不動産価格の今後を左右する要因とは
不動産の購入や売却を検討する際、「今後、価格はどうなるのか」「買い時・売り時はいつか」と気になる方は少なくありません。
この記事では、不動産価格の将来予測は不確実性が高く断定的に予測できないこと、価格変動に影響する要因(金利、人口動態、建築費、需給バランス、経済情勢、政策)を、国土交通省や日本銀行の公式データを元に客観的に解説します。
公的データを理解することで、読者自身が今後の価格動向を見極める判断材料を得られるようになります。
この記事のポイント
- 不動産価格の将来予測は不確実性が高く、断定的に予測することは不可能
- 金利、人口動態、建築費、需給バランス、経済情勢、政策の6要因が価格に影響
- 上昇シナリオ(金利低水準継続、需要堅調)と下落シナリオ(金利上昇、人口減少加速)を両論併記
- 不動産価格は全国一律ではなく、エリア(都心部・地方都市・郊外)で大きく異なる
- 買い時・売り時は価格動向よりも、ライフプラン・資金計画・物件条件を優先すべき
- 本記事は2025年時点の情報を基に解説しています
不動産価格の現状と過去の変動
国土交通省の不動産価格指数を用いて、過去10-20年の価格変動を確認します。
2010年以降の不動産価格指数の推移
不動産価格指数は、2010年を基準(100)として、不動産価格の変動を指数化した統計です。住宅・マンション・土地別に動向を示しています。
主な動向(2010-2025年)
| 時期 | 価格動向 | 主な要因 | 
|---|---|---|
| 2010-2012年 | 低迷 | リーマンショック後の景気低迷、東日本大震災 | 
| 2013-2019年 | 回復・上昇 | 金融緩和、東京五輪需要、人口集中 | 
| 2020-2021年 | 一時停滞 | コロナ禍の不透明感 | 
| 2022-2025年 | 上昇継続 | 低金利継続、都市部需要堅調、建築費高騰 | 
(出典: 国土交通省 不動産価格指数)
リーマンショック・東日本大震災・コロナ禍での動き
過去の大きな外部要因が価格に与えた影響を振り返ります。
- リーマンショック(2008年): 金融危機により不動産価格が急落。2010年頃まで低迷が続く
- 東日本大震災(2011年): 一時的に取引が停滞したが、復興需要で建築費が上昇
- コロナ禍(2020年): 一時的に取引が減少したが、テレワーク普及で郊外需要が増加、低金利継続で都市部は堅調
2025年時点では、低金利環境が続き、都市部の需要は堅調に推移しています。
不動産価格に影響する6つの要因
不動産価格は、複数の要因が複雑に絡み合って変動します。以下の6つの要因を理解することで、今後の見通しを立てやすくなります。
金利:住宅ローン金利の動向
住宅ローンの借入金利が上昇すると、返済負担が増加し、不動産需要が減少する可能性があります。
2025年時点の状況
日本銀行の金融政策により、2025年時点では低金利環境が続いています。ただし、今後の政策変更により金利上昇の可能性もあります。
金利上昇の影響
- 金利1%上昇で、住宅ローン返済額は約10-15%増加(3,000万円・35年ローンの場合、住宅ローンシミュレーションツールによる試算)
- 返済負担増により需要が減少すれば、価格下落圧力となる
人口動態:人口減少・世帯数の変化
人口減少は住宅需要減少につながる可能性がありますが、エリアにより影響は異なります。
2025年時点の状況
総務省統計局によると、日本の総人口は減少傾向にありますが、東京都心部等の人口集中エリアは需要が堅調です。単身世帯・夫婦のみ世帯の増加により、世帯数は増加傾向にあるため、住宅需要が直ちに減少するわけではありません。
建築費:資材費・人件費の高騰
建築費が高騰すると、新築物件価格が上昇し、中古物件の相対的な魅力が高まる可能性があります。
2025年時点の状況
国土交通省の建築着工統計によると、資材費・人件費の高騰により建築費は高止まりしています。建築費高騰は新築価格の上昇要因となり、需要減少→価格下落の可能性もあります。
需給バランス:売り物件と買い手のバランス
供給(売り物件数)が需要(買い手数)を上回ると、価格下落圧力となります。
2025年時点の状況
公益財団法人不動産流通推進センターの市場動向によると、都市部では需要が供給を上回る状況が続いていますが、地方都市・郊外エリアでは空き家増加により供給過剰の傾向があります。
経済情勢:GDP・雇用情勢の影響
景気が悪化すると、所得減少・雇用不安により不動産需要が減少する可能性があります。
2025年時点の状況
日本経済は緩やかな回復基調にありますが、世界経済の不透明感もあり、今後の景気動向には注意が必要です。
政策:税制・金融政策・住宅政策
税制改正(住宅ローン控除、不動産取得税の軽減措置等)や金融政策(金利の上げ下げ)、住宅政策(補助金、規制緩和等)は不動産価格に大きな影響を与えます。
2025年時点の状況
住宅ローン控除の縮小や、金利の段階的な引き上げが議論されており、今後の政策変更に注意が必要です。
今後の見通し:上昇と下落の両シナリオ
今後の価格動向について、上昇シナリオと下落シナリオを両論併記します。どちらも確定的ではなく、複数の要因が複雑に絡み合うことを理解してください。
上昇シナリオ(金利低水準継続、需要堅調)
以下の条件が揃えば、価格上昇が続く可能性があります。
上昇要因
- 金利の低水準継続(日銀の緩和政策維持)
- 都市部への人口集中継続
- インバウンド需要回復(外国人による不動産購入)
- 建築費高騰による新築供給減少→中古物件への需要増
下落シナリオ(金利上昇、人口減少加速、建築費高止まり)
以下の条件が揃えば、価格下落に転じる可能性があります。
下落要因
- 日本銀行の金利引き上げ→返済負担増→需要減少
- 人口減少の加速→住宅需要減少
- 建築費高止まりによる新築価格高騰→需要減少
- 空き家増加による供給過剰(地方都市・郊外エリア)
- 景気悪化による所得減少・雇用不安
「今後下がる」可能性とそのシナリオ
サブキーワード「今後下がる」を考慮し、価格下落の可能性とそのシナリオを具体的に解説します。
下落の可能性が高まる条件
- 金利上昇による返済負担増→需要減少 - 金利1%上昇で、月々の返済額が約1.5万円増加(3,000万円・35年ローン)
- 返済負担増により、購入を見送る層が増加
 
- 人口減少による住宅需要減 - 総務省統計局によると、日本の総人口は減少傾向
- 特に地方都市・郊外エリアで人口減少の影響が大きい
 
- 建築費高止まりによる新築価格上昇→需要減 - 建築費高騰により新築価格が高止まりし、購入をあきらめる層が増加
 
- 空き家増加による供給過剰 - 地方都市・郊外エリアで空き家が増加し、供給>需要となれば価格下落圧力
 
ただし、「こうした条件が揃えば下落の可能性がある」という客観的な分析であり、断定的な予測ではありません。
エリア別の価格動向の違い
不動産価格は全国一律ではなく、エリアで大きく異なります。
エリア別の動向
| エリア | 価格動向 | 主な要因 | 
|---|---|---|
| 東京都心部 | 上昇傾向 | 人口集中、需要>供給、インバウンド需要 | 
| 地方主要都市 | 二極化 | 主要都市(札幌、福岡等)は上昇、その他は横ばい~下落 | 
| 郊外エリア | 下落リスク | 人口減少、空き家増加、需要<供給 | 
(参考: 国土交通省 地価公示)
東京都心部等の人口集中エリアは需要堅調で上昇傾向ですが、地方都市・郊外エリアは人口減少の影響を受けやすく下落リスクが高い点に注意してください。ご自身のエリアの詳細な動向は、国土交通省の地価公示で確認してください。
買い時・売り時の考え方
「今後の価格動向」を過度に気にしすぎるリスクを指摘します。
優先すべき判断基準
- ライフプラン(結婚、出産、転勤、子供の進学等)
- 資金計画(頭金、返済能力、緊急予備資金の確保)
- 物件条件(立地、間取り、築年数、周辺環境)
価格予測に基づく「今買わないと損」「今売らないと損」という判断は危険です。自分のライフプランと資金計画に合ったタイミングで判断することが重要です。
避けるべき判断
- ❌ 「価格が上がるから今すぐ買う」→ 無理な借入でローン破綻のリスク
- ❌ 「価格が下がるまで待つ」→ 機会を逃し、結果的に高値で購入(不動産業界では、タイミングより条件優先が推奨されています)
- ✅ 「自分のライフプランと資金計画を優先」→ 無理のない判断
まとめ:客観的なデータで自分の判断を
不動産価格の今後は不確実性が高く、断定的な予測は不可能です。金利、人口動態、建築費、需給バランス、経済情勢、政策の6要因が複雑に絡み合います。
上昇・下落の両シナリオを理解した上で、公的データ(不動産価格指数、金利動向、人口統計、地価公示等)を定期的にチェックし、自分のライフプランと資金計画を優先して判断することを推奨します。
次のアクションとして、①各公的機関の最新データを確認、②エリア別の価格動向を調査、③ライフプランと資金計画を整理、の3点から始めましょう。信頼できる不動産会社や金融機関に相談しながら、無理のない判断を行ってください。
