個人再生後に住宅ローンは組める?
過去に個人再生を経験した方が住宅購入を検討する際、「個人再生後でも住宅ローンは組めるのか」「何年待つべきか」と不安に感じることは自然なことです。
この記事では、個人再生が住宅ローン審査に与える影響、信用情報の記録期間、審査通過のための具体的な対策を、金融庁・日本信用情報機構(JICC)の公式情報を元に解説します。現実的な見通しを持って住宅購入の計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- 個人再生の記録は信用情報機関にJICC:5年、KSC:7年残り、その間は住宅ローン審査がほぼ通らない
- 記録削除後も慎重な審査が予想され、過去の債権者は「社内ブラック」として独自に記録を保持する可能性がある
- 審査通過のための対策: ①記録期間の経過を待つ、②頭金を増額、③安定収入の証明、④信用情報の開示請求で記録削除を確認
- 配偶者名義での住宅ローンも選択肢だが、配偶者の返済能力を慎重に検討する必要がある
個人再生とは
個人再生は民事再生法に基づく債務整理手続きです。
個人再生の要件と手続き
裁判所によると、個人再生は以下の要件を満たす者が利用できます。
- 将来継続的な収入見込みがあること
- 無担保債務が5,000万円以下であること
債務を大幅に減額(原則1/5)し、3-5年で分割返済する制度です。
住宅ローン特則(住宅資金特別条項)
個人再生には「住宅ローン特則」があり、住宅ローンを債務整理の対象から除外し、住宅を維持しながら他の債務を整理できます。
ただし、この制度は「現在住宅ローンを返済中で住宅を維持したい場合」に使われるものであり、「個人再生後に新たに住宅ローンを組む」こととは異なります。
個人再生が住宅ローン審査に与える影響
個人再生を行うと、信用情報機関に事故情報として記録されます。
信用情報機関とは
信用情報機関は貸金業法・割賦販売法に基づき、個人の借入・返済履歴を管理する機関です。日本には以下の3機関があります。
| 機関 | 主な加盟業者 | 個人再生の記録期間 |
|---|---|---|
| CIC | クレジットカード会社 | 支払遅延のみ記録(5年) |
| JICC | 消費者金融 | 5年 |
| KSC(全国銀行個人信用情報センター) | 銀行 | 7年(2022年11月に10年→7年に短縮) |
3機関はCRIN(信用情報交流ネットワーク)で情報共有しています。
(出典: 金融庁)
信用情報の記録期間
個人再生の記録期間は機関により異なります。
- JICC: 5年
- KSC: 7年(2022年11月に10年→7年に短縮、2025年時点の最新情報)
- CIC: 支払遅延のみ記録(5年)
住宅ローンは主に銀行が扱うため、KSCの記録期間(7年)が最も重要です。
記録期間中の住宅ローン審査
信用情報に個人再生の記録がある間は、住宅ローン審査がほぼ通りません。
金融機関は融資審査時に必ず信用情報を照会し、事故情報がある場合は「返済能力に問題がある」と判断します。
審査通過のための対策
個人再生後に住宅ローンを組むための具体的な対策を解説します。
具体的な対策方法
①記録期間の経過を待つ
最も確実な方法は、信用情報の記録が削除されるまで待つことです。
- JICC: 5年
- KSC: 7年
最低でも7年間は待つ必要があります。
②頭金を増額する
頭金を多く用意することで、金融機関の貸付リスクを下げ、審査通過の可能性を高められます。
- 一般的な頭金: 物件価格の10-20%
- 個人再生後の推奨頭金: 物件価格の30%以上
③安定収入の証明
個人再生後の収入状況を証明することで、「返済能力が回復している」ことを示せます。
- 源泉徴収票・確定申告書(直近3年分)
- 勤続年数(3年以上が望ましい)
- 年収の安定性(昇給傾向)
④信用情報の開示請求で記録削除を確認
住宅ローン申請前に、信用情報の開示請求を行い、記録が削除されていることを確認しましょう。
開示請求の方法:
記録削除を確認せず申請すると、審査落ちの履歴が残り、さらに審査が不利になるリスクがあります。
過去の債権者を避ける理由
信用情報機関の記録が削除されても、過去に個人再生で債権放棄を受けた金融機関は「社内ブラック」として独自に記録を保持する可能性があります。
審査で不利になるリスクがあるため、過去の債権者とは異なる金融機関に申請することをおすすめします。
(出典: 債務整理後5年は住宅ローンを組めない!審査に出すときの注意点は?)
よくある質問
個人再生後の住宅ローンに関するよくある質問に回答します。
記録削除後の審査について
信用情報の記録が削除されても、審査は慎重に行われます。
- 勤続年数・年収の安定性を重視される
- 頭金の額が審査に影響する
- 他の借入(自動車ローン、クレジットカード等)の有無を確認される
「記録削除=確実に審査通過」ではないことを理解しておきましょう。
配偶者名義での住宅ローン
配偶者に安定収入と良好な信用状態があれば、配偶者名義で住宅ローンを組むことも選択肢です。
ただし、以下の点を慎重に検討する必要があります。
- 配偶者の返済能力(年収・勤続年数)
- 配偶者単独での借入可能額
- 離婚時の財産分与リスク
安易な判断は避け、金融機関や専門家(ファイナンシャルプランナー、弁護士等)に相談することをおすすめします。
まとめ:個人再生後の住宅ローンは現実的な計画が重要
個人再生の記録は信用情報機関にJICC:5年、KSC:7年残り、その間は住宅ローン審査がほぼ通りません。最低でも7年間は待つ必要があります。
記録削除後も慎重な審査が予想されるため、①頭金を増額、②安定収入の証明、③過去の債権者を避ける、④信用情報の開示請求で記録削除を確認、といった対策が重要です。
配偶者名義での住宅ローンも選択肢ですが、配偶者の返済能力を慎重に検討する必要があります。信頼できる金融機関や専門家に相談しながら、現実的な計画を立てましょう。
