頭金なしで住宅ローンは組める?
住宅購入を検討する際、「頭金を用意できないけれど住宅ローンは組めるのか」「頭金なしのリスクは何か」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、頭金なしで住宅ローンを組む方法、メリット・デメリット、審査のポイント、リスク対策を、住宅金融支援機構などの公式情報を元に解説します。
頭金なしで住宅ローンを検討している方が、リスクを理解し、自分に合った資金計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- 頭金なし(フルローン)で住宅ローンは組めるが、審査が厳しく金利が高くなる傾向がある
- 頭金なしのメリットは早期購入可能・手元資金温存、デメリットは借入額増加・総返済額増加・審査厳格化
- 審査では年収・勤続年数・信用情報が重視され、物件価格の100%以上を借りる場合は諸費用ローンが必要
- リスク対策として、返済比率25%以下を目安に、繰上返済や金利上昇リスクへの備えが重要
頭金なしで住宅ローンは組めるのか
結論から言うと、頭金なし(フルローン)で住宅ローンは組めます。ただし、頭金ありの場合と比較して、審査が厳しくなり、金利が高くなる傾向があります。
フルローンとは
フルローンとは、物件価格の100%を住宅ローンで借り入れることを指します。従来は物件価格の80-90%を借り入れ、残りを頭金で支払うのが一般的でしたが、近年は頭金なしでも借り入れできる金融機関が増えています。
諸費用ローンとは
さらに、物件価格の100%以上を借りる「諸費用ローン」もあります。これは、物件価格に加えて、諸費用(登記費用・不動産取得税・火災保険料等)も含めて借り入れる方法です。
諸費用ローンを利用すれば、自己資金ゼロで住宅購入が可能ですが、借入額が増えるため、審査が厳しく、金利も高くなります。
| ローン種類 | 借入額 | 審査難易度 | 金利 | 
|---|---|---|---|
| 通常ローン(頭金あり) | 物件価格の80-90% | 普通 | 低い | 
| フルローン | 物件価格の100% | やや厳しい | やや高い | 
| 諸費用ローン | 物件価格の105-110% | 厳しい | 高い | 
頭金なしのメリット・デメリット
頭金なしで住宅ローンを組むメリットとデメリットを理解し、自分の状況に合っているか判断しましょう。
メリット
1. 早期購入が可能
頭金を貯める期間が不要なため、早期に住宅を購入できます。賃貸の家賃を払い続けるよりも、早く自分の資産を持つことができます。
2. 手元資金を温存できる
頭金として現金を支払わないため、手元資金を温存できます。急な出費(教育費・医療費等)に備えられる点がメリットです。
3. 低金利時代の恩恵を受けられる
住宅ローン金利が低い時期に借り入れることで、金利上昇前に固定金利で借りられる可能性があります。
デメリット
1. 借入額が増加
頭金なしでフルローンを組むと、借入額が増加します。例えば、3,000万円の物件を購入する場合、頭金20%(600万円)を用意すれば借入額は2,400万円ですが、頭金なしでは3,000万円を借りることになります。
2. 総返済額が増加
借入額が増加すると、利息も増えるため、総返済額が増加します。2024年時点の金利1.5%で試算すると、35年ローン・借入額600万円増加で総利息が約150万円増加します。
| 借入額 | 月々返済額 | 総返済額 | 総利息 | 
|---|---|---|---|
| 2,400万円 | 約73,000円 | 約3,070万円 | 約670万円 | 
| 3,000万円 | 約92,000円 | 約3,860万円 | 約860万円 | 
※35年ローン・金利1.5%で試算
3. 審査が厳しくなる
頭金なしの場合、金融機関はリスクが高いと判断し、審査が厳しくなります。年収・勤続年数・信用情報がより重視されます。
4. 金利が高くなる可能性
一部の金融機関では、頭金なしの場合、金利が0.1-0.3%高く設定されることがあります。金利が高くなると、総返済額がさらに増加します。
5. 担保割れのリスク
物件価格の100%を借りると、住宅ローン残高が物件の時価を上回る「担保割れ」のリスクが高まります。売却時にローン残高を完済できず、持ち出しが必要になる可能性があります。
頭金なし住宅ローンの審査ポイント
頭金なしで住宅ローンを組む場合、審査で重視されるポイントを理解し、対策を講じましょう。
1. 年収
金融機関は、借入額に対する年収の割合(返済比率)を重視します。返済比率とは、年間返済額÷年収×100で計算され、一般的に25-35%以内が目安です。
頭金なしの場合、借入額が増えるため、返済比率が高くなりやすく、審査で不利になる可能性があります。年収が高いほど、審査に通りやすくなります。
2. 勤続年数
金融機関により基準は異なりますが、一般的に、勤続年数3年以上が目安です。頭金なしの場合は5年以上が推奨されます。勤続年数が長いほど、収入の安定性が高いと判断されます。
3. 信用情報
クレジットカードの延滞・ローンの滞納などの信用情報は、審査で厳しくチェックされます。過去に延滞がある場合、頭金なしの審査に通りにくくなります。
事前に信用情報機関(CIC・JICC等)で自分の信用情報を確認し、問題がないかチェックしましょう。
4. 物件の担保価値
物件の担保価値(時価)が借入額を下回ると、金融機関はリスクが高いと判断します。新築物件や人気エリアの物件は担保価値が高く、審査に通りやすい傾向があります。
5. 返済比率
返済比率は、年間返済額÷年収×100で計算されます。一般的に25-35%以内が目安ですが、頭金なしの場合は25%以下に抑えることが推奨されます。
例えば、年収600万円の場合、年間返済額150万円(月々12.5万円)が上限です。借入額3,000万円・35年ローン・金利1.5%では月々約9.2万円なので、返済比率は約18%となり、審査に通りやすくなります。
頭金なしで住宅ローンを組む際のリスク対策
頭金なしで住宅ローンを組む場合、以下のリスク対策を講じることが重要です。
1. 返済比率を25%以下に抑える
返済比率を25%以下に抑えることで、生活費・教育費・医療費などの支出に余裕を持たせられます。金融機関の審査では35%以内が目安ですが、実際の生活を考えると25%以下が安全です。
2. 繰上返済を計画的に行う
手元資金を温存した上で、ボーナスや昇給時に繰上返済を行い、借入額を減らしましょう。繰上返済によって、総返済額を抑えられます。
3. 固定金利を選択
変動金利は金利が低いですが、将来金利が上昇するリスクがあります。頭金なしで借入額が多い場合、金利上昇によって返済額が大幅に増加する可能性があるため、固定金利(フラット35等)を選択することで、金利上昇リスクを回避できます。
4. 団体信用生命保険への加入
団体信用生命保険(団信)に加入することで、借入者が死亡・高度障害になった場合、住宅ローン残高が保険で完済されます。頭金なしで借入額が多い場合、団信への加入は必須です。
5. 諸費用は現金で用意
諸費用ローンを利用すると、借入額がさらに増加します。可能であれば、諸費用(物件価格の5-10%、150-300万円程度)は現金で用意することで、借入額を抑えられます。
6. 購入後の維持費を確保
住宅購入後は、固定資産税・修繕費・管理費(マンションの場合)などの維持費がかかります。これらの費用を考慮した上で、返済計画を立てることが重要です。
まとめ
頭金なし(フルローン)で住宅ローンは組めますが、審査が厳しく、金利が高くなる傾向があります。メリットは早期購入可能・手元資金温存、デメリットは借入額増加・総返済額増加・審査厳格化・担保割れのリスクです。
審査では年収・勤続年数・信用情報が重視され、返済比率25%以下を目安にすることが推奨されます。
リスク対策として、繰上返済を計画的に行い、固定金利を選択し、団体信用生命保険に加入し、諸費用は現金で用意することで、頭金なしでも安全に住宅ローンを組むことが可能です。
金融機関や住宅ローンアドバイザーに相談しながら、無理のない返済計画を立てましょう。
