不動産の競売とは?仕組みとリスク、購入時の注意点を徹底解説

公開日: 2025/10/27

不動産の競売とは?通常の売買との違いを知る

「競売物件は安く買える」と聞いたことがある方は多いでしょう。しかし、競売の仕組みやリスクを理解せずに購入すると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。

この記事では、不動産競売の仕組み、通常の不動産取引との違い、メリット・リスクを、裁判所法務省の公式情報を元に解説します。

初めて競売物件を検討する方でも、リスクを把握し、慎重に判断できる情報を提供します。

この記事のポイント

  • 不動産競売は、債務者が返済できない場合に裁判所が不動産を強制的に売却する手続き(民事執行法に基づく)
  • 流れは6ステップ:債権者申立→差押→現況調査→入札公告→開札→所有権移転
  • 通常の不動産取引と異なり、重要事項説明なし・内覧不可・瑕疵担保責任なし・占有者が残る場合あり
  • メリットは市場価格の7-8割で購入可能、リスクは占有者の立退き問題・瑕疵リスク・手続きの複雑さ
  • 初心者は現況調査報告書(三点セット)を熟読し、不動産競売専門業者のサポート推奨

不動産の競売とは?民事執行法に基づく強制売却

不動産競売は、債務者が住宅ローン等を返済できなくなった場合、債権者(銀行等)が裁判所に申し立て、担保不動産を強制的に売却して債権を回収する手続きです。

民事執行法に基づく手続きで、以下の2種類があります。

  • 強制競売: 債権者が裁判所に申し立てて債務者の不動産を強制的に売却する手続き
  • 担保不動産競売: 抵当権等の担保権を実行して不動産を売却する手続き(住宅ローン滞納時が典型)

多くの場合、住宅ローンを滞納した債務者の不動産が「担保不動産競売」にかけられます。

競売の流れ|債権者申立から所有権移転まで

競売の流れは6ステップに分かれます。時系列で整理すると以下の通りです。

①債権者が競売申立

債権者(銀行等)が裁判所に競売を申し立てます。債務者が住宅ローンを数ヶ月滞納すると、債権者は期限の利益喪失を通知し、残債の一括返済を求めます。それでも返済されない場合、競売申立が行われます。

②裁判所が不動産を差押

裁判所が競売開始決定を出し、不動産を差押えます。差押後、債務者は不動産を売却できなくなります。

③現況調査・評価(三点セット作成)

裁判所は現況調査を行い、以下の「三点セット」を作成します。

  • 現況調査報告書: 建物の状態、占有者の有無等
  • 評価書: 不動産の評価額
  • 物件明細書: 権利関係(抵当権、賃借権等)

三点セットはBIT(不動産競売物件情報サイト)で公開され、誰でも閲覧できます。

④入札公告(BITで物件情報公開)

裁判所が入札公告を行い、BITで物件情報を公開します。入札期間は通常8日間です。

⑤期間入札(通常8日間)・開札

入札期間中に入札書を提出し、開札日に最高価買受人(最も高い金額を入札した人)が決定されます。

⑥最高価買受人決定・代金納付・所有権移転

最高価買受人は代金を納付し、所有権移転登記が行われます。これで競売手続きが完了し、落札者が新しい所有者となります。

通常の不動産取引との違い|重要事項説明なし・内覧不可

競売物件は通常の不動産取引と大きく異なります。以下の4つの違いを理解してください。

重要事項説明なし(宅建業法適用外)

競売物件は宅建業法の適用外のため、重要事項説明がありません。通常の不動産取引では宅地建物取引士が物件の状態や権利関係を説明しますが、競売では自分で三点セットを読み解く必要があります。

内覧不可(現況調査報告書のみ)

競売物件は基本的に内覧不可です。建物の内部は見られず、現況調査報告書(三点セット)で建物の状態を確認するのみです。想定外の瑕疵・劣化リスクがあります。

瑕疵担保責任なし(現状有姿)

競売物件は「現状有姿」での売買のため、瑕疵担保責任がありません。落札後に雨漏りやシロアリ被害が見つかっても、売主(裁判所)に修繕を求めることはできません。

占有者が残る場合あり(立退き交渉必要)

競売物件には占有者(元所有者、賃借人等)が残る場合があります。占有者が退去しない場合、落札者は裁判所に引渡命令を申し立て、強制執行で退去させる必要があります。立退き交渉や法的手続きには時間・費用がかかります。

項目 通常の不動産取引 競売物件
重要事項説明 あり なし
内覧 可能 不可(現況調査報告書のみ)
瑕疵担保責任 あり なし(現状有姿)
占有者 引渡時に退去済み 残る場合あり(立退き交渉必要)

競売物件のメリットとリスク|市場価格の7-8割vs占有者トラブル

競売物件にはメリットとリスクの両面があります。公平に比較しましょう。

メリット:市場価格の7-8割で購入可能

競売物件の最大のメリットは、市場価格の7-8割で購入できる点です。例えば、市場価格3000万円の物件を2100-2400万円で落札できる可能性があります。

ただし、後述のリスクを考慮すると、結果的に割高になる場合もあります。

リスク①:占有者の立退き問題(引渡命令、強制執行)

占有者(元所有者、賃借人等)が残る場合、立退き交渉が必要です。交渉が難航すると、裁判所に引渡命令を申し立て、強制執行で退去させる必要があります。

立退き費用(引越費用の補助、立退き料等)や強制執行費用(数十万円)が発生する可能性があります。

リスク②:瑕疵・劣化リスク(内覧不可、修繕費用不明)

内覧不可のため、建物の内部状態が分からず、落札後に雨漏り・シロアリ被害・配管劣化等が見つかるリスクがあります。修繕費用が数百万円に達する場合もあります。

修繕費用を多めに見積もり、総コストを計算してください。

リスク③:手続きの複雑さ(法的知識必要)

競売の手続きは複雑で、法的知識が必要です。三点セットを読み解く、入札書を作成する、代金を納付する等の手続きを自分で行う必要があります。

初心者は不動産競売専門業者のサポートを受けることを推奨します。

競売物件購入時の注意点|三点セット熟読と専門業者サポート

競売物件を購入する際は、以下の4つの注意点を守ってください。

①現況調査報告書(三点セット)を熟読

三点セット(現況調査報告書・評価書・物件明細書)はBITで公開されています。特に現況調査報告書は、建物の状態・占有者の有無を確認する重要な資料です。

②登記簿で権利関係確認(抵当権、賃借権等)

登記簿で抵当権、賃借権等の権利関係を確認してください。競売で消滅する権利と残る権利があります。例えば、競売により抵当権は消滅しますが、賃借権は残る場合があります。

③占有者の有無確認(立退き交渉の必要性判断)

現況調査報告書で占有者の有無を確認し、立退き交渉が必要かどうか判断してください。占有者がいる場合、立退き費用を見積もる必要があります。

④修繕費用の見積もり(内覧不可のため想定外の費用発生リスク)

内覧不可のため、修繕費用を多めに見積もってください。雨漏り・シロアリ被害・配管劣化等が見つかる可能性を考慮し、総コストを計算してください。

初心者は不動産競売専門業者のサポートを受けることで、リスクを減らすことができます。

まとめ|競売の仕組みとリスクを理解し、慎重に判断を

不動産競売は、民事執行法に基づく強制売却手続きで、流れは6ステップ(債権者申立→差押→現況調査→入札公告→開札→所有権移転)です。

通常の不動産取引と異なる4つの点(重要事項説明なし、内覧不可、瑕疵担保責任なし、占有者が残る場合あり)を理解してください。

メリット(市場価格の7-8割)とリスク(占有者トラブル、瑕疵リスク、手続きの複雑さ)を対比し、総コストを計算して判断することが重要です。

初心者は三点セットを熟読し、不動産競売専門業者のサポートを受けることをおすすめします。

まずはBITで物件情報を確認し、専門業者に相談してみましょう。

よくある質問

Q1競売物件は本当に安い?

A1市場価格の7-8割で購入可能ですが、占有者の立退き費用や修繕費用が発生する場合があり、結果的に割高になるリスクもあります。例えば、市場価格3000万円の物件を2400万円で落札しても、立退き費用100万円+修繕費用300万円が発生すると、総コスト2800万円となり、市場価格とほぼ同じになります。三点セット(現況調査報告書・評価書・物件明細書)を熟読し、総コストを見積もることが重要です。

Q2占有者がいたらどうする?

A2落札後、占有者が退去しない場合は、裁判所に引渡命令を申し立て、強制執行で退去させます。立退き交渉や法的手続きには時間・費用がかかるため、専門業者のサポート推奨です。引渡命令は競売で落札した場合に裁判所が発令する強制退去命令で、強制執行により占有者を強制的に退去させることができます。立退き費用(引越費用の補助、立退き料等)や強制執行費用(数十万円)が発生する可能性があります。

Q3競売物件の内覧はできる?

A3基本的に内覧不可です。現況調査報告書(三点セット)で建物の状態を確認するのみです。想定外の瑕疵・劣化リスクがあるため、修繕費用を多めに見積もる必要があります。例えば、現況調査報告書で「雨漏りの痕跡なし」と記載されていても、実際には雨漏りが発生している場合があります。落札後に雨漏り・シロアリ被害・配管劣化等が見つかっても、瑕疵担保責任がないため、売主(裁判所)に修繕を求めることはできません。

Q42024年競売物件数が増えた理由は?

A42024年15年ぶりに増加(11,415件)しました。COVID-19ゼロゼロ融資の返済開始が背景です。住宅ローン返済困難者の増加により、競売申立が増えました。ゼロゼロ融資は2020年にCOVID-19の影響を受けた企業向けに実施された無利子・無担保の融資で、2023年から返済が本格化しました。返済が困難になった債務者が増加し、競売物件数が増加した要因となっています。