・氏名

権利部甲区を見ることで、現在の所有者と過去の所有者の変遷を確認できます。売買・相続・贈与等の原因も記載されるため、不動産の取得経緯がわかります。

権利部乙区:抵当権等の権利

権利部乙区には、所有権以外の権利(抵当権・地上権・賃借権等)が記載されています。

記載内容:

  • 順位番号
  • 登記の目的(例:抵当権設定)
  • 受付年月日・受付番号
  • 原因(例:令和7年1月1日金銭消費貸借同日設定)
  • 抵当権者(例:〇〇銀行)
  • 債権額(例:金3000万円)

特に重要なのは抵当権の有無です。抵当権が設定されている不動産は、住宅ローンの担保になっているため、ローンを完済しないと抵当権を抹消できません。売買時には、売主がローンを完済して抵当権を抹消することが一般的です。

抵当権が残ったまま売買すると、買主が不利益を被る可能性があるため、売買契約前に権利部乙区を必ず確認しましょう。

登記情報提供サービスとの違いと注意点

登記事項証明書と似たものに「登記情報提供サービス」があります。混同しやすいため、違いを理解しておきましょう。

登記情報提供サービスは法的証明力がない

登記情報提供サービスは、インターネットで登記情報を確認できる有料サービスです。1件335円で登記内容を確認できますが、法的証明力はありません

一方、登記事項証明書は、法務局が発行する公的書類で、法的証明力があります。売買契約、相続手続き、融資審査等には、登記事項証明書が必要です。

登記情報提供サービスは、事前に登記内容を確認したい場合(例:不動産を購入する前に抵当権の有無を確認)に便利ですが、公的手続きには使用できません。

不動産登記規則について

証明書の様式や手数料の額は、不動産登記規則(不動産登記法の施行規則)で規定されています。例えば、登記事項証明書の手数料(窓口600円、オンライン480-520円)は、不動産登記規則第247条で定められています。

不動産登記規則は法務省令のため、法改正により手数料や様式が変更される可能性があります。最新情報は法務局の公式サイトで確認しましょう。

まとめ:登記事項証明書を正しく取得・活用しよう

登記事項証明書は、不動産の所有者・権利関係を証明する重要な公的書類です。売買・相続・融資の際に必須となります。

取得方法は窓口・郵送・オンラインの3つがありますが、オンライン請求が最も安く(480-520円)、便利です。地番・家屋番号を事前に調べておきましょう。

証明書の見方は、表題部(土地・建物の基本情報)、権利部甲区(所有権)、権利部乙区(抵当権等)の3つに分かれています。特に権利部乙区の抵当権の有無は、売買時に重要な確認事項です。

登記情報提供サービスと異なり、登記事項証明書は法的証明力があるため、公的手続きには必ず登記事項証明書を使用しましょう。

法務局の登記・供託オンライン申請システムを活用し、安全で確実な不動産取引を進めてください。

よくある質問

Q1地番・家屋番号がわからない場合はどうすればいいですか?

A1①固定資産税納税通知書で確認、②法務局でブルーマップ(住所と地番の対応図)を閲覧、③法務局の窓口で住所から地番を照会可能(電話照会も可)です。住所(住居表示)と地番は異なる場合が多いため、事前確認が必須です。地番がわからないまま取得しようとすると、誤った不動産の証明書を取得してしまう可能性があります。

Q2登記情報提供サービスで取得した情報は公的手続きに使えますか?

A2使えません。登記情報提供サービスは登記内容を確認できますが、法的証明力がありません。売買契約、相続手続き、融資審査等には、法務局発行の登記事項証明書(公的書類)が必要です。登記情報提供サービスは事前確認用として利用し、公的手続きには必ず登記事項証明書を取得しましょう。

Q3他人の不動産の登記事項証明書を取得できますか?

A3取得可能です。不動産の登記情報は公開情報のため、地番・家屋番号がわかれば誰でも取得できます(身分証不要)。ただし、取得した情報を不正利用すると個人情報保護法違反のリスクがあるため、適切な目的(売買検討、相続調査等)で使用してください。不動産取引の安全性を確保するために、登記情報の公開が認められています。

Q4登記事項証明書の有効期限はありますか?

A4書類自体に有効期限はありませんが、金融機関や不動産取引では「発行から3ヶ月以内」を求められることが多いです。相続手続きでは「発行から6ヶ月以内」等、提出先により異なるため、事前に確認してください。登記内容は随時変更される可能性があるため、最新の情報を確認する意味で、古い証明書の使用が認められないケースがあります。