不動産の使用料等の支払調書とは
法人や個人事業主が家賃・地代を支払う際、「不動産の使用料等の支払調書」の提出が必要になる場合があります。しかし、「いつ提出が必要なのか」「どのように記載するのか」がわからず、困っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、不動産の使用料等の支払調書の提出義務、記載方法、提出期限、e-Taxでのオンライン提出方法を、国税庁の公式情報を元に解説します。
初めて支払調書を提出する方でも、必要な手続きを正確に理解できるようになります。
この記事のポイント
- 法人・個人事業主が年間15万円超の家賃・地代を支払った場合、翌年1月31日までに税務署へ提出義務あり
- 個人の居住用賃貸(事業用でない)は提出不要
- 記載事項は支払先の住所・氏名・マイナンバー、支払金額、支払期間、物件の所在地等
- e-Taxでのオンライン提出が推奨(24時間受付・即時受領確認)
不動産の使用料等の支払調書とは、所得税法第225条により、法人や個人事業主が年間15万円超の家賃・地代を支払った際に、税務署へ提出する法定調書です。税務署が不動産所得の申告状況を把握するために使用されます。
重要: 個人の居住用賃貸(事業用でない)は提出対象外です。あくまで事業用不動産の賃貸に限られます。
提出義務者と提出が必要な条件
不動産の使用料等の支払調書の提出義務は、以下の条件を満たす場合に発生します。
提出義務者
提出義務があるのは、以下の支払者です。
- 法人: 株式会社、合同会社、NPO法人等、全ての法人
- 個人事業主: 事業として不動産を賃借している場合(自宅兼事務所の場合、事業用部分のみ)
提出不要な人:
- 個人(事業を行っていない人)が居住用として借りた場合
- 会社員が自宅として借りた場合
提出が必要な支払額の基準
国税庁の規定により、提出が必要な支払額の基準は、年間15万円超です。
判定方法:
- 同一人への支払いを年間合計で判定
- 複数物件を同じ大家から借りている場合、合計額で判定
- 1月1日~12月31日の1年間の支払額で判定
例:
- 月額家賃13,000円 × 12ヶ月 = 156,000円 → 提出必要
- 月額家賃12,000円 × 12ヶ月 = 144,000円 → 提出不要
- 複数物件の合計が年間15万円超 → 提出必要
対象となる支払いの種類
提出対象となる支払いは、以下の通りです。
- 家賃: 事業用事務所・店舗等の賃料
- 地代: 土地を借りた場合の借地料
- 権利金: 借地権の設定時に支払った金額
- 更新料: 賃貸借契約の更新時に支払った金額
- 礼金: 契約時に支払った礼金(返還されないもの)
対象外:
- 敷金・保証金(返還されるもの)
- 光熱費・管理費(家賃に含まれない場合)
支払調書の記載事項と様式
不動産の使用料等の支払調書には、以下の項目を記載する必要があります。
記載が必要な項目
国税庁の様式に従って、以下の項目を記載します。
支払先に関する情報:
- 氏名または名称
- 住所または所在地
- マイナンバーまたは法人番号
支払いに関する情報:
- 支払金額(年間合計)
- 支払期間(例: 令和7年1月1日~令和7年12月31日)
- 物件の所在地
- 物件の種類(土地・建物)
- 細目(家賃・地代・権利金等)
マイナンバーの取扱い
番号法(マイナンバー法)により、2016年以降、支払調書にはマイナンバー(個人番号)または法人番号の記載が必須となりました。
取得方法:
- 支払先(大家・不動産会社)にマイナンバーの提供を依頼
- マイナンバーカードのコピー、または通知カード+本人確認書類のコピーを受領
マイナンバーを教えてもらえない場合:
- 支払先に依頼した経緯を記録
- 未記載のまま提出(提出義務は免除されない)
- 税務署から問い合わせがあった場合、経緯を説明
注意: マイナンバーは個人情報保護法上、厳重に管理する必要があります。取得・保管・廃棄のルールを守りましょう。
消費税の記載方法
消費税の記載方法は、税込・税抜を区別して記載します。
住宅家賃(居住用):
- 非課税のため、消費税の記載不要
事業用家賃(事務所・店舗等):
- 課税対象のため、税込金額を記載
- 「うち消費税額等」欄に消費税額を記載
例(月額家賃11万円+消費税1万円の場合):
- 支払金額: 1,440,000円(年間合計、税込)
- うち消費税額等: 120,000円
提出期限と提出方法
不動産の使用料等の支払調書の提出期限と提出方法を解説します。
提出期限
提出期限は、支払った年の翌年1月31日です。
例(2025年時点):
- 令和7年(2025年)1月~12月の支払い → 令和8年(2026年)1月31日までに提出
- 令和6年(2024年)1月~12月の支払い → 令和7年(2025年)1月31日までに提出
注意: 1月31日が土日祝日の場合は、翌営業日が期限となります。
e-Taxでのオンライン提出
e-Taxでのオンライン提出が推奨されています。書面提出と比べて多くのメリットがあります。
メリット:
- 24時間受付(期限日の深夜でも提出可能)
- 即時受領確認(提出完了のメッセージが即座に表示)
- 郵送コスト不要
- 過去データの再利用可能(翌年の提出時に前年データをコピー)
- 大量提出時は一括送信も可能
利用方法:
- e-Taxの利用者識別番号を取得(初回のみ)
- e-Taxソフト、またはe-Tax対応会計ソフトをインストール
- 支払調書データを作成
- マイナンバーカード、または電子証明書で電子署名
- e-Taxで送信
- 受領確認メッセージを確認
注意: 大量の支払調書を提出する場合(100件以上等)は、CSV形式での一括送信が効率的です。
書面での提出
書面で提出する場合は、管轄税務署へ郵送または持参します。
利用方法:
- 国税庁の公式サイトから様式をダウンロード
- 支払調書を記入(手書きまたはPC入力)
- 管轄税務署を確認
- 郵送または窓口へ持参
注意: 郵送の場合、1月31日の消印有効です。余裕を持って郵送しましょう。
不提出・虚偽記載のリスクと罰則
不動産の使用料等の支払調書を提出しなかった場合、または虚偽の記載をした場合のリスクを解説します。
罰則の内容
所得税法第242条により、以下の罰則が定められています。
- 1年以下の懲役または50万円以下の罰金
実際に刑事罰が科されるケースは稀ですが、悪質な場合(故意の不提出、虚偽記載等)は罰則の対象となります。
税務調査での指摘
税務調査で支払調書の不提出が発覚した場合、以下のリスクがあります。
支払者側(あなた)のリスク:
- 支払調書の期限後提出を求められる
- 不提出の理由を説明する必要がある
- 悪質な場合、前述の罰則の対象となる可能性
支払先(大家)側のリスク:
- 税務署が支払先の不動産所得の申告状況を確認
- 申告漏れがあれば、追徴課税の対象となる可能性
提出漏れの対処法
提出期限を過ぎてから提出漏れに気づいた場合でも、速やかに提出することが重要です。
対処法:
- 速やかに支払調書を作成
- 管轄税務署へ提出(e-Tax、または書面)
- 必要に応じて、提出が遅れた理由を説明
注意: 期限後提出でも、提出しないよりは遥かに良いです。提出漏れに気づいたら、すぐに対応しましょう。
まとめ
不動産の使用料等の支払調書は、法人・個人事業主が年間15万円超の家賃・地代を支払った場合、翌年1月31日までに税務署へ提出する義務があります。個人の居住用賃貸(事業用でない)は提出不要です。
記載事項は、支払先の住所・氏名・マイナンバー、支払金額、支払期間、物件の所在地等です。2016年以降、マイナンバーの記載が必須となっています。
e-Taxでのオンライン提出が推奨されており、24時間受付・即時受領確認・郵送コスト不要等のメリットがあります。不提出・虚偽記載は所得税法違反で罰則の対象となるため、必ず期限内に提出しましょう。不明点がある場合は、税理士や税務署に相談することをおすすめします。
