頭金なしで住宅ローンは組める?審査基準とリスクを解説

公開日: 2025/10/27

頭金なしで住宅ローンは組める?

住宅購入を検討する際、「頭金を用意できないけれど住宅ローンは組めるのか」「頭金なしのリスクは何か」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、頭金なしで住宅ローンを組む方法、メリット・デメリット、審査のポイント、リスク対策を、住宅金融支援機構などの公式情報を元に解説します。

頭金なしで住宅ローンを検討している方が、リスクを理解し、自分に合った資金計画を立てられるようになります。

この記事のポイント

  • 頭金なし(フルローン)で住宅ローンは組めるが、審査が厳しく金利が高くなる傾向がある
  • 頭金なしのメリットは早期購入可能・手元資金温存、デメリットは借入額増加・総返済額増加・審査厳格化
  • 審査では年収・勤続年数・信用情報が重視され、物件価格の100%以上を借りる場合は諸費用ローンが必要
  • リスク対策として、返済比率25%以下を目安に、繰上返済や金利上昇リスクへの備えが重要

頭金なしで住宅ローンは組めるのか

結論から言うと、頭金なし(フルローン)で住宅ローンは組めます。ただし、頭金ありの場合と比較して、審査が厳しくなり、金利が高くなる傾向があります。

フルローンとは

フルローンとは、物件価格の100%を住宅ローンで借り入れることを指します。従来は物件価格の80-90%を借り入れ、残りを頭金で支払うのが一般的でしたが、近年は頭金なしでも借り入れできる金融機関が増えています。

諸費用ローンとは

さらに、物件価格の100%以上を借りる「諸費用ローン」もあります。これは、物件価格に加えて、諸費用(登記費用・不動産取得税・火災保険料等)も含めて借り入れる方法です。

諸費用ローンを利用すれば、自己資金ゼロで住宅購入が可能ですが、借入額が増えるため、審査が厳しく、金利も高くなります。

ローン種類 借入額 審査難易度 金利
通常ローン(頭金あり) 物件価格の80-90% 普通 低い
フルローン 物件価格の100% やや厳しい やや高い
諸費用ローン 物件価格の105-110% 厳しい 高い

頭金なしのメリット・デメリット

頭金なしで住宅ローンを組むメリットとデメリットを理解し、自分の状況に合っているか判断しましょう。

メリット

1. 早期購入が可能

頭金を貯める期間が不要なため、早期に住宅を購入できます。賃貸の家賃を払い続けるよりも、早く自分の資産を持つことができます。

2. 手元資金を温存できる

頭金として現金を支払わないため、手元資金を温存できます。急な出費(教育費・医療費等)に備えられる点がメリットです。

3. 低金利時代の恩恵を受けられる

住宅ローン金利が低い時期に借り入れることで、金利上昇前に固定金利で借りられる可能性があります。

デメリット

1. 借入額が増加

頭金なしでフルローンを組むと、借入額が増加します。例えば、3,000万円の物件を購入する場合、頭金20%(600万円)を用意すれば借入額は2,400万円ですが、頭金なしでは3,000万円を借りることになります。

2. 総返済額が増加

借入額が増加すると、利息も増えるため、総返済額が増加します。2024年時点の金利1.5%で試算すると、35年ローン・借入額600万円増加で総利息が約150万円増加します。

借入額 月々返済額 総返済額 総利息
2,400万円 約73,000円 約3,070万円 約670万円
3,000万円 約92,000円 約3,860万円 約860万円

※35年ローン・金利1.5%で試算

3. 審査が厳しくなる

頭金なしの場合、金融機関はリスクが高いと判断し、審査が厳しくなります。年収・勤続年数・信用情報がより重視されます。

4. 金利が高くなる可能性

一部の金融機関では、頭金なしの場合、金利が0.1-0.3%高く設定されることがあります。金利が高くなると、総返済額がさらに増加します。

5. 担保割れのリスク

物件価格の100%を借りると、住宅ローン残高が物件の時価を上回る「担保割れ」のリスクが高まります。売却時にローン残高を完済できず、持ち出しが必要になる可能性があります。

頭金なし住宅ローンの審査ポイント

頭金なしで住宅ローンを組む場合、審査で重視されるポイントを理解し、対策を講じましょう。

1. 年収

金融機関は、借入額に対する年収の割合(返済比率)を重視します。返済比率とは、年間返済額÷年収×100で計算され、一般的に25-35%以内が目安です。

頭金なしの場合、借入額が増えるため、返済比率が高くなりやすく、審査で不利になる可能性があります。年収が高いほど、審査に通りやすくなります。

2. 勤続年数

金融機関により基準は異なりますが、一般的に、勤続年数3年以上が目安です。頭金なしの場合は5年以上が推奨されます。勤続年数が長いほど、収入の安定性が高いと判断されます。

3. 信用情報

クレジットカードの延滞・ローンの滞納などの信用情報は、審査で厳しくチェックされます。過去に延滞がある場合、頭金なしの審査に通りにくくなります。

事前に信用情報機関(CIC・JICC等)で自分の信用情報を確認し、問題がないかチェックしましょう。

4. 物件の担保価値

物件の担保価値(時価)が借入額を下回ると、金融機関はリスクが高いと判断します。新築物件や人気エリアの物件は担保価値が高く、審査に通りやすい傾向があります。

5. 返済比率

返済比率は、年間返済額÷年収×100で計算されます。一般的に25-35%以内が目安ですが、頭金なしの場合は25%以下に抑えることが推奨されます。

例えば、年収600万円の場合、年間返済額150万円(月々12.5万円)が上限です。借入額3,000万円・35年ローン・金利1.5%では月々約9.2万円なので、返済比率は約18%となり、審査に通りやすくなります。

頭金なしで住宅ローンを組む際のリスク対策

頭金なしで住宅ローンを組む場合、以下のリスク対策を講じることが重要です。

1. 返済比率を25%以下に抑える

返済比率を25%以下に抑えることで、生活費・教育費・医療費などの支出に余裕を持たせられます。金融機関の審査では35%以内が目安ですが、実際の生活を考えると25%以下が安全です。

2. 繰上返済を計画的に行う

手元資金を温存した上で、ボーナスや昇給時に繰上返済を行い、借入額を減らしましょう。繰上返済によって、総返済額を抑えられます。

3. 固定金利を選択

変動金利は金利が低いですが、将来金利が上昇するリスクがあります。頭金なしで借入額が多い場合、金利上昇によって返済額が大幅に増加する可能性があるため、固定金利(フラット35等)を選択することで、金利上昇リスクを回避できます。

4. 団体信用生命保険への加入

団体信用生命保険(団信)に加入することで、借入者が死亡・高度障害になった場合、住宅ローン残高が保険で完済されます。頭金なしで借入額が多い場合、団信への加入は必須です。

5. 諸費用は現金で用意

諸費用ローンを利用すると、借入額がさらに増加します。可能であれば、諸費用(物件価格の5-10%、150-300万円程度)は現金で用意することで、借入額を抑えられます。

6. 購入後の維持費を確保

住宅購入後は、固定資産税・修繕費・管理費(マンションの場合)などの維持費がかかります。これらの費用を考慮した上で、返済計画を立てることが重要です。

まとめ

頭金なし(フルローン)で住宅ローンは組めますが、審査が厳しく、金利が高くなる傾向があります。メリットは早期購入可能・手元資金温存、デメリットは借入額増加・総返済額増加・審査厳格化・担保割れのリスクです。

審査では年収・勤続年数・信用情報が重視され、返済比率25%以下を目安にすることが推奨されます。

リスク対策として、繰上返済を計画的に行い、固定金利を選択し、団体信用生命保険に加入し、諸費用は現金で用意することで、頭金なしでも安全に住宅ローンを組むことが可能です。

金融機関や住宅ローンアドバイザーに相談しながら、無理のない返済計画を立てましょう。

よくある質問

Q1頭金なしで住宅ローンを組むと審査が厳しくなる?

A1厳しくなります。頭金なしの場合、金融機関はリスクが高いと判断し、年収・勤続年数・信用情報をより重視します。一般的に、年収が高く、勤続年数が長く(5年以上推奨)、信用情報に問題がない場合に審査に通りやすくなります。返済比率を25%以下に抑えることも重要です。

Q2諸費用ローンとは?

A2物件価格に加えて、諸費用(登記費用・不動産取得税・火災保険料等)も含めて借り入れる方法です。物件価格の105-110%を借りることになり、自己資金ゼロで住宅購入が可能ですが、借入額が増えるため、審査が厳しく、金利も高くなります。可能であれば、諸費用は現金で用意することが推奨されます。

Q3頭金なしのリスクは?

A3借入額増加により総返済額が増加すること、審査が厳しくなること、金利が高くなる可能性があること、担保割れのリスクが高まることです。35年ローン・金利1.5%で借入額600万円増加の場合、総利息が約150万円増加します。また、物件の時価が下落すると、売却時にローン残高を完済できず、持ち出しが必要になる可能性があります。

Q4返済比率はどれくらいが適切?

A4金融機関の審査では25-35%以内が目安ですが、実際の生活を考えると25%以下が安全です。返済比率を抑えることで、生活費・教育費・医療費などの支出に余裕を持たせられます。例えば、年収600万円の場合、年間返済額150万円(月々12.5万円)が上限です。頭金なしで借入額が多い場合は、返済比率を低く抑えることが重要です。