マンション価格はいつ下落する?断定的な予測は不可能
マンション購入を検討する際、「今の高値相場で買うべきか」「価格下落を待つべきか」と悩む方は少なくありません。特に、2020年代前半の価格高騰を経験した今、いつ価格が下落するのかは多くの購入検討者の関心事です。
この記事では、マンション価格の下落時期について、国土交通省の不動産価格指数等の公的データを用いて過去の価格変動パターンを分析し、価格に影響する要因(金利、人口動態、建築費、需給バランス)を客観的に解説します。また、「下落を待つリスク」も併せて示し、読者が適切に判断できる材料を提供します。
まず結論として、「いつ下落するか」を断定的に予測することは不可能です。しかし、価格変動の仕組みを理解することで、自分にとって適切な購入タイミングを見極めることは可能になります。
この記事のポイント
- 「いつ下落するか」を断定的に予測することは不可能だが、価格に影響する要因を理解できる
- 国土交通省の不動産価格指数で過去の価格変動パターンを分析すると、外部ショックで下落・回復を繰り返している
- 金利上昇、2025年問題(中古供給増加)、建築費高騰が今後の価格に影響する可能性がある
- 下落を待つリスク(金利上昇、賃料負担、住宅ローン控除縮小、ライフプラン遅延)も存在する
- 価格タイミングよりライフプラン・資金計画・物件条件を優先すべき
マンション価格の現状:国土交通省の不動産価格指数で見る推移
国土交通省は、全国約30万件の不動産取引価格をヘドニック法(立地・面積・築年数等の品質差を統計的に調整する手法)で分析し、毎月「不動産価格指数」を公表しています。この指数は2010年平均を100とし、純粋な価格変動を測定できるため、マンション価格の推移を客観的に把握する上で重要な指標です。
2010年を100とした場合の価格推移
不動産価格指数によると、マンション価格(全国)は2010年の100から2024年には約180まで上昇しており、約1.8倍になっています。特に2020年以降の上昇が顕著で、コロナ禍による金融緩和、テレワーク普及による住宅需要増加、建築費高騰等が複合的に影響しています。
国土交通省の不動産価格指数によると、都心部ではさらに上昇率が高く、東京23区では2010年比で2倍以上に達している地域もあります。一方、郊外や地方都市では上昇が限定的で、都心・郊外の二極化が進んでいます。
過去の価格変動パターン:リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍
過去20年を振り返ると、マンション価格は外部ショックにより下落と回復を繰り返してきました。
| 局面 | 時期 | 価格変動 | 要因 | 
|---|---|---|---|
| リーマンショック | 2008-2009年 | 10-15%下落 | 世界金融危機、住宅ローン審査厳格化 | 
| 東日本大震災 | 2011-2012年 | 一時下落後回復 | 液状化リスク懸念、復興需要 | 
| アベノミクス | 2013-2019年 | 緩やかな上昇 | 金融緩和、建築費上昇、訪日外国人需要 | 
| コロナ禍 | 2020-2024年 | 急上昇 | 超低金利継続、テレワーク需要、建築費高騰 | 
(出典: 国土交通省 不動産価格指数)
重要なのは、過去の下落局面でも数年で価格が回復している点です。リーマンショック時の下落は10-15%でしたが、2013年以降のアベノミクス政策による金融緩和で価格は上昇に転じました。過去パターンが将来を保証するわけではありませんが、外部ショックによる一時的な下落は、金融政策や経済回復により修正される傾向があることがわかります。
マンション価格に影響する4つの要因
マンション価格は単一の要因ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って変動します。ここでは、今後の価格に影響する可能性がある4つの要因を解説します。
金利動向:日銀のマイナス金利解除の影響
2024年3月、日本銀行はマイナス金利政策を解除しました。これにより、住宅ローン金利が上昇するリスクが高まっています。小田急不動産によると、金利上昇→住宅ローン負担増→需要減少→価格下落のメカニズムが働く可能性があります。
例えば、借入額3,000万円、返済期間35年の場合、金利が0.5%から1.5%に上昇すると、毎月返済額は約7.7万円から約9.2万円に増加し、総返済額は約1,000万円増加します。この負担増により、購入を見送る層が増えれば、需要減少から価格下落につながる可能性があります。
ただし、変動金利は日銀の政策金利に連動しますが、固定金利は長期金利に連動するため、変動金利と固定金利の動きは異なります。金利動向を注視しつつ、変動金利か固定金利かの選択も重要な判断ポイントになります。
人口動態:2025年以降の中古マンション供給増加
2025年以降、団塊世代(1947〜1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)となり、住み替えや相続により中古マンションの供給が増加する現象が懸念されています。マンションプラスによると、不動産経済研究所の調査部長も、2025年以降に中古マンションの供給が増加し、需給バランスが崩れる可能性を指摘しています。
供給増加により価格が下落するかは、需要側の動向にも依存します。人口減少・少子高齢化が進む中、都心部では単身世帯や共働き世帯の需要が堅調ですが、郊外では需要減少リスクが高まります。都心・郊外の二極化がさらに進む可能性があります。
建築費の高騰:2012年の72.2万円/坪から2024年の137.5万円/坪へ
shukenによると、マンション建築費は2012年の72.2万円/坪から2024年の137.5万円/坪まで約90%上昇しています。コロナ禍やウクライナ情勢による資材高騰、人手不足による人件費上昇が主な要因です。
建築費高騰は新築マンション価格を押し上げ、中古マンション価格にも波及します。建築費が高止まりすれば、新築価格は下がりにくく、中古価格も下支えされる可能性があります。逆に、資材価格や人件費が落ち着けば、建築費低下から新築価格が下がり、中古価格にも影響する可能性があります。
需給バランス:都心・郊外の二極化
マンション価格は、需給バランス(需要と供給のバランス)に強く影響されます。都心部では、単身世帯や共働き世帯の需要が堅調で、供給が限られているため価格が上昇しやすい傾向があります。一方、郊外では人口減少により需要が減少し、供給過剰リスクが高まっています。
今後、都心部では再開発や駅近物件の希少性から価格が維持される可能性がある一方、郊外では2025年以降の供給増加で価格下落リスクが高まると考えられます。ただし、郊外でも駅近・商業施設充実等の条件が良い物件は需要が維持される可能性があります。
価格下落の可能性とタイミング:専門家の見解
「いつ下落するか」を断定的に予測することは、専門家でも不可能です。SUUMOでは、不動産経済研究所の専門家が「翌年の価格予測は不可能」と明言しています。金利・資材コスト・人件費・円安・需要等の複合要因が絡み合い、単純な予測はできないのが実情です。
下落の可能性はあるが、時期・程度は不透明
2025年以降の中古供給増加、金利上昇による需要減少、建築費高止まりの反動等、価格下落につながる要因は存在します。しかし、これらの要因が同時に顕在化するか、どの程度影響するかは不透明です。
例えば、金利が急上昇すれば需要減少から価格下落の可能性がありますが、建築費が高止まりすれば新築価格は下がりにくく、中古価格も下支えされます。また、都心部では需要が堅調なため、郊外ほど下落幅は大きくない可能性があります。
投資目的の断定的アドバイスは法律で禁止
なお、投資目的でマンションを購入する場合、金融商品取引法により断定的判断の提供は禁止されています。「必ず値上がりする」「今が底値」等の表現は法律違反になるため、注意が必要です。
本記事は、居住目的でマンションを購入する方向けに、価格変動の仕組みと判断材料を提供するものであり、投資アドバイスではありません。
購入タイミングの考え方:下落を待つリスクも考慮
「価格が下落するまで待つべきか」と考える方も多いですが、下落を待つことにもリスクがあります。東急リバブルは、下落を待つ4つのリスクを指摘しています。
下落を待つ4つのリスク
① 金利上昇により総返済額が増加
価格が10%下落しても、金利が1%上昇すれば総返済額は増加する可能性があります。例えば、住宅ローンシミュレーションツール等で計算すると、物件価格4,000万円、金利0.5%、35年ローンの場合、総返済額は約4,145万円です。価格が10%下落して3,600万円になっても、金利が1.5%に上昇すれば総返済額は約4,400万円となり、逆に負担が増えます。
② 賃料負担が継続
購入を見送り賃貸で暮らす間、賃料負担が継続します。月額10万円の賃料を2年間払えば240万円の支出です。価格が240万円以上下落しなければ、待った意味がありません。
③ 住宅ローン控除の縮小・廃止リスク
住宅ローン控除は税制改正により控除率・期間・対象が変更される可能性があります。現在の制度(2025年時点)は2025年12月31日までの入居が対象ですが、延長されるか、条件が変更されるかは不透明です。制度が縮小されれば、実質的な負担が増加します。
④ ライフプラン(子育て、教育環境)の遅延
購入を先延ばしにすることで、子育てに適した環境への引っ越しが遅れたり、子供の学区が変わったりする可能性があります。価格タイミングだけでなく、ライフプラン全体を考慮することが重要です。
ライフプラン・資金計画・物件条件を優先すべき
専門家が共通して指摘するのは、「市場を読む」より「自分のライフプランに合う判断」が重要という点です。以下の3つを優先して検討しましょう。
① ライフプラン:いつ住みたいか
子供の就学、転勤、親の介護等、ライフイベントに合わせて購入時期を決めることが第一です。市場タイミングを優先してライフプランを犠牲にすると、後悔につながる可能性があります。
② 資金計画:返済可能額
年収に対して無理のない返済額(年収の25-30%以内)か、頭金は十分か、諸費用も含めて資金計画が成り立つかを確認しましょう。価格が下落しても、返済が苦しい物件を購入すれば本末転倒です。
③ 物件条件:立地・広さ
駅からの距離、周辺環境、間取り、管理状態等、自分の希望に合った物件が見つかるかどうかが最も重要です。価格が安くても条件が合わない物件では、長期間住むことが苦痛になります。
まとめ:価格予測より自分のライフプランを優先しよう
「マンション価格はいつ下落するか」を断定的に予測することは不可能です。価格に影響する要因(金利、人口動態、建築費、需給バランス)は複雑で、2025年以降の供給増加や金利上昇による下落の可能性はあるものの、時期・程度は不透明です。
国土交通省の不動産価格指数で過去の価格変動パターンを分析すると、リーマンショックや東日本大震災等の外部ショックで下落しても、数年で回復している傾向があります。ただし、過去パターンが将来を保証するわけではありません。
価格下落を待つことにもリスク(金利上昇、賃料負担、住宅ローン控除縮小、ライフプラン遅延)があります。価格タイミングより、ライフプラン(いつ住みたいか)、資金計画(返済可能額)、物件条件(立地・広さ)を優先し、自分にとって適切なタイミングで判断することが重要です。
次のアクションとして、資金計画の見直し(返済シミュレーション)、複数物件の比較検討、金利動向のモニタリング(変動金利か固定金利か)を推奨します。信頼できる不動産会社や金融機関に相談しながら、無理のない購入計画を立てましょう。
