固定資産税は障害者なら免除?減免制度の要件と申請方法

公開日: 2025/10/26

固定資産税の障害者向け減免制度とは

障害者手帳をお持ちの方やそのご家族の中には、「固定資産税が免除されると聞いたけど本当?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、固定資産税の障害者向け減免制度の有無、要件、申請方法を、総務省等の公的機関の情報を元に解説します。

障害者向けの減免制度は市区町村により異なるため、まずはお住まいの市区町村の制度を確認することが重要です。

この記事のポイント

  • 固定資産税の減免制度は市区町村条例で定められ、全国一律ではない
  • 障害者向けの減免がある自治体とない自治体が存在する
  • 減免がある自治体の要件は、障害等級・年齢・所得制限・居住用不動産の4点が一般的
  • 減免額は全額免除・50%減免・一定額控除等、自治体により異なる
  • 減免制度がない場合も、所得税・住民税の障害者控除は全国共通で受けられる

法的根拠と自治体の裁量

固定資産税の減免制度は、地方税法第367条に基づき市区町村条例で定められます。

全国一律ではなく市区町村ごとに異なる制度

総務省の説明によると、固定資産税の減免制度は市町村長の裁量により実施されるため、国の統一制度ではありません

重要なポイント:

  • 障害者向けの減免制度がある自治体とない自治体が存在
  • 要件・減免額も自治体により大きく異なる
  • まずはお住まいの市区町村の公式サイト・資産税課に確認が必要

「障害者なら必ず固定資産税が免除される」という認識は誤りです。自分の市区町村の制度を確認しましょう。

減免制度がある自治体の要件と減免額

減免制度を実施している自治体の具体例と要件を紹介します。

大阪市のケース(2分の1減免)

大阪市では、以下の要件を満たす場合に固定資産税・都市計画税が2分の1減免されます。

要件項目 内容
年齢 65歳以上
障害等級 特別障がい者(身体障害者手帳1級・2級等)
延床面積 70㎡以下
所得制限 住民税非課税

(出典: 大阪市

佐倉市のケース(令和7年度末で廃止)

佐倉市では、障害等級1級・2級、65歳以上、市民税非課税、居住用不動産のみ所有という要件で減免が実施されていましたが、令和7年度末で廃止予定です。

このように、制度が変更・廃止される可能性もあるため、最新情報の確認が重要です。

共通する要件の傾向

多くの自治体で共通する要件は以下の4点です。

  • 障害等級: 特別障害者(1級・2級)が対象となるケースが多い
  • 年齢: 65歳以上という年齢制限がある場合が多い
  • 所得制限: 住民税非課税世帯が要件となる場合が多い
  • 対象不動産: 居住用不動産のみが対象(投資用不動産は対象外)

減免制度がない自治体

一方で、障害者向けの減免制度を実施していない自治体も存在します。

神戸市・倉敷市のケース

神戸市は公式FAQで「障がい者等の方に対しての減免規定はありません」と明記しています。

減免制度がない自治体でも、以下の代替措置を検討できます。

  • 生活保護受給者の全額免除: 生活保護法に基づき生活保護を受けている場合、多くの自治体で固定資産税が全額免除
  • 住宅改修助成金: バリアフリー改修等に対する助成金制度
  • 障害福祉サービス: 住宅に関するその他の支援制度

低所得者向けの減免制度

障害者向けの減免とは別に、低所得者向けの減免制度を実施している自治体もあります。

生活保護受給者の全額免除

生活保護法に基づき生活保護を受けている場合、多くの自治体で固定資産税が全額免除されます。これは全国的に共通する措置です。

非課税世帯の減免

住民税非課税世帯が所得要件として使用されるケースが多く、以下の属性が対象となる傾向があります。

  • 障害者
  • 65歳以上の高齢者
  • 寡婦・ひとり親

ただし、これらも市区町村により要件が異なるため、個別に確認が必要です。

申請方法と注意点

減免制度がある自治体での申請方法を説明します。

必要書類と提出先

一般的に以下の書類が必要です。

  • 障害者手帳の写し
  • 住民税課税証明書(非課税証明書)
  • 固定資産税納税通知書
  • 印鑑

提出先は市区町村の資産税課・税務課です。申請期限は納期限前、または自治体が指定する期限となります。

申請期限と審査の流れ

申請から審査完了まで数週間かかる場合があります。納期限までに申請しないと、その年度の減免が受けられない可能性があるため、早めの申請をおすすめします。

制度変更の可能性

佐倉市の例のように、減免制度が廃止される可能性もあります。執筆時点(2025年)の最新情報を市区町村の公式サイト・資産税課への問い合わせで確認しましょう。

固定資産税以外の税制優遇

固定資産税の減免は自治体により異なりますが、所得税・住民税の障害者控除は全国共通です。

所得税・住民税の障害者控除

国税庁によると、障害者控除は以下の通りです。

区分 所得税控除額 住民税控除額
障害者 27万円 26万円
特別障害者 40万円 30万円
同居特別障害者 75万円 53万円

(出典: 国税庁

固定資産税の減免がない自治体でも、所得税・住民税では確実に控除を受けられます。

まとめ:まずはお住まいの市区町村に確認を

固定資産税の障害者向け減免制度は市区町村により有無・要件・減免額が異なります。「障害者なら必ず免除される」という誤った認識を避け、自分の市区町村の制度を確認することが重要です。

減免制度がない場合でも、所得税・住民税の障害者控除、生活保護、住宅改修助成金等の代替措置を検討できます。

最新情報は市区町村の公式サイト・資産税課への問い合わせで確認し、自分に適用される制度を正しく理解しましょう。

よくある質問

Q1障害者手帳を持っていれば全国どこでも固定資産税が免除されますか?

A1いいえ、全国一律ではありません。固定資産税の減免制度は市区町村条例で定められるため、自治体により有無・要件が異なります。障害者向けの減免制度がある自治体(大阪市、佐倉市等)とない自治体(神戸市等)が存在します。まずはお住まいの市区町村の公式サイトまたは資産税課に確認してください。

Q2賃貸住宅に住んでいますが、障害者向けの固定資産税減免を受けられますか?

A2固定資産税は不動産の所有者(大家)に課税されるため、賃借人は対象外です。賃貸住宅に住んでいる場合は固定資産税の減免を受けられません。ただし、所得税・住民税の障害者控除(障害者控除27万円、特別障害者控除40万円)は賃貸でも受けられますので、確定申告または年末調整で申告してください。

Q3減免制度は毎年申請が必要ですか?

A3自治体により異なります。初回のみ申請すれば継続して適用される場合と、毎年申請が必要な場合があります。大阪市や佐倉市等、多くの自治体では初回申請後は自動継続されますが、所得制限の確認等で毎年書類提出を求められることもあります。詳細はお住まいの市区町村の資産税課に確認してください。

Q4精神障害者保健福祉手帳でも減免対象になりますか?

A4自治体により異なります。身体障害者手帳のみ対象とする自治体もあれば、精神障害者保健福祉手帳・療育手帳も対象とする自治体もあります。大阪市は「特別障がい者」として精神障害者保健福祉手帳1級も対象に含めています。お住まいの市区町村の要件を確認し、対象となる障害者手帳の種類を確かめましょう。