固定資産税の障害者向け減免制度とは
障害者手帳をお持ちの方やそのご家族の中には、「固定資産税が免除されると聞いたけど本当?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、固定資産税の障害者向け減免制度の有無、要件、申請方法を、総務省等の公的機関の情報を元に解説します。
障害者向けの減免制度は市区町村により異なるため、まずはお住まいの市区町村の制度を確認することが重要です。
この記事のポイント
- 固定資産税の減免制度は市区町村条例で定められ、全国一律ではない
- 障害者向けの減免がある自治体とない自治体が存在する
- 減免がある自治体の要件は、障害等級・年齢・所得制限・居住用不動産の4点が一般的
- 減免額は全額免除・50%減免・一定額控除等、自治体により異なる
- 減免制度がない場合も、所得税・住民税の障害者控除は全国共通で受けられる
法的根拠と自治体の裁量
固定資産税の減免制度は、地方税法第367条に基づき市区町村条例で定められます。
全国一律ではなく市区町村ごとに異なる制度
総務省の説明によると、固定資産税の減免制度は市町村長の裁量により実施されるため、国の統一制度ではありません。
重要なポイント:
- 障害者向けの減免制度がある自治体とない自治体が存在
- 要件・減免額も自治体により大きく異なる
- まずはお住まいの市区町村の公式サイト・資産税課に確認が必要
「障害者なら必ず固定資産税が免除される」という認識は誤りです。自分の市区町村の制度を確認しましょう。
減免制度がある自治体の要件と減免額
減免制度を実施している自治体の具体例と要件を紹介します。
大阪市のケース(2分の1減免)
大阪市では、以下の要件を満たす場合に固定資産税・都市計画税が2分の1減免されます。
| 要件項目 | 内容 | 
|---|---|
| 年齢 | 65歳以上 | 
| 障害等級 | 特別障がい者(身体障害者手帳1級・2級等) | 
| 延床面積 | 70㎡以下 | 
| 所得制限 | 住民税非課税 | 
(出典: 大阪市)
佐倉市のケース(令和7年度末で廃止)
佐倉市では、障害等級1級・2級、65歳以上、市民税非課税、居住用不動産のみ所有という要件で減免が実施されていましたが、令和7年度末で廃止予定です。
このように、制度が変更・廃止される可能性もあるため、最新情報の確認が重要です。
共通する要件の傾向
多くの自治体で共通する要件は以下の4点です。
- 障害等級: 特別障害者(1級・2級)が対象となるケースが多い
- 年齢: 65歳以上という年齢制限がある場合が多い
- 所得制限: 住民税非課税世帯が要件となる場合が多い
- 対象不動産: 居住用不動産のみが対象(投資用不動産は対象外)
減免制度がない自治体
一方で、障害者向けの減免制度を実施していない自治体も存在します。
神戸市・倉敷市のケース
神戸市は公式FAQで「障がい者等の方に対しての減免規定はありません」と明記しています。
減免制度がない自治体でも、以下の代替措置を検討できます。
- 生活保護受給者の全額免除: 生活保護法に基づき生活保護を受けている場合、多くの自治体で固定資産税が全額免除
- 住宅改修助成金: バリアフリー改修等に対する助成金制度
- 障害福祉サービス: 住宅に関するその他の支援制度
低所得者向けの減免制度
障害者向けの減免とは別に、低所得者向けの減免制度を実施している自治体もあります。
生活保護受給者の全額免除
生活保護法に基づき生活保護を受けている場合、多くの自治体で固定資産税が全額免除されます。これは全国的に共通する措置です。
非課税世帯の減免
住民税非課税世帯が所得要件として使用されるケースが多く、以下の属性が対象となる傾向があります。
- 障害者
- 65歳以上の高齢者
- 寡婦・ひとり親
ただし、これらも市区町村により要件が異なるため、個別に確認が必要です。
申請方法と注意点
減免制度がある自治体での申請方法を説明します。
必要書類と提出先
一般的に以下の書類が必要です。
- 障害者手帳の写し
- 住民税課税証明書(非課税証明書)
- 固定資産税納税通知書
- 印鑑
提出先は市区町村の資産税課・税務課です。申請期限は納期限前、または自治体が指定する期限となります。
申請期限と審査の流れ
申請から審査完了まで数週間かかる場合があります。納期限までに申請しないと、その年度の減免が受けられない可能性があるため、早めの申請をおすすめします。
制度変更の可能性
佐倉市の例のように、減免制度が廃止される可能性もあります。執筆時点(2025年)の最新情報を市区町村の公式サイト・資産税課への問い合わせで確認しましょう。
固定資産税以外の税制優遇
固定資産税の減免は自治体により異なりますが、所得税・住民税の障害者控除は全国共通です。
所得税・住民税の障害者控除
国税庁によると、障害者控除は以下の通りです。
| 区分 | 所得税控除額 | 住民税控除額 | 
|---|---|---|
| 障害者 | 27万円 | 26万円 | 
| 特別障害者 | 40万円 | 30万円 | 
| 同居特別障害者 | 75万円 | 53万円 | 
(出典: 国税庁)
固定資産税の減免がない自治体でも、所得税・住民税では確実に控除を受けられます。
まとめ:まずはお住まいの市区町村に確認を
固定資産税の障害者向け減免制度は市区町村により有無・要件・減免額が異なります。「障害者なら必ず免除される」という誤った認識を避け、自分の市区町村の制度を確認することが重要です。
減免制度がない場合でも、所得税・住民税の障害者控除、生活保護、住宅改修助成金等の代替措置を検討できます。
最新情報は市区町村の公式サイト・資産税課への問い合わせで確認し、自分に適用される制度を正しく理解しましょう。
